JP2935985B2 - シリンダヘッドガスケット - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のシリン
ダブロックとシリンダヘッドとの間に装着されるシリン
ダヘッドガスケットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から知られている金属積層形ガスケ
ットでは、燃焼室穴の周りで、一方の外板の折返し部に
より複数の金属板を挟持させ、あるいはグロメットを用
いて、複数の金属板を挟持させ、その部分の金属板の積
層厚さを他の平坦部よりも厚く形成し、締め付け時の面
圧を集中させるようにしている。この場合に、積層する
各金属板の燃焼室穴側の端縁は、単に打抜き加工された
ままであるのが一般的である。

【０００３】しかしながら、燃焼室用の穴を単に打ち抜
いたままの複数の金属板を重ねて、上記折返し部または
グロメットで挟持させる場合、それらの折曲部と金属板
の穴端縁との間に若干の隙間が生じ、これがシリンダ内
における繰り返し燃焼に伴って上記折曲部を微振動させ
る原因になるばかりでなく、燃焼室に対面することによ
り過酷な環境にある該折曲部からの熱の散逸を阻害し、
さらに、場合によっては上記隙間に封じ込められたガス
の熱膨張が上記折返し部やグロメットによる金属板の挟
持に対して悪影響を及ぼすことがある。また、金属板の
打抜きにより形成された穴端縁のエッジが、シリンダブ
ロックに対するシリンダヘッドの締付けに伴って上記折
曲部に圧接することがあるが、それに伴う応力集中ばか
りでなく、エンジンの運転に伴う上記圧接の繰り返しが
折曲部の疲労、破損を著しく進行させることになる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の技術的課題
は、上記折曲部の振動等の原因となる隙間を可及的に小
さくすると共に、燃焼室穴端縁のエッジによる折返し部
またはグロメットの折曲部における疲労、破損を抑制
し、その耐久性を高めることにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、複数枚の金属板を積層することにより形
成し、シリンダブロックの燃焼室に対応する複数の燃焼
室穴を備えると共に、各燃焼室穴の穴縁において一枚の
金属板の折返し部またはグロメットで積層金属板を挟着
することにより、該燃焼室穴の周囲のシール部における
金属板の積層厚さを他の平坦部よりも厚く形成し、その
部分に締め付け時の面圧を集中させるようにしたシリン
ダヘッドガスケットにおいて、上記積層した金属板にお
ける燃焼室穴縁側端面の断面形状を、上記折返し部また
はグロメットの折曲部内面に面接触する湾曲面とし、そ
の湾曲面の包絡線を上記折曲部内面に一致させたことを
特徴とするものである。

【０００６】上記構成を有する本発明のシリンダヘッド
ガスケットは、積層した金属板における燃焼室穴縁側端
面の断面形状を、その包絡線が上記折返し部またはグロ
メットの折曲部の内面に沿う形状としているので、該折
曲部の振動や過熱の原因となる隙間をなくして該折曲部
を積層金属板に接触させ、あるいはその隙間を可及的に
小さくすることができる。即ち、積層金属板の燃焼室穴
側端面の断面形状の包絡線が折曲部の内面に沿い、両者
が全面的に接触することがないにしても、部分的には面
接触するので、折曲部の振動が抑制されるばかりでな
く、その接触部を通して積層金属板側に熱が散逸し、該
折曲部の過熱防止にも有効に作用する。それと同時に、
上記燃焼室穴端縁のエッジをなくすので、上記折曲部に
おいて、シリンダヘッドの締付けに伴う該エッジの圧接
による応力集中、あるいはエンジンの運転に伴う圧接の
繰り返しによる上記折曲部の疲労、破損を抑止すること
ができ、さらには、上記折返し部あるいはグロメットに
より挟着される金属板の燃焼室穴縁側の端面と上記折曲
部との間に封じ込められたガスの熱膨張によって、折返
し部またはグロメットに何らかの悪影響が及ぶこともな
く、結果的に、該折返し部またはグロメットにおける折
曲部の耐久性を高めることができる。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図
面に基づいて詳細に説明するに、図１及び図２は本発明
のシリンダヘッドガスケットの第１実施例を示してい
る。

【０００８】このシリンダヘッドガスケットは、金属板
により形成した外板２，４と、それらの外板２，４間に
包合された中板６Ａ，６Ｂとを備え、シリンダブロック
の燃焼室に対応する複数の燃焼室穴８のほかに、該燃焼
室穴８の周囲に分散して必要数の水穴及びオイル穴等を
備え、さらに、燃焼室穴８の周囲にほぼ均等に配置され
たボルト穴を備えている。

【０００９】上記燃焼室穴８の周囲に設けたシール部８
ａにおいては、図２に詳細に示すように、外板２の一部
を折り返し、この折返し部２Ａによって外板４及び中板
６Ａ，６Ｂを挟着している。そして、それらの金属板の
うちの中板６Ａにおける折返し部２Ａが重積される部分
において、積層した金属板の積層厚さを調節するための
段差６ａを形成することにより、該シール部８ａにおけ
る金属板（外板２，４、及び中板６Ａ，６Ｂ）の積層厚
さを他の平坦部よりも若干厚く形成して、その部分に締
め付け時の面圧を集中させるようにしている。この段差
６ａは、上記シール部８ａにおける積層した金属板の全
体的な積層厚さを調節するためのもので、上記折返し部
２Ａにより挟着される金属板のうちの外板４、中板６Ａ
あるいは中板６Ｂのいずれに形成してもよく、その加工
深さは上記折返し部２Ａの厚さよりも浅く、従って、該
折返し部２Ａの厚さとこの段差６ａの深さとの差だけ、
上記シール部８ａが他の平坦部よりも厚く形成されるこ
とになる。また、上記段差６ａの深さをコイニング加工
による金属板（中板６Ａ）の圧縮変形によって部分的に
変化させれば、面圧を高める部分に予め必要な厚さの金
属板を部分的に積層する場合に比して、段差６ａの深さ
を連続的に調整することができ、その深さと折返し部２
Ａの板厚との関係を微小に変化させて、面圧分布の調整
を極めて容易に行うことができる。

【００１０】さらに、上記中板６Ａ，６Ｂは、必要があ
れば外板４と共に、それらの金属板により形成される燃
焼室穴縁側端面の断面形状を、上記折曲部２ａの内面に
面接触する湾曲面６ｂ，６ｃとし、それらの包絡線が上
記折曲部２ａの内面に一致するようにしており、それに
より、該折曲部２ａと湾曲面６ｂ，６ｃとの間の隙間を
可及的に小さくしている。

【００１１】上記構成を有する第１実施例のシリンダヘ
ッドガスケットは、中板６Ａ及び中板６Ｂにより形成さ
れる燃焼室穴縁側端面の断面形状を、それらの包絡線が
上記上記折返し部２Ａにおける折曲部２ａの内面に沿う
ような湾曲面６ｂ，６ｃとしているので、該折曲部２ａ
の振動や過熱の原因となる隙間をなくして該折曲部２ａ
を中板６Ａ及び中板６Ｂに接触させ、あるいはその隙間
を可及的に小さくすることができる。即ち、中板６Ａ，
６Ｂの湾曲面６ｂ，６ｃが折曲部２ａの内面に沿い、両
者が全面的に接触することがないにしても、部分的には
面接触するので、折曲部２ａの振動が抑制されるばかり
でなく、その接触部を通して熱が積層金属板側に散逸
し、該折曲部２ａの過熱防止にも有効に作用する。それ
と同時に、燃焼室穴端縁のエッジをなくすので、上記折
曲部２ａにおいて、シリンダヘッドの締付けに伴う該エ
ッジの圧接による応力集中、あるいはエンジンの運転に
伴う圧接の繰り返しによる上記折曲部２ａの疲労、破損
を抑止することができ、さらには、上記中板６Ａ，６Ｂ
における燃焼室穴縁側の端面と、外板２における折曲部
２ａとの間に封じ込められたガスの熱膨張によって、折
返し部２Ａによる積層金属板の挟持に何らかの悪影響が
及ぶこともなく、結果的に、該折返し部２Ａにおける折
曲部２ａの耐久性を高めることができる。

【００１２】なお、図２においては、上記外板４におけ
る燃焼室穴縁側の端面と、上記折返し部２Ａにおける折
曲部２ａとの間に微小な隙間が形成されているが、この
隙間は、上記湾曲面６ｂ，６ｃを設けない場合に比して
極めて微小であり、したがって、この隙間に封入される
ガスの熱膨張によって上記折返し部２Ａによる積層金属
板の挟持に何らかの悪影響が及ぶことはない。

【００１３】次に、図３は本発明の第２実施例を示して
おり、このシリンダヘッドガスケットは、同図からわか
るように、金属板により形成した外板２，４とそれらの
外板２，４間に包合された中板６Ａ，６Ｂとを備えてお
り、燃焼室穴８の穴縁において、それらの積層した金属
板のうち、厚さ調整のために該穴縁側を切断した中板６
Ｂを除く、外板２，４及び中板６Ａをグロメット１２で
挟着することにより、該燃焼室穴８の周囲のシール部８
ａにおける金属板の積層厚さを他の平坦部よりも若干厚
く形成し、また、上記グロメット１２が重積される部分
において、上記中板６Ａに段差を形成している。そし
て、上記中板６Ａの燃焼室穴縁側の端面形状を、その断
面の包絡線が上記グロメット１２の折曲部１２ａの内面
に接触するか、あるいは可及的に沿う曲線からなる湾曲
面６ｂとしている。

【００１４】なお、この第２実施例のその他の構成及び
作用は、前記第１実施例と同等であるから、同一または
相当部分に同一符号を付して、それらの説明を省略す
る。

【００１５】ここで、本発明のシリンダヘッドガスケッ
トにおいては、積層する金属板は、２枚であっても、あ
るいは３枚以上であってもよく、必要に応じていずれか
の金属板にビードを設けることもできる。また、上記中
板６における段差６ａは必ずしも設ける必要はなく、さ
らに、上記湾曲面は、中板のみに設けたものに限定され
ず、上記外板２の折返し部２Ａあるいはグロメット１２
により挟着される積層金属板のいずれにも設けることが
できる。

【００１６】

【発明の効果】以上に詳述したように、本発明のシリン
ダヘッドガスケットによれば、積層した金属板における
燃焼室穴縁側端面の断面形状を、その包絡線が上記折返
し部またはグロメットの折曲部の内面に沿う形状として
いるので、該折曲部内における振動や過熱の原因となる
隙間をなくして該折曲部を積層金属板に接触させ、ある
いはその隙間を可及的に小さくすることができる。それ
と同時に、上記燃焼室穴端縁のエッジをなくすので、上
記折曲部において、シリンダヘッドの締付けに伴う該エ
ッジの圧接による応力集中、あるいはエンジンの運転に
伴う圧接の繰り返しによる上記折曲部の疲労、破損を抑
止することができ、さらには、上記折返し部あるいはグ
ロメットにより挟着される金属板の燃焼室穴縁側の端面
と上記折曲部との間に封じ込められたガスの熱膨張によ
って、折返し部またはグロメットに何らかの悪影響が及
ぶこともなく、結果的に、該折返し部またはグロメット
における折曲部の耐久性を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例を示す部分破断平面図であ
る。

【図２】図１のＡ−Ａ拡大端面図である。

【図３】本発明の第２実施例における図２と同様な位置
での要部拡大端面図である。

【符号の説明】

２，４ 外板 ２Ａ 折返し部 ２ａ，１２ａ 折曲部 ６Ａ，６Ｂ 中板 ６ａ 段差 ８ 燃焼室穴 ８ａ シール部 １２ グロメット

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数枚の金属板を積層することにより形成
   し、シリンダブロックの燃焼室に対応する複数の燃焼室
   穴を備えると共に、各燃焼室穴の穴縁において一枚の金
   属板の折返し部またはグロメットで積層金属板を挟着す
   ることにより、該燃焼室穴の周囲のシール部における金
   属板の積層厚さを他の平坦部よりも厚く形成し、その部
   分に締め付け時の面圧を集中させるようにしたシリンダ
   ヘッドガスケットにおいて、 上記積層した金属板における燃焼室穴縁側端面の断面形
   状を、上記折返し部またはグロメットの折曲部内面に面
   接触する湾曲面とし、その湾曲面の包絡線を上記折曲部
   内面に一致させた、 ことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。