JP2962666B2 - 杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造 - Google Patents

杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は、例えば人工島や橋
台等の構築物を築造する際に用いられるものであって、
鋼管又はコンクリート等からなる杭を、構造物の一部を
なす鋼管又はコンクリート等からなる鞘管内に挿入して
地中に打設した後、鞘管と杭との間の空間にグラウトを
充填することにより杭と鞘管とを一体的に結合固定して
構造物を構築する場合に、鞘管の下端部において鞘管と
杭の隙間からグラウトが外部に流出することを防止する
ためのシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、杭を鞘管内に挿入し地中に打設し
た後、鞘管と杭との間の空間にグラウトを充填すること
により杭と鞘管とを一体的に結合固定して構築物を構築
する場合に、鞘管の下端部において鞘管と杭の隙間から
グラウトが流出することを防止するためのシール構造と
しては、ゴム等の弾性体により形成されたシール材が、
上側に弾性変形して先端が杭の外面に圧接してシールす
るように構成されている。これにより、シール材は上面
にグラウトを保持することとなり、グラウトの重量がシ
ール材を杭の外面に圧接させるように作用してシール効
果が増大するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近時、鋼管
杭の表面を防錆を目的としてアスファルトビニロンクロ
ス等で塗覆したものがあり、このような塗覆鋼管杭を用
いる場合には、シール材の杭外面への圧接力(シール
圧)が大きいと塗膜を剥離させてしまう虞がある。この
ような塗膜の剥離を防ぐためにシール圧をシール機能を
損なわさせずに低下させたいという相反する要求がある
が、シール材の弾性変形によって生ずるシール圧を低く
設定すると、杭と鞘管の相対変位許容量も少なくなって
しまうという問題があった。つまり、弾性変形によるシ
ール圧が設定時でも低いために、設定位置に対して杭と
鞘管が少しでも相対変位する(ずれる)とシール圧がよ
り低くなるためにシール機能が劣ってしまうものであ
る。
【0004】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもの
であって、表面を塗覆した杭の塗膜を剥離させることの
ない低いシール圧で、杭と鞘管の相対変位許容量を大き
く設定することのできる杭と鞘管間のグラウト流出防止
用シール構造を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の杭と鞘管間におけるグラウト流出防止シール構造
は、構造物の構築現場に立設された鞘管内に杭を挿入し
つつ地中に打設した後、前記杭と鞘管の間隙にグラウト
を注入して当該杭と鞘管とを結合固定する基礎工法に於
いて、杭の外周面と鞘管の内周面の間に介装され、当該
介装部位より上方に充填されるグラウトの流下を防ぐシ
ール構造であって、前記鞘管内に嵌合する短筒状の固定
部の下縁内周側に環状のシール部が前記固定部に対して
断面形状L字状に突設されて成る弾性を有する素材によ
って形成されたシール材が、当該固定部を介して前記鞘
管の内面に固定され、前記シール部が下側に屈曲変形し
てその弾性復帰力で先端が前記杭の外面に圧接するよう
に構成されていることを特徴とする。
【0006】また、上記固定部が上記鞘管内に嵌合する
短筒状の固定部材の内周に固着され、前記固定部材を介
して前記鞘管に固定されていることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下添付図面を参照して本発明の
実施の形態について説明する。図1は本発明に係る杭と
鞘管間におけるグラウト流出防止シール構造の一実施形
態の断面図である。
【0008】図示シール構造は、鞘管としてのジャケッ
ト1にシール10が固定され、このシール10が弾性変
形してその復帰力で杭2の外面に圧接することでシール
作用し、その上側の鞘管の内面と杭の外面の間隙に充填
されるグラウトの下側への漏洩を防ぐようになってい
る。
【0009】シール10は、その断面図を図2に示すよ
うに、合成ゴム又は天然ゴム等の弾性素材により形成さ
れたシール材11が、ジャケット1の内径と対応する外
径の薄肉短筒状の固定部材としてのベースリング12の
内周面に固定されて構成されている。
【0010】シール材11は、ベースリング12の内径
と一致する外径の短筒状の固定部11Aの下縁に、薄肉
環状のシール部11Bが直角に内側に向けて突設され
て、断面形状L字状に形成されている。固定部11Aの
上縁には上方が開放する方向の面取り11Cが施さてい
る。
【0011】シール材11の固定部11Aの外周面はベ
ースリング12の内周面に焼付接着され、これによって
シール材11とベースリング12が一体化されてシール
10を形成している。
【0012】上記構成のシール材11は、杭2が挿入さ
れる以前にジャケット1の内周にベースリング12が嵌
合してジャケット1の所定位置に挿置され、上縁がジャ
ケット1の内周に全周溶接されると共に下縁が所々点溶
接されて固定される。尚、このジャケット1へのシール
10の装着固定は予め工場にて行っておいても、または
現場で行ってもどちらでも良いものである。
【0013】シール10が装着固定されたジャケット1
は、構築現場に立設され、その後杭2が挿入されて杭2
は地中に打設される。これによって図3に示すようにジ
ャケット1に固定されたシール10はそのシール材11
のシール部11Bが杭2の挿入方向である下側に弾性で
屈曲変形し、その弾性復帰力で杭2の外面に圧接してシ
ールする。
【0014】ここで、本構成では、シール部11Bが固
定部11Aとは逆側に屈曲変形するものであるため、杭
2挿入時の変形抵抗が少なく弾性復帰力も小さく、従っ
て杭2の外面への圧接力も小さく設定することができ、
杭2の外周面にアスファルトビニロンクロス等で塗覆し
たものであっても塗膜を剥離させることがないように構
成できる。また、固定部11Aがシール部11Bの屈曲
変形を妨げることがないため、ジャケット1と杭2の大
きな相対変位量(図中Sで示す)を許容することができ
る。
【0015】尚、シール10のジャケット1への固定構
造としては、ベースリング12を介して溶接固定するも
のの他に図5に示すようにシール材11の固定部11A
を直接ジャケット1の内面にボルト4によって押え板3
を介して締着固定するようにしても良いものである。し
かし、この固定構造では、押え板3の厚さがジャケット
1と杭2の相対変位の妨げとなるため、ジャケット1と
杭2の大きな相対変位を可能とするという観点からは前
述の構成がより望ましいものである。
【0016】上記のごときシール構造において、ジャケ
ット1と杭2の間隙へのグラウト注入は、図4に示すよ
うにジャケット1のシール位置(シール10配設位置)
の上側近傍に設けられた一次注入孔1Aを介してグラウ
トを当該一次注入孔1Aより下側の間隙に注入し、その
注入したグラウト(一次グラウト31)が硬化した後、
一次注入孔1Aより所定量高い位置にある二次注入孔1
Bを介して二次グラウト32を硬化した一次グラウト3
1より上側の間隙に注入して硬化させる。これによって
ジャケット1と杭2がグラウト(一次グラウト31及び
二次グラウト32)によって結合一体化されるものであ
る。
【0017】このように一次グラウト31が硬化した
後、二次グラウト32を注入硬化することにより、シー
ル10は一次グラウト31のみをシールすれば良くシー
ル機能を保ってグラウトの漏洩を防ぐことができる。即
ち、本構成ではシール圧が小さい上にグラウトの重量は
シール部11Bを杭2の外周面から離間させる方向に作
用するが、二次グラウト32の重量は硬化した一次グラ
ウト31が受けるために、シール圧は一次グラウト31
の重量のみに耐え得れば良いのである。
【0018】
【発明の効果】以上述べたように、本発明による杭と鞘
管間のグラウト流出防止シール構造によれば、鞘管内に
嵌合する短筒状の固定部の下縁内周側に環状のシール部
が前記固定部に対して断面形状L字状に突設されて成る
弾性を有する素材によって形成されたシール材が、前記
固定部を上側として当該固定部を介して前記鞘管の内面
に固定され、前記シール部が下側に屈曲変形してその弾
性復帰力で先端が前記杭の外面に圧接するように構成さ
れていることにより、杭挿入時の変形抵抗が少なく弾性
復帰力も小さく、従って杭の外面への圧接力も小さく設
定することができ、杭の外周面にアスファルトビニロン
クロス等で塗覆したものであっても塗膜を剥離させるこ
とがないように構成できる。また、固定部がシール部の
屈曲変形を妨げることがないため、杭と鞘管の大きな相
対変位量を許容することができるものである。
【0019】また、固定部が鞘管内に嵌合可能な短筒状
の固定部材の内周に固着され、固定部材を介して鞘管に
固定されているものでは、固定構造がシール材のシール
部の変形を妨げることがなく、シール材の有する鞘管と
杭の相対変位量を有効に利用することができるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る杭と鞘管間のグラウト流出防止シ
ール構造の一実施形態でを示す断面図である。
【図2】シール材部分の断面図である。
【図3】杭挿入時におけるシール材の変形状態を説明す
る図である。
【図4】グラウト注入の説明図である。
【図5】シール材のジャケットへの他の固定構造を示す
説明図である。
【符号の説明】
1 ジャケット(鞘管) 2 杭 3…鞘管 11 シール材 11A 固定部 11B シール部 12 ベースリング(固定部材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E02B 17/00 - 17/08 E02D 5/24 - 5/32 E02D 5/60 E02D 13/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構造物の構築現場に立設された鞘管内に
    杭を挿入しつつ地中に打設した後、前記杭と鞘管の間隙
    にグラウトを注入して当該杭と鞘管とを結合固定する基
    礎工法に於いて、杭の外周面と鞘管の内周面の間に介装
    され、当該介装部位より上方に充填されるグラウトの流
    下を防ぐシール構造であって、 前記鞘管内に嵌合する短筒状の固定部の下縁内周側に環
    状のシール部が前記固定部に対して断面形状L字状に突
    設されて成る弾性を有する素材によって形成されたシー
    ル材が、当該固定部を介して前記鞘管の内面に固定さ
    れ、前記シール部が下側に屈曲変形してその弾性復帰力
    で先端が前記杭の外面に圧接するように構成されて
    り、上記固定部が上記鞘管内に嵌合する短筒状の固定部
    材の内周に溶接固着され、前記固定部材を介して前記鞘
    管に固定されていることを特徴とする杭と鞘管間のグラ
    ウト流出防止用シール構造。
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