JP2919538B2 - 複合積層生地 - Google Patents

複合積層生地

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、パイ、ペストリー、クラッカー、レモンパ
フなどの積層構造を有する菓子の製造に用いられる複合
積層生地に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
積層構造を有する菓子は、パイ、ペストリーが代表的
なものであり、かかる積層構造を菓子に付与させる方法
としては、従来種々のものが知られている。
例えば、圧延したドウ生地の中に、油脂(バター、マ
ーガリンなど)を包み込むなどして、ドウ生地−油脂−
ドウ生地の構造を作り、折り畳み操作を行い多層構造に
する方法、ドウ生地中に粒状の油脂を分散させ、ドウ生
地で油脂を包み込んだ構造を作り、折り畳み操作を行い
多層構造にする方法などがある。これらドウ生地−油脂
の交互構造を持った積層生地は、オーブンで焼成した
際、油脂層が水蒸気(イースト菌を含む場合は炭酸ガス
も含む)の逸散を適度に抑えてパフするため、積層構造
を持った菓子になる。
一方、わが国においては、近年の高度経済成長と所得
水準の上昇にともない、食生活の分野でも嗜好の高級
化、多様化が起こり、ベーカリー部門でも、従来の食パ
ン、アンパン、ジャムパン、クリームパンだけでなく、
各種のバラエティブレッド、パイ、ペストリー、調理パ
ンなどを、手広くかつ新鮮な(焼きたての)状態で提供
するオーブンフレッシュベーカリーが隆盛を極めてい
る。このようなオーブンフレッシュベーカリーのセール
スポイントは、客を飽きさせない新鮮さと品揃えであ
り、経営者は店の特徴付け(差別化)、人手や製造用ス
ペースの確保と製造コストとの兼ね合いに頭を痛めてい
た。
こうした状況のもとで、各種油脂の包み込み−圧延−
折り畳みなど、製造に極めて手間を要するパイ、ペスト
リーなどの積層菓子については、品揃えが困難であるば
かりでなく、風味の優れたバターを使用する場合は、バ
ターの特性、すなわち温度による稠度変化が大きいた
め、油脂層が切れドウ生地層が付着合体するなどして、
良好な積層生地ができず、省力化などのため一旦作った
積層生地を冷凍保管する場合においては、さらに劣化が
促進される欠点があった。
また、イースト菌を含む積層生地においては、バター
の使用の有無にかかわらず、冷凍保管によってイースト
菌の活性の低下が起こり、このような生地をオーブンで
焼成しても、パフ性の良好な積層菓子は得られなかっ
た。
従って、本発明の目的は、上記の欠点の改良された複
合積層生地を提供することにある。
すなわち、本発明の第一の目的は、各種積層生地の組
合せにより、パフ性、風味、色調、外観、価格面などに
おいて、非常にバラエティ化された各種積層菓子を、簡
単に手間のかかることなく製造することができる複合積
層生地を提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、バターを使用した積層
生地のパフ性を改良した複合積層生地を提供することに
ある。
また、本発明の第三の目的は、冷凍処理によって活性
の落ちたイースト菌のパフ性を補完した複合積層生地を
提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、上記第一〜第三の目的を、パイ生地、ペス
トリー生地、パン生地又はクロワッサン生地から選ばれ
た小麦粉主体のドウ生地でロールイン専用マーガリンを
包み込み、圧延−折り畳み操作を行って得られるロール
イン専用マーガリン使用積層生地で、パイ生地、ペスト
リー生地、パン生地又はクロワッサン生地から選ばれた
小麦粉主体のドウ生地でバターを包み込み、圧延−折り
畳み操作を行って得られるバター使用積層生地を、挟み
込むように重ね合わせ、さらに圧延−折り畳み操作を行
って得られる、複合積層生地を提供することにより達成
したものである。
以下、本発明の複合積層生地について詳述する。
本発明に用いられる小麦粉主体のドウ生地としては、
小麦粉に、油脂及び水と、必要に応じて卵、粉乳、食
塩、糖類、呈味剤、イースト菌、膨張剤などを加えて捏
上げた、パイ生地、ペストリー生地、パン生地又はクロ
ワッサン生地が用いられる。
上記小麦粉主体のドウ生地の大きさや形状は、特に制
限がなく、油脂を包み込むことができるものであればよ
い。また、包み込む際の形態も特に制限はなく、例え
ば、シート状の油脂を上記ドウ生地で袋状に包み込んだ
りする他、粒状又は塊状の油脂を上記ドウ生地の中に分
散させたりしてもよい。
本発明において、上記小麦粉主体のドウ生地の中に包
み込まれる油脂としては、ロールイン専用マーガリン及
びバターが用いられる。
上記油脂を用いる際の油脂の形状は、上記ドウ生地に
包み込むことができる形状であれば特に制限はないが、
通常、シート状に成形されたものや、ダイス状、粒状に
成形されたものが用いられる。
上記油脂の上記ドウ生地に対する使用比率は、上記ド
ウ生地100重量部に対して、上記油脂20〜60重量部、特
に30〜50重量部が好ましい。油脂の量が20重量部未満の
場合は、パフ機能が悪く、浮きの悪い積層菓子となり、
また60重量部を越える場合は、生地作成時の操作性が悪
くなるとともに、オイリーな、オイルオフの激しい積層
菓子となる。
本発明の複合積層生地は、まず上記小麦粉主体のドウ
生地に上記油脂を包み込み、圧延−折り畳み操作を行
って得られる積層生地を、2種以上作り、次いで、これ
らの積層生地を重ね合わせ、さらに圧延−折り畳み操作
を行って得られる。ロールイン専用マーガリンとは、
特にロールイン操作を行って作られる生地向けに作られ
たもので、伸展性、粘弾性に優れ、圧延−折り畳み操作
に耐えられる特性を有するマーガリンとして市販されて
いるようなマーガリンである。
バター使用積層生地とロールイン専用マーガリン使用
積層生地を重ね合わせる場合は、ロールイン専用マーガ
リン使用積層生地でバター使用積層生地を中間に挟み込
むように重ね合わせることにより、パフ性及び風味の良
好な積層菓子を得ることができる。
本発明において、積層生地を作るための圧延−折り畳
み操作は、麺棒、リバースシーターなどの機械を用い
て行うことが可能であり、12〜64層の積層生地を得るの
が好ましい。
また、積層生地の重ね合わせ後に行う圧延−折り畳み
操作は、圧延−折り畳み操作と同様にして行われ、
48〜256層の複合積層生地を得るうようにするのが好ま
しし。
本発明の複合積層生地は、そのまま焼成したり、或い
は一旦冷凍処理後、解凍、焼成することにより、積層菓
子を得ることができる。
上記冷凍処理は、通常の食品の冷凍に用いられる装置
及び手段を適宜用いて行えばよい。
〔実施例〕 以下に本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を
更に詳しく説明する。
実施例1 下記配合及び下記製法により、本発明の複合積層生地
からなるパイを製造した。
〔製法〕 (1)配合に従い、小麦粉をミキサーに入れる。
(2)冷水(約5℃)、卵及び食塩を均一に混合し、
(1)に加え、低速2分、中速4〜5分で混合、撹拌す
る。
(3)ショートニングを加え、低速2分、中速3分、高
速1分で混合、撹拌する。捏上生地温度20℃±1℃。
(4)生地をリターダー(2℃)に入れ、レスティング
をとる。約1時間。
(5)生地で折り込み用油脂を包み込む。
(6)4つ折り2回行い、16層の生地を得る。
(7)生地をリターダーに入れ、レスティングをとり、
マーガリン使用積層生地を得る。
(8)配合に従い、上記(1)〜(7)と同工程でバ
ター使用積層生地を得る。
(9)上記(8)で得られたバター使用積層生地(配合
)を、上記(7)で得られたマーガリン使用積層生地
(配合)の間に挟むように重ね合わせた後(厚さ約30
m/m)、4つ折り1回行い、厚さ10m/mまで圧延し、縦10
0m/m、横10m/mの短冊状に切断し、断面が上になるよう
に天板に並べる。
(10)200℃で12分間焼成し、パイを得る。
得られたパイは、パイの浮き(10枚平均)が50m/m
で、層構造が連続層で、火通りが良好であった。また、
その風味及び食感は、軽い食感のバター風味であった。
配合のマーガリン使用積層生地は、伸展性、粘弾性
に優れたロールイン専用のマーガリンを使用しているた
め、パイ生地中の油脂層が連続層となり、パフ性能の優
れた生地である。一方、配合のバター使用積層生地
は、バターの伸展性、粘弾性温度範囲が狭いため、レス
ティング後の圧延時に、生地と折り込み用油脂の固さが
合致せず、生地中で油脂切れを生じ、油脂層が不連続層
となり、パフ性能の低下した生地である。
配合との積層生地を重ね合わせた本発明の複合積
層生地は、火通りのよい、軽い食感の、バター風味の優
れたパイを得ることができる。
このようなパイは、前記の2種類の油脂を合わせた
り、事前に混合したりした場合には得ることは不可能で
ある。
比較例1 下記配合及び下記製法により、パイを製造した。
〔配合〕
実施例1の配合に同じ。
〔製法〕 (1)上記配合に従い、実施例1の工程(1)〜(6)
と同様にして、16層の生地を得る。
(2)リターダーに入れ、レスティングをとる。
(3)4つ折り1回、2つ折り1回を加え、厚さ10m/m
まで圧延し、縦100m/m、横10m/mの短冊状に切断し、断
面が上になるように天板に並べる。
(4)200℃で12分間焼成し、パイを得る 得られたパイは、パイの浮き(10枚平均)が40m/m
で、層構造が不連続であり、火通りは不良であった。ま
た、その風味及び食感は、バター風味であるが、重い食
感であった。
参考例1 下記配合及び下記製法により、積層菓子を製造した。
〔製法〕 (1)配合に従い、小麦粉をミキサーに入れる。
(2)冷水(約5℃)、卵、食塩、砂糖、脱脂粉乳、イ
ースト及びイーストフードを(1)に加え、低速2分、
中速3分で混合、撹拌する。
(3)ショートニグを加え、低速2分、中速3分で混
合、撹拌する。捏上生地温度20℃±1℃。
(4)生地をリターダー(0〜2℃)に入れ、レスティ
ングをとる。約3時間。
(5)生地で折り込み用油脂を包み込む。
(6)3つ折り2回行い、9層の生地を得る。
(7)生地をリターダーに約3時間入れ、レスティング
をとる。
(8)6m/mまで圧延して、イーストを含む積層生地を得
る。
(9)配合に従い、実施例1の工程(1)〜(7)と
同様にして、64層の生地を得、該生地を厚さ6m/mまで圧
延して、イーストを含まない積層生地を得る。
(10)上記(9)で得られた積層生地の上に、上記
(8)で得られた積層生地を重ね、3つ折り1回行う。
このときの層数は、イーストを含む積層生地が27層、イ
ーストを含まない積層生地が192層で、合計219層であ
る。
(11)この複合積層生地を厚さ4m/mまで圧延し、縦120m
/m、横100m/mの長方形に切断し、餡、スイートポテトな
どのフィリングを乗せて、ターンオーバー型に成形す
る。
(12)200℃で15分間焼成し、積層菓子を得る。
得られた積層菓子は、浮き(10個平均)が35m/mで、
フィリング底部の火通りは良好であった。また、その風
味及び食感は、軽い食感のバター風味、醗酵風味であっ
た。
この参考例で得られた積層菓子は、イーストを含む積
層生地(デニッシュ・ペストリー生地)とイーストを含
まない積層生地(パイ生地)とを組合せてなるもので、
パイ生地のパフ機能が加わった従来にない新規な積層菓
子である。
比較例2 下記配合及び下記製法により、パイを製造した。
〔配合〕
参考例1の配合に同じ。
〔製法〕
(1)上記配合に従い、参考例1の工程(1)〜(8)
と同様にして得られた積層生地に、3つ折り1回を加
え、厚さ4m/mまで圧延し、縦120m/m、横100m/mの長方形
に切断し、餡、スイートポテトなどのフィリングを乗せ
て、ターンオーバー型に成形する。
(2)200℃で15分間焼成し、パイを得る。
得られたパイは、パイの浮き(10個平均)が30m/m
で、フィリング底部の火通りは不良であった。また、そ
の風味及び食感は、醗酵風味で重い食感であった。
〔発明の効果〕
本発明の複合積層生地によれば、次のような効果が奏
される。
(1)各種積層生地の組合せにより、パフ性、風味、色
調、外観、価格面などにおいて、非常にバラエティ化さ
れた各種積層菓子を、簡単に手間のかかることなく製造
することができる。
(2)バターを使用した積層生地のパフ性を改良でき
る。
(3)冷凍処理によって活性の落ちたイースト菌のパフ
性を補完できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉江 雅之 東京都荒川区東尾久7丁目2番35号 旭 電化工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭58−843(JP,A) 特開 昭62−259540(JP,A) 特開 昭58−56634(JP,A) 特開 昭62−115229(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A21D 2/00 - 17/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パイ生地、ペストリー生地、パン生地又は
    クロワッサン生地から選ばれた小麦粉主体のドウ生地で
    ロールイン専用マーガリンを包み込み、圧延−折り畳み
    操作を行って得られるロールイン専用マーガリン使用積
    層生地で、パイ生地、ペストリー生地、パン生地又はク
    ロワッサン生地から選ばれた小麦粉主体のドウ生地でバ
    ターを包み込み、圧延−折り畳み操作を行って得られる
    バター使用積層生地を、挟み込むように重ね合わせ、さ
    らに圧延−折り畳み操作を行って得られる、複合積層生
    地。
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