JP2947022B2 - 被覆超硬合金 - Google Patents

被覆超硬合金

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  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具、掘削工具、
剪断工具などとして使用される被覆超硬合金、特に、強
靱性と耐摩耗性を兼ね備えた被覆超硬合金に関する。
【0002】
【従来の技術】超硬合金の表面に、炭化チタンなどの硬
質薄膜を気相蒸着した被覆超硬合金は、母材の強靱性と
表面の耐摩耗性を合せ持つため、切削工具として多用さ
れる傾向にある。切削加工の高能率化が図れるからであ
る。
【0003】切削効率は、切削速度Vと送り量fの積で
決まるが、Vを大きくすると刃先温度が上昇して工具寿
命が著しく低下する。このため、従来はfを高めて切削
効率を向上させてきた。この場合、高い切削応力に対応
できる耐欠損性に優れた強靱な母材が要求される。ま
た、耐摩耗性を表面の硬質被覆層のみに依存すると寿命
が短くなるので、母材には耐摩耗性も要求される。
【0004】この相反する特性である耐摩耗性と耐欠損
性を両立させるため、従来からいくつかの提案がなされ
ている。
【0005】その例として、超硬合金の最表面に鉄族金
属の量が合金内部に比べて多い結合相リッチ層を有する
もの、超硬合金の最表面にWCと結合金属のみから成る
脱β層を有するもの、或いは合金内部に比べて硬度が低
い硬度低下層を有するものをそれぞれ母材として使用す
ることにより、耐摩耗性と耐欠損性を合わせ持たせるこ
とが考えられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した技術のうち、
超硬合金の最表面に脱β層を析出させるものは、切り刃
稜線部付近で脱β層の厚みが急激に減少しており、実際
に加工時に負荷がかかる切り刃稜の部分には脱β層が析
出していない。図3は、従来の被覆超硬合金における脱
β層の析出状況を示している。図の1は超硬合金母材、
2は母材表面に気相蒸着した硬質被覆層、3は母材の内
部、4は母材の表層部に析出した脱β層である。面5と
6の交差稜が切り刃7として用いられるが、従来のこの
種合金では、脱β層4が切り刃稜付近で急激に薄くなっ
て切り刃部に脱β層の不存在領域が広い範囲で生じてい
る。この不存在領域の幅(図のa、b点間の距離)は、
刃先の強化ホーニングを行うと更に広がり、75〜15
0μmにも及ぶ広さになる。
【0007】脱β層の直下の部分では、結合相が減少
し、硬質相が増加して硬度が内部層3の中心側に比べて
高くなっている。従来の技術では、この硬くなった部分
の脱β層による保護が最も肝心な刃先部において広い範
囲でなされておらず、このため、耐欠損性が充分に高ま
らないと云う問題があった。
【0008】本発明の課題は、脱β層の析出状態を改善
して優れた耐摩耗性と耐欠損性をバランス良く発揮でき
るようにした被覆超硬合金を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する本
発明の被覆超硬合金は、1種以上の鉄族金属を結合相と
し、かつ周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒
化物、炭窒化物、炭酸窒化物の中から選ばれた1種以上
の物質を硬質相とする超硬合金母材の表面に硬質被覆層
を設け、2つの面の交差稜を切り刃として用いるもので
あって、前記母材の硬質相中に、Zr、Hfもしくはそ
の両者の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物から選
ばれる1種以上の物質とWCを含み、さらに、母材の最
表面にWCと鉄族金属のみから成る脱β層が切り刃稜を
作り出す面の平坦部に対してほぼ平行に析出し、その脱
β層の厚みが前記平坦部に沿った部分で5〜50μmに
なっているところに特徴を有するものである。
【0010】母材の切り刃稜線部には刃先強化のための
ホーニング加工を施すことがあるが、この場合のホーニ
ング加工は、前記脱β層の厚みが徐々に減少して脱β層
の不存在領域が0〜50μmの幅で切り刃稜線部に生じ
るようにして不存在域の幅が50μmを超えないように
する。
【0011】なお、脱β層は、母材の焼結条件によって
は切り刃稜線部において厚みが徐々に減少することがあ
る。しかし、その減少度合は従来の被覆超硬合金に比べ
れば緩やかであるので、この場合も切り刃稜線部に生じ
ることのある脱β層の不存在域の幅を50μm以下に抑
えて発明の目的を達成することができる。
【0012】これ等の被覆超硬合金の母材は、Zr、H
rもしくはその両者の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸
窒化物の中から選ばれた一種以上の物質の硬質層中にお
ける総量を変化させた組織の粉末を用い、これを成形
後、1350℃〜1500℃の範囲で真空中或は一定の
窒素分圧中で保持すると云った方法で製造することがで
きる。また、この焼結法により作成した母材についてブ
ラシやGCメディア等を用いて切り刃稜線部を丸める丸
ホーニング処理や、砥石により刃先の鋭角エッジを落
す、いわゆるネガランド刃先ホーニングを施すことによ
り、刃先の強化状態や刃先近辺における脱β層の状況
(形状、厚み)を自由に制御することも可能である。
【0013】母材表面の硬質被覆層は、この後に形成す
る。この硬質被覆層は、一般に利用されている化学蒸着
法、物理蒸着法、プラズマ蒸着法等で形成すればよい。
本発明で用いるこの硬質被覆層は、周期律表4a、5
a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、
硼化物、並びに酸化アルミニウムの中から選ばれた物質
を1種以上用いて単層又は多重に積層したものが好まし
い。
【0014】
【作用】超硬合金母材の硬質相中に、Zr、Hfもしく
はその両者の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物よ
り選ばれた1種以上の物質とWCを含ませると、焼結に
よって母材表面に析出する脱β層が切り刃稜を作り出す
面の平坦部に対してほぼ平行になる。また、切り刃稜線
部付近では脱β層の厚みが徐々に減少することもある
が、この場合の厚みの減少度合は従来に比べると非常に
小さくなる。このため、切り刃稜線部にも脱β層が生
じ、刃先の強化ホーニング処理後もこの脱β層が残って
この層による保護効果で切り刃の耐欠損性が向上する。
【0015】ここで、脱β層の厚みについて、切り刃稜
を構成する面の平坦部に沿った位置でその厚みを5〜5
0μmに限定したのは、5μm未満では、現状行われて
いる様な刃先処理を施すと加工を行う切り刃近辺で脱β
層が広範に除去され、その層による保護効果が薄れて従
来合金との耐欠損性に関する優位差があまり大きくなら
ず、一方、50μmを超えると、今度は耐摩耗性の低下
や刃先部の耐塑性変形性の低下が生じるからである。
【0016】また、刃先の強化処理等により切り刃稜線
部に脱β層の不存在領域が生じる場合の当該不存在領域
の幅について上限を50μmに限定したのは、従来のよ
うに75〜150μmにも及ぶ幅で脱β層の不存在領域
ができると脱β層による保護効果が切り刃稜線部にまで
及ばず、加工中に大きな負荷を受ける切り刃部の耐欠損
性が著しく低下するのに対し、その不存在域の幅が50
μm以下であると脱β層による保護効果が現われること
を実験で確認したからである。この脱β層不存在域の幅
がゼロより小さい、即ち、切り刃稜線部にも脱β層が存
在すると刃先の耐塑性変形性が低下する。従って、刃先
稜線部には0〜50μmの幅の脱β層不存在域を生じさ
せておくのがよい。
【0017】
【実施例】以下に、本発明の実施例を挙げる。
【0018】表1に示すA〜Dの試料を作成した。これ
等の試料は、同表に示す組成の完粉をISO規格CNM
G120408の形状を有するチップに成形した後、1
450℃まで真空昇温し、1時間保持した上で冷却して
得た。また、Aと同一組成の完粉を同一形状に成形後1
450℃まで昇温し、1時間の保持をそれぞれ5tor
r、10torr、50torrの窒素雰囲気中で行っ
た試料AI、AII、AIII も併せて作成した。次に、各
試料の切り刃稜線部にGC砥粒を用いたブラシホーニン
グ処理を行い、刃先を湾曲面に変化させた。その後、通
常のCVD法で各チップの表面にTiの窒化物、炭窒化
物を7μm厚さで被覆し、その上に更に酸化アルミニウ
ムを1μmの厚さで被覆した。このようにして出来た被
覆超硬合金の各試料(Dは従来品、その他は本発明品)
について切り刃稜線部における断面構造を切断して分析
したところ、次の結果が得られた。
【0019】試料A〜C、AI、AIIの切り刃稜線部の
断面は、図1に示すように(本図は試料Bの断面)、脱
β層4が切り刃稜を作り出す面5、6の平坦部とほぼ平
行に析出しており、しかもその脱β層は刃先の強化処理
により切り刃稜の中央部に向かって徐々に薄くなり、試
料Bについては図のように稜の中央部でその厚みがほぼ
ゼロになっていた。また、試料Aは刃先処理後も切り刃
稜線部に脱β層が残り、試料C、AI、AIIについて
は、図2に示すように、刃先部に脱β層4の不存在領域
が生じていた。この脱β層不存在域の幅(a、b点間の
距離L)と面5、6に沿った位置での脱β層の厚みtも
表1に併記する。
【0020】試料AIII は、従来品ほど顕著ではない
が、切り刃稜線部付近で脱β層の厚みが図3に示すよう
な形で徐々に薄くなり、このため、刃先の強化処理によ
り切り刃稜線部の脱β層不存在域の幅がDを除く試料よ
りも大きくなっていた。
【0021】これに対し、従来品の試料Dは、図3に示
すように、脱β層の厚みが切り刃稜線部において急激に
減少し、同層の不存在域が相当広くなっていた。
【0022】
【表1】
【0023】−実施例− 上記の試料について切削性能の評価試験を行った。
【0024】耐摩耗性は表2の切削条件1による切削に
よって評価し、また、耐欠損性については、各試料の8
コーナの全てを表2の切削条件2による切削に供して評
価した。
【0025】この試験結果を表3に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】この表3から、本発明品A、B、C、AI
〜AIII はいずれも、従来品Dに比べ、耐摩耗性、耐欠
損性ともに著しく高まり、両特性のバランスが良くなっ
ていることが判る。
【0029】なお、本発明品の中で脱β層が切り刃稜線
部に存在する試料Aは、逃げ面摩耗量が従来品Dを除く
他の試料よりも大きい。また、試料AIII とCは脱β層
の不存在域の幅が上限もしくはそれを少し超えているた
め、耐欠損性がDを除く他の試料に比べて劣っている。
これから、本発明の最良の形態は、脱β層を刃先近辺ま
で析出させ、さらに刃先の強化処理等で脱β層の厚みを
切り刃稜線部に向かって徐々に減少させて切り刃稜線部
にゼロ〜微小幅の脱β層不存在域を生じさせたものであ
ることが判る。
【0030】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の被覆超硬合
金は、母材の硬質相中に特定の物質を含ませて脱β層を
切り刃稜線部にも析出させ、この脱β層による保護効果
で刃先の耐欠損性を向上させると共に、脱β層の厚さを
制御して耐摩耗性、刃先部の耐塑性変形性の低下を抑え
たので、高能率加工でも長寿命を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆超硬合金の一例の要部を示す拡大
断面図
【図2】他の実施例の要部を示す拡大断面図
【図3】従来の被覆超硬合金の要部を示す拡大断面図
【符号の説明】
1 超硬合金母材 2 硬質被覆層 3 母材の内部 4 脱β層 5、6 切り刃稜を作り出す面 7 切り刃

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1種以上の鉄族金属を結合相とし、かつ
    周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭
    窒化物、炭酸窒化物の中から選ばれた1種以上の物質を
    硬質相とする超硬合金母材の表面に硬質被覆層を設け、
    2つの面の交差稜を切り刃として用いる被覆超硬合金で
    あって、 前記母材の硬質相中に、Zr、Hfもしくはその両者の
    炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物から選ばれる1
    種以上の物質とWCを含み、 さらに、母材の最表面にWCと鉄族金属のみから成る脱
    β層が切り刃稜を作り出す面の平坦部に対してほぼ平行
    に析出し、その脱β層の厚みが前記平坦部に沿った部分
    で5〜50μmになっていることを特徴とする被覆超硬
    合金。
  2. 【請求項2】 母材の切り刃稜線部において、前記脱β
    層の厚みが徐々に減少して脱β層の不存在領域が0〜5
    0μmの幅で切り刃稜線部に生じていることを特徴とす
    る請求項1記載の被覆超硬合金。
  3. 【請求項3】 1種以上の鉄族金属を結合相とし、かつ
    周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭
    窒化物、炭酸窒化物の中から選ばれた1種以上の物質を
    硬質相とする超硬合金母材の表面に硬質被覆層を設け、
    2つの面の交差稜を切り刃として用いる被覆超硬合金で
    あって、 前記母材の硬質相中に、Zr、Hfもしくはその両者の
    炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物から選ばれる1
    種以上の物質とWCを含み、 さらに、母材の最表面にWCと鉄族金属のみから成る脱
    β層が析出し、その脱β層は、切り刃稜を作り出す面の
    平坦部に沿う部分の厚みが5〜50μmであり、切り刃
    稜線部付近で母材の内部層が母材の表面に近づいて脱β
    層の厚みが徐々に減少し、母材の切り刃稜線部に0〜5
    0μmの幅で脱β層の不存在域が生じていることを特徴
    とする被覆超硬合金。
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JP6889128B2 (ja) * 2018-03-20 2021-06-18 京セラ株式会社 工具及びこれを備えた切削工具

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