JP2943586B2 - 内燃機関のオイルパン制振構造 - Google Patents

内燃機関のオイルパン制振構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、内燃機関のシリンダ
ブロック下面に取り付けられるオイルパンの制振構造に
関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用内燃機関に代表される多くの内
燃機関では、シリンダブロック下面に比較的深いオイル
パンを備え、ここに潤滑油を貯留するとともに、オイル
ポンプにて吸い上げて各部へ圧送する構成となってい
る。ここで、オイルパンは、一般に金属板をプレス成形
した薄肉の構造となっており、従って、機関の加振入力
により膜振動し、比較的大きな放射音が発生する、とい
う問題がある。
【0003】そのため、従来から、実開昭54−259
41号公報や特開平3−294611号公報等に示され
ているように、オイルパンを外板と内板との2重構造と
し、かつ両者の間隙に潤滑油を満たして、その油層の流
動によるエネルギ減衰作用により振動を抑制するように
した低騒音のオイルパンが提案されている。
【0004】また、内燃機関のオイルパンは、一般に、
一部に潤滑油を貯留するためのタンク部(深底部)を有
するとともに、残部が浅底部となっているが、機関運転
中は、浅底部よりも下方に油面が低下するため、潤滑油
を貯留している深底部に比較して浅底部での放射音が大
きな割合を占めることになる。そのため、実開昭58−
84309号公報には、浅底部と深底部との境界に突条
部を形成し、浅底部内に潤滑油を保持するようにしたオ
イルパンが示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
ようにオイルパンの全体つまり浅底部と深底部の双方に
亙ってオイルパンを二重構造としたのでは、上述したよ
うに放射音の大きな浅底部を重点的に制振することがで
きない。しかも、上記従来の構成では、内板を、僅かな
間隙を保った状態で外板の内側に固定してあるため、内
板と外板との間の油層をそれほど薄くすることができな
いばかりか、内板からなるインナパンの重量による油層
への押し付け効果が活用できないため、その油層内での
潤滑油の流動に伴うエネルギ減衰作用を大きく得ること
ができない。従って、内板を付加することによる重量増
に比べて騒音低減効果が低い、という不具合があった。
【0006】また、後者のように浅底部に潤滑油を保持
する構成では、浅底部がクランクケース内に露出した状
態となる従前のオイルパンに比較して放射音をある程度
低減することができるが、単に潤滑油の保持のみによる
制振効果には限界があり、十分な放射音低減効果を得る
ことができなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、この発明は、内
燃機関のシリンダブロック下面に装着され、かつ一部に
潤滑油を貯留するためのタンク部を有するとともに、浅
底部を有するオイルパンにおいて、上記浅底部の底壁面
および側壁面に沿った形状の底壁および側壁を有するイ
ンナパンを、オイルパンに固定せずに上記浅底部に重ね
て配置するとともに、このインナパン内に潤滑油を保持
するように該インナパンに油保持壁を形成したことを特
徴としている。
【0008】また請求項2の発明では、上記油保持壁の
最下部に連通孔が開口形成されている。
【0009】
【作用】浅底部の上面には、クランクケース内壁面を伝
わって流れ落ちる潤滑油やクランクケース内を飛散する
油滴等が常に供給される。従って、オイルパン内壁面と
インナパンの外壁面とが薄い油層を介して近接する。こ
の状態でオイルパン浅底部が膜振動すると、両者の間隔
の微小変化に伴って薄い油層内を壁面に沿って潤滑油が
流動しようとし、エネルギ減衰作用が得られる。これに
よりオイルパン浅底部の振動が抑制される。特に、イン
ナパン内に上方から落ちる潤滑油が保持され、その重量
がインナパンの自重に付加されてインナパンをオイルパ
ン底壁に押し付けるので、油膜によるエネルギ減衰作用
が一層強く得られる。尚、タンク部については、貯留さ
れている多量の潤滑油により、その振動が抑制される。
【0010】また請求項2のように、油保持壁に連通孔
を設けておけば、機関停止時には、浅底部内の潤滑油が
総てタンク部内へ流れでる。
【0011】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明する。
【0012】図1〜図3は、この発明の一実施例を示し
ている。オイルパン1は、鋼板をプレス成形したオイル
パン本体2と、このオイルパン本体2の前端部に固定さ
れた別部材からなるサブタンク3とから構成されてい
る。オイルパン本体2は、機関前端寄りの部分が略矩形
の深底部2aとなっており、かつ残部が浅底部2bとな
っている。そして、深底部2aの底面に略矩形の開口部
4が形成されているとともに、深底部2a下面に上記サ
ブタンク3が溶接により固定されている。このサブタン
ク3によって、潤滑油を貯留するためのタンク部5が構
成され、該タンク部5が開口部4を介してオイルパン本
体2内部と連通している。尚、サブタンク3は、図3に
示すように、オイルパン本体2の幅よりも大きな幅を有
している。上記浅底部2bの底壁面は、略平坦面をなし
ている。また、オイルパン1詳しくはオイルパン本体2
の外周縁部には、フランジ部6が形成されており、該フ
ランジ部6がシリンダブロック(図示せず)の下縁にボ
ルト結合されるようになっている。
【0013】上記オイルパン本体2の内側には、鋼板を
プレス成形してなるインナパン7が収容されている。こ
のインナパン7は、オイルパン本体2と同様に深底部7
aおよび浅底部7bを有し、全体としてオイルパン本体
2の内壁面に沿った形状をなしている。つまり、オイル
パン本体2の底壁面および側壁面に沿った形状の底壁お
よび側壁を有し、かつオイルパン本体2内に重ねて配置
した状態で各壁面間に僅かな間隙が生じ得るように、オ
イルパン本体2の内壁面形状よりも全体として僅かに小
さな寸法に形成されている。また、深底部7aの底面に
は、オイルパン本体2の開口部4に合致する略矩形の開
口部8が形成されている。上記インナパン7の側壁は、
オイルパン本体2の側壁よりも低く形成されている。
尚、このインナパン7を硬質合成樹脂を用いて成形する
こともできる。
【0014】このインナパン7は、オイルパン1には固
定されておらず、上下に自由に動ける状態となってい
る。尚、上記オイルパン本体2の上面開口部には、図示
せぬバッフルプレートが装着されており、インナパン7
とクランクシャフトとが干渉するような過度の動きを規
制している。
【0015】上記インナパン7の深底部7aと浅底部7
bとの境界には、インナパン7の幅方向に沿って油保持
壁9が固定されている。つまり、開口部8の一方の側縁
に沿う位置に油保持壁9が設けられている。この油保持
壁9は、金属板をプレス成型して、インナパン7内側に
溶接したものであって、インナパン7自体の側壁の高さ
と同一の高さを有し、該側壁とともに浅底部7bの周囲
を囲っている。これにより、インナパン7の浅底部7b
部分が皿形の容器として構成されている。
【0016】また上記油保持壁9の最下部中央には、浅
底部7b側と深底部7a側とを連通する連通孔10が開
口形成されている。この連通孔10は、スラッジが蓄積
しにくいように、図3に示すような半円形あるいは左右
に細長い長方形状に形成されている。また、この連通孔
10の開口縁は、図4に断面形状を示すように、下流側
つまり深底部7a側へ向かってR形状をなしている。
尚、インナパン7を合成樹脂にて成形する場合には、油
保持壁9を一体に成形することも可能である。
【0017】次に、上記実施例の作用を説明する。サブ
タンク3により構成されたタンク部5に貯留されている
潤滑油は図示せぬオイルポンプによって吸い上げられ、
かつ機関各部へ圧送される。そのため、機関運転中は、
図5に示すように、オイルパン1内の油面L1が機関停
止中よりも低下し、機関高速域等ではオイルパン本体2
の浅底部2bよりも低くなることがある。各部で使用さ
れた潤滑油は、クランクケース上面の油戻し孔などから
排出され、クランクケース内壁面を伝わってオイルパン
1に流れ落ちる。その一部はインナパン7上面に流れ落
ち、かつ一部はインナパン7とオイルパン本体2との間
に流入する。従って、自重によりオイルパン本体2に向
けて圧接されるインナパン7とオイルパン本体2との間
に、非常に薄い油層が形成される。
【0018】このように油層を形成した状態でシリンダ
ブロック側からの加振入力によりオイルパン本体2の底
壁とりわけ浅底部2bの底壁が膜振動すると、オイルパ
ン本体2とインナパン7との間隔の微小変化が生じ、こ
れに伴って油層内の潤滑油が2つの面に沿って流動しよ
うとする。従って、振動エネルギが潤滑油の運動エネル
ギに変換され、かつ各壁面との摩擦や油同士の摩擦によ
って減衰される。そのため、実際に生じる振動が大幅に
抑制され、放射音が低減する。この減衰作用は、一般的
な振動モデルにおける減衰要素と同様に複数の膜共振に
作用するため幅広い周波数領域で効果があり、放射音を
全体として低減することができる。尚、タンク部5に
は、機関運転中に、十分な高さまで潤滑油が貯留されて
いるので、これによりタンク部5からの放射音が低減す
る。
【0019】ここで、油保持壁9によって容器状をなす
上記インナパン7の上面には、図5に示すように、クラ
ンクケース内を流れ落ちる潤滑油が油保持壁9等と略等
しいL2の高さまで保持される。そのため、この潤滑油
の重量によってインナパン7がオイルパン本体2の底壁
面に一層強く押し付けられることになり、さらに大きな
エネルギ減衰作用が得られる。図6の特性図は、この重
量増加の効果を示したもので、破線で示す比較例は、単
にインナパン7の自重のみを利用した場合の振動騒音レ
ベルを示し、実線は、インナパン7の自重に潤滑油の重
量を付加した実施例の特性を示している。このように、
本実施例では、インナパン7自体の重量を増加させるこ
となく、潤滑油を利用してエネルギ減衰作用を強めるこ
とができる。
【0020】従って、サブタンク3を有するオイルパン
1においても、過度に複雑な構成としたり、オイルパン
1全体の重量増加を来すことなしに、その振動騒音の効
果的な低減が図れる。
【0021】また上記構成では、油保持壁9に連通孔1
0が開口しているため、機関が停止した状態では、イン
ナパン7内の潤滑油が総てタンク部5内に移動する。従
って、潤滑油の交換時に、クランクケース内の潤滑油全
体を確実に入れ替えることができる。また、インナパン
7内での潤滑油の滞留が防止され、スラッジの堆積が抑
制される。しかも、連通孔10を半円形とすることでス
ラッジによる詰まりがなく、かつ開口縁をR形状とする
ことで端縁へのスラッジの付着も生じにくい。
【0022】尚、上記実施例では、オイルパン本体2の
全体つまり深底部2aと浅底部2bの双方に亙ってイン
ナパン7を設けてあるが、浅底部2bのみを覆うように
インナパン7を形成し、その端部に油保持壁10を形成
するようにしても良い。
【0023】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、この発明
に係る内燃機関のオイルパン制振構造によれば、タンク
部に比して放射音が大きなものとなる浅底部内に、油層
を介してインナパンを密接させるようにしたので、放射
音を効果的に低減できる。特に、インナパンをオイルパ
ンに固定せずに収容してあるため、その構成が簡単であ
るとともに、十分に薄い油層を安定的に確保でき、良好
な振動減衰作用が得られる。しかも、インナパン上面に
溜まる潤滑油の重量を利用してインナパンを強く押し付
け、振動減衰作用を強めることができるので、オイルパ
ン全体の重量増加を抑制しつつ低騒音化を図ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す図2のA−A線に沿
った断面図。
【図2】この実施例のオイルパン全体の平面図。
【図3】図2のB−B線に沿った断面図。
【図4】図1のC部分の拡大断面図。
【図5】機関運転中の油面の位置を示す断面図。
【図6】この実施例のオイルパンの振動特性図。
【符号の説明】
1…オイルパン 2…オイルパン本体 2b…浅底部 4…開口部 5…タンク部 7…インナパン 9…油保持壁 10…連通孔
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F01M 11/00 F02F 7/00 302

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関のシリンダブロック下面に装着
    され、かつ一部に潤滑油を貯留するためのタンク部を有
    するとともに、浅底部を有するオイルパンにおいて、上
    記浅底部の底壁面および側壁面に沿った形状の底壁およ
    び側壁を有するインナパンを、オイルパンに固定せずに
    上記浅底部に重ねて配置するとともに、このインナパン
    内に潤滑油を保持するように該インナパンに油保持壁を
    形成したことを特徴とする内燃機関のオイルパン制振構
    造。
  2. 【請求項2】 上記油保持壁の最下部に連通孔が開口形
    成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機
    関のオイルパン制振構造。
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