JP2947298B2 - リン脂質高分子からなるバイオセンサー被覆膜用材料及びそれを用いたバイオセンサー被覆膜 - Google Patents

リン脂質高分子からなるバイオセンサー被覆膜用材料及びそれを用いたバイオセンサー被覆膜

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JP2947298B2 JP3046639A JP4663991A JP2947298B2 JP 2947298 B2 JP2947298 B2 JP 2947298B2 JP 3046639 A JP3046639 A JP 3046639A JP 4663991 A JP4663991 A JP 4663991A JP 2947298 B2 JP2947298 B2 JP 2947298B2
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宣男 中林
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、バイオセンサー表面の
被覆膜に用いる高分子材料及びそれを用いたバイオセン
サー被覆膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、いろいろな分野において、センサ
ーによる化学物質の計測や検出が行われている。様々な
形式のセンサーの中で、分子識別機能を利用したバイオ
センサーは、物質選択性が非常に優れているため、発酵
工業のみならず医療・生化学分野にも広く応用されてい
る。
【0003】現在、医療に使用されているバイオセンサ
ーは、センサー表面の被覆膜としてセルロース系及びポ
リウレタン系の高分子を利用している。このようなセン
サーを生体内の化学物質の計測に使用する場合、センサ
ー表面へのタンパク質及び血液細胞などの吸着による被
覆膜の物質透過性の低下が生じるため、生体内において
長期間使用することは不可能である。しかしながら、最
近ではバイオセンサーを人工臓器などに組み込んだ、体
内埋込型センサーの必要性が高まってきている。体内埋
込型センサーは、長期間体内に留置できなければなら
ず、この開発には、センサー表面に優れた生体適合性を
付与するという困難な課題が残されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、長期間にわ
たり体内に埋入し、生体内微量成分の変動を連続的かつ
鋭敏に計測することのできるバイオセンサーの開発にお
いて最重要課題である生体適合性の付与に不可欠な被覆
用高分子膜材料及びそれを用いたバイオセンサー被覆膜
を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のバイオセンサー
被覆膜材料は、リン脂質極性基を有する単量体である2
−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下
「MPC」という。)と疎水性の単量体であるメタクリ
ル酸n−ブチル(以下「BMA」という。)の共重合体
(以下「Poly(MPC-co-BMA)」という。)からなることを
特徴とするものである。
【0006】該 Poly(MPC-co-BMA) は、例えば、 Poly
m. J., 22, 355(1990) 記載の方法に従い合成すること
ができる。即ち、MPC及びBMAを、好ましくは2:
98〜50:50、更に好ましくは5:95〜40:60のモル比で
用い、好ましくはテトラヒドロフラン(以下「THF」
という。)及びエタノールの混合溶媒中、開始剤、好ま
しくはα, α'−アゾビスイソブチロニトリルの存在下
で、好ましくは60〜65℃で4〜20時間反応させることに
より合成することができる。
【0007】Poly(MPC-co-BMA) を用いて高分子膜、例
えばセルロース系又はポリウレタン系の高分子膜をコー
ティングすることにより、生体適合性に優れたバイオセ
ンサー被覆膜を得ることができるが、その方法として
は、例えば、溶媒留去法が挙げられる。
【0008】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら制限する
ものではない。
【実施例1】 Poly(MPC-co-BMA) の合成MPCとBM
A、溶媒としてTHF及びエタノール、開始剤にα,
α'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、表1の
割合で調製した。
【0009】この溶液を重合用ガラス管に入れ、容器内
をアルゴンで置換した後、封管し、60〜65℃にて15時間
重合させた。得られた反応混合物をヘキサンとエーテル
の混合溶媒中にて再沈し、濾過後、乾燥して共重合体を
得た。合成した Poly(MPC-co-BMA) の組成を決定するた
めに、ポリエチレンシート上にポリマーのエタノール溶
液を流延し、溶媒を留去して膜を作成した。この膜の表
面組成をX線光電子分光計(以下「ESCA」という。)に
て、分析し、結果を表1に示した。
【0010】
【表1】
【0011】
【実施例2】 セルロース膜への Poly(MPC-co-BMA)の
コーティングPoly(MPC-co-BMA) の1%エタノール溶液
に約3cm×3cmに切ったキュプロファン(ENKA(独)製
セルロース膜)を30秒間浸した後、1時間自然乾燥し、
その後、1晩真空乾燥を行った。そしてコーティングし
た膜はESCAにて表面組成を分析し、結果を表3に示し
た。 試験例1 コーティング膜からの被覆ポリマーの溶出試
験 キュプロファンに Poly(MPC-co-BMA) の組成比の異なる
共重合体それぞれ2種ずつをコーティングした。
【0012】乾燥する過程で自然乾燥後、直ちに真空乾
燥したものと、自然乾燥後、 100℃で5分間熱処理して
から真空乾燥したものとの2つの方法を行った。コーテ
ィングしたキュプロファン膜を(2cm×2cm)に切り出
し、下記の4種の液3.0ml中にそれぞれ一定時間浸漬し
た。 水 (3時間) 熱水(約90℃) (30分) 40%エタノール水溶液 (3時間) エタノール (3時間) 終了後、それぞれの溶出液についてリンの定量分析を行
い、キュプロファン膜は真空乾燥後、ESCAによる表面分
析を行った。
【0013】溶出液中に含まれるリンの定量分析の結果
を表2に示した。
【0014】
【表2】
【0015】このとき、キュプロファンにコーティング
されたポリマーの全量を知るためにコーティング膜を
(5mm×5mm)に切り出し、過塩素酸と反応させて、同
様にリンの定量を行った。得られた値から液中に溶け出
したポリマーの溶出率を算出した。次に、溶出試験後真
空乾燥させたコーティング膜をESCAにより膜表面分析し
た結果を表3に示した。
【0016】
【表3】
【0017】表2及び3から、どのポリマーに対しても
40%EtOH、EtOH中においては溶出量も多く、溶出後の膜
表面の変化も明らかに認められるが、水中においてはリ
ンの溶出量も少なく、膜表面における組成の変化もほと
んどないことがわかる。またPoly(MPC-co-BMA) 試料4
(表1参照)について見ると、水中での溶出率が20%近
いのにもかかわらず、溶出後の膜表面組成の変化は、極
わずかである。このことから、水中においてポリマーは
確かに脱落するものの、その量は膜表面組成を大きく変
化させるには至らないものと考えられる。 参考例1 (1)グルコースオキシダーゼ (GOD) 固定化膜の作
成 1.00mg/mlのGOD水溶液を調製し、その溶液をシリン
ジで2mlとり、直径25mmのセルロースアセテートのフィ
ルターで濾過した。そのフィルターを取り出し、直径6
mmに切り出してGOD固定化膜として使用した。GOD の
固定化量は1.8μg であった。 (2)キュプロファンを使用したグルコースセンサーの
作製 酸素電極に酸素透過性テフロン膜を取り付け、その外側
にGOD固定化膜、更にその外側をキュプロファン膜で
覆って図1に示すようなグルコースセンサーを作製し
た。 (3)グルコースセンサーの機能性評価 酢酸ナトリウム緩衝液を45ml計りとり、恒温槽にて37℃
に保ちながら酸素を10分間吸入し、その後、レコーダー
で出力電位を測定した。この測定を Poly(MPC-co-BMA)
でのコーティングの有無、それぞれの場合について行っ
た。
【0018】作製したグルコースセンサーは、浸漬され
た溶液中の酸素濃度に対応したある一定の値を示す。し
かし、グルコース溶液を注入すると(1)式で表わされ
るグルコース〜GOD間の酵素反応により消費される酸
素量が電位の変化として図2のように示される。
【0019】
【化1】
【0020】この時の変化の仕方と最終的な電位差がグ
ルコース濃度に依存するため、37℃におけるグルコース
濃度と60秒後の電位の変化量との関係を測定し、図3に
示した。図3から明らかなように、グルコース濃度が50
〜300mg/dlの範囲でグルコース濃度と電位差との間に
良好な直線関係が得られた。このことから、50〜300mg
/dlの範囲においては未知のグルコース濃度を定量でき
ることがわかる。またPoly(MPC-co-BMA) をコーティン
グしたセルロース膜を適用しても、この電位応答が変化
しないことがわかった。 (4)擬似生体内環境下でのグルコースセンサーの機能
評価 リン酸緩衝液 (PBS) にアルブミン(4.5g/dl)とγ
−グロブリン(1.6g/dl)を溶かし、生体内濃度に等し
いタンパク質溶液を調製した。その溶液20mlに酸素を吹
き込んだ後、1.25g/dlのグルコース溶液5mlを注入し、
グルコース濃度が 250mg/dlになるようにした。この時
の電位の変化を3分間測定した。
【0021】30時間、常時センサーをタンパク質溶液中
に浸漬し、定時間ごとに上記のような測定をした。血液
中と等しい濃度のタンパク質溶液中に長時間センサーを
浸した時の電位の変化を図4に示した。また、この結果
と比較するために、センサーをPBSだけに長時間浸し
た時の電位の変化も同様に測定した。
【0022】タンパク質溶液中において、 Poly(MPC-co
-BMA) でコーティングしたセルロース膜を被覆した方で
は、実験開始後4時間迄、全く電位変化量の低下が見ら
れなかったのに対し、コーティングをしていないセルロ
ース膜では、実験開始直後から、電位変化量が減少し、
Poly(MPC-co-BMA) コーティング膜とは明らかに違う挙
動を示した。ポリ(2−ヒドロキシエチル メタクリレ
ート)(以下「PHEMA」という。)コーティングした膜
を使った場合でも、やはり開始直後から電位変化量の低
下が見られた。30時間後の値を見ても、無コーティン
グ、 PHEMAコーティングの膜がそれぞれ12%、32%と落
ち込んだのに対し、Poly(MPC-co-BMA)コーティング膜で
は、65%以上を維持していた。
【0023】これら電位変化量の減少の原因として考え
られることは、第一にセンサー被覆膜へのタンパク質の
吸着による物質透過性の低下が考えられる。また、もう
一つの原因として長時間GODを37℃で維持したことに
よる酵素活性の低下が挙げられる。ここで、タンパク質
溶液中での測定値とPBS中における測定値との差をと
り、図5に示した。これらの値は、タンパク質溶液中で
の電位変化量の減少のうち、センサー表面へのタンパク
質吸着による物質透過性の低下だけに起因していると考
えられる。
【0024】この結果から、 Poly(MPC-co-BMA) コーテ
ィング膜を被覆したセンサーでは、血液中と等しい濃度
のタンパク質溶液中における被覆膜表面へのタンパク質
吸着を原因としたセンサー機能の低下は、皆無に等しい
ことがわかった。
【0025】
【発明の効果】本発明のバイオセンサー被覆膜材料を用
いることにより、センサー表面へのタンパク質吸着によ
る被覆膜の物質透過性の低下を防止することができ、長
時間体内に留置できる体内埋込型センサーを提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバイオセンサー被覆膜材料でコーティ
ングされたセルロース膜を被覆膜として用いたグルコー
スセンサーを示す図である。
【図2】グルコース注入時における電位の変化を示す図
である。
【図3】グリコース濃度と電位変化量との関係を示す図
である。
【図4】擬似生体内環境下におけるグルコースセンサー
の応答を示す図である。
【図5】センサー表面へのタンパク質吸着を原因とする
電位変化量の減少を示す図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61B 5/14 310 G01N 27/30 G01N 27/30 311 G01N 27/327 G01N 27/36 G01N 27/40 G01N 27/404

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2−メタクリロイルオキシエチルホスホ
    リルコリンとメタクリル酸n−ブチルの共重合体を含む
    バイオセンサー被覆膜用材料。
  2. 【請求項2】請求項1記載のバイオセンサー被覆膜材料
    でコーティングされた高分子膜からなるバイオセンサー
    被覆膜。
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