JP2936912B2 - 四輪駆動車の駆動力配分制御装置 - Google Patents

四輪駆動車の駆動力配分制御装置

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JP2936912B2
JP2936912B2 JP25179592A JP25179592A JP2936912B2 JP 2936912 B2 JP2936912 B2 JP 2936912B2 JP 25179592 A JP25179592 A JP 25179592A JP 25179592 A JP25179592 A JP 25179592A JP 2936912 B2 JP2936912 B2 JP 2936912B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、前後輪の一方へは直結
駆動で他方へはトルク配分用クラッチを介して駆動力が
伝達される四輪駆動車の駆動力配分制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の四輪駆動車の駆動力配分
制御装置としては、例えば、特開平2−270640号
公報に記載のものが知られている。
【0003】上記従来出典には、後輪駆動ベースで前輪
側への伝達トルクがクラッチの締結力制御により与えら
れる四輪駆動車において、前輪側伝達トルクとして、前
後輪回転速度差に比例した制御伝達トルクT1 ,発進時
にスロットル開度に比例した発進トルクT2 ,車速に比
例した初期トルクT3 をそれぞれ演算し、その最大値を
前輪側伝達トルクとして出力する制御技術が示されてい
る。
【0004】ここで、発進トルクT2 は、低摩擦係数路
での発進時に後輪がスピンせず十分なトラクションを得
るためのトルクである。また、初期トルクT3 は、低温
時(例えば−25℃)でも油圧の応答遅れ影響を受けず
に制御伝達トルクT1 を前輪側に伝達するためのトルク
で、トルク配分用クラッチをごく弱いトルクで接続する
ことで多板クラッチの隙間を埋めるための空走時間を削
減している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の四輪駆動車の駆動力配分制御装置にあっては、低摩
擦係数路での発進性や低温下での油圧応答性が得られて
好ましいものの、高摩擦係数路や常温下等の一般走行環
境下においても、本来は必要としない発進トルクT2
初期トルクT3 を常時与えている為、4輪駆動車特有の
燃費が悪化するという問題があった。
【0006】本発明は、上記のような問題に着目してな
されたもので、前後輪の一方へは直結駆動で他方へはト
ルク配分用クラッチを介して駆動力が伝達される四輪駆
動車の駆動力配分制御装置において、適切な4輪駆動制
御の基本性能を確保した上で燃費の向上を図ることを課
題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明の四輪駆動車の駆動力配分制御装置では、車両の
走行環境が適切な4輪駆動制御を必要とするか否かを判
別し、不必要時には制御伝達トルクを選択し、必要時に
は、制御伝達トルクと環境対応伝達トルクのうち最大値
を選択してクラッチ締結力制御を行なう手段とした。
【0008】即ち、図1のクレーム対応図に示すよう
に、前輪あるは後輪の一方へのエンジン直結駆動系の後
輪に対し後輪あるいは前輪の他方への駆動系の途中に設
けられるトルク配分用クラッチaと、前後輪の回転速度
差を検出する前後輪回転速度差検出手段bと、前記トル
ク配分用クラッチaを介して伝達される伝達トルクとし
て、前後輪回転速度差の発生がない限り制御伝達トルク
を零とし、前後輪回転速度差の発生時には前後輪回転速
度差情報に基づいて最適な旋回特性を得る制御伝達トル
クを算出する制御伝達トルク算出手段cと、前記トルク
配分用クラッチaを介して伝達される伝達トルクとし
て、特定の走行環境に応じた環境対応伝達トルクを制御
伝達トルクと別途に算出する少なくとも1つの環境対応
伝達トルク算出手段dと、前記制御伝達トルク算出手段
cで算出した制御伝達トルクに基づく路面学習により路
面摩擦係数を推定し、推定される路面摩擦係数が低路面
摩擦係数の時に車両の走行環境が適切な4輪駆動制御を
必要と判別し、高路面摩擦係数の時に車両の走行環境が
適切な4輪駆動制御を必要としないと判別する4輪駆動
必要性判別手段eと、前記4輪駆動必要性判別手段eに
より車両の走行環境が適切な4輪駆動制御を必要としな
いと判別された時、制御伝達トルクのみを選択し、4輪
駆動必要性判別手段eにより車両の走行環境が適切な4
輪駆動制御を必要とすると判別された時、制御伝達トル
クと環境対応伝達トルクのうち最大値を選択する伝達ト
ルク選択手段fと、前記伝達トルク選択手段fにより選
択された伝達トルクが得られるように前記トルク配分ク
ラッチaの締結力を制御するクラッチ締結力制御手段g
とを備えていることを特徴とする。
【0009】
【作用】4輪駆動必要性判別手段eにより車両の走行環
境が適切な4輪駆動制御を必要としないと判別された時
には、伝達トルク選択手段fにおいて、トルク配分用ク
ラッチaを介して伝達される伝達トルクとして、前後輪
回転速度差情報に基づいて最適な旋回特性を得る制御伝
達トルクが選択され、このトルクが得られるようにクラ
ッチ締結力制御手段gによりトルク配分用クラッチaの
締結力が制御される。
【0010】従って、高摩擦係数路走行時等のように適
切な4輪駆動制御を必要としないと判別される走行時に
おいては、前後輪回転速度差の発生がない限りトルク配
分用クラッチaを解放した2輪駆動状態とされ、燃費の
向上が図られる。尚、この不必要時でも制御伝達トルク
による旋回性向上性能が最小限確保される。
【0011】4輪駆動必要性判別手段eにより車両の走
行環境が適切な4輪駆動制御を必要とすると判別された
時には、伝達トルク選択手段gにおいて、トルク配分用
クラッチaを介して伝達される伝達トルクとして、前記
制御伝達トルクと特定の走行環境に応じた環境対応伝達
トルクのうち最大値が選択され、この選択されたトルク
が得られるようにクラッチ締結力制御手段gによりトル
ク配分用クラッチaの締結力が制御される。
【0012】従って、低摩擦係数路走行時や限界走行時
等のように適切な4輪駆動制御を必要とすると判別され
る走行時においては、環境対応伝達トルクが生かされ、
低μトラクション性能等の適切な4輪駆動制御の基本性
能が確保される。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。
【0014】(第1実施例)構成を説明する。
【0015】図2は本発明第1実施例のトルクスプリッ
ト制御システム(駆動力配分制御装置に相当)が適用さ
れた四輪駆動車の駆動系を含む全体システム図である。
【0016】第1実施例のトルクスプリット制御システ
ムが適用された車両は、後輪ベースの四輪駆動車であっ
て、その駆動系には、エンジン1,トランスミッション
2,トランスファ入力軸3,リヤプロペラシャフト4,
リヤディファレンシャル5,後輪6,トランスファ出力
軸7,フロントプロペラシャフト8,フロントディファ
レンシャル9,前輪10を備えていて、後輪6へはトラ
ンスミッション2を経過してきたエンジントルクが直接
伝達され、前輪10へは前輪駆動系である前記トランス
ファ入出力軸3,7間に設けてある湿式多板摩擦クラッ
チ11(トルク配分用クラッチに相当)を内蔵したトラ
ンスファクラッチ装置12を介して伝達される。
【0017】そして、駆動性能と操舵性能の両立を図り
ながら前後輪の駆動力配分を最適に制御するトルクスプ
リット制御システムは、湿式多板摩擦クラッチ11を内
蔵した前記トランスファクラッチ装置12(例えば、先
願の特願昭63−325379号の明細書及び図面を参
照)と、クラッチ締結力となる制御油圧Pcを発生する制
御油圧発生装置20と、制御油圧発生装置20に設けら
れたソレノイドバルブ28へ各種入力センサ30からの
情報に基づいて所定のディザー電流i*を出力するトル
クスプリットコントローラ40とを備えている。
【0018】前記油圧制御装置20は、リリーフスイッ
チ21により駆動または停止するモータ22と、該モー
タ22により作動してリザーバタンク23から吸い上げ
る油圧ポンプ24と、該油圧ポンプ24からのポンプ吐
出圧(一次圧)をチェックバルブ25を介して蓄えるア
キュムレータ26と、該アキュムレータ26からのライ
ン圧(二次圧)をトルクスプリット制御部40からのソ
レノイド駆動のディザー電流i*により所定の制御油圧
Pcに調整するソレノイドバルブ28とを備え、制御油圧
Pcの作動油は制御油圧パイプ29を経過してクラッチポ
ートに供給される。
【0019】前記各種入力センサ30としては、図3の
システム電子制御系のブロック図に示すように、左前輪
回転センサ30a,右前輪回転センサ30b,左後輪回
転センサ30c,右後輪回転センサ30d,横加速度セ
ンサ30e,前後加速度センサ30f,スロットル開度
センサ30gを有する。
【0020】前記トルクスプリット制御部40は、図3
のシステム電子制御系のブロック図に示すように、左前
輪速演算回路40a,右前輪速演算回路40b,左後輪
速演算回路40c,右後輪速演算回路40d,前輪速演
算回路40e,後輪速演算回路40f,回転速度差演算
回路40g,ゲイン演算回路40h,制御伝達トルク演
算回路40i,発進トルク演算回路40j,初期トルク
演算回路40k,4WD必要性判別回路40m,伝達ト
ルク選択回路40n,T−i変換回路40p,ディザー
電流出力回路40qを有する。
【0021】尚、図中、A/DはA/D 変換器、D/Aは
D/A 変換器である。
【0022】作用を説明する。
【0023】(イ)前後輪駆動力配分制御処理作動 図4は10msecの制御周期によりトルクスプリットコント
ローラ40で行なわれる前後輪駆動力配分制御処理作動
の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップにつ
いて順に説明する。
【0024】ステップ80では、制御情報として、左前
輪速VWFL,右前輪速VWFR,左後輪速VWRL,右後輪速
VWRR,横加速度YG,前後加速度XG,スロットル開度θが
入力される。
【0025】ステップ81では、上記左前輪速VWFLと右
前輪速VWFRとの平均値により前輪速VWF が演算され、上
記左後輪速VWRLと右後輪速VWRRとの平均値により後輪速
VWRが演算される。
【0026】ステップ82では、前輪速VWF と後輪速V
WR から前後輪回転速度差検出値ΔVW(=VWR −VWF
但し、ΔVW≧0)が演算される(前後輪回転速度差検出
手段に相当)。
【0027】ステップ83では、前後輪回転速度差ΔVW
に対する制御伝達トルクT1 の制御ゲインKhが横加速度
YGの逆数に基づいて下記の式で演算される。
【0028】Kh=αh /YG(但し、Kh≦βh ) 例えば、αh =1 でβh =10とした場合、図5(A)に
示す特性であらわされ、この制御ゲインKhは、あらゆる
路面摩擦係数において常にリニアなニュートラルステア
特性となる様に選ばれている。
【0029】ステップ84では、制御ゲインKhと前後輪
回転速度差ΔVWとによって制御伝達トルクT1 が演算さ
れる(制御伝達トルク算出手段に相当)。これをトルク
特性マップであらわすと図5(B)に示すようになる。
【0030】ステップ85では、前輪速VWF と前後加速
度XGとの関数により求められた車体速VCARとスロットル
開度θにより発進トルクT2 が下記の式で演算される
(環境対応伝達トルク演算手段の1つに相当)。
【0031】VCAR=f1 (VWF ,XG)で求められ、 T2 =f2 (VCAR,θ)で求められる。
【0032】なお、 T2 =0 …VCAR>20km/h T2 =K'・θ+T0 …VCAR≦20km/h (K’,T0 は定数) 例えば、K’=0.5(kgm/deg ),T0 =4(kgm )
に設定した場合、これをトルク特性マップであらわすと
図6に示すようになる。
【0033】ここで、スロットル開度θが所定値以上の
時に発進トルクT2 がでるように、 T2 =0 …VCAR>20km/h T2 =K'・(θ−θ0 )+T0 …VCAR≦20km/h 例えば、θ0 =30deg としてもよい。
【0034】ステップ86では、横加速度YGに応じて初
期トルクT3 が演算される(環境対応伝達トルク演算手
段の1つに相当)。
【0035】この初期トルクT3 は、横加速度が発生す
る旋回時にはクラッチプレート間の滑りを許容するよう
に、横加速度が大きくなるほどトルクレベルを低く設定
されるもので、例えば、直進時初期トルクT0'をT0'=
2(kgm) とし、YG0 =0.45(G),YG1 =0.6(G)とした場
合、これをトルク特性マップであらわすと図7に示すよ
うになる。
【0036】ステップ87では、走行距離L0 以内にT
1 >max (T2 ’,T0 ’)を1回以上経験したか否か
が判断される。
【0037】ここで、車速と時間の積算で監視される走
行距離L0 としては、例えば、L0 =1000kmと設定され
る。
【0038】また、判断に用いられる発進トルクT2
は、 T2 ’=0 …VCAR>20km T2 ’=T0 …VCAR≦20km で与えられる。
【0039】さらに、判断に用いられる初期トルクT3
は、直進時初期トルクT0'で与えられる。
【0040】そして、ステップ87でYESと判断され
た時には、ステップ88へ進み、4WDフラグが4WD
フラグ=1と設定され、ステップ87でNOと判断され
た時には、ステップ89へ進み、4WDフラグが4WD
フラグ=0と設定される。以上のステップ87〜ステッ
プ89は、4輪駆動必要性判別手段に相当する。
【0041】ステップ90では、ステップ89で4WD
フラグ=0と設定され時には、最終伝達トルクTとして
制御伝達トルクT1 が選択され、ステップ88で4WD
フラグ=1と設定された時には、最終伝達トルクTとし
て、制御伝達トルクT1 ,発進トルクT2 ,初期トルク
3 のうち最大値が選択される(伝達トルク選択手段に
相当)。
【0042】ステップ91及びステップ92では、前記
ステップ90で設定された最終伝達トルクTを得るべく
前記湿式多板摩擦クラッチ11の締結力が制御される
(クラッチ締結力制御手段に相当)。
【0043】ステップ91では、前記ステップ90で設
定された最終伝達トルクTが、予め与えられたT−i 特
性テーブルによりソレノイド駆動電流iに変換される。
【0044】ステップ92では、ソレノイド駆動電流i
がディザー電流i*に変換され(例えば、i±0.1A 100
Hz)、そのディザー電流i*がソレノイドバルブ28へ
出力される。
【0045】(ロ)適切な4輪駆動制御を必要としない
走行時 高摩擦係数路での通常走行時等であって、4輪駆動必要
性判断ステップであるステップ87でNOと判断された
時には、ステップ80〜ステップ86→ステップ87→
ステップ89→ステップ90→ステップ91→ステップ
92へと進む流れとなり、ステップ90では、最終伝達
トルクTとして、制御伝達トルクT1 が選択され、この
制御伝達トルクT1 が得られるように湿式多板摩擦クラ
ッチ11の締結力が制御される。
【0046】ここで、ステップ87では、走行距離L0
以内にT1 >max (T2 ’,T0 ’)を1回以上経験し
たか否かが判断されるが、この判断は長期的な路面学習
により路面摩擦係数を推定することを意味する。つま
り、低μ路走行時には、微妙なアクセルワークが要求さ
れ、例えば、わずかにアクセル踏み込み過ぎても駆動輪
スリップが発生してしまうことになり、前後輪回転速度
差に比例する制御伝達トルクT1 のレベルが高まり、必
然的にステップ87を満足することになる。尚、この路
面摩擦係数推定で低μ路を主体とする判断を示したが、
高μ路を主体とする判断、例えば、発進停止を50回繰
り返し、その間にT1 =Tmin が所定時間以上継続した
かどうか等により路面摩擦係数を推定するようにしても
良い。
【0047】従って、高摩擦係数路走行時等のように適
切な4輪駆動制御を必要としないと判別される走行時に
おいては、前後輪回転速度差の発生がない限り湿式多板
摩擦クラッチ11を解放した2輪駆動状態とされ、常
時、初期トルクT2 が付与され続けたり、発進時に高い
発進トルクT2 が付与される場合に比べて燃費の向上が
図られる。尚、この不必要時でも制御伝達トルクT1
よる旋回性向上性能が最小限確保される。
【0048】(ハ)適切な4輪駆動制御を必要とする走
行時 低摩擦係数路走行時や高摩擦係数路での限界走行時等で
あって、4輪駆動必要性判断ステップであるステップ8
7でYESと判断された時には、ステップ80〜ステッ
プ86→ステップ87→ステップ88→ステップ90→
ステップ91→ステップ92へと進む流れとなり、ステ
ップ90では、最終伝達トルクTとして、制御伝達トル
クT1 ,発進トルクT2 ,初期トルクT3 のうち最大値
が選択され、この最終伝達トルクTが得られるように湿
式多板摩擦クラッチ11の締結力が制御される。
【0049】従って、低摩擦係数路走行時や限界走行時
等のように適切な4輪駆動制御を必要とすると判別され
る走行時においては、下記に列挙するように、発進トル
クT2と初期トルクT3 による環境対応伝達トルクが生
かされ、低μトラクション性能等の適切な4輪駆動制御
の基本性能が確保される。
【0050】1) 発進トルクT2 により低μ路発進時で
あっても発進トラクションが確保される。
【0051】2) 初期トルクT3 により低温時の油圧応
答遅れが解消される。この結果、発進トルクT2 を付与
する発進加速時に応答良く高トルクを付与することで尻
振りが防止されるし、制御伝達トルクT1 による制御時
に応答良く制御伝達トルクT1が付与されることで、低
μ路旋回時や限界旋回時に狙った旋回性能が常に確保さ
れ、操安性が高まる。
【0052】3) 初期トルクT3 により高速直進走行時
に安定性と走破性が高まる。
【0053】以上説明してきたように、第1実施例の四
輪駆動車の駆動力配分制御装置にあっては、下記に記載
する効果が得られる。
【0054】(1)車両の走行環境が適切な4輪駆動制
御を必要とするか否かを判別し、不必要時には制御伝達
トルクT1 を選択し、必要時には、制御伝達トルクT1
と発進トルクT2 と初期トルクT3 のうち最大値を選択
してクラッチ締結力制御を行なう装置とした為、適切な
4輪駆動制御の基本性能を確保した上で燃費の向上を図
ることができる。
【0055】(2)環境対応伝達トルクとして、発進ト
ルクT2 と初期トルクT3 を制御伝達トルクT1 とは別
途に付与する装置とした為、車両の走行環境が適切な4
輪駆動制御を必要とすると判断された時、上記1),2),3)
の低μトラクション性能が発揮される。
【0056】(第2実施例)次に、第2実施例について
説明する。
【0057】この第2実施例のハード構成は、第1実施
例と全く同様であるので説明を省略する。
【0058】作用を説明する。
【0059】図8は第2実施例のトルクスプリットコン
トローラ40で行なわれる前後輪駆動力配分制御処理作
動の流れを示すフローチャートである。
【0060】図4に示す第1実施例のフローチャートと
異なるのは、4輪駆動必要性を判断するステップ93の
みである。このステップ93では、発進・停止を5回繰
り返す間に、T1 >max (T2 ’,T0 ’)を1回以上
経験したか否かが判断される。つまり、第1実施例のス
テップ87が長期的な路面学習により路面摩擦係数を推
定していたのに対し、ステップ93の判断は短期的な路
面学習により路面摩擦係数を推定している。これによっ
て、イグニッションをONにしてからOFFにするまで
の1回の走行中に路面摩擦係数が推定され、次の走行時
には改めて路面摩擦係数の推定が開始されることにな
る。尚、この路面摩擦係数推定で低μ路を主体とする判
断を示したが、高μ路を主体とする判断、例えば、イグ
ニッションのONからOFFまでの間にT1 =Tmin が
所定時間以上継続したかどうか等により路面摩擦係数を
推定するようにしても良い。
【0061】以上説明したように、第2実施例の四輪駆
動車の駆動力配分制御装置にあっては、第1実施例の効
果に下記の効果が加えられる。
【0062】(3)4輪駆動必要性を判断するにあたっ
て、短期的な路面学習により路面摩擦係数を推定する装
置とした為、バッテリーバックアップ回路を有さないト
ルクスプリットコントローラ40に採用することができ
る。
【0063】(第3実施例)次に、第3実施例について
説明する。
【0064】この第3実施例のハード構成は、第1実施
例と全く同様であるので説明を省略する。
【0065】作用を説明する。
【0066】図9は第2実施例のトルクスプリットコン
トローラ40で行なわれる前後輪駆動力配分制御処理作
動の流れを示すフローチャートである。
【0067】図4に示す第1実施例のフローチャートと
異なるのは、4輪駆動必要性を判断するにあたって、車
体速VCARに依存する最小限トルクTMIN を設定し(ステ
ップ94)、この最小限トルクTMIN を用いて4輪駆動
必要性を判断するようにしている(ステップ95,ステ
ップ96)。なお、4WDフラグの初期値は、4WDフ
ラグ=1である。
【0068】ステップ93では、最小限トルクTMIN
車体速VCARにより演算される。
【0069】この最小限トルクTMIN は、ステップ93
の枠内に記載のように、 TMIN =4(VCAR≦20km/h) TMIN =8(VCAR>20km/h) としても良いし、図10に示すように、最小限トルクT
MIN を車体速VCARに比例した可変値により与えるように
しても良い。
【0070】ステップ94では、一度、4WDフラグ=
0となった後、制御伝達トルクT1 がT1 ≧TMIN が成
立する時間間隔が250msec 以上連続する状態が、少なく
とも1回でも発生した場合、低μ路と判断し、ステップ
88へ進み、イグニッションOFFまで4輪駆動必要性
を示す4WDフラグ=1に設定される。
【0071】ステップ95では、イグニッションONで
セルフチェック終了後、完全停止〜20km/h以上の発進・
停止を2回経験する間に、T1 ≧TMIN が成立する時間
間隔が250msec 以上連続する状態が1回も発生しない場
合、高μ路と判断し、ステップ89へ進み、4輪駆動を
不要とする4WD=0に設定される。
【0072】以上説明したように、第3実施例の四輪駆
動車の駆動力配分制御装置にあっては、第1実施例の効
果に下記の効果が加えられる。
【0073】(4)車体速VCARに依存する最小限トルク
MIN (高速側で大)を設定し、この最小限トルクT
MIN を用いて4輪駆動必要性を判断するようにしている
ため、タイヤ径差があった場合、高μ路での高速走行時
に低μ路と誤判断されることが防止され、確実に路面摩
擦係数の判断ができる。
【0074】つまり、第1実施例や第2実施例では、低
μ路と高μ路の判別に、車体速VCARに依存しないしきい
値を用いているため、例えば、タイヤ径差があった場合
(特に、VWR >VWF の場合に厳しい)、高μ路での高速
走行時にしきい値を超え、低μ路と誤判断されることが
ある。
【0075】以上、実施例を図面に基づいて説明してき
たが、具体的な構成及び制御内容はこの実施例に限られ
るものではない。
【0076】例えば、実施例では、環境対応伝達トルク
として、発進トルクT2 と初期トルクT3 を適用した例
を示したが、ハンチング対策トルクやクラッチ保護トル
クやABS作動時トルクや限界トルクや前後加速度感応
トルクや減速トルクやフェイルセーフトルク等を含め、
これらの中から1つあるいは複数組み合せたものを環境
対応伝達トルクとしても良い。
【0077】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明にあっ
ては、前後輪の一方へは直結駆動で他方へはトルク配分
用クラッチを介して駆動力が伝達される四輪駆動車の駆
動力配分制御装置において、請求項1に記載したよう
に、路面摩擦係数の推定により車両の走行環境が適切な
4輪駆動制御を必要とするか否かを判別し、不必要時に
前後輪回転速度差の発生がない限り伝達トルクが零の
制御伝達トルクのみを選択し、必要時には、制御伝達ト
ルクと環境対応伝達トルクのうち最大値を選択してクラ
ッチ締結力制御を行なう装置とした為、4輪駆動制御が
必要であるとの判別時には環境対応伝達トルクを生かす
ことにより適切な4輪駆動制御の基本性能を確保した上
、4輪駆動制御が必要でないとの判別時には前後輪回
転速度差の発生がない限りトルク配分クラッチを解放し
た2輪駆動状態とされ、燃費の向上を図ることができる
という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の四輪駆動車の駆動力配分制御装置を示
すクレーム対応図である。
【図2】第1実施例のトルクスプリット制御装置(駆動
力配分制御装置)を適応した四輪駆動車の駆動系及び制
御系を示す全体システム図である。
【図3】第1実施例のトルクスプリット制御装置に用い
られた電子制御系を示すブロック図である。
【図4】第1実施例のトルクスプリットコントローラで
行なわれる前後輪駆動力配分制御処理作動の流れを示す
フローチャートである。
【図5】図5(A)は第1実施例のトルクスプリット制
御での制御伝達トルク特性の制御ゲイン特性図であり、
図5(B)は制御伝達トルク特性図である。
【図6】第1実施例のトルクスプリット制御での発進ト
ルク特性である。
【図7】第1実施例のトルクスプリット制御での初期ト
ルク特性である。
【図8】第2実施例のトルクスプリットコントローラで
行なわれる前後輪駆動力配分制御処理作動の流れを示す
フローチャートである。
【図9】第3実施例のトルクスプリットコントローラで
行なわれる前後輪駆動力配分制御処理作動の流れを示す
フローチャートである。
【図10】第3実施例装置で路面μ路判断に用いられる
最小限トルク特性図である。
【符号の説明】
a トルク配分用クラッチ b 前後輪回転速度差検出手段 c 制御伝達トルク算出手段 d 環境対応伝達トルク算出手段 e 4輪駆動必要性判別手段 f 伝達トルク選択手段 g クラッチ締結力制御手段

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前輪あるは後輪の一方へのエンジン直結
    駆動系の後輪に対し後輪あるいは前輪の他方への駆動系
    の途中に設けられるトルク配分用クラッチと、 前後輪の回転速度差を検出する前後輪回転速度差検出手
    段と、 前記トルク配分用クラッチを介して伝達される伝達トル
    クとして、前後輪回転速度差の発生がない限り制御伝達
    トルクを零とし、前後輪回転速度差の発生時には前後輪
    回転速度差情報に基づいて最適な旋回特性を得る制御伝
    達トルクを算出する制御伝達トルク算出手段と、 前記トルク配分用クラッチを介して伝達される伝達トル
    クとして、特定の走行環境に応じた環境対応伝達トルク
    を制御伝達トルクと別途に算出する少なくとも1つの環
    境対応伝達トルク算出手段と、前記制御伝達トルク算出手段で算出した制御伝達トルク
    に基づく路面学習により路面摩擦係数を推定し、推定さ
    れる路面摩擦係数が低路面摩擦係数の時に 車両の走行環
    境が適切な4輪駆動制御を必要と判別し、高路面摩擦係
    数の時に車両の走行環境が適切な4輪駆動制御を必要と
    しないと判別する4輪駆動必要性判別手段と、 前記4輪駆動必要性判別手段により車両の走行環境が適
    切な4輪駆動制御を必要としないと判別された時、制御
    伝達トルクのみを選択し、4輪駆動必要性判別手段によ
    り車両の走行環境が適切な4輪駆動制御を必要とすると
    判別された時、制御伝達トルクと環境対応伝達トルクの
    うち最大値を選択する伝達トルク選択手段と、 前記伝達トルク選択手段により選択された伝達トルクが
    得られるように前記トルク配分クラッチの締結力を制御
    するクラッチ締結力制御手段と、 を備えていることを特徴とする四輪駆動車の駆動力配分
    制御装置。
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