JP2932298B2 - パラジウム有機化合物の製造法 - Google Patents

パラジウム有機化合物の製造法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、新規なパラジウム有機化合物に関し、特に
積層セラミックコンデンサの電極形成材やレジネートペ
ーストのパラジウム提供成分として有用な溶剤溶解性に
富み、印刷の均一性、成膜性、保存性、操作性に優れた
ペースト組成物を与えるパラジウム有機化合物の製造法
に関する。
[従来技術] 従来、パラジウムを含む組成物の応用例としてパラジ
ウム厚膜ペーストが、積層セラミックコンデンサの内部
電極や端子電極あるいは可変抵抗器、ネットワーク抵抗
器等の形成材として用いられている。これらの目的に用
いられているパラジウム厚膜ペーストは、金属パラジウ
ムの粉末粒子と結合剤とをビヒクル中に分散した懸濁分
散液であるため、均一な溶液状態を保つことは難しかっ
た。したがって、従来の厚膜ペーストでは緻密な膜の形
成が難しいため、膜のピンホールが出来易く、さらに印
刷解像度の優れたファインラインのエッチングが難し
く、パターンの微細化が不可能であるなど問題が多かっ
た。また、厚膜(5〜20μm)しか得られないので、デ
ラミネーションクラックの発生を抑制することが困難で
あるという問題もあった。
一方、電子機器基板の配線用材料として従来、金、銀
などの貴金属が用いられていたが、近年はこれらのもの
に代り金含有有機化合物を金源とするペースト用組成物
が多く使用されるようになってきた。たとえば、印刷
性、成膜性、保存性、操作性に優れたそのような組成物
の一例として本出願人による特願平2−6797号「ペース
ト用金含有有機組成物およびその製法」に開示されてい
るようなレジネートペースト材が開発されている。
これに対し、パラジウム厚膜ペーストについては、上
記の金含有有機化合物に相当するような適当な有機化合
物が開発されていなかった。
[発明が解決しようとする課題] 上述のように従来、積層セラミックコンデンサの内部
電極等の電極材として用いられてきたパラジウム厚膜ペ
ーストは均一性に欠け、しかもこれを使用する場合、5
〜20μmの厚膜しかできないため、5μm以下の薄膜形
成用としても好適な改善されたペースト材の開発が望ま
れていた。
さらにレジネートペースト材のパラジウム提供成分と
して新規なパラジウム系有機化合物の出現も期待されて
いたが、現実にはこの種のものは皆無であったために、
そういった物質の開発が課題となっていた。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、斬る課題を解決するために鋭意研究し
たところ、tert−アルキルメルカプタンまたはtert−ア
ルキルフェニルメルカプタンに塩化パラジウムの硫化ア
ルキル錯対を反応させることによって、安定な有機パラ
ジウム誘導体を合成することができ、またこれをパラジ
ウム源として用いれば均一でかつ薄膜形成もできるパラ
ジウム厚膜形成用ペースト材が得られることを見い出し
た。
すなわち本発明の主眼は、tert−アルキルメルカプタ
ン(ただしアルキル基の炭素数は4〜20である)を、塩
化パラジウムの硫化アルキル錯体(ただしアルキルの炭
素数は1〜4であることが好ましい)に反応させてパラ
ジウムtert−アルキルメルカプチドを合成することを特
徴とする新規なパラジウム有機化合物の製法と、 tert−アルキルフェニルメルカプタン(ただしアルキ
ル基の炭素数は4〜20である)と塩化パラジウムの硫化
アルキル錯体(ただしアルキルの炭素数は1〜4である
ことが好ましい)を反応させてパラジムtert−アルキル
フェニルメルカプチドを合成することを特徴とする新規
なパラジウム有機化合物の製造法を提供することであ
る。
[作用] 本発明の合成法において反応体の一つとして使用され
る塩化パラジウムの硫化アルキル錯体は、パラジウム粉
末を王水で溶解し、希塩酸で脱硝を行った後に硫化メチ
ルを加えて得られたものである。
硫化アルキル錯体としては、硫化メチルのみならず硫
化エチル、硫化プロピル、硫化ブチルなどアルキルの炭
素数が1〜4の他のアルキル錯体も用いることができる
が、特に硫化メチルが好ましいことが確認された。
積層セラミックコンデンサの内部電極や端子電極ある
いは可変抵抗器、ネットワーク抵抗器等の形成に使用さ
れるパラジウム含有有機化合物として、本発明に従って
tert−アルキルメルカプタンまたはtert−アルキルフェ
ニルメルカプタンを塩化パラジウムの硫化アルキル錯体
とそれぞれ反応させて得たパラジウム有機化合物を用い
れば、従来のように金属パラジウムの粉末粒子を直接ビ
ヒクルに分散させたものでないため所望の厚さのかつ均
一な膜形成に使用できるという効果が顕著である。
本発明の別の目的物として、電子機器基板の配線等に
用いるパラジウムレジネートペースト等のペースト用パ
ラジウム含有有機組成物がある。
このペースト用パラジウム含有有機組成物は、少なく
とも1種のパラジウムtert−アルキルメルカプチド(た
だしアルキル基の炭素数は4〜20、好ましくは8〜16で
ある)を含む組成物として調製するのが好ましい。これ
はレジネートペースト溶剤として通常使用される精油類
(主としてターピネオール)に対して20wt%以上の溶解
度を有するものを選ぶ必要があるからであり、また、該
溶剤自体高粘度かつ高沸点という特性を有するため、上
記パラジウムメルカプチドとの組合わせによって所望の
印刷性、成膜性、保存性に優れたペーストとなることが
確認されたからである。
上記レジネートペースト中に含まれるパラジウムの量
は少なくとも2.5wt%以上であることが好ましい。その
ためには合成したパラジウムメルカプチド化合物中のパ
ラジウム含有量が13wt%以上となるようにする必要があ
る。レジネートペースト中のパラジウム量が、たとえば
2.5wt%以下という少ない量になると、成膜の緻密性が
悪くなる。
合成したパラジウムメルカプチド化合物は、100〜300
℃で熱分解するものであることが好ましい。熱分解温度
が300℃を超えるような高い温度であると、焼成温度を
熱分解温度に対応する温度まで昇温しなければならず、
これが成膜の緻密性を悪くする要因となり、一方100℃
より低い温度では、不安定で良好な成膜ができないから
である。
本発明の合成法により得られるパラジウム含有有機化
合物は、2つの群に大別することができる。一つは、te
rt−オクチルメルカプタン(tert−C8H17SH)、tert−
デシルメルカプタン(tert−C10H21SH)、tert−ドデシ
ルメルカプタン(tert−C12H25SH)、tert−ヘキサデシ
ルメルカプタン(tert−C16H33SH)などに代表されるア
ルキル基の炭素数が4〜20、好ましくは8〜16であるte
rt−アルキルメルカプタンを塩化パラジウムの硫化アル
キル錯体(ただしアルキル基の炭素原子が1〜4のも
の)、特に好ましくは硫化メチル錯体に反応させて得ら
れるパラジウムtert−アルキルメルカプチドであり、も
う一つは、p−tert−ブチルフェニルメルカプタン o−メチル−p−tert−ブチルフェニルメルカプタン p−tert−ヘキシルフェニルメルカプタン p−tert−ドデシルフェニルメルカプタン などのアルキル側鎖の炭素数が4〜20好ましくは8〜16
であるtert−アルキルフェニルメルカプタンを塩化パラ
ジウムの硫化アルキル錯体(ただしアルキル基の炭素数
が1〜4のもの)、特に好ましくは硫化メチル錯体に反
応させて得られるパラジウムtert−アルキルフェニルメ
ルカプチドである。これら2群のメルカプチドのうちレ
ジネートペースト用としては前者のパラジウムtert−ア
ルキルメルカプチドが好ましいことは既に述べた通りで
ある。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1] パラジウム粉末10.6g(0.1mol)を、室温で王水に撹
拌しながら約5時間溶解させ、完全に溶解した後90℃に
加熱しながら硝酸が無くなるまで希塩酸を数回加えて脱
硝して、H2[PdCl6]の水溶液を得た。この水溶液に純
水を加えてH2[PdCl6]の濃度が0.05mol/lの水溶液に調
整した。次いで、この水溶液を撹拌しつつ冷却して5℃
以下に保持し続け、硫化メチルを1滴ずつ沈殿が析出し
なくなるまで加えた。この反応の反応式は次の通りであ
る。
H2[PdCl6]・H2O+nMe2S→ Me2S・PdCl2+4Hcl+DMSO+H2O 次にこの反応混合物をクロロホルム80mlで希釈した後
水相を傾しゃ法で分離除去し、さらに純水を各回250ml
ずつ用いて、同様の傾しゃ法で有機相を3回洗浄した。
次に、水洗した有機層を5〜12℃に保持しながら、20ml
のクロロホルムで希釈したtert−ドデシルメルカプタン
(tert−C12H25SH)22.2g(0.11mol)を加え、室温に戻
し、約3時間撹拌して、次式で示される反応を完結させ
た。
Me2S・PdCl2+2tert-C12H25SH→(tert−C12H25S)2Pd+te
rt-C12H25SPdCl 次にこの反応混合物を再び純水各250mlを用いて3回
洗浄し、有機相をメタノール1中に撹拌しながらゆっ
くりと滴下して沈殿を析出させた。沈殿が完全に析出す
るまでに約1時間を要した。
析出した沈殿物を吸引濾過後メタノールを各回100ml
ずつ用いて3回洗浄し、減圧乾燥を行なった。
得られた乾燥結晶を再びクロロホルム80mlに溶解し、
tert−ドデシルメルカプタン11.1g(0.055mol)をクロ
ロホルム10mlで希釈して、これに加え、約3時間ゆるや
かに加熱した。
加熱後、この溶液を純水各回250mlを用いて3回洗浄
し、有機相をメタノール1中に撹拌しながらゆっくり
滴下した後、さらに1時間撹拌を行いながら析出を完了
させた。
得られた沈殿物を吸引濾過し、これにメタノールを10
0mlずつ用いてメルカプタンの臭いが完全に無くなるま
で繰返し洗浄した後、減圧乾燥してパラジウム−tertド
デシルメルカプチドを得た。
同様な操作を、tert−ドデシルメルカプタンの代りに
tert−ヘキサデシルメルカプタン、p−tert−ブチルフ
ェニルメルカプタン、およびtert−ドデシルメルカプタ
ン50mol%−tert−ヘキサデシルメルカプタン50mol%混
合物をそれぞれ用いて行なった。これにより得られた4
種類のパラジウム有機化合物とその収率を第1表に示し
た。
[実施例2] 硫化メチルを硫化エチルに代えた他は、実施例1と同
一条件でパラジウムtert−ドデシルメルカプチドの合成
を行った。その結果、生成物の物性は実施例1の生成物
と全く同一であったが、パラジウムtert−ドデシルメル
カプチドの収率は61wt%から52wt%に減少した。
アルキル基の炭素数が多くなるほど収率が減少すると
いう結果になったが、これら合成物の実用性には問題は
全く無い。
[実施例3] 実施例1で合成したパラジウムtert−ドデシルメルカ
プチド(No.1)、パラジウムtert−ヘキサデシルメルカ
プチド(No.2)、パラジウムp−tert−ブチルフェニル
メルカプチド(No.3)、パラジウムtert−ドデシルメル
カプチドとパラジウムtert−ヘキサデシルメルカプチド
との混合物(No.4)の各々について、25℃におけるター
ピネオールへの溶解度(重量%)を測定しその結果を第
2表に示した。
No.3に示すパラジウムp−tert−ブチルフェニルメル
カプチドからなるパラジウム有機化合物は、ターピネオ
ールに対して不溶であるため、電子機器基板の配線に用
いるパラジウムレジネートペースト材としては使用でき
ないことが判明したが、積層セラミックコンデンサの内
部電極材や可変抵抗器、ネットワーク抵抗器形成用のペ
ーストとしては均一なペーストとして用いることができ
た。
一方、パラジウムtert−アルキルメチルカプチド類
(No.1、No.2、No.4)はターピネオールに対する溶解度
に優れパラジウムレジネートペースト材として適したも
のであることが確認できた。また、均一なペーストとし
て積層セラミックコンデンサの内部電極形成用に用い得
ることも確認できた。
[発明の効果] 上述のように本発明は新規なパラジウム有機化合物の
製造法を提供するもので、この化合物は従来品に比較し
てより薄層状にかつより均一にパラジウム膜を形成する
目的に使用できる他、レジネートペースト材のパラジウ
ム提供成分として新たな用途に応用できるなど多大な効
果を有するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田▲崎▼ 雄三 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同和鉱業株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07F 15/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】tert−アルキルメルカプタン(ただしアル
    キル基の炭素数は4〜20である)に、塩化パラジウムの
    硫化アルキル錯体を反応させてパラジウムtert−アルキ
    ルメルカプチドを合成することを特徴とするパラジウム
    有機化合物の製造法。
  2. 【請求項2】tert−アルキルフェニルメルカプタン(た
    だしアルキル基の炭素数は4〜20である)に、塩化パラ
    ジウムの硫化アルキル錯体を反応させてパラジウムtert
    −アルキルフェニルメルカプチドを合成することを特徴
    とするパラジウム有機化合物の製造法。
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