JP2947672B2 - 保護膜構造、磁気ヘッド及びサーマルヘッド - Google Patents

保護膜構造、磁気ヘッド及びサーマルヘッド

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JP2947672B2
JP2947672B2 JP18974292A JP18974292A JP2947672B2 JP 2947672 B2 JP2947672 B2 JP 2947672B2 JP 18974292 A JP18974292 A JP 18974292A JP 18974292 A JP18974292 A JP 18974292A JP 2947672 B2 JP2947672 B2 JP 2947672B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ヘッド、サーマル
ヘッド及び工具等の基材上に設けられた保護膜構造の改
良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来において、磁気ヘッド等の精密機器
を初め、サーマルヘッドから工具等に至るまで、これら
を構成する基材上に設けられた保護膜構造は、前記基材
との密着性を初め、その機械的強度及び耐摩耗性が常に
問題視されてきた。
【0003】例えば、熱転写式プリンターや熱感式プリ
ンターを構成するサーマルヘッドの例として、図10及
び図11に示すようなサーマルヘッドの例を挙げる。図
10は従来のサーマルヘッドのガラスグレーズ蓄熱層付
近の要部拡大断面図であり、図11は、図10のC’部
分の拡大図である。図10及び図11に示すように、従
来のサーマルヘッドはアルミナ基板1上に部分的にガラ
スグレーズ製の蓄熱層2が形成され、この蓄熱層2の上
には発熱抵抗体層3が形成されているものである。そし
て、この発熱抵抗体層3の上には、この層3に電流を供
給するための導体層4が形成され、この導体層4上には
これらの層を酸化並びに摩耗から保護するための保護層
5が積層されている。
【0004】そして、上記発熱抵抗体層3をなす材料と
しては、窒化タンタル(Ta2N)、Ta−Cr−N、
Ta−SiO2等を、導体層4をなす材料としてはアル
ミニウム、Ni−Cr/Au等を、保護層5をなす材料
としてはSiO2/Ta25、サイアロン(SiAlO
N)等を例示することができる。
【0005】上記のような構成からなる従来のサーマル
ヘッドは、インクリボンあるいは感熱紙などの記録媒体
に接した状態で使用される。そして、サーマルヘッドの
発熱部に電流を印加して発熱させるとインクリボンのイ
ンクを熱転写したり、記録媒体を発色させることができ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したような前記従
来のサーマルヘッドは、アルミナ基板1上に積層された
各積層膜を酸化、摩耗から保護するために、保護膜5が
形成されているが、この保護膜5はSiO2/Ta
25、サイアロン等から形成されており、前記サイアロ
ンの硬度は、Hv=1500程度と充分に高いわけでは
なくc(立方晶)−BN等に比較すると1/2〜1/4
程度と小さく、記録媒体に紙としての硬度の比較的大き
いサーマル紙(記録媒体)等を使用すると、前記サーマ
ルヘッドの媒体対向面の耐摩耗性効果が劣るといった問
題を有していた。そこで、従来においては、その媒体対
向面の耐摩耗性の向上を図るために、前記保護膜5を5
μm程度と非常に厚く形成することで、前記媒体対向面
の耐摩耗性問題の対策を図っていたが、高速印字等の技
術的開発又は、サーマルヘッド本体の小型化及び薄型化
への改良が進む中で効率的な問題対策とはなっていなか
った。
【0007】さらに近年においては、前記サーマルヘッ
ドに限らず、前記従来の多種にわたる磁気ヘッド分野に
おいても、その媒体対向面の耐摩耗対策について、多方
面から様々な研究開発がなされており、磁気ヘッドの媒
体対向面の保護膜について各種の開発が進められてい
る。
【0008】例えば、磁気テープを磁気記録媒体とする
場合の磁気ヘッドの例として、図12に示すメタルイン
ギャップ(以下MIGと略称する)型を例に挙げると、
このMIG型の磁気ヘッドは、一対のフェライト製の磁
気コア半体10、10の側部に凸部10a、10aを形
成し、この凸部10a、10aを覆うようにメタル磁性
膜12、12とギャップ層12Aを形成し、磁気コア半
体10、10をガラス層13で接合してなる構造からな
っており、このような磁気ヘッド装置を長時間使用する
と、磁気ヘッド本体のテープ摺接面14に機械的摩耗が
生じたり、また、磁気テープに含まれる化学成分(例え
ば塩素)によって、テープ摺接面14に腐食が起こり、
これによりテープ摺接面14に摩耗現象が発生し、磁気
特性の劣化を生じる問題を有していた。
【0009】そしてさらに、この磁気テープの摺動によ
るテープ摺接面14の摩耗量は、一定ではなく、テープ
摺接面14の磁気コア部分は摩耗量が少なく、その他の
部分の摩耗量が前記磁気コア部分よりも多いなど偏摩耗
を生じ易く、スペーシングロスが発生して、磁気ヘッド
の磁気特性の劣化につながるといった問題を有してい
た。
【0010】また、磁気ディスクを磁気記録媒体とする
場合には、図13に示すように、磁気ディスク15上を
磁気ヘッド16が浮上走行することによって、磁気ディ
スク15の信号の読み取り書き取りを行なうものであ
り、この磁気ヘッド16を浮動式磁気ヘッドと称してい
るが、この磁気ヘッド16の停止状態と浮上走行状態
は、磁気ディスク15の起動時において、磁気ヘッド1
6はそれ自体を支持するばね板部材16aのばね圧によ
り磁気ディスク15表面に押し付けられた状態になって
いる。そして、この状態から磁気ディスク15が回転を
開始すると、前記磁気ヘッド16は回転する磁気ディス
ク15に接触したまま摺動する。よって、磁気ディスク
15の回転速度の向上に伴い、磁気ディスク15の表面
に生じた気流による揚力が上昇し、この揚力が磁気ヘッ
ド16に対する前記ばね圧に打ち勝つと、前記磁気ヘッ
ド16は穏やかに磁気ディスク15表面から上昇して、
磁気ヘッド16の形状と、ばね圧と磁気ディスク15の
周速とにより決定される浮上高さを保ちつつ、磁気ディ
スク15に対して浮上走行する。このような磁気ヘッド
16の浮上走行と停止接触状態の原理のことをCSS
(コンタクト スタートストップ)と称している。
【0011】すなわち、磁気ヘッド16は、磁気ディス
ク15の回転開始時点から磁気ヘッド16の浮上開始時
点までは、ばね圧で押えつけられながら磁気ディスク1
5表面を擦り付けることになる。このため従来、前記磁
気ディスク15表面あるいは磁気ヘッド16の媒体対向
面が摩耗したり、場合によっては摩擦力が異常に上昇し
て磁気ディスク15の表面破壊(クラッシュ)を起こ
し、磁気ディスク15の記録内容の書き取り読み出しが
できなくなる問題を有していた。さらに、磁気ヘッド1
6と磁気ディスク15の摩擦力が異常に上昇して磁気デ
ィスク15の回転トルク以上になると、もはや磁気ディ
スク15は回転しなくなり、磁気記録装置の故障につな
がる恐れもあった。
【0012】従って、以上説明したように、上述したよ
うな前記従来の各種の磁気ヘッドにおいては、磁気ヘッ
ドの磁気記録再生時における磁気記録媒体対向面との摺
動、又は浮動式ヘッドにおける浮上走行開始時までの摺
動により発生する磁気ヘッドの媒体対向面の摩耗による
磁気記録特性の劣化が問題視されていた。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】そこで、以上説明したような磁気ヘッドに
おいては、その基材上に設けられた保護膜を硬度の高い
窒化ホウ素(以下BNと略称する)膜で形成することに
よりその表面硬度の耐摩耗性の改善を試み、上記課題の
解決を試みることが考え出された。
【0018】例えば、上述した前記従来の磁気ヘッドに
おいては、その媒体対向面にBNからなる保護膜を設け
ることにより、その媒体対向面の耐摩耗性を向上させ、
その磁気記録特性の向上を図る。又、サーマルヘッドに
おいてもその保護膜に、硬度の高いBNを使用すること
により、記録媒体の摺動による媒体対向面の耐摩耗性の
向上を図ろうとしたものである。
【0019】しかし、前述したように、磁気ヘッドの媒
体対向面に設けられたBNからなる保護膜は、かなりの
高硬度を有するBN膜を、前記下地層上に薄膜形成技術
等によって薄く形成することから、そのBN膜内部に非
常に大きな内部応力が発生し、前記BNからなる保護膜
と下地層との密着性が不良になるといった問題を有して
いた。
【0020】そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなさ
れたもので、機械的強度の大きいBN膜からなる保護
の下地層に、前記保護と密着性の良好な炭素からなる
アモルファス層を設け、さらにこの下地層及び前記Mn
-Zn等からなる基材と密着性の良好なSi、Ti、Z
、Vからなる群から選ばれた1種又は、2種以上の元
素からなる中間層を、前記下地層と基材の間に設けた積
層構造からなる保護膜構造を形成し、これを基材上に設
けることにより、基材と中間層と下地層と保護層との相
互密着性のバランスを良好として基材との密着性の良好
な保護膜構造を提供することを目的とし、サーマルヘッ
ドの媒体対向面、磁気ヘッドの媒体対向面等の耐摩耗性
の向上を図るとともに、この保護膜構造を工具等のよう
な長期間の使用による表面摩耗が激しく、その耐摩耗性
の対策が問題視される分野においても、本願発明による
保護膜構造を適用し、その表面の耐摩耗性の向上を図る
ことを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の保護膜
構造は、上記課題を解決するために、Mn−Znフェラ
イト等の基材上に設けられた窒化ホウ素からなる保護層
を具備する保護膜構造であって、前記窒化ホウ素からな
る保護層の下地層に、炭素を主成分とするアモルファス
層が設けられ、前記下地層と基材の間にSi、Ti、Z
、Vからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
からなる中間層が形成されてなることを特徴とするもの
である。
【0022】請求項2に記載の保護膜構造は、上記課題
を解決するために、請求項1に記載の保護層が立方晶窒
化ホウ素と六方晶窒化ホウ素の2層構造からなることを
特徴とするものである。請求項3に記載の磁気ヘッド
は、上記課題を解決するために、Mn−Znフェライト
等の基材上に設けられた窒化ホウ素からなる保護層を具
備する保護膜構造であって、前記窒化ホウ素からなる保
護層の下地層に、炭素を主成分とするアモルファス層が
設けられ、前記下地層と基材の間にSi、Ti、Zr、
Vからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素から
なる中間層が形成されてなる保護膜構造を有することを
特徴とする。 請求項4に記載の磁気ヘッドは、上記課題
を解決するために、請求項3に記載の保護層が立方晶窒
化ホウ素と六方晶窒化ホウ素の2層構造からなることを
特徴とするものである。 請求項5に記載のサーマルヘッ
ドは、上記課題を解決するために、Mn−Znフェライ
ト等の基材上に設けられた窒化ホウ素からなる保護層を
具備する保護膜構造であって、前記窒化ホウ素からなる
保護層の下地層に、炭素を主成分とするアモルファス層
が設けられ、前記下地層と基材の間にSi、Ti、Z
r、Vからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素
からなる中間層が形成されてなる保護膜構造を有するこ
とを特徴とする。 請求項6に記載のサーマルヘッドは、
上記課題を解決するために、請求項5に記載の保護層が
立方晶窒化ホウ素と六方晶窒化ホウ素の2層構造からな
ることを特徴とするものである。
【0023】
【作用】従って、本願発明の保護膜構造と磁気ヘッドと
サーマルヘッドは、充分な硬度を有する窒化ホウ素から
なる保護層の下地層に、前記保護層と密着性の良好な炭
素を主成分とする下地層を設け、さらにこの下地層と基
材との間には、前記下地層及び基材との両者との密着性
の良好なSi、Ti、Zr、Vからなる群から選ばれた
1種又は2種以上の元素からなる中間層が設けられてい
ることから、本願発明の保護膜構造と磁気ヘッドとサー
マルヘッドは、前記基材と前記保護膜構造の間の密着性
の向上を図るとともに、前記保護層の耐摩耗性の向上を
図ることが可能である。
【0024】さらに、前記保護層を立方晶の窒化ホウ素
と六方晶の窒化ホウ素の2層構造から構成することによ
って、下地層と保護層との間でミクロなレベルでの結合
状態の整合性を良好にすることができるので、内部応力
を緩和できると同時に、保護層との密着力を向上させる
ことができる。
【0025】
【実施例】以下に、本願発明の保護膜構造を利用したサ
ーマルヘッドについて、図面を参照しながら詳細に説明
する。 (実施例1)図1〜図3は、本発明の保護膜構造を利用
した本実施例1のサーマルヘッドを示すものである。
【0026】以下に本願発明の保護膜構造を利用した本
実施例1のサーマルヘッドの詳細構造について図1〜図
3を参照して説明する。図1は本実施例1のサーマルヘ
ッドのガラスグレーズ蓄熱層付近の要部拡大断面図であ
る。本実施例1のサーマルヘッドは、図1及び図3に示
すようにアルミナ基板1とこの基板1上に部分的に形成
された断熱のためのガラスグレーズ蓄熱層2と、この上
に形成されたアンダーコート発熱印字のための発熱抵抗
体層3と、印字のために外部より電力を供給することに
用いる導体層4と、これらを保護する積層保護膜Dとか
らなる。
【0027】そして、図3は図1のC部分の積層膜Bの
詳細構造の例を示している。積層膜Bの積層構造は、ガ
ラスグレーズ蓄熱層2上に厚さ数百Åから数千Å程度の
TaSiO2、TaCrN等からなる発熱抵抗体層3が
形成されており、この発熱抵抗体層3上には膜厚2〜3
μm程度のAl等からなる導体層4と、この導体層4上
には厚さ1〜2μm程度のSiO2、SiN、SiON、
サイアロンなどからなる第一保護層30が設けられてい
る。そしてさらに、この第一保護層30上には、Si等
からなる厚さ10〜200Å程度の中間層31、そし
て、前記中間層31上には、ダイヤモンド状カーボンか
らなる膜厚20〜200Å程度の下地層32が形成され
ている。そしてさらに、この下地層32上には、厚さ数
百Å〜数千Å程度のc−BN膜からなる保護層33が積
層されている。
【0028】つまり、上記のような構成からなる積層膜
Bを有するサーマルヘッドと、図10に示す積層膜C’
を有する従来のサーマルヘッドの異なるところは、第一
保護層30上にSiからなる中間層31、ダイヤモンド
状カーボンからなる下地層32、c−BN膜等からなる
保護層33が積層されているところである。
【0029】従って、本発明の保護膜構造を適用した実
施例1のサーマルヘッドは、第一保護層30とc−BN
からなる保護層33との間に、Siからなる中間層31
とタイヤモンド状カーボンからなる下地層32を設ける
ことによって、第一保護層30と中間層31と保護層3
3間及び下地層32と保護層33間それぞれの密着力を
向上させ、サーマルヘッドのインクリボン域は、紙とし
て比較的硬度の大きいサーマル紙との相対的な走行に伴
い発生するサーマルヘッドの保護の摩耗量についても、
これを著しく低減させて、その寿命を飛躍的に改善する
ことが可能である。
【0030】なお、前記サーマルヘッドのサイアロンか
らなる第一保護層30とSi、Ti、Zr、Vからな
る群から選ばれた1種又2種以上の元素からなる中間層
31との密着性が良好な理由は、この第一保護層30を
形成しているサイアロン中の酸素とSi、Ti、Zr
が結び付き酸化物を作り易いためであり、さらに、前
記中間層31と前記下地層32の密着性が良好な理由
は、前記中間層31のSi、Ti、Zr、VとCが結合
し炭化物を作り易いためであり、さらに、前記下地層3
2とBN膜からなる保護層33の密着性が良好な理由
は、BとCとが結合してB4Cなどの炭化物を作り易い
ためである。そしてさらに、前記サイアロンからなるサ
ーマルヘッドの第一保護層30と前記中間層31の密着
強度と、前記中間層31と前記下地層32の密着強度、
及び前記下地層32と保護層33とのバランスが良好で
あることが、本実施例1の媒体対向面に形成された中間
層31及び下地層32の密着性の強度、及び前記下地層
32と保護層33の密着性の確保を確実なものとしてい
る。
【0031】(製造例1)そこで、上述した実施例1の
サーマルヘッドの製造方法について、その詳細を以下に
説明する。まず、ガラスグレーズ蓄熱層2が施されたア
ルミナ基板1を用意し、このアルミナ基板1をランプヒ
ーターにより120℃の温度で加熱した後に、これをス
パッタ槽に収納し、Taに5〜15原子%Crを含有し
たターゲット板をターゲット電極とし、Arと窒素の混
合ガス雰囲気中で高周波スパッタリングを行ない、厚さ
500ÅのTa−Cr−Nからなる発熱抵抗膜3を形成
する。この時の成膜条件としては、全ガス圧0.8P
a、Ar/N2比率が流量比で95/5、RFパワー密
度3W/cm2である。
【0032】続いて、前記ガラスグレーズ蓄熱層2上に
前記Ta−Cr−Nからなる発熱抵抗膜3が形成された
アルミナ基板1を導体膜スパッタ槽に移して、5NAl
板をターゲット電極としAlからなる厚さ2μmの導体
層4を被膜した。この時の成膜条件としては、ガス圧
0.4Pa、DCパワー密度10W/cm2である。
【0033】次に、発熱ドット部に通電するための導体
パターンをレジストを用いて光で描画し、ベークを行な
って所望のものを形成し、Alに対するエッチング液を
用いてエッチングする。さらに、抵抗体パターンを上記
と同様な工程を経て形成し、ドライエッチング装置を用
いて、レジストをマスクとしてエッチング除去を行ない
所望の通電パターンを形成する。
【0034】その後、上記のように通電パータンが形成
されたアルミナ基板1に、第一保護層30、そして中間
膜31、下地層32、保護層33を同じスパッタ装置中
で連続して成膜する。以下に前記中間層31、下地層3
2及び保護層33の形成方法について説明する。まず、
上記のように通電パターンが形成されたアルミナ基板1
をヒーターで250℃で加熱させながらサイアロンから
なる板をターゲット電極とし、高周波スパッタリングを
行ない、サイアロンからなる第一保護層30を厚さ1μ
m程度に成膜する。この時の成膜条件はガス圧1Pa、
RFパワー密度5W/cm2である。
【0035】続いて、上記のように成膜された第一保護
層30上にSiからなる中間膜31、そして中間層31
上にダイヤモンド状カーボンからなる下地層32、下地
層32上にc−BNからなる保護層33を上記と同じス
パッタ装置中で連続して成膜することによって図3に示
すような積層保護膜D構造を有するサーマルヘッドaを
形成する。
【0036】また、前記第一保護層30にサイアロンの
代わりにSiO2を用いて、上記と同様に製造した保護
膜D構造を有するサーマルヘッドbを形成する。
【0037】なお、上記サーマルヘッドa及びbを製造
する際の各積層膜の形成条件の詳細を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】そこで、上記のような方法によって製造さ
れた実施例1のサーマルヘッドa及びbについて、以下
のようなサーマル紙に対する走行寿命試験及び印字寿命
試験を行なった。 (試験例1)走行寿命試験については、通常の熱転写プ
リンタによる印字と同じ圧接力で感熱紙にサーマルヘッ
ドを押し付けながら走行させ、前記サーマルヘッドの媒
体対向面側に形成された保護膜Dが摩滅する直前までの
距離について、前記従来のサーマルヘッドと、上述した
方法によって製造されたサーマルヘッドa及びbについ
て比較検討した。一方、印字寿命試験については、熱転
写プリンタに電力を印加して印字に不具合が生じる直前
までの印字数を、前記走行寿命試験と同様に前記従来の
サーマルヘッドと、上述した方法によって製造されたサ
ーマルヘッドa及びbについて比較検討した。上記走行
寿命試験及び印字寿命試験の結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】さらに、上記印字寿命試験については、熱
転写プリンタに電力を印加して印字を行なった際の、そ
の印字文字数に対する抵抗変化量/初期抵抗=ΔR/R
について、前記従来のサーマルヘッドと、上述した方法
によって製造されたサーマルヘッドa及びbについて比
較検討した。その結果を図4に示す。
【0042】上記の走行寿命試験及び印字寿命試験の結
果から、明らかに本実施例におけるサーマルヘッドは、
前記従来のサーマルヘッドに比較して、耐摩耗性及び長
寿命化が飛躍的に向上していることがわかる。
【0043】(実施例2)また、本発明の保護膜構造を
適用した本実施例2の磁気ヘッドについて、図5及び図
6を参照しながら詳細に説明する。図5及び図6は、本
実施例1の3レールタイプのモノリシックタイプの浮動
式ヘッドを示す図である。図5に示す浮動式ヘッドは、
セラミック材あるいはMn−Znフェライト材等からな
るスライダー40aの一端部にフェライト等の磁性材料
からなる磁気コア38を、非磁性材からなる充填ガラス
39でガラス溶着により形成されている。
【0044】そして、この3レールタイプの浮動式ヘッ
ドは、ギャップ部42の媒体対向面と、反対側のアペッ
クス部41にも充填ガラス39を用いて、磁気コア38
とスライダー40aとの接合強度を高めた構成からなっ
ている。そしてこうした構成からなる浮動式ヘッド本体
40の媒体対向面40Aの少なくとも前記スライダー4
0aに、Si、Ti、Zr、Vからなる群から選ばれた
1種又は、2種以上の元素からなる中間層43が設けら
れ、さらに、その上面にCを主成分とするアモルファス
層からなる下地層44が成膜され、さらに、この上面に
h(六方晶)−BN膜45a、そして、このh−BN上
にc−BN膜45bからなる保護層45が成膜されてな
るものである。なお、上述した実施例1の磁気ヘッドに
おいては、その保護層45をh−BN膜45a及びc−
BN膜45bから形成しているが、c−BN膜45bの
みで保護層45を構成しても良い。
【0045】上述した構成からなる本実施例1の浮動式
ヘッドの特徴は、その媒体対向面40A又はスライダー
40aに、前記組成からなる中間層43を介して、下地
層44を設け、この上にh−BN膜45a及びc−BN
膜45bからなる保護層45を設けたところである。
【0046】また、上述したような構成からなる本実施
例2の磁気ヘッドの例に示した浮動式ヘッドは、磁気デ
ィスクに対して記録再生を行なう場合、図7、図8に示
すように、磁気ディスク46に対して微小間隔をあけて
浮上走行しており、この浮上量は磁気記録の性能に大き
な影響を与える。つまり、この浮上量が大きければ大き
いほど浮動式ヘッドのギャップ部42と磁気ディスク4
6の磁性層との距離が大きくなって、磁気記録再生性能
の低下をもたらすものである。
【0047】よって、本実施例2のように、浮動式ヘッ
ドの媒体対向面40A又はスライダー40aの表面に中
間層43、下地層44及び保護層45を形成すると、こ
の中間層43、下地層44及び保護層45分の厚さだ
け、前記ギャップ部42と磁気ディスク46の磁性層と
の距離を大きくし、磁気記録性能の低下につながりかね
ない。従って、前記中間層43の厚さは、20Å程度、
下地層44の厚さは30Å程度の範囲で、また、前記保
護層45の膜厚は50〜150Å程度の範囲とし、積層
保護膜D’を構成する中間層43から保護層45の間の
層厚の総計は、150Å程度とすることが望ましい。
【0048】そしてさらに、前記浮動式ヘッドの中間層
43、下地層44及び保護層45の厚さ分と、磁気ディ
スク46の磁性層上面に被膜された保護膜等の膜厚を合
わせて約300Å程度とすることが好ましいとされてい
る。なお、前記磁気ヘッドの浮上量をさらに微小間隔に
すれば、その間隔が小さいほど、磁気記録性能を向上さ
せることができるが、例えば現在では前記浮動式ヘッド
47の浮上量は、1000Å程度であり、前記浮動式ヘ
ッド47の浮上量の微小間隔は、現在の技術レベルにお
いては、ある程度の限界が存在する。
【0049】よって、本実施例1の浮動式ヘッドのよう
に、その媒体対向面に中間層43及び前記下地層44介
して前記保護層45を設け、本実施例4の浮動式ヘッド
47と磁気ディスク46の間に、ある一定間隔に決めら
れた浮上量範囲を維持し、かつ前記浮動式ヘッド47の
ギャップ部42と磁気ディスク46の磁性層の間隔を確
保することによって、浮動式ヘッドにおける媒体対向面
40Aの耐摩耗性の向上を図り、前記浮動式ヘッドの浮
上安定性を確保し、CSS特性の向上を図ることによ
り、磁気記録特性の向上を可能することができる。
【0050】さらにまた、本実施例2の浮動式ヘッドに
おける前記中間層43、下地層44そして保護膜45の
各々の膜厚は、最低でも10Å〜50Å程度の範囲でな
いと、上記方法によって形成される膜が、不均一になり
易く、さらに薄いとアイランド状に形成されてしまうこ
とが推測される。そこで、前記保護層45は最低でも5
0Å以上であることが望ましいが、その下地層44は2
0Å程度として、故意にアイランド状に形成されること
を目的として、その上面に成膜される保護層45の内部
応力の緩和を図る手段とすることも一つの構成例として
考えられる。
【0051】従って、以上説明したように、本実施例2
の浮動式ヘッドは、浮動式ヘッド本体40の媒体対向面
40Aに、Si、Ti、Zr、Vからなる群から選ばれ
た1種又は2種以上の元素からなる中間層43を形成
し、この上面にダイヤモンド状カーボンやグラファイト
状カーボン等のCを主成分とするアモルファス層からな
る下地層44を設け、この下地層44上にBN薄膜から
なる保護層45を形成することによって、浮動式ヘッド
本体40の媒体対向面40Aと前記中間層43の密着
性、そして前記中間層43と下地層44、及び前記下地
層44と保護層45の密着性を確保することができ、さ
らには、前記積層保護膜D’の表面層となる保護層45
を、充分な硬度を有するBN薄膜で形成することによっ
て、前記浮動式ヘッド本体40の媒体対向面40Aの耐
摩耗性の向上を図り、磁気記録特性を良好なものとする
ことを可能としたものである。
【0052】また、上記構成からなる実施例2の浮動式
ヘッドの保護層45をc−BN膜とh−BN膜の2層構
造から構成することにより、保護層45と下地層44の
間で、ミクロなレベルでの結合状態の整合性を良好にす
ることができるので、内部応力を緩和できると同時に、
保護層45との密着力を向上させることができる。
【0053】なお、前記磁気ヘッド本体40を形成する
Mn−Znフェライトと、Si、Ti、Zr、Vからな
る群から選ばれた1種又2種以上の元素からなる中間層
43との密着性が良好な理由は、このMn−Znフェラ
イトを形成しているMnOやZnO及びFe23の酸素
とSi、Ti、Zr、Vが結び付き酸化物を作り易いた
めであり、さらに前記中間層43と前記下地層44の密
着性が良好な理由は、前記中間層43のSi、Ti、Z
、VとCが結合し炭化物を作り易いためであり、さら
に、前記下地層44とBN膜からなる保護層45の密着
性が良好な理由は、BとCとが結合してB4Cなどの炭
化物を作り易くなるためである。そしてさらに、前記M
n−Znフェライトからなる磁気ヘッド本体40の媒体
対向面40Aと前記中間層43の密着強度と、前記中間
層43と前記下地層44の密着強度、及び前記下地層4
4と保護層45とのバランスが良好であることが、本実
施例2の磁気ヘッド本体40の媒体対向面40Aに形成
された中間層43及び下地層44の密着性の強度、及び
前記下地層44と保護層45の密着性の確保を確実なも
のとしている。
【0054】また、上述した本実施例2の磁気ヘッド
は、Mn−Znフェライトからなる浮動式ヘッドについ
て示したが、Al23−TiC(アルチック)からなる
浮動式ヘッドにおいても、本実施例2と同様に、前記組
成からなる中間層43及び下地層44及び保護層45を
形成することで、前記Mn−Znフェライトからなる磁
気ヘッドと同様な効果を得ることが可能である。
【0055】Al23−TiCからなる浮動式ヘッドの
場合には、前記Al23−TiCと前記組成からなる中
間層43、そして前記中間層43と下地層44、前記下
地層44と保護層45の密着性を確保できる理由は、前
記中間層43の組成Si、Ti、Zr、Vと、この中間
層43成分と前記Al23−TiCは、Al23の酸素
と結び付いて酸化物を形成し易く、又、TiCのTi又
はCと結び付いて、チタン化物又は炭化物を形成し易い
ために、前記Al23−TiCと前記中間層43の密着
性を確保できるものであり、そして、前記中間層43と
下地層44、前記下地層44と保護層45は、上述した
Mn−Znフェライトの例で説明した理由と同じ理由
で、その密着性を確保することができるものである。
【0056】そして、このAl23−TiCからなる浮
動式ヘッドの場合も、前記磁気ヘッド本体40の媒体対
向面40AのAl23−TiCと中間層43の密着強
度、そして前記中間層43と下地層44の密着強度、前
記下地層44と保護層45の密着強度のバランスが良好
であることにより、磁気ヘッド本体40の媒体対向面4
0Aに形成された中間層43及び下地層44、そして保
護層45の密着性強度の確保を確実なものとしている。
【0057】以上説明した本実施例3の浮動式ヘッドに
おいては、前記浮動式ヘッドのスライダ40a表面は、
その摺動性を良好にするために鏡面加工がされている
が、上述した本実施例1の浮動式ヘッドは、この鏡面加
工により生成された加工変質層を除去することなく、中
間層43及び下地層44が形成された構成からなるもの
である。 (実施例3)そこで、本実施例3に上記実施例2の浮動
式ヘッドにおいて、そのスライダ40aに下地層36を
形成する前に、加工変質層の除去処理を行ない、これに
前記中間層43及び下地層44及び保護層45を設けた
実施例3の浮動式ヘッドについて説明する。
【0058】本実施例3の磁気ヘッドの製造工程は、図
5及び図6に示す実施例2の浮動式ヘッドのMn−Zn
フェライト等からなる媒体対向面40Aのスライダ40
aが、鏡面加工された後に、この鏡面加工によって形成
されたスライダ40aの加工変質層を除去し、この上面
に前記実施例2と同様に中間層43、そしてこの中間層
43の上面に下地層44を設け、この下地層44の上面
に保護層45を形成したものである。
【0059】よって、本実施例2の磁気ヘッドにおいて
は、浮動式ヘッドのスライダ40aの表面に形成された
加工変質層を除去することによって、前記浮動式ヘッド
本体40を形成するMn−Znフェライトと中間層43
との密着性を上記実施例2よりもさらに確実なものとす
ることができるとともに、このスライダ40a表面と中
間層43との密着強度、及び前記中間層43と下地層4
4との密着強度、前記下地層44と保護層45の密着強
度の向上を図り、その媒体対向面の耐摩耗性の向上を図
るとともに、磁気記録特性を良好なものとし、磁気ヘッ
ドの長寿命化を図ることが可能である。
【0060】なお、上述した本実施例3の浮動式ヘッド
においても、上述した実施例2の浮動式ヘッドと同様
に、Mn−Znフェライトからなる浮動式ヘッド及びA
23−TiCからなる浮動式ヘッドに同様に実施する
ことができる。
【0061】(製造例2)そこで、以上説明した構成か
らなる本発明の保護膜構造を採用した実施例3の浮動式
ヘッドの製造方法について、以下に説明する。まず、M
n−Znフェライトからなる磁気ヘッドスライダの媒体
対向面に形成された加工変質層をスパッタ等により除去
する。そして、前記加工変質層が除去された磁気ヘッド
の媒体対向面に中間層43及び下地層44、保護膜45
を同じスパッタ装置の中で連続して成膜する。
【0062】前記加工変質層が除去された磁気ヘッドの
媒体対向面をヒーターで100℃で加熱させながら、S
i板をターゲット電極とし、高周波スパッタリングを行
ない、Siからなる中間層43を厚さ20Å程度で成膜
した。この時の成膜条件はガス圧1Pa、RFバワー密
度0.5W/cm2である。
【0063】そして、上記のように成膜された中間層4
3上にダイヤモンド状カーボンからなる下地層44、そ
して前記下地層44上にc−BNからなる保護膜45を
上記中間層43と同じスパッタ装置中で、表3に示すよ
うな成膜条件の下で成膜されることによって上記実施例
3に示す浮動式ヘッドを完成する。
【0064】
【表3】
【0065】以上説明したように、上記実施例2及び実
施例3においては、3レールタイプの浮動式ヘッドを例
にあげているが、本願発明の保護膜構造は、薄膜磁気ヘ
ッドの媒体対向面、及びMIG(メタル イン ギャッ
プ)ヘッドの媒体対向面等、磁気テープを磁気記媒体と
して用いる磁気ヘッド等の媒体対向面に設けることによ
っても、前記実施例2及び3で示したような効果と同様
に、その耐摩耗性の向上を図ることが可能であり、磁気
記録特性の向上を図ることが可能である。
【0066】(参考例以下の参考例 は、の保護膜構造を磁気ディスクの表面
に形成したもので、図9(a)及び図9(b)に、参考
の磁気ディスクの構成を示す。図9(a)に示すよう
参考例の磁気ディスクは、中央部に透孔59が形成さ
れたAl、Al合金あるいはガラスなどからなる円盤状
の基板60と、この基板60の全面に被膜されたNi−
Pメッキ層61とからなる磁気ディスク基板Eが主体と
なり、磁気ディスク基板Eの前記Ni−Pメッキ層61
上に、図4(b)のような積層膜B”が形成されてい
る。
【0067】図9(b)に示す積層膜B”は、厚さ千数
百Å程度のCr膜63と、Cr膜63上に形成された厚
さ数百Å程度のCo−Cr合金、Co−Cr−Ni合
金、Co−Cr−Pt合金等Co系合金からなる磁性膜
64と磁性層64上に積層されたSi、Ti、Zr、V
からな群から選ばれた1種又2種以上の元素からなる中
間層65と、この中間層65上に、ダイヤモンド状カー
ボンやグラファイト状カーボン等のCを主成分とするア
モルファス層からなる下地層66、さらに、この下地層
66上面にBN薄膜からなる保護層67がIVD(イオ
ン蒸着薄膜形成)法により成膜されている。
【0068】IVD法とは、すでに知られているように
電子ビームによる加熱あるいはスパッタリングなどによ
って金属等を蒸発させ、基板上に蒸着膜を体積されると
同時に、適切なエネルギーに設定されたイオンを基板に
照射させて薄膜を形成する手法である。この際、イオン
種として窒素イオンや酸素イオンを用いれば、イオンの
エネルギーのみを使用した薄膜形成ができる。
【0069】これまで、CVD法(化学気相反応法)や
イオンプレーティング法などによって、窒化チタン(T
iN)薄膜をはじめとする各種耐摩耗コーティングが工
業的に広く応用されてきたのは周知の通りである。IV
D法は、それら薄膜形成法に比べ以下の特徴を有する。 照射イオンと蒸発金属原子の衝突・反跳により、両
者の混合相からなる混合層が基板/薄膜界面に形成さ
れ、薄膜は強固な密着性を有する。 照射イオンと蒸発金属の原子及び電子との衝突によ
って、蒸発金属の励起・移動が引き起こされる。その結
果、拡散、固溶という熱力学に支配される要因に関わり
なく、新物質の合成を設計することができる。 低温下で薄膜形成を行なうため、用いる基板種が限
定されない。 金属の蒸発とイオン照射とは独立して制御されるた
め、薄膜の組織化、イオン分布等を任意にコントロール
することができる。
【0070】よって、IVD法により形成されるBN薄
膜は、高硬度を有し、化学的安定性が高いため耐摩耗材
として有用である。また、これまで高温・高圧相である
BN薄膜合成を実現できた例が極めて少ない中で、IV
D法はBNを各種基板の上に密着性良く合成することが
できる。従って、参考例の磁気ディスクの保護層67
は、その下地層66との密着性が良好で、かつ高硬度を
有し、化学的に安定で、耐摩耗性の良好なものを提供す
ることができる。
【0071】さらにまた、前記従来の磁気ディスクにお
いては、C等でなる保護膜66とCo−Ni、Co−N
i−Cr等でなる磁性層64との密着性が良好でなく、
前記保護膜66が剥離し易いために、磁気ディスクの耐
クラッシュ性及び耐候性を充分に高めることが困難であ
ったが、参考例の磁気ディスクは、前記磁性層64との
密着強度の高い、Si、Ti、Zr、Vからな群から選
ばれた1種又2種以上の元素からなる中間層65を介し
て、さらに、この中間層65との密着強度の高い、ダイ
ヤモンド状カーボンやグラファイト状カーボン等のCを
主成分とするアモルファス層からなる下地層66を形成
するとともに、前記磁性層64と中間層65の密着強
度、そして前記中間層65と下地層66、そして前記下
地層66と保護層67の密着強度のバランスを図ること
により、参考例の磁気ディスク表面の耐摩耗性を向上さ
せ、磁気記録特性の向上を図ることができる。
【0072】さらに、上述した構成からなる参考例の磁
気ディスクは、前記中間層65及び下地層66及び保護
層67の厚さ分のスペーシングロスを生じる恐れがある
が、この中間層65及び下地層66及び保護層67の厚
さを1000Å以下に抑えることによって、通常使用す
るには無視できる程度のロスにとどまり、実用上での問
題は回避できる。しかし、前記中間層65、そして下地
層66及び保護層67の各膜厚は、最低でも10Å〜5
0Å程度でないと、上記方法によって形成される膜が、
不均一になり易く、さらに薄いとアイランド状に形成さ
れてしまうことが推測される。そこで、前記保護層67
は、最低でも50Å以上であることが望ましいが、その
下地層66は20Å程度として、故意にアイランド状に
形成されることを目的として、その上面に成膜される保
護層67の内部応力の緩和を図る手段とすることも一つ
の構成例として考えられる。
【0073】従って参考例の磁気ディスクは、従来の磁
気ディスクの全面に、Si、Ti、Zr、Vからなる群
から選ばれた1種又は2種以上の元素からなる中間層6
5を形成し、この上面にCを主成分とするアモルファス
層からなる下地層66を設け、さらにこの下地層66上
面に保護層67を形成することによって、磁気ヘッドの
媒体対向面と前記中間層65の密着性、そして前記中間
層65と下地層66の密着性、前記下地層66と保護層
67の密着性を確保することができ、前記従来の磁気デ
ィスクの媒体対向面の耐摩耗性の向上を図り、磁気記録
特性を良好なものとすることが可能である。
【0074】また、本発明の保護膜構造は、表面の摩耗
が著しく、その表面の摩耗対策が問題視される工具等の
表面に当たる部分に採用することもできる。
【0075】
【発明の効果】従って、本願発明の保護膜構造は、充分
な硬度を有する窒化ホウ素からなる保護層の下地層に、
前記保護層と密着性の良好な炭素を主成分とする下地層
設けられ、さらにこの下地層と基材との間には、前記
下地層及び基材との両者との密着性の良好なSi、T
i、Zr、Vからなる群から選ばれた1種又は2種以上
の元素からなる中間層が設けられていることから、本願
発明の保護膜構造は、基材と中間層との密着性の向上を
図り、中間層と下地層との密着性の向上を図り、更に下
地層と保護層の間の密着性の向上を図り、基材と中間層
と下地層と保護層の相互密着性の全体バランスをとると
ともに、保護層の耐摩耗性の向上を図ることが可能であ
る。また、前記保護層をc−BN膜及びh−BN膜の2
層構造から構成した場合には、保護層と下地層との間
で、ミクロなレベルでの結合状態の整合性を良好にする
ことができるので、内部応力を緩和できると同時に、保
護層との密着力を向上させることができる。
【0076】そしてさらに、本願発明の保護膜構造は、
磁気ヘッド、サーマルヘッドの媒体対向面、又は工具等
の表面に至るまで、長期間の使用による摩耗が問題視さ
れるものにおいて、幅広く利用することができ、本願発
明における保護膜構造の適用により、それらの長寿命化
を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の保護膜構造を適用した本実施
例1のサーマルヘッドにおけるガラスグレーズ蓄熱層付
近の要部拡大断面図である。
【図2】図2は、本発明の保護膜構造を適用した本実施
例1のサーマルヘッドの断面の概略図である。
【図3】図3は、図1に示すサーマルヘッド要部拡大断
面図におけるC部分の拡大図である。
【図4】図4は、本試験例1の印字寿命試験おいて、印
字文字数に対して初期抵抗Rに対する抵抗変化量ΔRの
比(=ΔR/R)の関係を示した図である。
【図5】図5は、本発明の保護膜構造を適用した本実施
例2の浮動式ヘッドを示す斜視図である。
【図6】図6は、図5の正面図である。
【図7】図7は、浮動式ヘッドが磁気ディスク上を走行
する状態を示す上面図である。
【図8】図8は、図7の側面図である。
【図9】図9(a)は、参考例の保護膜構造を適用した
参考例の磁気ディスクにおける磁気ディスク基板Eの断
面構造を示す概略図である。 図9(b)は、図9(a)の磁気ディスク基板E上に積
層された積層膜B’の積層構造を示す断面図である。
【図10】図10は、従来のサーマルヘッドにおけねガ
ラスグレーズ蓄熱層付近の要部拡大断面図である。
【図11】図11は、図10のC’部分における拡大図
である。
【図12】図12は、従来のMIGヘッドを示す斜視図
である。
【図13】図13は、磁気ディスク上を浮動式ヘッドが
走行する状態を示す図である
【符合の説明】
30 第一保護層 31 中間層 32 下地層 33 保護層 43 中間層 44 下地層 45 保護 B 積層膜 D 積層保護膜 D’積層保護
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−288321(JP,A) 特開 平3−193363(JP,A) 特開 平2−24153(JP,A) 特開 昭61−189957(JP,A) 特開 昭62−212170(JP,A) 特開 平2−263661(JP,A) 特開 昭63−292419(JP,A) 特開 昭64−76423(JP,A) 特開 昭60−38709(JP,A) 特開 平5−234059(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B41J 2/335 G11B 5/127 G11B 5/187

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mn-Znフェライト等の基材上に設け
    られた窒化ホウ素からなる保護層を具備する保護膜構造
    であって、前記窒化ホウ素からなる保護層の下地層に、
    炭素を主成分とするアモルファス層が設けられ、前記下
    地層と基材の間にSi、Ti、Zr、Vからなる群から
    選ばれた1種または2種以上の元素からなる中間層が形
    成されてなることを特徴とする保護膜構造。
  2. 【請求項2】 前記保護層が立方晶窒化ホウ素と六方晶
    窒化ホウ素の2層構造からなることを特徴とする請求項
    1に記載の保護膜構造。
  3. 【請求項3】 Mn-Znフェライト等の基材上に設け
    られた窒化ホウ素からなる保護層を具備する保護膜構造
    であって、前記窒化ホウ素からなる保護層の下地層に、
    炭素を主成分とするアモルファス層が設けられ、前記下
    地層と基材の間にSi、Ti、Zr、Vからなる群から
    選ばれた1種または2種以上の元素からなる中間層が形
    成されてなる保護膜構造を有することを特徴とする磁気
    ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記保護層が立方晶窒化ホウ素と六方晶
    窒化ホウ素の2層構造からなることを特徴とする請求項
    3に記載の磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】 Mn-Znフェライト等の基材上に設け
    られた窒化ホウ素からなる保護層を具備する保護膜構造
    であって、前記窒化ホウ素からなる保護層の下地層に、
    炭素を主成分とするアモルファス層が設けられ、前記下
    地層と基材の間にSi、Ti、Zr、Vからなる群から
    選ばれた1種または2種以上の元素からなる中間層が形
    成されてなる保護膜構造を有することを特徴とするサー
    マルヘッド。
  6. 【請求項6】 前記保護層が立方晶窒化ホウ素と六方晶
    窒化ホウ素の2層構造からなることを特徴とする請求項
    5に記載のサーマルヘッド。
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