JP2940999B2 - 光共振器 - Google Patents

光共振器

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、非線形光学結晶を内部に備えた光共振器に
おいて、非線形光学結晶により生じるビームウォークオ
フを補償する手段に関する。
〔従来の技術〕
近年、共振器内に非線形光学結晶を挿入した、SHG、T
HG、パラメトリック発振、和周波発生、差周波発生、四
光波混合、光双安定等の非線形光学技術が盛んに研究さ
れるようになり、その情報処理や計測への応用が考えら
れている。
従来、この種の光共振器は、対向した一対の反射鏡を
設け、この反射鏡間に非線形光学結晶を光軸上に挿入し
た構造である。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、非線形光学結晶は複屈折性を有するため、
ビームウォークオフを生じる。ビームウォークオフと
は、複屈折性を有する非線形光学結晶を光が通過する際
に生じる2つの独立な偏光成分の内、一方の偏光の光軸
方向が他方の偏光の光軸方向に対して一定角度ずれる現
象をいう。
従って、共振器内に非線形光学結晶を設けた場合、偏
光モードによって光軸が異なり、TEM00モードのような
モードを非線形光学結晶から生じる両偏光に対して成立
させることはできない。このことは、異なる2偏光のモ
ードを必要とする非線形光学現象の場合、非線形効果の
効率やビームクオリティーを劣化させる原因となる。
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、非線形光学
結晶を内部に備えた共振器において、ビームウォークオ
フを補償することを課題とする。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明は、ビームウォークオフを生じる非
線形光学結晶を内部に備え、光源からの光を、共振させ
て出力する光共振器において、 前記非線形光学結晶によるビームウォークオフを補償
する縁屈折材料を備え、非線形光学結晶を通過した光の
横モード変形を補償する補正用光学素子を共振器内に配
置したことを特徴とする。
第1図に示した基本構成図で説明すると、一対の反射
鏡1,1間に非線形光学結晶3及び、それによるビームウ
ォークオフを補償する複屈折材料5を挿入した。
ここで、ビームウォークオフを生じる非線形光学結晶
としては、KTP(KTiOPO4)、KN、BBO、KDP、ADP、LiNbO
3、LiIO3、Ba2NaNb5O15、CdSe、Se、Teなどを例示でき
る。なおこれら結晶のビームウォークオフ角θは光の波
長によって変化する。
前記非線形光学結晶を共振器内に設ける趣旨は、第2
高調波発生(SHG)、第3高調波発生(THG)、パラメト
リック発振、和周波発生、差周波発生、四光波混合、光
双安定などに用いる趣旨である。
本発明では、ビームウォークオフ補償用の素子として
複屈折材料を共振器内に設ける。
複屈折材料とは、光が入射するとき2つの屈折光が現
れる材料で、前記非線形光学結晶を含む。例えば、上記
した非線形光学結晶の他に、 Li2B4O7、水晶(SiO2)、 方解石(CaCo3)を例示できる。
ところで、非線形光学効果を大きくするには、非線形
光学結晶内部において、共振器モードのビームウエスト
が小さくなるよう集光する必要がある。
しかし、このような従来の共振器の構成で共振器モー
ドのビームウエストが小さくなるよう集光すると、共振
器モードの横モードが変形し、集光の最適化が図れな
い。
ここで、横モード変形とは、共振器モード断面の振幅
分布が異方的に(たとえば楕円形に)広がって、ビーム
ウエストでの集光性が悪くなる(円形に集光しない)現
象をいう。一般に、非線形光学材料は複屈折性を有して
おり、屈折率楕円体で表されるように、光の波面の入射
角に依存して屈折率に差が生じているため、これに球面
波が入射するとレンズのような性質を示す。このような
非線形光学材料が共振器内に存在すると、そのレンズ効
果を強く受ける偏光の共振器モードの有効共振器長が変
わり、横モードが変形する。
ここで、有効共振器長とは、光の光学的性質から算出
した実質的な共振器長をいう。共振器の物理的長さ自体
が一定であっても、前記レンズ効果により有効共振器長
は変化する。
例えば、非線形光学結晶の1つであるKTPを共振器内
に挿入して1064nm→532nmの高調波変換することが行わ
れるが、高効率の高調波変換をしようとしてその集光を
強くすると、KTPのレンズ効果で、レーザモードが楕円
形となる。すなわち、KTPの屈折率の伝播方向依存性に
よるレンズ効果により、KTPのz偏光の有効共振器長が
y′偏光のそれより短くなり、KTPにおける集光の同時
最適化ができないからである。
本発明では、前記のようにビームウォークオフの補償
に加え、横モード変形の補正を図ると、より効果的であ
る。
すなわち、非線形光学結晶を通過した光の横モード変
形を補正する補正用光学素子を共振器内に配置する。
前述KTPを用いた高調波変換では、特に、複屈折材料
として二軸結晶を用いた場合、ビームウォークオフの補
償と横モード変形の補正を兼ねることができる。
より具体的には、一例としてKNを用いる方法がある。
即ち、KTPのz軸とKNのz軸を平行とし、KTPで生じた横
モード変形とビームウォークオフを同時に補正するよう
KNの厚さと、KNのx−y面内での共振器モードの伝播方
向を最適化することで達成できる。
単一の複屈折材料でビームウォークオフの補償と横モ
ード変形の補正を行うには、上述のKTPのようにビーム
ウォークオフと横モード変形が互いに異なる偏光につい
て発生する場合に、例えばKNのような二軸結晶を用いる
必要があるが、同一偏光についてのみ発生する非線形光
学材料の場合には、例えばLNのような一軸結晶を用いて
も可能である。また、補正用光学素子として、複屈折材
料の他、円筒レンズ(シリンドリカルレンズ)、非球面
レンズ、傾斜板を例示できる。これらは単独で用いても
よいが、組み合わせて用いてもよい。
複屈折材料は、屈折率楕円体で表されるように、屈折
率の異方性に基づくレンズ効果により光を横方向に広げ
る。そこで、前記非線形光学結晶による広がり方向に対
して、複屈折材料により広がり方向を直交させるように
複屈折材料を共振器内に配置することで、横モード変形
を補正できる。
第9図に示したように、非線形光学結晶3の屈折率楕
円体5がyz平面6上にあり、その長軸が光軸(z軸)上
にあるとする。このとき、複屈折材料4の屈折率楕円体
7がxz平面8上にあり、その長軸が光軸(z軸)上とな
るよう、この複屈折材料4を配置する。このように配置
すると、非線形光学材料に入射された断面円形のビーム
が非線形光学結晶を通過することで、x軸方向に広がり
x軸方向の楕円モードとなる{第9図(b)}が、複屈
折材料4の屈折率楕円体7はビームをy軸方向に広げる
作用をする{第9図(c)}ので、x軸方向に広がった
ビームは、この複屈折材料4を通過することで、元の円
形に戻り、横モード変形の補正ができる。これにより、
横モードのx及びy方向の有効共振器長が等しくなる。
また、LiNbO3、β−BaB2O4、Li2B4O7、を補正用光学
素子として使用し、第10図のように、これら複屈折材料
4の屈折率楕円体7がyz平面10上にあり、その長軸がy
軸上となるよう、この複屈折材料4を配置した場合、屈
折率楕円体7は通過するビームをx軸方向に狭くする作
用をする{第10図(c)}ので、非線形光学結晶の屈折
率楕円体5によりx軸方向に広がったビーム{第10図
(b)}が補正され、断面円形に戻り、横モードのx及
びy方向の有効共振器長が等しくなる。
以上のように、非線形光学結晶の屈折率楕円体による
ビームの横モード変形を打ち消すような位置関係に複屈
折材料の屈折率楕円体が向くように、複屈折材料を配置
する。
円筒レンズや非球面レンズも、前記横モードの変形
(横方向への広がり)をレンズによる屈折で補正できる
ような形態で共振器内に配置する。
より具体的には説明すると、第11図に示したように、
非線形光学結晶3の屈折率楕円体5がyz平面6上にあ
り、その長軸が光軸(z軸)上にあるとする。このと
き、凸円筒レンズ9をその湾曲方向がxz平面に含まれる
ように光軸(z軸)上に配置すると、横モードのx及び
y方向の有効共振器長が等しくなり、横モード変形の補
正ができる。
傾斜板も、前記横モードの変形を補正できるように共
振器内に設置する。すなわち、横モードの広がり方向に
対して垂直方向に傾斜板の傾斜方向を合わせ、傾斜板を
通過したビームが円形となるようにする。
より具体的に説明すると、第12図に示したように、非
線形光学結晶3の屈折率楕円体5がyz平面6上にあり、
その長軸が光軸(z軸)上にあるとする。このとき、傾
斜板9をその傾斜方向がxz平面に含まれるように光軸
(z軸)上に配置すると、横モードのx及びy方向の有
効共振器長が等しくなり、横モード変形の補正ができ
る。
複屈折材料、円筒レンズ、非球面レンズ、傾斜板を挿
入することで、非線形光学結晶で生じた複屈折による2
つの偏光相互における有効共振器長のずれを一致でき
る。
なお、第9図〜第12図で、x,y、zは空間軸を示す。
〔作用〕
非線形光学結晶で生じるビームウォークオフにより非
線形光学結晶を通過する2偏光間で光軸がずれる。光軸
が相互にずれた2偏光が複屈折材料を通過すると、ずれ
ていた一方の偏光の光軸が他方の偏光の光軸に一致す
る。
また、複屈折材料、円筒レンズ、非球面レンズ、傾斜
板を挿入することで、非線形光学結晶で生じた複屈折に
よる2つの偏光相互における有効共振器長のずれを一致
できる。
本発明の共振器はレーザ装置用として好適に用いられ
る。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
<実施例1> ここでは、KTPを用いた高調波変換について説明す
る。
まず、半導体レーザ励起固体レーザを用意した。これ
は、半導体レーザアレイ21、集光レンズ22,23、共振器2
4を順に配列したものである。前記共振器24は、前記集
光レンズ22,23側から、レーザ媒質(ロッド)25、レン
ズ26、非線形光学結晶としてのKTP結晶27、出力ミラー2
8を順次配列した構造である。そして、レーザ媒質25はN
d:YAGで、前記集光レンズ22,23側端面に反射ミラー29が
反射膜コーティングにより形成されている。この反射ミ
ラーは波長810nmの光は透過させるが波長1064nmの光は9
9.9%反射する。また、前記出力ミラー28も波長1064nm
の光を99.9%反射し、532nmの光を透過させる。KTP27は
厚さ5mmのものを使用した。
半導体レーザ励起固体レーザでは、半導体レーザアレ
イ21から放出されるレーザビームをレーザ媒質の励起光
として利用する。
共振器24内において、第3図に示したように、前記KT
P27はその結晶軸{x、y、z}の内、z軸を中心とし
てx−y平面上で、z軸、y軸からそれぞれ21.3゜回転
させた方向をx′軸、y′軸とし、このx′軸方向を共
振器4の光軸に合わせて配置される。このKTP27を第4
図のように、z軸方向の偏光と、y′軸方向の偏光のレ
ーザモード(1064nm)が通過するとき、第二高調波(53
2nm)が発生する。
ここで、y′偏光が感じる屈折率楕円形を第5図に示
す。また、z偏光が感じる屈折率楕円体を第6図に示
す。
このとき、KTPの複屈折性に基づくビームウォークオ
フにより、第7図のように、z偏光に対し、y′偏光が
0.26度ずれるため、z偏光の光軸とy′偏光の光軸とが
ずれてしまう。
そこで、第8図のように水晶板からなるビームウォー
クオフ補償用複屈折材料27cを挿入した。この水晶板27c
は3.5mm厚で、z軸(水晶の軸)から45゜の方向に切り
出した。
この水晶板27cのz−x平面(水晶の結晶軸のz−x
平面)にKTP27のy′軸が含まれるように両素子を配置
した。
この結果、z偏光の光軸と、y′偏光の光軸のずれを
1/10に補償できた。
なお、この実施例の装置の共振器内に位相板(1/4波
長板、1/2波長板、その他)を挿入し、レーザモードの
偏光モードを制御すると発振がより良好となる。
<実施例2> 非線形光学結晶を通過するレーザモードの一方の偏光
の屈折率楕円体が他方のそれよりも大きい場合、前者の
偏光についてレンズ効果が生じ、非線形光学結晶の内部
において、楕円型横モードが生じる。このため、非線形
光学結晶への集光の最適化が図れず、高調波発生の高効
率化を妨げる。
そこで、ビームウォークオフ補償用水晶板27cを、ビ
ームウォークオフ補償用専用として使用し、さらに横モ
ード変形補正用の素子を追加することもできる。すなわ
ち、第13図のように、補正用光学素子としてのLN27aを
水晶板27cとKTP27との間に挿入した。このLN27aはLNの
z−x面で切り出してあり、そのy′軸方向を光軸に合
わせ、かつ、x軸を前記、z軸をKTP27のz軸と平行に
している、KTP27のz軸と直交させてある。
この横モード補正用のLN27aも、楕円型横モードを発
生するが、発生する楕円型横モードの長軸方向がKTP27
とLN27aとで直交するので(第10図)、相互に楕円横モ
ードを打ち消しあう。
したがって、KTPへの集光がよくなり、高調波出力が
増加する。
なお、KTP27,LN27aの両z軸を相互に平行としている
が、両者の交差角度は−10〜+10度の範囲であれば実用
的である。
なお、この実施例の装置の共振器内に位相板(1/4波
長板、1/2波長板、その他)26aを挿入し、レーザモード
の偏光を制御すると発振がより良くなる。
<実施例3> この実施例では、実施例2における横モード変形補正
用LN27aの代わりに、円筒レンズを使用したもので、他
の点は実施例と同一である。KTP27への集光がよくな
り、高調波出力が増加した。
〔発明の効果〕
本発明によれば、2つの偏光の光軸のずれを補正でき
るので、高調波発生を良好にすることができる。また、
さらには、横モード変形を補正でき、高効率の出力を得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明を示す概略図である。第2図〜第8図は
本発明の第1実施例を説明するための図で、第2図は実
施例1で用いた従来型の半導体レーザ励起固体レーザ、
第3図はKTPの結晶軸方向と光軸との関係を示した図、
第4図はKTPによる2つの偏光の発生状態を示した斜視
図、第5図はy′偏光が感じる屈折率楕円体、第6図は
z偏光が感じる屈折率楕円体、第7図はKTPによる光軸
ずれ状態を示した概略図、第8図は複屈折材料を挿入し
てビームウォークオフを補正した状態を示した図であ
る。第9図〜第13図は本発明の横モード変形補正を説明
するための図で、第9図(a)〜(c),第10図(a)
〜(c),第11図及び第12図は屈折率楕円体を用いた原
理説明図、第13図は横モード変形補正をした実施例を示
した図である。 3,27……非線形光学結晶、24……光共振器、 5,27c……ビームウォークオフ補償用複屈折材料、27a…
…横モード変形補正用光学素子、 θ……ビームウォークオフ角。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/108 G02F 1/37

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ビームウォークオフを生じる非線形光学結
    晶を内部に備え、光源からの光を、共振させて出力する
    光共振器において、前記非線形光学結晶によるビームウ
    ォークオフを補償する複屈折材料を備え、前記非線形光
    学結晶を通過した光の横モード変形を補正する補正用光
    学素子を共振器内に配置したことを特徴とする光共振
    器。
  2. 【請求項2】前記横モード変形補正用光学素子が、複屈
    折材料、円筒レンズ、非球面レンズ、傾斜板の内少なく
    ともいずれかである請求項1記載の光共振器。
  3. 【請求項3】ビームウォークオフ補償用の複屈折材料と
    横モード変形補正用の複屈折材料とが同一である請求項
    2記載の光共振器。
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