JP2958819B2 - 非還元性誘電体磁器組成物 - Google Patents

非還元性誘電体磁器組成物

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JP2958819B2 JP3183579A JP18357991A JP2958819B2 JP 2958819 B2 JP2958819 B2 JP 2958819B2 JP 3183579 A JP3183579 A JP 3183579A JP 18357991 A JP18357991 A JP 18357991A JP 2958819 B2 JP2958819 B2 JP 2958819B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は非還元性誘電体磁器組
成物に関し、特にたとえば、ニッケルなどの卑金属を内
部電極材料とする積層コンデンサなどの誘電体材料とし
て用いられる、非還元性誘電体磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の誘電体磁器材料は、中性または還
元性の低酸素分圧下で焼成すると、還元され、半導体化
を起こすという性質を有していた。そのため、内部電極
材料としては、誘電体磁器材料の焼結する温度で溶融せ
ず、かつ誘電体磁器材料を半導体化させない高い酸素分
圧下で焼成しても酸化されない、たとえばPd,Ptな
どの貴金属を用いなければならなかった。これは、製造
される積層コンデンサの低コスト化の大きな妨げとなっ
ていた。
【0003】そこで、上述の問題点を解決するために、
たとえばNiなどの卑金属を内部電極の材料として使用
することが望まれていた。しかし、このような卑金属を
内部電極の材料として使用して、従来の条件で焼成する
と、電極材料が酸化してしまい、電極としての機能を果
たさない。そのため、このような卑金属を内部電極の材
料として使用するためには、酸素分圧の低い中性または
還元性の雰囲気において焼成しても半導体化せず、コン
デンサ用の誘電体材料として、十分な比抵抗と優れた誘
電特性とを有する誘電体磁器材料が必要とされていた。
これらの条件をみたす誘電体磁器材料として、たとえば
特開昭62−256422号のBaTiO3 −CaZr
3 −MnO−MgO系の組成や、特公昭61−146
11号のBaTiO3 −(Mg,Zn,Sr,Ca)O
−B2 3 −SiO2 系の組成が提案されてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
62−256422号に開示されている非還元性誘電体
磁器組成物では、CaZrO3 や焼成過程で生成するC
aTiO3 が、Mnなどとともに二次相を生成しやすい
ため、高温における信頼性の低下につながる危険性があ
った。また、この組成物は、容量の経時変化(エージン
グ率,%/dec)が、大きく実用的でないという問題
点もあった。
【0005】また、特公昭61−14611号に開示さ
れている組成物は、得られる誘電体の誘電率が2000
〜2800であり、Pdなどの貴金属を使用している従
来からの磁器組成物の誘電率である3000〜3500
と比較すると劣っていた。したがって、この組成物をコ
ストダウンのために、そのまま従来の材料と置き換える
のは、コンデンサの小型大容量化という点で不利であ
り、問題が残されていた。
【0006】さらに、この組成物の誘電率の温度変化率
(TCC)は、20℃の容量値を基準として、−25℃
から+85℃の温度範囲では±10%であるが、+85
℃を超える高温では、10%を大きく超えてしまい、E
IAに規定されているX7R特性をも大きくはずれてし
まうという欠点があった。
【0007】それゆえに、この発明の主たる目的は、低
酸素分圧下であっても、組織が半導体化せず焼成可能で
あり、かつ誘電率が3000以上、絶縁抵抗がlogI
Rで11.0以上であり、さらに誘電率の温度特性が、
25℃の容量値を基準として、−55℃〜125℃の広
い範囲にわたって±15%の範囲内にあることを満足す
る、非還元性誘電体磁器組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、不純物とし
て含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.04重量
%以下のBaTiO3 と、Tb2 3 ,Dy2 3 ,H
2 3 ,Er2 3 の中から選ばれる少なくとも1種
類の希土類酸化物(Re2 3 )と、Co2 3 との配
合比が、BaTiO3 92.0〜99.4モル%と、
Re2 3 0.3〜4.0モル%と、Co2 3
0.3〜4.0モル%との範囲内にある主成分100モ
ル%に対し、副成分として、BaO 0.2〜4.0モ
ル%と、MnO 0.2〜3.0モル%と、MgO
0.5〜5.0モル%とを含有する、非還元性誘電体磁
器組成物である。
【0009】
【発明の効果】この発明にかかる非還元性誘電体磁器組
成物は、中性または還元性の雰囲気において1300〜
1360℃の温度で焼成しても、組織が還元されて半導
体化することがない。さらに、この非還元性誘電体磁器
組成物は、logIRで11.0以上の高い絶縁抵抗値
を示すとともに、3000以上の高誘電率を示し、容量
温度変化率もEIAに規定されているX7R特性を満足
する。
【0010】したがって、この発明にかかる非還元性誘
電体磁器組成物を積層セラミックコンデンサの誘電体材
料として用いれば、内部電極材料としてNiなどで代表
される卑金属材料を用いることができる。そのため、従
来のPdなどの貴金属を用いたものに比べて、特性を落
とすことなく、大幅なコストダウンを行うことが可能と
なる。
【0011】この発明の上述の目的,その他の目的,特
徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳
細な説明から一層明らかとなろう。
【0012】
【実施例】出発原料として、不純物として含まれるアル
カリ金属酸化物の含有量が異なるBaTiO3 ,Ba/
Tiモル比補正のためのBaCO3 ,希土類酸化物,C
2 3 ,MnO,MgOを準備した。これらの原料を
表1に示す組成割合となるように秤量して、秤量物を得
た。なお、試料番号1〜23については、アルカリ金属
酸化物の含有量が0.03重量%のBaTiO3 を使用
し、試料番号24については、アルカリ金属酸化物の含
有量が0.05重量%のBaTiO3 を使用し、試料番
号25については、アルカリ金属酸化物の含有量が0.
07重量%のBaTiO3 を使用した。
【0013】
【表1】
【0014】得られた秤量物に酢酸ビニル系バインダを
5重量%添加した後、PSZボールを用いたボールミル
で十分に湿式混合した。次に、この混合物中の分散媒を
蒸発、乾燥した後、整粒の工程を経て粉末を得た。得ら
れた粉末を2ton/cm2 の圧力で、直径10mm、
厚さ1mmの円板状にプレス成形して、成形体を得た。
【0015】次いで、このようにして得られた成形体
を、空気中において400℃で3時間保持の条件で脱バ
インダを行った後、H2 /N2 の体積比率が3/100
の還元雰囲気ガス気流中において、表2に示す温度で2
時間焼成し、磁器を得た。
【0016】
【表2】
【0017】得られた磁器の両面に、銀ペーストを塗布
して、焼き付けることにより、銀電極を形成してコンデ
ンサとした。そして、このコンデンサの室温における誘
電率ε,誘電損失tanδ,絶縁抵抗値(logIR)
および容量の温度変化率(TCC)を測定した。その結
果を表2に示す。
【0018】なお、誘電率ε,誘電損失tanδについ
ては、温度25℃、周波数1kHz、交流電圧1Vの条
件で測定した。また、絶縁抵抗値については、温度25
℃において直流電圧500Vを2分間印加して測定し、
その結果を対数値(logIR)で示す。さらに、温度
変化率(TCC)については、25℃の容量値を基準と
した時の−55℃,125℃における変化率(ΔC-55
/C25,ΔC+125/C25)および−55℃〜+125℃
の間において、容量温度変化率が最大である値の絶対
値、いわゆる最大変化率(|ΔC/C25max )につい
て示す。
【0019】表2から明らかなように、この発明にかか
る非還元性誘電体磁器組成物は、優れた特性を示す。
【0020】この発明において主成分および副成分の範
囲を上述のように限定する理由は次の通りである。
【0021】まず、主成分の範囲の限定理由について説
明する。
【0022】主成分であるBaTiO3 の構成比率を9
2.0〜99.4モル%とするのは、構成比率が92.
0モル%未満の場合には、希土類元素およびCo2 3
の構成比率が多くなるため、試料番号4に示すように、
絶縁抵抗値および誘電率の低下が生じ好ましくない。ま
た、BaTiO3 の構成比率が99.4モル%を超える
場合には、希土類元素およびCo2 3 の添加の効果が
なく、試料番号3に示すように、高温部(キュリー点付
近)の容量温度変化率が大きく(+)側にはずれ好まし
くない。さらに、BaTiO3 中のアルカリ金属酸化物
含有量を0.04%以下とするのは、0.04%を超え
ると、試料番号24および25に示すように、誘電率の
低下が生じ、実用的でなくなり好ましくない。
【0023】次に、副成分の範囲の限定理由について説
明する。
【0024】BaO添加量を0.2〜4.0モル%とす
るのは、添加量が0.2モル%未満の場合には、試料番
号9に示すように、雰囲気焼成中に組織が半導体化し、
絶縁抵抗値の著しい低下をまねくので好ましくない。ま
た、添加量が4.0モル%を超える場合には、試料番号
12に示すように、焼結性が低下するので好ましくな
い。
【0025】また、MnO添加量を0.2〜3.0モル
%とするのは、添加量が0.2モル%未満の場合には、
試料番号17に示すように、組織の耐還元性向上に効果
がなくなり、絶縁抵抗値の著しい低下をまねくので好ま
しくない。また、添加量が3.0モル%を超える場合に
は、試料番号15に示すように、絶縁抵抗値の低下が生
じるので好ましくない。
【0026】最後に、MgO添加量を0.5〜5.0モ
ル%とするのは、添加量が0.5モル%未満の場合に
は、試料番号18に示すように、容量温度変化率をフラ
ットにする効果がなく、特に低温側で(−)側にはずれ
る傾向があるとともに、絶縁抵抗値向上の効果もなくな
るので好ましくない。また、添加量が5.0モル%を超
える場合には、試料番号23に示すように、誘電率εお
よび絶縁抵抗値の低下が生じるので好ましくない。
【0027】なお、表2に示す特性データは、単板コン
デンサにおいて得られたデータであるが、同じ組成物を
シート成形し、チップ加工を行った積層コンデンサにお
いても、今回のデータとほぼ同等の結果が得られる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不純物として含まれるアルカリ金属酸化
    物の含有量が0.04重量%以下のBaTiO3 と、T
    2 3 ,Dy2 3 ,Ho2 3 ,Er2 3 の中か
    ら選ばれる少なくとも1種類の希土類酸化物(Re2
    3 )と、Co2 3 との配合比が、 BaTiO3 92.0〜99.4モル%、 Re2 3 0.3〜4.0モル%、および Co2 3 0.3〜4.0モル% の範囲内にある主成分100モル%に対し、 副成分として、 BaO 0.2〜4.0モル%、 MnO 0.2〜3.0モル%、および MgO 0.5〜5.0モル% を含有する、非還元性誘電体磁器組成物。
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