JP2954239B2 - 全血用簡易血液凝固能検査用具 - Google Patents

全血用簡易血液凝固能検査用具

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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の背景〕 <技術分野> 本発明はベッドサイド等で簡便に血液の凝固能を測定
することができる全血用簡易血液凝固能検査用具に関す
る。
<従来技術> 一般に血液凝固能が亢進して速く凝固する場合には、
例えば、手術後血栓を起こすおそれがあり、また、これ
が抑制されてなかなか凝固しない場合には手術部位から
の出血が長引くおそれがあり、いずれにしても生命に危
険を及ぼす。
特に人工心肺等の機械を用いて手術を行なう場合或は
人工透析を行なう場合等の血液を体外の機械に流すいわ
ゆる体外循環を行なう場合に、血液は、凝固し易いので
循環血液の凝固を防ぐ目的で使用される血液凝固防止剤
たるヘパリンを血液中に混入してその凝固を防いでい
る。
従って、手術する前、透析する前で未だヘパリンが投
与されていない血液や手術中又は人工透析中の血液にヘ
パリンを入れて循環させている血液の凝固能を測定し
て、その測定値又はその変動値をチェックして、血液凝
固系の抑制又は亢進からもたらされるおそれのある危険
を回避するようにしている。例えば、もしヘパリンが大
量に投与されて血液凝固系の抑制が期待以上であって、
出血が止まらないおそれがある場合には、ヘパリンを硫
酸プロタミンで中和する等の所要の処置をとる。
また、人工透析のための体外循環施行中等において、
ヘパリンによる血液凝固系の抑制が充分でない場合、回
路内凝固が起こるようなことのないように追加投与する
等の所要の処置をとる。
また、血液凝固能を検査する方法としては、プロトロ
ンビン時間(PT)、活性部分トロンボプラスチン時間
(APTT)、凝固因子定量、アンチトロンビンIII、プロ
テインC、血小板機能、出血時間等の検査法が知られて
おり、血液凝固系の異常はこれらの検査により、総合的
な判断がなされている。
これら従来の各々の検査は、例えば、PTは外因系凝固
系の異常を知る目的で検査され、APTTは内因系凝固系の
異常を知る目的で検査される。また、血小板凝集能は血
小板機能の異常を知る目的で検査され、出血時間は外傷
に対する止血機能を調べる目的で検査される。
一般的に血液凝固系は、血球(赤血球、白血球及び血
小板)成分と相互に密接な係わりを持ち、これらの総合
的体系のバランスにより、生理的な状態が保持されてい
る。血液凝固系の異常の有無は、人工透析、人工心肺等
の体外循環施行時における体外循環の凝固阻止或いは血
栓症等の治療の目的で抗凝固剤や抗血小板剤を適用する
場合等、確認しておかなければならない重要な検査項目
である。
従来、血液凝固系に作用する薬剤としては、例えば、
ヘパリン、クマリン系薬剤、メシル酸ガベキサート等の
蛋白分解酵素阻害剤等の血液凝固阻止剤、及びチクロピ
ジン、ジピリダモール、アスピリン、インドメタシン、
プロスタサイクリン等の抗血小板剤等が知られている。
また、現在開発中の低分子量ヘパリン(トロンボシス
リサーチ第40巻第597−607頁1985年発行、ハエモスタシ
ス第16巻第48−58頁1986年発行、ドラッグ オブ ツデ
イ第23巻第451−453頁1987年発行、特開昭59−187002
号、特開昭56−120704号、特公表昭56−500066号、特開
昭59−20302号、特開昭59−25802号、特開昭59−133202
号各公報等)等の薬剤も知られている。これらの薬剤
は、例えばヘパリン、低分子量ヘパリン、及びメシル酸
ガベキサートは人工透析、人工心肺等の体外循環施行時
における体外循環路の凝固阻止、或いは血栓症等の治療
の目的で使用されている。また、クマリン系薬剤及び抗
血小板剤は血栓症の治療及び予防の目的で使用されてい
る。抗血小板剤は、時に人工透析、人工心肺等の体外循
環施行時における体外循環路の凝固阻止のために単独
に、或いはヘパリンと併用して用いられる。
これらの血液凝固系に作用する薬剤を用いる際には、
過量投与等による出血或いは投与量の不足による凝固亢
進を起こすことのないように、適切な投与量を用いるこ
とが必要である。従って、血液凝固系に作用する薬剤を
用いる場合には、該薬剤の抗凝固効果をモニターするこ
とが必要である。
モニター法は、その薬剤の効果及びその持続を反映す
ること、いつでもどこでも簡単に行えること、結果が迅
速であり、その薬剤の投与量が調整できることが条件で
ある。モニターは、その薬剤の効果及びその持続を知る
ことが目的であって、効果や持続作用は、必ずしも薬剤
の血中濃度とは一致しない。血液凝固系は、個体差が大
きく、そのため血液凝固系に作用する薬剤の効果も個体
により著しく異なるためである。
このような理由から血液凝固系に作用する薬剤を臨床
で使用する場合、その薬剤の効果が一定範囲に保持され
ていることを確認出来ることが重要であり、通常、その
他の症状変化がない場合、治療方法の変更は行わない。
しかしながら、薬剤効果の予想以上の発現、過量投与に
よる出血の際の中和には、中和剤が直接、血液凝固系に
作用する薬剤と結合する等、薬剤と中和剤の物理化学的
反応が多く、薬剤の効果とは無関係である場合も多いた
め、適切な中和剤の投与量を決めるために、緊急に血中
濃度を調べる必要がある。この場合、迅速に、かつ真の
血中濃度を知ることが最も望ましいが緊急に危険を回避
するためには、中和剤の投与量を算出できる概略の血中
濃度を迅速に測定できることが重要となる。
これらの血液凝固系に作用する薬剤の抗凝固効果をモ
ニターする方法としては、例えば、ヘパリンについて
は、APTT、リー・ホワイト法、ACT、KCT、CCT等が、半
減期の短いメシル酸ガベキサート等の蛋白分解酵素阻害
剤にはCCTが、クマリン系薬剤にはPT、トロンボテスト
等の凝固時間測定法がある。また、抗血小板剤のモニタ
ーとしては、血小板凝集能をあげることができる。
これらのモニター法を用いて、その測定値が一定範囲
に入っていることを確認することにより、血液凝固系に
作用する薬剤の効果を知ることができる。なお、低分子
量ヘパリンについては、この薬剤がヘパリン類似物質で
あるため、感度の点で適切とは癒えないながらもヘパリ
ンのモニター法を用いている。
一方、血液中に投与されたこれらの血液凝固系に作用
する薬剤を治療目的程度の血中濃度範囲において分析定
量したり、薬剤効果の予想以上の発現、過量投与による
出血の際の中和の等の目的により該薬剤の血中濃度を測
定する方法としては、例えば、ヘパリン及び低分子量ヘ
パリンについては、アズールA法、合成基質法等があ
る。合成基質法による血中濃度測定キットとしては、テ
ストチーム「ヘパリン」(第一化学薬品)、或いは、ヘ
パリン療法モニタリング用試薬「BMY」(ベーリンガー
マンハイム山之内)等のキットが市販されている。ま
た、クマリン系薬剤、半減期の短いメシル酸ガベキサー
ト等の蛋白分解酵素阻止剤や抗血小板剤については、通
常、濃度の測定は行われていない。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、これらの検査方法は、全血を用いる方
法では抗凝固剤を用いず単に試験管中で検査が行われる
ため、検査誤差が大で、正確なモニタリングを行うこと
ができなかったり、血液凝固が早急に起こり、採血後直
ちに検査を実施しなければならないため、検査時期に融
通性が無く、検査時期が拘束される。
また、血漿を用いる方法では、検査時に特別な分析機
器、例えば遠心分離機や分光計等を必要とするため、採
血した血液をベッドサイドより検査室へ移送して、検査
をしなければならないため、手術中での血液凝固能の検
査に遅れが生じ易く、適切な手術を行ない難くさせてい
る。また、人工透析等の血液を体外循環させる場合にお
いても血液凝固能検査に遅れが生じ易いので、患者は安
心して体外循環を受けることができなかった。
更に、血液凝固防止剤として低分子量ヘパリンを用い
る場合については、ヘパリンのモニター法であるリー・
ホワイト法、APTT、ACT、KCT、CCT等を用いることがで
きるが、これらの値はいずれも抗トロンビン作用によっ
て大きく延長するため、これらの値を目安とする方法
は、抗トロンビン作用が弱く抗X a作用によって抗凝固
効果を発現する低分子量ヘパリンに対しては感度が鈍
く、従って、これらの方法はいずれも低分子量ヘパリン
のモニター法として適切とは言い難い。
〔発明の概要〕
<要旨> 本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ね
た結果、透明筒状容器内に凍結乾燥された血液凝固因子
とカルシウム化合物からなる薬剤を収納した簡易血液凝
固能検査用具を用いれば、臨床の現場であるベッドサイ
ドにて簡便、迅速かつ精度良く血液の凝固能を測定する
ことができるとの知見に基づき、本発明を完成するに至
った。
すなわち、本発明の全血用簡易血液凝固能検査用具
は、透明筒状容器と、該容器内への異物の混入を防ぐた
めの蓋部と、該容器内に収納される凍結乾燥された1容
器当たり、0.001〜0.2ユニットの血液凝固第X a因子及
び2〜60マイクロモルのカルシウム化合物からなる薬剤
とから構成されていること、を特徴とするものである。
<効果> 本発明の全血用簡易血液凝固能検査用具は、凍結乾燥
された血液凝固第X a因子とカルシウム化合物とからな
る薬剤を用いているために、長期間の保存に耐え、全血
を用いて検査できることから、ベッドサイドにて簡便、
迅速かつ精度良く、血液凝固能を測定することができる
ので、ベッドサイドで適切な凝固能抑制状態にコントロ
ールすることができ、血液凝固異常疾患に対する抗凝固
法や、手術中、或いは人工透析等の体外循環施行中に、
出血が止まらなくなったり、血液が凝固してしまうとい
ったことが無く、安心して、抗凝固療法、手術或いは血
液の体外循環を施行することができる。
また、血液凝固阻止剤として低分子量ヘパリンを用い
た血液においても血液凝固能を測定することができる。
〔発明の具体的説明〕
〔I〕 使用器具 本発明の全血用簡易血液凝固能検査用具は、透明筒状
容器と、該容器内への異物の混入を防ぐための蓋部と、
該容器内に収納された凍結乾燥された血液凝固第X a因
子とカルシウム化合物とからなる薬剤とから構成されて
いるものであるが、血液凝固能を測定するためには他の
薬剤や器具を必要とする。しかし、それらの他の薬剤や
器具は病院等で頻繁に使用されているものであることか
ら、それらを使用して検査を行なえば良い。
そのような検査器具としては、採血を行なうための注
射筒等の採血器具、採血した血液を凝固させ難くする抗
凝固剤、水、凝固時間を正確に測定する時計及び凝固条
件を一定にする温水浴、油浴等を用いた恒温器等であ
る。
〔II〕 採血 採血に際して溶液又は粉末の状態である抗凝固剤を予
め注射筒等の採血器具内に入れておき、これに血液を採
取するようにしてもよい。また、抗凝固剤を含まない注
射筒または他の採血器具等を用いて採血し、次いで予め
抗凝固剤を添加した試験管等の反応容器に注入してもよ
いし、もちろん採血後、抗凝固剤を添加することもでき
る。
このようにして、抗凝固剤が添加された全血は、凝固
が阻止されているので、必ずしも直ちに測定を開始する
必要はなく、検査時期を多少遅らせることができる。ま
た、抗凝固剤を用いない従来の凝固時間の測定では、採
血に要する時間及び採血後測定に移るまでの時間が測定
値に影響を及ぼし、誤差の一因となり得るが、抗凝固剤
を用いることによってこのような影響を排除することが
できる。また、全血を用いるため、遠心分離操作等血漿
成分の除去操作を要さず、従って、操作が簡便である
上、緊急時に速やかに対応することができる。
上記抗凝固剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム
又はカリウム、シュウ酸ナトリウム又はカリウム、エチ
レンジアミンテトラ酢酸(EDTA)塩等が用いられる。こ
れらは水溶液等の溶液で用いてもよいし、粉末、凍結乾
燥品として用いてもよい。また、例えばクエン酸ナトリ
ウムのように、その3.8%水溶液、3.2%水溶液、3.13%
水溶液といった既存の試薬から適宜選んでもよい。抗凝
固剤は採血後速やかに加えるのがよく、少なくとも凝固
開始剤よりも後に添加しないようにする。抗凝固剤の添
加量はその種類や凝固開始剤の種類、量とも関連して一
概にはいえない。しかし、検査法、測定法とも一回の操
作に全血を0.2〜1ml程度使用するので、一般に抗凝固剤
は、2〜60マイクロモル程度、凝固開始剤はカルシウム
として2〜60マイクロモル程度使用するのがよい。ま
た、血液凝固第X a因子は一般に0.001〜0.2ユニット程
度使用される。具体的にいえば、抗凝固剤としてクエン
酸アルカリ塩水溶液の場合であれば、全血との合計使用
量の約10容量%程度用いるのがよい。
〔III〕 全血用簡易血液凝固能検査用具 このようにして採血された血液は、そのまま本発明の
全血用簡易血液凝固能検査用具内に注入して検査される
のであるが、このような検査用具は、基本的に、透明筒
状容器と、該容器内への異物の混入を防ぐための蓋部
と、該容器内に収納された凍結乾燥された血液凝固第X
a因子とカルシウム化合物とからなる薬剤とから構成さ
れているものである。
(1) 透明筒状容器 上記透明筒状容器としては試験管、バイアルビン、ガ
ラスビン等が用いられる。それは、ガラス製でもプラス
チック製等でもよい。
(2) 蓋部 上記蓋部としては、異物の混入を防ぐためのものであ
ることからゴム製、プラスチック製、ガラス製等の各種
形状の蓋を使用することができる。
(3) 血液凝固第X a因子 上記薬剤を構成する凍結乾燥された血液凝固第X a因
子としては、活性化血液凝固第X a因子を単独で用いて
も、もしくは他の血液凝固因子と組み合わせて用いても
よく、これにより凝固塊の形成をより明瞭に確認するこ
とができる。
該血液凝固第X a因子は長期間一定なその活性を維持
するために凍結乾燥されたものであることが重要であ
る。この血液凝固第X a因子の凍結乾燥は、一般に−20
℃以下、好ましくは−40℃以下の温度にまで冷却して凍
結させ、1mmHg以下、好ましくは0.1mmHg以下の圧力にま
で減圧して水分を昇華させて乾燥させたものである。
また、このような凍結乾燥前の血液凝固第X a因子に
は、固体、または水溶液、或いは適当な緩衝液の溶液等
の液体を用いることもできる。また、更に、安定化剤、
賦形剤等を添加してもよい。緩衝液としては、トリスバ
ッファー、りん酸バッファー、イミダゾールバッファ
ー、バルビタールバッファー、オウレンのベロナールバ
ッファー等を用いることができる。pHは弱酸性から弱ア
ルカリ性とするが、その中でも血液のpHに近い7.3〜7.5
とするのが好ましい。
これらを凍結乾燥する前には水等に溶解して使用され
る。
(4) カルシウム化合物 前記薬剤を構成するカルシウム化合物としては、塩化
カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等のハ
ロゲン化カルシウム、りん酸のカルシウム塩、硝酸カル
シウム、重炭酸カルシウム等の無機酸カルシウム塩、蟻
酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アルギン酸、乳酸、グ
ルコン酸、グリセリン酸、グリセロリン酸等の有機酸の
カルシウム塩等の遊離カルシウム供与体等が挙げられ
る。
このカルシウム化合物の中でも塩化カルシウム、りん
酸のカルシウム塩(りん酸二水素カルシウム、りん酸三
カルシウム、りん酸水素カルシウム二水和物)、重炭酸
カルシウム、酢酸カルシウム一水和物等の遊離カルシウ
ム供与体のうちの1つまたはいくつかと血液凝固第X a
因子を組合わせたものが好ましく、中でも、塩化カルシ
ウムと血液凝固第X a因子とを組合わせたものが特に好
ましい。この組合わせを用いれば、ヘパリン、メシル酸
ナファモスタット、メシル酸ガベキサート等の血液凝固
阻止剤の簡便かつ精度の良いモニター及び簡易血中濃度
の測定が可能であり、更に、従来できなかった低分子量
ヘパリンについても測定することが可能である。
(5) 量比 前記薬剤中の血液凝固第X a因子とカルシウム化合物
の量比は、一般に血液凝固第X a因子1ユニットに対し
カルシウムとして10〜60,000マイクロモル、好ましくは
1ユニットに対し100〜600マイクロモルである。
また、このような薬剤は前記透明筒状容器に1回分づ
つ小分けされていることが好ましく、1容器当り、血液
凝固第X a因子が0.001〜0.2ユニット及びカルシウム化
合物が2〜60マイクロモルの量で収納されていることが
好ましい。
(6) 形状 さらに、このような薬剤を透明筒状容器に入れて凍結
乾燥したものは、第1図に示すような透明筒状容器1の
底部に薬剤3が白色結晶物として付着したものが得られ
る。このような形態の全血用簡易血液凝固能検査用具は
ゴム栓2が被せられているが逆さにしても薬剤3が容器
1の壁に分散して沈着することが無く、しかも、水で簡
単に再溶解し得るので水、生理食塩液、緩衝液等0.04〜
0.4mlを加えて再溶解させた後、測定に供する血液を注
入して振盪すれば均質に拡散させることができる。
このような全血用簡易血液凝固能検査用具はその10〜
100本程度を、仕切り部材や、スポンジ及び発泡スチロ
ール等の緩衝材を組み込んだ第2図に示すようなダンボ
ールケース4に収納したもの、或いは、必要により容器
に入れられた3.16〜16%、好適には3.2〜3.8%の濃度の
クエン酸ナトリウム溶液と、更にこれに注射筒とを組み
合わせてダンボールケースに収納したものを市販するこ
ともできる。
〔IV〕 血液凝固能検査 前記抗凝固剤を含む採血された血液を、上記全血用簡
易血液凝固能検査用具に注入して振盪させて混合するこ
とによって、該全血用簡易血液凝固能検査用具中の薬剤
と反応させて、血液の凝固が始まるまでの時間を測定す
る。
このような反応は約30〜40℃程度の加温下に行うのが
よく、従って、例えば透明筒状容器を37℃の湯浴中に30
秒間静止した後、10秒毎に取り出して傾斜させる等して
凝固塊の有無を観察し、凝固塊が生じるまでの時間を測
定する。また、血液及び血液凝固第X a因子とカルシウ
ム化合物とからなる薬剤、すなわち、凝固開始剤は、例
えば氷冷保存後に測定する場合等では必要に応じて測定
開始前に予備加温することもある。
このように、全血を用いて測定を行うため、遠心分離
操作等血漿成分の分取に要する時間を必要とせず、した
がって緊急時においても速やかに対処することができ
る。抗凝固剤が添加された全血は、凝固が阻止されてい
るので、必ずしも採取後直ちに測定を開始することを強
いられず、検査時間の融通が効く。抗凝固剤を用いない
従来の凝固時間、例えばリー・ホワイト全血凝固時間、
ACT、CCT等の測定では、採血に要する時間及び採血後測
定に移るまでの時間が測定値に影響を及ぼし、誤差の一
因になり得るが、抗凝固剤を用いることによりこのよう
な影響を排除できる。また反応のステップが単純であ
り、全血注入後、凝固塊が生じるまでの時間を測定する
だけであるため、複数のステップにより測定を行う従来
の方法に比して誤差を生じにくい。さらに、遠心分離
機、分光光度計、自動分析装置等を必要とせず、検査室
でなく、いつでもどこでも、例えばベッドサイドでも検
査することができる。
なお、本検査用具を各種自動分析装置を用いて測定す
ることも可能であり、人手を患わせることなく、客観的
に測定することもできる。
求められた血液凝固阻止剤等の血液凝固系に対する薬
剤の抗凝固能、或いは血中濃度は臨床効果を反映してお
り、また結果が迅速であるので、例えば不慮の出血に対
する緊急中和の際の中和剤投与量の決定等に非常に有用
である。
〔実施例〕
実施例1 (1) 全血用簡易血液凝固能検査用具 凍結乾燥された活性型血液凝固第X a因子0.04ユニッ
トと塩化カルシウム12.5マイクロモルとに0.2mlの水を
加えて溶解した混合溶液を、内径13mm、長さ100mmの透
明ガラス製試験管に入れて、−40℃に冷却して凍結さ
せ、0.05mmHgに減圧して凍結乾燥させた。
それによって、試験管底に白色の凍結乾燥物が付着し
たものが得られた。次いでこの試験管の口部にゴム製蓋
を被せて異物が内部に入らないようにして、本発明の全
血用簡易血液凝固能検査用具を製造した。
(2) 血液凝固能検査 低分子量ヘパリンを混入して血液循環させている人工
透析患者に、3.8%クエン酸ナトリウムを用いて採血
(3.8%クエン酸ナトリウム:血液=1:9)した全血1ml
を、ベッドサイドで、予め前記全血用簡易血液凝固能検
査用具のゴム蓋を取り外し、水0.2mlを加えて、活性型
血液凝固第X a因子及び塩化カルシウムを溶解した試験
管中に注入した後、37℃にコントロールされた湯浴恒温
度器に漬けて時々取り出しておだやかに傾けながら凝固
塊の生成を観察した。
その結果、血液の凝固時間は人工透析施行前の測定値
の約2倍に延長し、透析中ほぼ安定して推移した。この
とき安全に人工透析の施行が可能であり、透析終了時に
回路内の残血や凝結塊の有無は認められなかった。
実施例2 健常人(n=5)より3.8%クエン酸ナトリウムを用
いて採血(3.8%クエン酸ナトリウム:血液=1:9)した
全血に、低分子量ヘパリンを最終濃度0.25、0.50、0.7
5、1.00U/mlとなるように添加した後、これを本発明の
全血用簡易血液凝固能検査用具を用いて実施例1と同様
の方法で血液の凝固能を測定した。
その結果を第3図に示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の全血用簡易血液凝固能検査用具の一実
施例の一部切り欠き側面図であり、第2図はそれをダン
ボール箱に30本収納した市販用の全血用簡易血液凝固能
検査用具セットの斜視図であり、第3図は血液中の低分
子量ヘパリン濃度と凝固時間との関係を示すグラフを示
す図である。 1……試験管、2……ゴム栓、3……薬剤。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−250364(JP,A) 特開 昭61−283869(JP,A) 特開 昭52−56993(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 33/86

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明筒状容器と、該容器内への異物の混入
    を防ぐための蓋部と、該容器内に収納される凍結乾燥さ
    れた1容器当たり、0.001〜0.2ユニットの血液凝固第X
    a因子及び2〜60マイクロモルのカルシウム化合物から
    なる薬剤とから構成されていることを特徴とする、全血
    用簡易血液凝固能検査用具。
  2. 【請求項2】凍結乾燥された血液凝固第X a因子とカル
    シウム化合物とからなる薬剤が、透明筒状容器の底部に
    付着されている、請求項1に記載の全血用簡易血液凝固
    能検査用具。
  3. 【請求項3】カルシウム化合物が、塩化カルシウム、臭
    化カルシウム、ヨウ化カルシウム等のハロゲン化カルシ
    ウム、りん酸のカルシウム塩、硫酸カルシウム、硝酸カ
    ルシウム、重炭酸カルシウム等の無機酸カルシウム塩、
    蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アルギン酸、乳酸、
    グルコン酸、グリセリン酸、グリセロリン酸等の有機酸
    のカルシウム塩から選ばれたものである、請求項1又は
    2項に記載の全血用簡易血液凝固能検査用具。
  4. 【請求項4】容器に収納した抗凝固剤の水溶液と組み合
    わせたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の全
    血用簡易血液凝固能検査用具。
  5. 【請求項5】血液凝固阻止剤として低分子量ヘパリンを
    投与した血液の血液凝固能を測定するために用いる、請
    求項1〜4のいずれかに記載の全血用簡易血液凝固能検
    査用具。
JP20417989A 1989-08-07 1989-08-07 全血用簡易血液凝固能検査用具 Expired - Fee Related JP2954239B2 (ja)

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