JP2921765B2 - イオン導電性高分子組成物 - Google Patents

イオン導電性高分子組成物

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JP2921765B2 JP1284312A JP28431289A JP2921765B2 JP 2921765 B2 JP2921765 B2 JP 2921765B2 JP 1284312 A JP1284312 A JP 1284312A JP 28431289 A JP28431289 A JP 28431289A JP 2921765 B2 JP2921765 B2 JP 2921765B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はイオン導電性高分子組成物およびその製造方
法に関する。
[従来の技術および発明が解決しようとする課題] 近年、電池、表示素子(ECD等)等の電子デバイス
は、高性能化、小形化、薄型化が一段と進んでいる。そ
れに伴いそれらに用いられるイオン導電性材料も高性能
化はもちろんのこと、固体化、高信頼性、高柔軟性、高
成形加工性、耐湿性等種々の高度な要求がなされてい
る。
従来、このようなイオン導電性材料としては、 (1)電解質を水、水性溶剤または有機溶剤に溶解した
電解質溶液: (2)ベータ・アルミナ(β−Al2O3)、窒化リチウム
(Li3N)、ヨウ化リチウム−アルミナ(LiI−Al2O3)、
ヨウ化銀ルビジウム等の無機質からなる固体電解質材
料: (3)高分子樹脂マトリックスに周期律表第I族または
第II族金属の塩を溶解、分散させた固体電解質材料: 等が知られている。
しかし、(1)の電解質溶液は、材料に水または有機
溶剤等の液体を用いているため、電子デバイス外部への
漏液という問題が常に存在し、この漏液によりデバイス
の性能劣化や周辺部品の損傷を引き起こす場合がある。
この欠点を改善するために、電解質溶液中に高分子化合
物を混合して糊状あるいはゲル状にしたイオン導電性材
料もあるが、この材料にしても漏液の問題を完全に払拭
できるものではなかった。また、(2)の固体電解質材
料は本質的に高信頼性の長寿命な電子デバイスに適用で
き、かつ、小形、薄型化の要求に応じうる材料である。
しかし、現状では室温で十分に導電性のある材料は得ら
れておらず、広く実用化されるまでに至っていない。ま
た、(3)の固体電解質材料は本質的に(2)と同様、
漏液という問題が解決されうるばかりか、有機高分子特
有の高柔軟性、高成形加工性といった優れた特性の付与
が期待できるので、前述の電子デバイスの広範な要求に
応じうる材料として注目を浴びている。かかる固体電解
質材料に用いられる高分子のイオン導電性材料に要求さ
れる特性としては、 イ)含有させる電解質(金属塩)の溶解量が十分に大き
く、かつ、イオンに解離させる能力が大きいこと ロ)解離したイオンが高分子マトリックス中を移動し易
いこと 等があげられる。以上の条件を満たす高分子構造として
はPEO(ポリエチレンオキシド)等のポリエーテルセグ
メントを含む架橋体が比較的よい導電性を示すため、種
々検討がなされている。しかし、PEOの単体を架橋した
だけでは分子運動性に限界があり、室温で十分な導電率
が得られていない。そこで、この欠点を改良するため
に、分子運動性の極めて高いシロキサンセグメントとPE
Oセグメントとを組み合わせた固体電解質の合成が試み
られている。例えば、特開昭60−216463号広報、特開昭
60−217263号広報および特開昭63−142061号広報にはSi
−O−C結合により結合されたシロキサンとPEOとの共
重合体の架橋物にリチウムイオン等を分散させてイオン
導電性材料としたものが記されている。しかし、Si−O
−C結合は水の存在により容易に切断されるため、材料
としての取扱が極めて不便である。また、ソリッドステ
ートアイオニクス(Solid State Ionics),15,233(198
5)等にはポリエチレングリコールを側鎖に有するポリ
シロキサンを2官能性イソシアナートにより架橋固化さ
せ、金属イオンを分散させてイオン導電性材料としたも
のが開示されている。しかし、この場合、十分な強度を
出すまで固化させるにはNCO基の量をOH基に対して十分
に過剰に加えなければならないが、残存NCO基は電池等
のデバイスに組み込んだ場合、電極材と反応を起こす恐
れがあり、実用化には問題があった。さらに、特開昭62
−209169号広報にはシロキサンとPEOとの架橋物の製造
方法として白金触媒によるヒドロシリル化反応や放射線
(電子線等)の照射による架橋方法を挙げ、これらに、
金属イオンを分散させて、イオン導電性材料としたもの
が開示されている。しかし、これらの方法の場合、ま
ず、白金触媒を用いる場合は、系内に白金が残留するこ
とになり、得られた固体電解質は着色を呈するので、表
示素子には適さないばかりか、リチウムイオン等のキャ
リアイオンの移動度を低下させる恐れがあった。また、
放射線による架橋方法は以上のような欠点は除去できる
が、設備に莫大な費用がかかるため、実用化には至って
いない。
また特開昭62−209169号広報等に開示されたイオン導
電性材料の製造方法は、2種以上の原料を相溶させるた
めに有機溶剤を用いる必要があった。有機溶剤の使用は
一部の製品には適用できないばかりか工程の煩雑化を招
き、また作業環境の悪化、周辺材料の損傷、最終生成物
への溶剤の残留等を起こす恐れがあった。また溶剤によ
り原料が相溶できても、溶剤が蒸発する過程などで相分
離を起こす等により架橋反応の完結性が完全には保証さ
れず、結局製品の品質の低下、再現性のなさ等に結び付
くため実用化には問題があった。
一方、特開昭62−209169号広報を初めとして現在まで
に開示された多くのシロキサンとPEOの架橋物からなる
イオン導電性材料は、金属塩を分散させているために正
イオン(金属イオン)と同時に負イオンの移動が起こる
ものであった。負イオンの移動は多くの場合、弊害とな
ることが多い。例えば、イオン導電性材料を電池等のデ
バイスの電解質に組み込んだ場合、負イオンの移動によ
り電解質内に分極が起こることにより内部抵抗が経時的
に増大して行き、金属イオンの定常電流が流れない。
負イオンは正イオンとの電荷補償のために存在せざる
を得ないが、その移動度をなるべく低下させること、す
なわち、正イオン単独伝導型イオン導電性固体材料の作
製が試みられている。例えば、日本化学会1988春期年会
講演番号2X II C08には、オクタメチルシクロテトラシ
ロキサンとベンゼンスルホン酸メチルエステルをプラズ
マ重合させた後、PEOを複合させ、さらにヨウ化リチウ
ムで処理することによりスルホネートイオンが固定され
たリチウムイオン単独伝導型イオン導電性薄膜が開示さ
れている。しかし、この場合、プラズマ重合はモノマー
の構造を100%保存させるのは困難なため、完全なリチ
ウムイオン単独伝導型イオン導電体にはならない他、プ
ラズマ重合のため、応用範囲に制約があるという欠点が
あった。
このように、現在まで提案されたポリシロキサンと他
の高分子材料の架橋物からなる固体電解質は、いずれも
特性あるいは製造方法に欠点を有しており、前述の電子
デバイスへの応用としては満足すべきものではなかっ
た。
本発明者らはかかる問題点を解決すべく悦意検討した
結果、特定の共重合体架橋物中に特定の金属イオンを分
散させてなる材料が、上記のような欠点がなくイオン導
電性に優れ、しかも組成を操作することにより正イオン
単独伝導型イオン導電性材料になり得、またその製造方
法が上記のような欠点を払拭できることを見出し本発明
に到達した。
本発明の目的は電池、表示素子等の電子デバイスの固
体電解質として好適に使用可能なイオン導電性高分子組
成物およびその製造方法を提供するにある。
[課題の解決手段とその作用] かかる本願発明は、 (1)(A)1分子中に少なくとも2個のカルボキシル
基含有炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンと
(B)一般式 (式中、R1は一価の炭化水素基,R2,R3はアルキレン基,R
4は一価の炭化水素基,l,nは0〜1000の整数,mは2〜100
0の整数,pは1〜100の整数である。)で示されるポリオ
キシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサンとを
エステル化反応させてなる共重合体架橋物と(C)周期
律表第I族または第II族の金属イオンとからなり、該金
属イオンが前記共重合体架橋物中に分散していることを
特徴とするイオン導電性高分子組成物に関する。
これについて説明するに、(A)成分のオルガノポリ
シロキサンは、本発明のイオン導電性高分子組成物の共
重合体架橋物を構成する主剤となるものであって、該共
重合体架橋物を形成するためには1分子中に2個以上の
カルボキシル基含有炭化水素基を有することが必要であ
り、また、このカルボキシル基含有炭化水素基が結合し
たシロキサン単位とそれ以外のシロキサン単位の比率が
0.01〜100の範囲内にあるものが好ましい。
本成分の分子構造は直鎖状、分岐状、環状、網状、三
次元構造の何れでもよいが、共重合体架橋物の形成の容
易さからその半数以上は直鎖状もしくは分岐状であるこ
とが好ましい。また、その分子量は特に限定されない
が、製造の容易さ、共重合体架橋物としての適度の硬さ
を得るためには200〜900の範囲内にあることが好まし
い。(A)成分のカルボキシル基含有炭化水素基として
は、例えば、一般式HOOC−R8−(式中、R8はメチレン
基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基,ペンチレ
ン基,ヘキシレン基,ヘプチレン基,オクチレン基等の
炭素数1〜8のアルキレン基またはフェニレン基,ナフ
チレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基である。)で
示される基が挙げられ、これらの中でもカルボキシアル
キル基が好ましく、カルボキシプロピル基が特に好まし
い。(A)成分中のカルボキシル基含有炭化水素基以外
の有機基としては、例えば、メチル基,エチル基,プロ
ピル基等のアルキル基;フェニル基,トリル基,キシリ
ル基等のアリール基;ベンジル基,フェネチル基等のア
ラルキル基が例示される。また、ケイ素原子に結合した
基としては、少量の水素原子,アルコキシ基が含まれて
もよい。これらの中でも経済性および良好な共重合体架
橋物の形成性の観点からはケイ素原子に結合した有機基
の半数以上はメチル基であることが好ましい。かかるオ
ルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端
がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルカルボキシ
プロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分
子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチル
カルボキシプロピルシロキサン・メチルフェニルシロキ
サン共重合体が挙げられる。
かかるオルガノポリシロキサンの合成方法としては種
々の方法が知られているが、その1つの方法としてはシ
アノ基を有するオルガノジクロロシランとシアノ基を有
さないオルガノジクロロシランを共加水分解して得られ
る環状物を硫酸水溶液中でかくはんし、シアノ基がカル
ボキシル基に転化する反応と開環重合を起こさせる方法
が挙げられる。
(B)成分のオルガノシロキサンは上記(A)成分の架
橋剤であり、架橋剤としての働きをするためには、1分
子中に少なくとも2個の水酸基を含有することが必要で
ある。また、高イオン導電性発現のため共重合体架橋物
中にはPEO単位を有することが好ましいが、そのために
は(B)成分はオキシアルキレン単位を含有することが
必要である。
かかるオルガノポリシロキサンは上式中、R1は、メチ
ル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基;フェニル
基,トリル基,キシリル基等のアリール基;ベンジル
基,フェネチル基等のアラルキル基で例示される1価炭
化水素基である。また、これらR1は経済性および良好な
共重合体架橋物の形成性の観点からその半数以上がメチ
ル基であることが好ましい。R2はメチレン基,エチレン
基,プロピレン基,ブチレン基,ペンチレン基,ヘキシ
レン基,ヘプチレン基,オクチレン基等の炭素数1〜8
のアルキレン基である。R3はメチレン基,エチレン基,
プロピレン基,ブチレン基,ペンチレン基,ヘキシレン
基,ヘプチレン基等のアルキレン基である。R4はメチル
基,エチル基,プロピル基等のアルキル基;アセチル基
またはプロピオニル基等のアシル基等で例示される1価
炭化水素基でありNは0〜1000の範囲内であり、mは2
〜1000の範囲内であり、それぞれ特に限定されないが、
(A)成分と(B)成分が相溶するためにはlと(m+
n)の比率は(1:5)〜(5:1)の範囲内が好ましい。
かかるグラフト共重合体の合成方法としては種々の方
法が知られているが、その1つの方法としては側鎖の一
部が水素原子で置き換わったオルガノポリシロキサン
に、片末端に不飽和炭化水素基を有し他末端にアシロキ
シ基を有するポリオキシアルキレンと、片末端に不飽和
炭化水素基を有し他末端にトリメチルシリル基を有する
ポリオキシアルキレンを所定の比率によりヒドロシリル
化反応によりグラフトさせ、しかる後に過剰量のアルコ
ールによりグラフト末端のトリメチルシリル基のみを水
酸基に転化する方法が挙げられる。
本発明に使用される共重会体架橋物は上記のようなA
成分と(B)成分とを反応させてなるものであるが、A
成分とB成分に加えてD成分として次のようなポリオキ
シアルキレンを共重合架橋物の成分として使用すること
が好ましい。
すなわち、一般式HO−(R5O)q−H(式中、R5はア
ルキレン基,qは1〜100の整数である。)で示される分
子鎖両末端に水酸基を有するポリオキシアルキレンまた
はHO−(R6O)r−R7(式中、R6はアルキレン基,R7は一
価の炭化水素基,rは1〜100の整数である。)で示され
る分子鎖片末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン
である。
かかるポリオキシアルキレンは上式中、R5,R6はメチ
レン基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基,ペン
チレン基,ヘキシレン基,ヘプチレン基等のアルキレン
基であり、R7はメチル基,エチル基,プロピル基等のア
ルキル基;アセチル基またはプロピオニル基等のアシル
基で例示される1価炭化水素基である。q,rは1〜100の
範囲内であり、5〜20の範囲内が好ましい。
かかる分子鎖両末端に水酸基を有するポリオキシアル
キレンまたは分子鎖片末端に水酸基を有するポリオキシ
アルキレンは上記(A)成分と縮合反応し、共重合体架
橋物中にポリオキシアルキレンの架橋鎖またはグラフト
鎖の含有量を増やす働きをする。
(C)成分はイオン導電性付与剤であり、これは、周期
律表第I族または第II族に属するものであればよく特に
限定されない。かかる金属イオンとしてはリチウム,ナ
トリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム等の金
属イオンが例示される。これらの中でも単位体積あるい
は単位重量当りのエネルギー密度を大きくするためには
リチウムイオンが好ましい。また、本発明のイオン導電
性材料を電池などに適用する場合は、用いられる電極材
と同種のイオン(例えば、電極材がリチウムの場合はリ
チウムイオン)を選択する必要がある。
かかる(C)成分は、金属水酸化物の形態で使用され
る。(リチウムイオンの場合は水酸化リチウム(LiO
H))。
すなわち、(C)成分は、(A)成分と(B)成分の
エステル化反応の触媒作用をすると同時に、最終的には
(A)成分中のカルボキシル基を脱水によりリチウムカ
ルボキシレート化する役割をする。その結果、共重合体
架橋物としては、負イオン(カルボキシレートイオン)
はシロキサンポリマー鎖に固定され、対イオンである正
イオン(金属イオン)が分散された形になる。
また、その分散量は共重合体架橋物中のオキシアルキ
レン基のモル数[RO]に対する金属イオンのモル数
[M+](例えば[Li+]等)比[M+]/[RO]は0.005〜
0.25とすることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.1
である。これは[M+]/[RO]が0.25を越えると共重合
体架橋物の極性が上がり、セグメントの運動性が悪くな
り、また0.005未満になるとキャリア数の低下から高い
イオン導電性が得難くなるからである。
本発明のイオン導電性高分子組成物は、一般のカルボ
キシル基を有する化合物と水酸基を有する化合物とのエ
ステル化反応に使用されている従来公知の技術手段によ
って容易に製造されるが、次のような製造方法が好まし
い。
すなわち、(A)1分子中に少なくとも2個のカルボ
キシル基含有炭化水素基を有するオルガノポリシロキサ
ン、(B)一般式 (式中、R1は一価の炭化水素基,R2,R3はアルキレン基,R
4は一価の炭化水素基,l,nは0〜1000の整数,mは2〜100
0の整数,pは1〜100の整数である。)で示されるポリオ
キシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサンをエ
ステル化反応させてなる共重合体架橋物と(C)周期律
表第I族または第IIの金属酸化物からなる混合物を加熱
することにより硬化せしめるという方法である。
これについて説明するに、ここで使用される(A)成
分〜(C)成分は前記イオン導電性高分子組成物の説明
した(A)成分〜(C)成分と同じである。
これらの成分の配合割合は、(B)成分中の水酸基の
モル数と(C)成分中の水酸基のモル数の合計と(A)
成分中のカルボキシル基のモル数の比が(1:10)〜(1
0:1)の範囲内であり、(1.0:1.2)〜(1.2:1.0)の範
囲内が好ましい。これは(A)〜(C)成分はいずれの
比率でもエステル化反応が起こり、固体化した共重合体
架橋物が得られるが、(B)成分中の水酸基のモル数と
(C)成分中の水酸基のモル数の合計と(A)成分中の
カルボキシル基のモル数の比が大幅に異なると、本発明
のイオン導電性高分子組成物中に未反応のカルボキシル
基または水酸基が残存した状態となる傾向にある。この
ようにして得られたイオン導電性材料を電池等に応用し
た場合には、電極材との反応等の弊害が起こることが予
想されるので好ましくない。また、上記のモル比を完全
に1にすれば、正イオン種は金属イオンのみ、負イオン
種は固定されたカルボキシレートイオンのみとなり、完
全な正イオン単独伝導型イオン導電性高分子組成物とな
る。
(C)成分の配合量は(A)成分と(B)成分との合
計量100重量部に対して0.5〜20重量部である。これは、
この範囲外だとイオン導電性が低下し実用に供さなくな
るからである。
この方法においては(A)成分〜(C)成分からなる
混合物を加熱するのであるが、加熱はエステル化反応を
促進すると同時にエステル化反応によって発生した副生
物である水を除去するための技術手段であり、その温度
は通常150℃以下である。
また、この架橋反応は無溶媒の条件で行うことができ
る。(A)成分と(B)成分は撹はん等の操作で容易に
均一に混合できる。(C)成分はオキシアルキレン鎖に
対して溶解性を持つので、(B)成分に予め溶解させて
おくか、(A)成分と(B)成分を混合させた後に添加
してもよい。
(C)成分のオキシアルキレン鎖への溶解は撹はん等
の操作でも可能だが、溶解時間短縮のためには加熱ある
いは超音波照射等の操作あるいはごく少量の水の添加が
効果的である。
また、溶解工程において溶剤の使用が許容できる場合
には、有機溶剤中で(A)成分〜(C)成分を混合、溶
解させ、しかる後に溶剤を蒸発させてもよい。かかる有
機溶剤は特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフ
ラン,ジオキサン,アセトニトリル,ジメチホルムアミ
ド,ジメチルスルホキシドが挙げられる。
また、このエステル化反応は副生物として水を生成す
るので、最終的には(A)成分〜(C)成分の混合体を
減圧下に置くことが好ましく、例えば、常圧加熱下でエ
ステル化反応をある程度進行させた後に減圧下で加熱
し、生成した水の除去とエステル化反応の完結を同時に
行う方法が推奨される。ただし、溶解工程に溶剤を使用
した場合は、常圧下に溶剤の沸点以下でエステル化反応
をある程度進行させた後に、溶剤を蒸発させ、しかる後
に減圧下で加熱する必要がある。
[実施例] 以下、実施例にて、本発明をより詳細に説明する。
尚、イオン導電性率の測定は次の方法により行った。
イオン導電性高分子組成物をフィルム状に成形し、測
定用試料とした。この試料の厚さをマイクロメーターで
測定した後、試料の両面に直径1cmの円形プレート状の
白金電極を密着し、この全体を任意の温度に設定できる
減圧容器ないに設置し、10-5Torr以下の高真空まで減圧
して試料の状態が十分に平衡に達した後、LCRメーター
(横河ヒューレットパッカード社製4192A)により5Hz〜
13MHzの交流電圧を印加し、複素インピーダンス法によ
り導電率を測定した。
実施例1 下記に示される化合物(1)0.252g、化合物(2)0.
7g、過塩素酸リチウム27.9mgとを撹はん混合し、超音波
を照射して十分に溶解させた。この溶液を3cm四方のテ
フロン製の皿に流し込み、ホットプレート上で120℃で
2時間加熱した後、真空乾燥器にて140℃で4日間真空
乾燥したところ、0.3mmの厚さの透明なフィルムを得
た。このフィルムの赤外吸収スペクトルを調べたとこ
ろ、水酸基および遊離カルボン酸に由来するピークが認
められないこと、カルボニル基に由来するピークが1740
cm-1にみられることから、エステル化反応はほぼ完全に
行われていることがわかった。フィルムのイオン導電率
を測定したところ、25℃で2.4×10-5S・cm-1の値が得ら
れた。
化合物(1): 化合物(2): 実施例2 実施例1で使用した化合物(1)0.181g、下記に示さ
れる化合物(3)0.819g、過塩素酸リチウム30mgを撹は
ん混合し、超音波を照射して十分に溶解せしめ、1規定
塩酸エタノール溶液3μを加えたて、イオン導電性の
混合物をえた。ついで、この混合物から実施例1と同様
にして0.3mmの厚さの透明なフィルムを得た。このフィ
ルムの赤外吸収スペクトルを調べたところ、水酸基およ
び遊離カルボン酸に由来するピークが認められないこ
と、エステル生成によるカルボニル基の伸縮振動ピーク
が1740cm-1にみられることことから、エステル化反応は
ほぼ完全に行われていることがわかった。このフィルム
イオンの導電率を測定したところ、25℃で3.8×10-5S・
cm-1の値が得られた。
化合物(3): 実施例3 実施例1で使用した化合物(1)0.379g、実施例2で
使用した化合物(3)0.382g、下記に示される化合物
(4)0.239gおよび過塩素酸リチウム28.0mgを撹はん混
合し、超音波を照射して十分に溶解せしめ、0.1規定塩
酸エタノール溶液3μを加えた。この溶液から実施例
1と同様にして、0.3mmの厚さの透明なフィルムを得
た。このフィルムのイオン導電率を測定したところ、25
℃で4.0×10-5S・cm-1の値が得られた。
化合物(4): HO(CH2CH2O)12H 実施例4 実施例1で使用した化合物(1)0.35g、実施例2で
使用した化合物(3)0.398g、実施例3で使用した化合
物(4)0.166g、下記に示される化合物(5)0.085gお
よび過塩素酸リチウム29.1mgとを撹はん混合し、超音波
を照射して十分に溶解せしめ、0.1規定塩酸エタノール
溶液3μを加えた後、実施例1と同様にして、0.3mm
の厚さの透明なフィルムを得た。このフィルムのイオン
導電率を測定したところ、25℃で5.7×10-5S・cm-1の値
が得られた。
化合物(5): HO(CH2CH2O)12CH3 [発明の効果] 本発明のイオン導電性高分子組成物は、(A)成分と
(B)成分とからなる特定の共重合体架橋物中に(C)
成分の金属イオンが分散しているので室温で高いイオン
導電率を示し、これを電子デバイス等へ適用した際には
液漏れ、副作用等の弊害がない、内部抵抗の経時低下を
防ぐ等の特徴を有する。従って高信頼性の製品が得られ
る他、無色透明のため幅広い用途が期待できる。また、
その製造方法は、上記のようなイオン導電性高分子組成
物を生産性よく製造し得るという特徴を有する。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01M 6/18 H01M 6/18 E 10/40 10/40 A

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)1分子中に少なくとも2個のカルボ
    キシル基含有炭化水素基を有するオルガノポリシロキサ
    ンと (B)一般式 (式中、R1は1価の炭化水素基,R2,R3はアルキレン基,R
    4は1価の炭化水素基,1,nは0〜1000の整数,mは2〜100
    0の整数,pは1100の整数である。)で示されるポリオキ
    シアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサンとをエ
    ステル化反応させてなる共重合体架橋物と (C)周期律表第I族または第II族の金属イオンとから
    なり、該金属イオン が前記共重合体架橋物中に分散していることを特徴とす
    るイオン導電性高分子組成物。
  2. 【請求項2】(A)1分子中に少なくとも2個のカルボ
    キシル基含有炭化水素基を有するオルガノポリシロキサ
    ンと (B)一般式 (式中、R1は1価の炭化水素基,R2,R3はアルキレン基,R
    4は1価の炭化水素基,1,nは0〜1000の整数,mは2〜100
    0の整数,pは1〜100の整数である。)で示されるポリオ
    キシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサンおよ
    び (C)周期律表第I族または第II族の金属水酸化物から
    なる混合物を加熱することにより硬化せしめることを特
    徴とする、イオン導電性高分子組成物の製造方法。
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