JP2948878B2 - 放送用通信装置 - Google Patents

放送用通信装置

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、複数の局間で信号伝送手段を介して音声信
号を伝送する放送用通信装置に関する。
〔従来の技術〕
近年、通信衛星やデジタル通信回線網(ISDN)等の信
号伝送手段を介しての複数の局間での通信が、公衆電話
衛星通信システム、電話会議システム等に多く実用され
ている。
特に、放送局においては、速報性、臨場感により演出
効果等を出すため、機動性を確保する必要があり、信号
伝送手段として、通信衛星やデジタル通信回線網(ISD
N)等が番組中継用に、そして、映像、音声の番組素材
の伝送に利用されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、衛星通信を利用する場合には、1つの地上局
から発した信号が、地上約36,000kmに位置している通信
衛星の中継器を介して他の地上局に伝送されるまでに、
電波の伝播速度に基づき往復路で約500msec(片方向路
で約250msec)の信号伝送遅延時間が生じる。
又、デジタル通信回線網(ISDN)を利用する場合に
は、離散的データ電送により、例えば、神戸−福岡間の
地上回線で往復約100msecの信号伝送遅延時間が生じ
る。音声というアナログ信号をデジタル信号に変換し
て、そのデジタル信号をパケットを介して伝送するわけ
であるが、その際に、データ送信タイミングに待ち時間
が生じて、離散的に電送せざるを得ないためである。
そして、これらの信号伝送遅延時間が問題となる場合
がある。
例えば、地上局A、B間で通信衛星を介して音声信号
を伝送する場合、A局側で発信された音声信号が衛星伝
送路を通じてB局側で受信され、B局側のスピーカを通
して相手側へ伝わる。
さらに、B局側のスピーカからの音声が同じくB局側
のマイクロフォンに廻り込み、再び前記衛星伝送路を介
してA局側に伝わり、A局側のスピーカから自分の発し
た音声が聞こえることになる。A局側で発信された音声
信号が送り返されるのである。
A局側のアナウンサは、自分が発した音声と、前記衛
星伝送路を往復してきた音声とを聞いて、タイミングを
図りながらアナウンスすることになるが、上述したよう
に伝送路の伝播時間に起因する遅延時間が約500msecあ
るため、極めて喋り辛く、さらには自然な会話が妨げら
れることになるのである。
又、番組中継地点に設けられた地上衛星送信局から、
通信衛星を介して放送局に設けられた地上衛星受信局へ
伝送される中継素材を番組素材として、前記放送局から
地上波で放送するように構成された通信衛星利用による
番組中継では、番組中継地点から発した信号は、上述し
たように片方向路で約250msecの信号伝送遅延を生じて
放送局に到達する。
放送局側のスタジオから番組中継地点への映像・音声
の送り返し信号は、中継地点で放送電波を受信してこれ
をモニターする(以下単に「送り返しモニター」と称す
る。)という方法がとられている。
この場合、特に、前記番組中継地点にいるリポーター
(以下単に「中継リポーター」と称する。)と、放送局
側のスタジオにいるアナウンサー(以下単に「局アナウ
ンサー」と称する。)が番組中で会話するような場合
に、前記信号伝送遅延に基づく送り返しモニター音声の
遅れが問題となる。
すなわち、前記番組中継地点の中継リポーターは、送
り返しモニターの音声をイヤホンで聞くことによって番
組の進行をモニターし、例えば、スタジオ側から局アナ
ウンサーが話し掛けてきたような場合に、マイクロフォ
ンに向かって、その話し掛けに返答するのである。
自分の発した声が地上衛星送信局から通信衛星を介し
て地上衛星受信局へ伝送され、これが放送局において番
組として放送されるのである。
放送された番組を送り返しモニターする場合、自分自
身の発した声が前記信号伝送遅延時間約250msecだけ遅
れて(地上放送波の伝播時間は無視する)、自分自信の
耳に聞こえてくることになり、上述と同様に非常に喋り
辛く、自然な会話が妨げられる原因となる。
前記信号伝送遅延時間が50msec遅れた場合、生理的に
スピーチが困難となり、この遅れが100msec以上となる
と極めて困難となるという実験結果を得ている。
又、逆に自分自身の発した音声を10msec程度遅延させ
てイヤホンに送り返すと、遅延時間なしに送り返すより
も、喋り易いという実験結果も同時に得ている。
ところで、仮に送り返しモニターしないで番組を進行
すると、局アナウンサーの呼掛けが聞こえないため会話
が不可能となる。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、そ
の目的は、通信衛星等の信号伝送手段を介しての音声信
号の伝送による局面での通話時に、喋り易い状態で、自
然な通話を可能とする放送用通信装置を提供することに
ある。
〔課題を解決するための手段〕
この目的を達成するため本発明による放送用通信装置
の特徴構成は、発信局に、マイクロフォンからの音声信
号を送信器へ伝達する前置増幅回路の出力信号と、予め
設定した閾値レベルとを比較する比較手段と、前記比較
手段の出力信号に基づいて、前記前置増幅回路の出力信
号が前記閾値レベル以上のときには、受信器により受信
された音声信号を予め設定したレベルに減衰して出力
し、且つ、前記前置増幅回路の出力信号が前記閾値レベ
ルより低いときには、前記受信器により受信された音声
信号を減衰せずに出力する可変減衰回路と、前記可変減
衰回路の出力信号と前記前置増幅回路の出力信号とを合
成した出力信号をスピーカに出力する加算回路とを備え
てあることにある。
前記加算器で合成する前記前置増幅回路の出力信号を
予め設定された遅延時間だけ遅延させる遅延回路を備え
てあることが好ましい。
前記信号伝送手段が、通信衛星であることが好まし
い。
前記信号伝送手段が、デジタル通信回線網であること
が好ましい。
〔作 用〕
つまり、比較手段は、発信局からマイクロフォンを通
して発信される音声信号が閾値以上であるときが発信タ
イミングであることを検出する。
その間は、可変減衰回路が、発信局から発信される音
声信号であって、受信局を経由して発信局の受信器によ
り受信される音声信号に対して、その音声信号を完全に
遮断せず、予め設定した量に減衰する。
加算回路が、減衰された音声信号に前記マイクロフォ
ンを通して発信される音声信号を側音として合成してス
ピーカに出力する。
受信局を経由して発信局の受信器で受信される音声信
号は、聴感上マスキングされ、ほとんどスピーチに支障
を生じない。また、受信局側から発信される音声をある
程度聞こえる状態に保つレベルに前記可変減衰回路を調
節することで、両者の会話に支障が生じることはない。
一方、発信タイミングでない場合には、受信した音声
信号を減衰しないでスピーカに出力するから、受信局側
から発信される音声は明瞭に聞きとれる。
さらに、マイクロフォンからの音声信号、即ち自分自
身の発した声を、予め設定された遅延時間だけ遅延させ
て、前記加算回路により側音として合成してスピーカに
出力することによって、先の実験結果に示すように、喋
りやすくなる。
前記信号伝送手段が、空間の伝播速度に起因する遅延
が生じる通信衛星である場合に有効に利用できる。
前記信号伝送手段が、リアルタイムに伝送するアナロ
グ信号と異なり、離散的に伝送することで遅延が生じる
デジタル通信回線網である場合に有効に利用できる。
〔発明の効果〕
したがって、本発明による放送用通信装置では、従来
の装置構成を大幅に変更しなくても、通信衛星等の信号
伝送手段を介しての音声信号の伝送による局間での通信
時に、喋り易い状態で、自然な通話を行うことが可能に
なった。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第6図に示すように、放送システムの一例として、放
送局と、番組中継地点に設けられた地上衛星送信局と、
それら間に介在する信号伝送手段(17)としての通信衛
星(17)とで放送用通信装置が構成される。
放送局側に地上衛星受信局(16)を設けて、番組中継
地点に地上衛星送信局(8),(9)を設けてある。
番組中継地点の中継リポーターがマイクロフォン
(1)に発した音声は、カメラ(18)による映像信号等
と共に合成され、中継素材として、地上衛星放送局
(8),(9)から通信衛星(17)を介して前記地上衛
星受信局(16)に、約250msecの信号伝送遅延時間の遅
れをもって伝送される。
この中継素材は、放送番組の番組素材として放送局か
ら送信アンテナ(19)を介して地上放送波として放送さ
れる。
一方、番組中継地点では、前記地上放送波を受信器
(10)で受信した放送中の音声信号をスピーカ(6)に
より送り返しモニターすることができるように構成して
ある。
前記中継リポーターは、前記スピーカ(6)の音声を
モニターしながら番組の進行を監視しつつ、局アナウン
サーと会話する。
第1図に示すように、前記中継アナウンサー自身の発
した声は、マイクロフォン(1)から音声信号として入
力され、端子(12)から前置増幅器(2)で適宜増幅さ
れた後に端子(13)から出力され、送信器(8)の送信
アンテナ(9)から通信衛星に向けて送信される。
第5図(a)に示すように、前記前置増幅器(2)の
出力信号は、比較手段(3)としてのレベル検出回路
(3)に入力され、予め設定された閾値レベルを基準と
して、音声レベルが前記閾値レベル以上である時間間隔
だけ、第5図(b)に示すように“H"レベルの制御信号
を出力するように構成されている。
又、アンテナ(11)を通して受信器(10)で受信され
た放送波の音声信号は、端子(15)から入力され、可変
減衰回路(4)に入力される。この可変減衰回路(4)
は、前記レベル検出回路(3)の制御出力信号が“H"レ
ベルの場合に、予め設定した量だけ前記端子(15)から
入力された音声信号のレベルを減衰し、前記制御出力信
号が“L"レベルの場合に、減衰しない状態に動作する。
この可変減衰回路(4)の信号出力と、前記前置増幅
回路(2)の出力信号が、加算回路(5)で合成され、
端子(14)からスピーカ(6)に出力される。
〔別実施例〕
第2図に示すように、上述の構成において、減衰回路
(4)の信号出力と合成される前記前置増幅回路(2)
の信号出力を、予め設定した遅延時間だけ遅延させる遅
延回路(7)を設けて構成してもよい。この場合は、さ
らに喋り易くなる。
第3図に示すように、前記可変減衰回路(4)は、リ
レー(4a)と半固定抵抗減衰器(4b)で構成してもよ
い。
第4図に示すように、可変減衰回路(4)は電圧制御
減衰器(Voltage Controlled Attenuater)であっても
よい。
この場合、レベル検出回路(3)の制御出力信号は、
第5図(c)に示すように“H"レベルから“L"レベルに
遷移する時間に一定の時定数tを持たせて、指数関数的
に減少させるようにすれば聴感上の違和感を軽減するこ
とができる。
先の実施例では、信号伝送手段として通信衛星を用い
た場合を説明したが、第7図に示すように、信号伝送手
段としてデジタル通信回線網を用いた場合であってもよ
い。尚、第7図は、例えば野球の実況放送を行う場合を
例示するものであって、アナウンサーからの音声信号と
集音マイクからの音信号とがデジタル通信回路(ISDN回
線)(17)を通してラジオマスターに伝達され、そし
て、そのラジオマスターでの放送内容が、デジタル通信
回線(17)を通してアナウンサーに送り返されるように
なっている。
先の実施例では、信号伝送手段による遅延について述
べているが、本放送用通信装置は、遅延の原因がこれら
に限定されるもののみに使用されるものではなく、他の
原因で遅延が生じるときにも使用することができる。
例えば、他局からの番組素材を自局の番組素材に切換
えて接続する場合に、他局からの映像信号と自局の映像
信号を同期をとって接続するために、フレームシンクロ
ナイザ(FS)を用いて接続するが、このときに、映像信
号と音声信号が、一般のTV受像機の場合、最大30ms映像
信号が遅れることになる。
第8図に示すように、自局のニューススタジオ、自局
のTVマスタ、他局のニューススタジオ等で複数回にわた
りフレームシンクロナイザ(FS)が用いられることがあ
るが、これにより音声信号が映像信号より進むことにな
り、映像と音声がずれることになる。
これを解消するために、音声信号を映像信号に合致さ
せる遅延増幅器(DA)が前記音声信号に対して用いられ
る。
この遅延増幅器(DA)により音声が遅延することで、
上述した問題と同様の問題が生じるのである。
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にする
為に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構
造に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明に係る放送用通信装置の実施例を示し、第
1図はブロック構成図、第2図、第3図、及び第4図は
本発明の別実施例を示すブロック構成図、第5図はレベ
ル検出回路の動作を説明するための概略図、第6図は信
号伝送手段が通信衛星である場合の全体構成図、第7図
は信号伝送手段がデジタル通信回線網である場合の全体
構成図、第8図は音声信号の遅延発生装置の全体構成図
である。 (1)……マイクロフォン、(2)……前置増幅回路、
(3)……比較手段、(4)……可変減衰回路、(5)
……加算回路、(6)……スピーカ、(8)……通信
器、(10)……受信器、(17)……信号伝送手段。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H04H 1/00 H04B 1/38 H04B 7/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の局間で信号伝送手段(17)を介して
    音声信号を伝送する放送用通信装置において、 発信局に、マイクロフォン(1)からの音声信号を送信
    器(8)へ伝達する前置増幅回路(2)の出力信号と、
    予め設定した閾値レベルとを比較する比較手段(3)
    と、 前記比較手段(3)の出力信号に基づいて、前記前置増
    幅回路(2)の出力信号が前記閾値レベル以上のときに
    は、受信器(10)により受信された音声信号を予め設定
    したレベルに減衰して出力し、且つ、前記前置増幅回路
    (2)の出力信号が前記閾値レベルより低いときには、
    前記受信器(10)により受信された音声信号を減衰せず
    に出力する可変減衰回路(4)と、 前記可変減衰回路(4)の出力信号と前記前置増幅回路
    (2)の出力信号とを合成した出力信号をスピーカ
    (6)に出力する加算回路(5)とを備えてある放送用
    通信装置。
  2. 【請求項2】前記加算器(5)で合成する前記前置増幅
    回路(2)の出力信号を予め設定された遅延時間だけ遅
    延させる遅延回路(7)を備えてある請求項1記載の放
    送用通信装置。
  3. 【請求項3】前記信号伝送手段(17)が、通信衛星であ
    る請求項1又は2記載の放送用通信装置。
  4. 【請求項4】前記信号伝送手段(17)が、デジタル通信
    回線網である請求項1又は2記載の放送用通信装置。
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