JP2908486B2 - 方位制御鋼帯の製造方法 - Google Patents

方位制御鋼帯の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、方位制御鋼帯の製造方法に関し、とくに
所定の結晶方位を有する種結晶を、コイル状の鋼帯に人
工的に植付けることによって、該方位になる鋼帯の大量
工業生産を有利に達成しようとするものである。
(従来の技術) 所望の方位の結晶体を得る方法としては、以下に述べ
る4つの方法が考えられる。
まず最も簡単な方法は、ブロック状の単結晶を作成
し、この単結晶の方位測定結果に応じて所望の方位に切
り出す方法である。
しかしこの方法では、切り出しに時間、コストがかか
るだけでなく、作成する単結晶の大きさに限界があるた
め大量生産は望み得ない。
次に、いわゆる歪−傾斜焼鈍法がある。
この方法は、試料の一端から所望方位の単結晶を成長
させていく方法で、初めにその一端に種結晶を作り、こ
れを希望する方位に回転してやって、全体をこの方位を
もつ単結晶に成長させるもので、藤原らによて提案され
た〔T.Fujiwara and T.Hudita;J.Sci.Hiroshima Univ.A
8(1938),P293〜296〕。
彼らは初め、アルミニウムで成功し、さらに純鉄でも
この方法で単結晶の作成に成功している。
その後Dunnらは、上記の方法んをけい素鋼の大きな寸
法の板にも応用した〔C.G.Dunn and G.C.Nonken:Metal
Progress,64(1953)6,P71〜75〕。
特定の結晶方位をもった板状結晶を成長させるための
彼らの方法は、まず前ひずみを与えた試料の一端を温度
傾斜炉の高温領域に入れ第2図aに示すようにいくつか
の種結晶を作っておき、その中の適当な方位をもつ結晶
粒を選んで、これを同図bのように切り出す。次にその
首の部分を同図c,dのように曲げて、その種結晶が試料
板に対して所定の方位になるようにしてやる。ついでこ
の種結晶が板の全体に成長するように温度傾斜炉中で焼
鈍加熱して目的を達成するものである。
しかしながらこの方法では、多数の結晶群の中から適
当な方位をもつ種結晶を選んで切り出す作業、およびこ
の種結晶を所定の方位に曲げる作業とも厳密に管理する
必要があり、多大の労力、時間を要するため、上記の
方法と同様に大量生産は期待できない。
2次再結晶現象を利用する方法 2次再結晶とは、核発生した2次粒の種が、1次再結
晶粒の粒界エネルギーを駆動力にして大きく成長する現
象であり、これは周知のように一方向性けい素鋼板の製
造法として広く利用されている。
一方向性けい鋼板は、圧延方向の磁気特性が優れてい
ること、すなわち磁気特性(励磁特性)としてB10
(磁場の強さ1000A/mのとき発生する圧延方向の磁束密
度)で代表される磁束密度が高く、しかもW17/50
(磁束密度1.7T,周波数50Hzで磁化したときの鉄損)で
代表される鉄損が低いことが要求されるため、鋼板中の
2次再結晶粒の<001>軸を圧延方向へ高度に揃えるこ
とが基本的に必要である。このため、一般にインヒビタ
ーとしてMnS,MnSeなどの微細析出物を加え、さらに必要
に応じて特公昭51−13469号公報等に開示されているよ
うな少量のSbや、特公昭57−14737号公報等に開示され
ているような少量のMo、特公昭60−48886号公報等に開
示されているようなAl,N,Sn,Cuなどを複合添加した上
で、熱間圧延、冷間圧延における各処理条件を適切に組
合せることにより、最近では磁束密度B10値が1.90Tを超
える高磁束密度でかつ鉄損W17/50値が1.05W/kg(板厚
0.30mm)以下の低鉄損一方向性けい素鋼板が製造される
ようになった。
しかしながら、製品の2次再結晶粒の<001>軸を圧
延方向に高度に揃えるためには成分調整をはじめとし
て、製鋼、熱延、冷延および熱処理と複雑で多岐にわた
る各工程を厳密に制御する必要があるが、実際の工業生
産においては処理条件が上記した如き総合的な適正条件
から外れやすく、わずかでも外れたものは<001>軸の
圧延方向への配向性が悪くなるという問題があった。
さらを最近では、製品板の厚さを薄くして鉄損を低減
する試みがなされているが、仕上げ厚を薄くすると一方
で2次再結晶粒<001>軸の圧延方向への集積が不安定
となることから、その改善が強く望まれている。
またで述べたのと同様の方法を利用して、部分的に
2次再結晶させた2次粒を種として、1次と2次の再結
晶領域の境界領域において鋼板に温度勾配を付与しつつ
種を成長させる方法が特公昭58−50295号公報等に開示
されている。しかしながら未だ商用材料としての量産化
には到っていないのが現状である。
さらに基本的な問題として、上述の2次再結晶法で
は、得られる結晶方位範囲が限られていて、(110)[0
01]方位から大きくずれた方位のものは得られないとい
う問題がある。
3次再結晶の利用する方法 3次再結晶は表面エネルギーを駆動力として進行する
もので、おもに(100)[hkl]粒を発達させることに利
用されるが、高温での雰囲気制御の困難さ、方位の制御
精度などに問題があった。
以上述べたとおり、特定の方位へ厳密に制御できる方
法では、大量の工業生産ができず、一方大量の工業生産
ができる方法では方位の選択性と制御精度に問題があ
り、大量生産が可能でしかも特定の方位に厳密に制御で
きる方法は現在までのところ知られていない。
なお溶解した液状金属の一端に種結晶を植付け融解点
以下に徐々に冷却しながら種結晶を大きな結晶に成長さ
せる凝固法よる単結晶の製造法は、ブリッジマン法ある
いはタンマン−ブリッジマン法として古くから知られて
いるが、この発明の技術内容は種結晶の成長する非処理
材が液体ではなく結晶構造をもつ固体であり、上述の凝
固法とは全く別のものである。
上述したとおり、結晶を特定の方位へ厳密に制御しよ
うとする場合には、適正な種を得るために多大の労力と
時間を要するため大量の工業生産ができず、一方、大量
の工業生産をしようとする場合には、種を圧延と再結晶
により整える必要があることから、製造条件のバラツキ
などのために、特定方位への制御精度に問題があった。
また、発達する方位は、素材の本質的な結晶構造の面か
らの制約を受け、方位の選択ができないところにも問題
を残していた。
この点、発明者らは先に、上記の問題を有利に解決す
るものとして、特願昭63−143475号明細書において低温
接合を基本とする結晶体の製造方法を提案した。
(発明が解決しようとする課題) この発明は、上記の結晶体の製造技術の改良に係り、
より大量の工業生産が必要とされる長尺の鋼帯に対する
上記低温接合技術の実際的な適合を可能ならしめたもの
である。
(課題を解決するための手段) すなわちこの発明は、コイル状鋼帯を被処理材とし、
この被処理材と同じ又は類似の結晶構造を有し、かつ該
被処理材よりも低いエネルギー状態にある所定結晶方位
を有する種材を、該コイル状鋼帯の渦巻端面に、接合面
が活性状態下で接触させて接合し、ついで粒界移動を生
起させる温度に加熱することにより、コイル状鋼帯を所
定結晶方位の結晶体とすることからなる方位制御鋼帯の
製造方法(第1発明)である。
またこの発明は、コイル状鋼帯を被処理材とし、この
被処理材と同じ又は類似の結晶構造を有し、かつ該被処
理材よりも低いエネルギー状態にある所定結晶方位を有
する種材を、該コイル状鋼帯の渦巻端面に、該種材およ
び被処理材よりも融点が低いインサート材の介在下に接
合し、ついで粒界移動を生起させる温度に加熱すること
により、コイル状鋼帯を所定結晶方位の結晶体とするか
らなる方位制御鋼帯の製造方法(第2発明)である。
上記の各発明において、被処理材と種材との接合は応
力付与下に行うことが望ましく、また加熱雰囲気は非酸
化性とするのが好ましい。
ここに同じ結晶構造応とは、結晶系、格子定数ともに
同一である構造のことを、また類似の結晶構造とは侵入
型や置換型の元素を合金成分として含み、固溶、規則格
子形成、析出などにより結晶格子が歪んでいる構造のこ
とを意味し、この場合格子定数の差は30%以内であるこ
とが好ましい。
さらにこの発明でいうエネルギー状態とは、内部歪と
表面に関するものであって、主に結晶粒界、転位、点欠
陥および結晶の表面エネルギーの量や質に依存し、これ
らの量が増すほどエネルギー状態は高くなる。
以下、この発明を由来するに至った基礎実験について
説明する。
さて低エネルギー状態にある種材Aとして、Si:3wt%
以下単に%で示す)を含有し、残部実質的にFeの組成に
なり、板面に(110)面を有しかつ板厚が0.3mmで10mm角
の単結晶板を、一方高エネルギー状態にある被処理材B
として、Si:3%、S:0.020%、Al:0.025%、N:0.0080%
を含有し、残部実質的にFeの組成になるけい素鋼塊を、
熱間圧延ついで冷間圧延して得た板厚:0.3mmの冷延板か
ら切り出した10mm角の鋼片を用意した。
ついでA,Bとも各2枚づつ板面をエメリー研磨、バフ
研磨、フロートポリッシングにより中心線平均粗さRaで
0.01μm以下の鏡面状態に仕上げた。
これら研磨面をA,Bとも10-6Torrの高真空中でArによ
りイオンスパッタリングした後、A,Bの鏡面同士を接触
させて2組みの接合体をつくり、C,Dとした。
Cは10-10Torrの超高真空中で、一方DはN2中でそれ
ぞれ1000℃、5hの焼鈍を施した。
その結果、Dでは接合面に粒界が部分的に残留してい
た。そして接合面をはさみ、A,Bの結晶方位を測定した
ところ、接合面に粒界が残留した部分は別々の方位を有
し、粒界のない部分は同一の方位を有していた。
一方Cでは接合面に粒界は全く認められず、接合面を
はさんでA,Bの結晶方位を測定したところ同一の方位を
示し、BはAと同じ方位の単結晶体となっていた。
即ち加熱時の雰囲気をA,B両物質の接合面に不純物被
膜ができないように制御して低エネルギー状態の結晶構
造を持つ物質Aを高エネルギー状態の結晶構造を持つ物
質Bに接合させて加熱することにより、低エネルギー状
態の結晶構造を持つ物質Aを2倍の量に増加させること
ができたのである。
ところでより低コスト化をはかり工業生産を有利に進
めるためには、まず第1に、上述の加熱時における雰囲
気は真空よりもせめて非酸化性ガス(N2又はAr)雰囲気
とした方が有利である。この点については、次に述べる
ように、接触面に低融点金属を介して接合することによ
り解決した。
すなわち上述した種材Aおよび被処理材Bについてそ
れぞれ、 i )塩酸酸洗、 ii )研削 iii)エメリー研磨 iv )化学研磨 v )化学研磨+イオンエッチング の板面処理をした後、処理面に膜厚0.5μmのSnめっき
を施した。次にA,Bを組にしてSnめっき面を接触させ
て、接触面に垂直に付加する応力をそれぞれ板面処理条
件ごとに変えてN2雰囲気中で400℃から20℃/hの昇温速
度で加熱した後、1000℃、10hの焼鈍を施したのちの接
合界面における結晶粒界の有(×)、無(○)を観察し
た。
その結果を第3図に示す。
同図に示した結果から明らかなように、粗度が大きく
表面に不純物の多い塩酸酸洗処理では結晶粒界を消失さ
せるのに強い付加応力が必要であったが、表面が平滑で
しかも不純物の少ない化学研磨+イオンエッチング処理
の場合にはとくに応力を付加しなくても種材の自重のみ
で結晶粒界を消失させることができた。
このように融点が232℃と低いSn膜を介在させること
によって、結晶粒界が消失するのは、加熱時に液状Snが
接合界面にすきまなく充満するので、比較的低温時に外
気を遮断し雰囲気の影響をなくして不純物被膜の形成を
防止することによるものと考えられる。そしてこのよう
な結晶粒界消失効果は、接合面の表面粗度が小さいほど
また付加応力が大きいほど大きくなるが、その理由は、
表面粗度が小さいほどまた付加応力が大きいほど接触面
積が増すとともに界面の隙間に溜まる余分のSn量が少な
くなるために接合面での結晶粒界の移動が容易となるこ
と、また応力を増すことによる転移の増加、すべり変形
などによって界面が活性となり、本来は粒界移動に障害
となるSnの種材および被処理材への拡散希釈が容易とな
ると共に、活性面の接触面積が増すことによるものと考
えられる。
以上の実験結果から、活性状態にした面をそのまま、
または低融点金属の介在下に接触させて加熱することに
より、所定の結晶方位をもつ物質を容易に製造できるこ
とが究明されたのである。
次に工業生産を有利に進める第2の点は、鋼帯のコイ
ル状態での加熱を実現することである。
コイル状鋼帯に対する種材の植付け法として最も理想
的な方法は、鋼板の曲率と種材の曲率を一致させて接合
すること、すなわち鋼板圧延面に所定の板状種材を接合
して巻取ったり、コイル状鋼板と同一の曲率を持つコイ
ル状種材とをコイルエッヂ部同志を重ね合わせて接合す
ることであるが、コイルに巻取るに先立ち長尺の鋼帯の
全長にわたって種材を接合することは煩雑で長時間の処
理工程を必要とし、またコイルのエッヂ部同志を接合す
ることは方位の制御が難しいという問題がある。
しかしながらこの問題については、第1図aに示すよ
うに、コイルエッヂ部に方位を制御した帯状の種材を放
射状に配置して接合することによって解決することがで
きる。第1図aにおいて、円周方向の種材の植付け間隔
をl、種材が成長してlになった時のlに相当する対応
角をβとする。ここで、βは、種材又は種材が成長した
結晶粒が円周方向でlだけ変位した場合の種材のコイル
接線方向方位の鋼板圧延面からのずれを示している。す
なわち種材の方位は種材がlだけ成長することにより鋼
板圧延面からβだけずれることになる。
このようにコイル状態では鋼板に曲率が存在するた
め、帯状種材の方位を厳密に制御しても結晶成長段階で
鋼板圧延面からの方位のずれは避けられないが、この点
についてはコイル円周方向における種材の植付け間隔を
短縮することによって事実上問題がない程度まで軽減す
ることができる。
第4図に、外径1000mm、内径550mmの場合について、
最外巻と最内巻におけるlとβとの関係を示す。帯状種
材の植付け間隔(l)が短いほど、またコイル径が大き
いすなわち曲率が小さいほどコイル本体の種材からの方
位のずれ(β)は小さくなる。しかし、コイル径の拡大
には限界があるので、方位のずれを抑えるためには種材
の植付間隔を短くすることが好ましい。
内径部550mmのコイルで鋼帯合長手方向のβの平均ず
れ角度βavを10゜以内に抑えるには、1つの種材から1
つの結晶が成長すると仮定すると、第4図から予想して
内巻部では円周方向の結晶長を、β=10゜となる結晶長
の約2倍である100mm以下に抑えることが必要である。
また直径1000mmの外径部では同様にして180mm以下に抑
えることが必要である。したがって、コイル全長にわた
ってβav10゜とするには種材の植付け間隔を100mmと
することが必要である。
なお種材の植付け方法に関しては、放射方向で連続し
ている必要はなく、第1図bに示すように断続した状態
であってもよい。また、第1図cのように必ずしも放射
状に配する必要はないが、このときにはコイルと所定の
方位関係を保つように、種材の配置位置によってその方
位を変える必要がある。
次に、この発明法を製造工程順に具体的に説明する。
まず被処理材と種材と結晶構造については、FCC,BCC
など同一結晶系のもの同志が望ましく、さらには格子定
数に大きな差のないものが好ましい。
また被処理材および種材とも、(i)材料の中に含ま
れている不純物の種類と量、(ii)添加元素の種類と
量、(iii)最結晶集合組織、および(iv)含有結晶粒
界、転位、点欠点および表面エネルギーの量や質など
は、個々の物質又は製造工程によって異なるものであり
特に規定するものはない。しかしながら被処理材は種材
よりも高エネルギー状態にしておくことが肝要である。
というのは被処理材のエネルギー状態が種材のそれに比
べて同じか又は低いと種材が成長できず、所期した目的
が達成できないからである。
とはいえ比処理材のエネルギー状態があまりに高すぎ
ると、被処理材に種材とは別の不適当な方位の核が発生
し、やはり所期の目的が達せられないので、エネルギー
状態は個々の場合に応じて適度の高さに調節する必要が
ある。
なお種材の形状は、前述したとおりコイル状であって
もよいけれど、帯状としてコイルの薄巻端面に放射状に
配置するのが好ましい。
またコイルの渦巻端面には、表面凹凸や歪の導入部を
除去するために、平滑処理を施すことが好ましい。さら
に平滑処理後のコイル状鋼帯につき、鋼帯相互のずれを
防ぐためには、平滑処理に先立ち、平滑予定端面とは反
対側の端面を溶接などによって接合し鋼帯を互いに固着
しておくことは有利である。
次に上述のような適正エネルギー状態に調節した種材
と被処理材の活性状態にある面同志を接触させて粒界移
動が可能な温度以上に加熱する。
ここでの温度は、高エネルギー状態の結晶構造が再配
列して、低エネルギー状態の結晶構造に再配列するのに
必要な温度で、一般的には再結晶温度以上をさす。
ここに活性状態の面とは種材、被処理材とも生の素材
が露出している状態、すなち不純物の付着や不純物被膜
の形成が全くないか、あるいは存在してても極めて少な
い状態の面のことである。かような面は研磨その他の各
種清浄化法による表面不純物の除去処理によって得られ
る。とくに真空中でのイオンエッチングなどの処理によ
って、より完全なものが得られる。したがって、かよう
な面を維持するには雰囲気を真空状態に保つのが最良で
あるが、非酸化性雰囲気でも充分に適合する。
また接触面積はできる限り広い方が好ましく、従って
接触面の表面粗度はできる限り小さい方が好ましい。
さらにかような接合に当っては、接触面に応力をかけ
ることが好ましい。というのは応力を付加すると表面被
膜が破壊され、たとえば超音波印加によるキャビテーシ
ョン効果がある。また接触界面で部分的に転移密度が増
し、高エネルギー状態により好ましい活性状態が得られ
るとともに接触面積も増すからである。付加応力の成分
に関しては接触面に対する圧力、剪断力とも可能である
が、両者の組合せがより効果的である。またかかる応力
の強さに関しては、個々の素材および加熱温度によって
も変形応力が異なるのでとくに規制するものではない
が、一般には30%以上は変形しない応力の付与が好まし
い。
さらに付加応力の強度は、たとえば超音波のように時
間的に変化しても、又一定であってもかまわない。とく
に超音波印加は、接合部に介在させる低融点物質中の気
泡を除き、高品質の接合を実現する上でゆうりである。
次に種材と被処理材との間に介在させる低融点物質
(以下単にインサート材という)の役割について述べ
る。
インサート材を接合面に介在させるのは、種材と被処
理材との接合を実用不活性ガス中の容易に実現させるた
めで、その軟質性と熱拡散の容易さを活用するものであ
る。さてインサート材は温度の上昇に伴い比較的低温で
軟化して充てん材となって接合密の密着性を増すし、さ
らに比較的低温の融解温度以上あるいは母材と共晶現象
を示す場合は共晶温度以上で接触部が液化することによ
り、有害雰囲気から接合界面を低温時に遮断し接合境界
への不純物の侵入を防止する。また接触部が液化するこ
とにより被膜の破壊と一層の密着化が期待でき、表面処
理が不充分な場合でも接合が飛躍的に進行する。さらに
インサート材として、種材および被処理材と固溶体を形
成するものを利用すれば、継続加熱により母材への溶
解、拡散が進行して液相は消失し、接合界面はより狭く
なる利点がある。この過程において液相はできるだけ少
ない方が、接合温度で短時間に接合する。
このように加熱前に接合面は密着が充分でしかもイン
サート材は少ないほど好ましい。したがって接合面粗度
および接合面における付加応力が重要なわけである。
一方接合面の酸化被膜は凝集して接合界面に介在物を
形成し、接合の進行につれてさらに凝集が進むとともに
母材への酸素の拡散により介在物量は減少する。と同時
にインサート材の母材への溶解、拡散、散逸が進行し、
一部の接合境界では不純物原子の介在なくなり結晶粒界
とほぼ等しい性質となる。
このようにして接合境界の原子間の距離がほぼ格子定
数と等しくなる程度まで近接し、その結果原子の移動が
可能となる。そしてさらに粒界移動が可能な温度で加熱
を続けることにより接合界面が消失するとともに高エネ
ルギー状態から低エネルギー状態への再配列即ち粒界の
移動が起り全体が所定方位の結晶体となるのである。
インサート材はできるだけ薄い方が良く、箔、めっ
き、蒸着、スプレーなどが考えられる。またインサート
材は、種材および被処理材などの接合材よりも低融点
で、しかも両者に固溶することが好ましいが、接合材に
応じて適正インサート材は異なるので特に規定はしな
い。たとえば処理材が鉄または鉄合金である場合には、
インサート材としては次の元素又はその化合物が好適で
ある。
Ga,S,In,Se,Sn,Zn,Te,p,Sb,Al,Sr,Ce,As,Ge,Au,Cu,M
n,Be,Si。
加熱に関しては、粒界移動が可能な温度が必要で一般
には純金属ではその金属の再結晶温度が少なくとも必要
である。又、接合境界から欠陥を消失させて原子サイズ
で完全に密着化した理想的な接合境界に近づけることか
らいっても熱拡散が活発となる温度以上で、しかも高エ
ネルギー状態の被処理材において別の方位粒が粗大化し
ない程度に高い方が好ましい。
加熱条件については通常の温度均一加熱で十分である
が、古くから単結晶作製に活用されているように低エネ
ルギー物質から高エネルギー物質に向って温度が下がる
ような温度勾配を付与することはより有利である。
次に処理雰囲気について述べると、要は接合面に有害
な酸化被膜などを作らせないことであり、特に好ましく
は接合界面の原子サイズでの密着化を充分とすることで
ある。従ってインサート材を使用しない場合はできるだ
け高真空とするのが好ましい。この点インサート材を使
用する場合は、前述のように表面被膜が多少存在して
も、インサート材の液化により被膜が破壊して表面が活
性となるので、雰囲気中における有害物の許容含有範囲
は真空よりもある程度緩くなるが、その割合は接合材、
インサート材、応力、表面状態などによって異るので特
に規定はしない。また液化したインサート材が母材に拡
散、散逸して結合界面から消滅するまでは、インサート
材と反応しない雰囲気が好ましいが、原子サイズの密着
完了後は接合材に応じて有害性は決まるので、ここにお
いて特に規定するものではない。なお接合界面が酸化性
雰囲気に触れると酸化被膜が形成され、種材、被処理材
間の原子に連けい移動がしゃ断さてしまうので、特に第
1発明においては接触面積が小さい場合、また第2発明
においてインサート材が液化するまでは、特にPo2が低
い方が好適である。
(実施例) 実施例1 C:0.065%、Si:3.25%、Mn:0.070%、S:0.018%、P:
0.0080%、sol Al:0.035%およびN:0.0080%を含有し、
残部はFeおよび不可避的不純物よりなるけい素鋼塊を、
1350℃に加熱したのち、1.9mm厚まで熱間圧延し、つい
で冷間圧延によって0.20mm厚に仕上げたのち、200℃か
ら700℃までの間を20℃/hの昇温速度で加熱し、ついで
湿水素中で820℃、5分間の脱炭焼鈍を施して得た鋼板
に、SrSO4を15%含有するMgOを焼鈍分離材として塗布し
たのち、肉厚が10mm、直径がそれぞれ550mm、700mm、10
00mm、幅が100mmのコイルを作成し、被処理剤A,B,Cとし
た。
これらの被処理材については、コイルエッヂ部を圧延
面に直角に研削して鋼板幅方向に0.5mm除去するととも
に研磨とスパッタリングによりRa<0.2μmの清浄な鏡
面に仕上げた。
またSi:3.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物よりなる長さ:10mm、幅:5mm、厚さ:0.2mmで(110)面
が板面に平行でしかも長さ方向が[110]方向の板状単
結晶の表面を研磨とアルゴンスパッタリングによりRa<
0.2μmの清浄な鏡面に仕上げ、種材Dとした。
次に種材Dにつき、長さ方向を被処理A,B,Cのコイル
中心に向けてそれぞれ間隔が20mmとなるようにA,B,Cの
研磨面に密着接合し、接合面に10g/mm2の圧縮荷重を付
加しながら10-4Torrの真空炉で980℃、24時間の焼鈍を
施した。800℃、3時間の平坦化焼鈍後、被処理材A,B,C
の結晶組織を調査したところ、いずれも種材Dが被処理
材中に成長していることが認められた。
この時の磁化力1000A/mにおける磁束密度B10値はそれ
ぞれ次のとおりであった。
上表より明らかなように、コイル直径が大きくなるほ
ど磁化が容易となり圧延面からの方位のずれが少なくな
っている。
実施例2 実施例1中の被処理材cと種材Dとを実施例1と同様
にして密着接合するに当り、Dの間隔が10mm,40mm,80mm
となるように配置し被処理材C−1,C−2,C−3とした。
ついで実施例1と同様に処理したものをX、焼鈍雰囲気
を露点−30℃のN2とする以外は実施例1と同様に処理し
たものをYとした。
かくして得られた各コイルの結晶組織を調査したとこ
ろ、Xでは種材Dが被処理材中に成長していることが認
められたが、Yでは部分的にしか認められなかった。
各コイルのB10値は次のとおりであった。
雰囲気が酸化性で接合面が不活性状態となったYにく
らべて、雰囲気が真空で接合面が活性状態Xの方がB10
値が高い。また種材の植付け間隔が短くなるほどB10
は高くなっていて、これは磁化が容易となる圧延面から
の方位のずれが少なくなっていることを示している。
実施例3 実施例1で用いた被処理材Bにつき、焼鈍前、後のも
のをそれぞれB1,B2とし、それぞれのコイルエッヂ部を
実施例1と同様にして清浄な鏡面に仕上げた。ついで鏡
面同志が密着するようにそれぞれのコイルB1,B2を上、
下に重ね、B1を低温側、B2を高温側にして、1150℃〜90
0℃における温度勾配が5℃/cmの温度傾斜炉へ10mm/hの
速度で装入しつつ加熱した。なおこのとき炉内は10-4To
rrの真空に保持した。
ついで800℃、3時間の平坦化焼鈍後、B1のB10値につ
いて調べたところ、B10=1.99〜1.98(T)であり、コ
イル円周方向に連続して種を付けることにより、また特
に応力を付与しなくても、種材B2の自重程度で種材B2と
同等の高B10値が得られた。
実施例4 実施例3で用いた被処理材B1,B2の3組容易し、各組
同士清浄に仕上げた鏡面に、スパッタリングによりそれ
ぞれの組ごとにSn,Sb,Cuを1μm厚蒸着させ、蒸着面同
士が密着するように、それぞれの組毎にコイルを上、下
に重ね、加熱と同時に超音波を印加して接合してから、
B2を高温側にして1150℃〜900℃における温度勾配が5
℃/cmの温度傾斜炉へ10mm/hの速度で装入しつつ、露点
−30℃のN2中で加熱した。
800℃、3hの平坦化焼鈍後、各組のB2のB10値について
調べたところ、次の結果が得られた。
インサート金属を介在させて接合することにより酸化
性雰囲気で焼鈍しても種材B1と同等の良好な結果が得ら
れている。
実施例5 C:0.035%、Al:3.00%、Mn:0.065%、Se:0.020%およ
びP:0.0080%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物
よりなる鉄合金塊を、1350℃に加熱後、2.3mm厚に熱間
圧延し、ついで中間焼鈍をはさむ2回の冷延によって0.
20mm厚に仕上げた。次に湿水素中で820℃、5分間の脱
炭・1次再結晶焼鈍を施したのち、焼鈍分離剤(MgO)
を塗布後、肉厚が10mm、直径が700mm、幅が100mmのコイ
ルに巻き被処理材Eとした。ついで実施例1と同様にコ
イルエッヂ部を清浄を鏡面に仕上げた後、スパッタリン
グによりSnを1μm厚蒸着させ、同じくSnを1μm厚蒸
着させた実施例4の種材B2と蒸着面同志を密着させて、
上・下に重ね、実施例4と同様に処理した。
800℃、3時間の平坦化焼鈍後、被処理材E、種材B2
の結晶粒の方位を測定したところ、両者とも(100)[0
01]からの方位のずれは平均3゜であり、種材の方位が
被処理材中によく転写されていた。
実施例6 C:0.059%、Si:3.35%、Mn:0.065%、S:0.015%、sol
Al:0.025%およびN:0.0095%を含有し、残部はFeおよ
び不可避的不純物よりなるけい素鋼塊を、1350℃に加熱
したのち、2.2mm厚まで熱間圧延し、ついで冷間圧延に
よって0.20mm厚に仕上げたのち、200℃から700℃までの
間を20℃/hの昇温速度で加熱し、ついで湿水素中で820
℃、3分間の脱炭焼鈍を施して得た鋼板に、SrSO4を15
%含有するMgOを焼鈍分離剤として塗布したのち、肉厚
が10mmで直径が550mm、幅が1000mmのコイルを作成し、
被処理材Cとした。
この被処理材のコイルエッヂ部を圧延面に直角に研削
して鋼板幅方向に0.5mm除去した後、研磨によりRa<0.2
μmの清浄な鏡面に仕上げた。
一方Si:3.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物よりなる長さ:10mm、幅:5mm、厚さ:0.2mmで(110)面
が板面に平行でしかも長さ方向が[110]方向の板状単
結晶の表面を研磨によりRa<0.2μmの清浄な鏡面に仕
上げた後、めっきによりSnを1μm厚にコーティングし
種材とした。
次にこの種材を、被処理材のコイル中心に向けてその
間隔が20mmとなるように種材のめっき面と被処理材の研
磨面とを密着させ、接合面に10g/mm2の圧縮荷重と共に6
0kzHの超音波を付与しながら加熱して接合した。
次に通常のBox炉に装入し、N2中で20℃/hの昇温速度
で結合面に3g/mm2の圧縮荷重を付与しながら1200℃まで
加熱した。800℃、3時間の平坦化焼鈍後、被処理材の
結晶組織を調査したところ、種材が被処理材中に生長し
ていることが認められた。
この時の磁化力1000A/mにおける磁束密度B10値はB10
=1.97(T)であった。
実施例7 実施例6の被処理材と種材とを実施例6と同様にして
接合するに当り、10-3Torrの真空中で実施した。次に常
圧のN2中で1100℃まで焼鈍後、再び10-3Torrの真空中で
1200℃まで加熱した。
800℃、3時間の平坦化焼鈍後、被処理材の結晶組織
を調査したところ、種材が被処理材中に成長しているこ
とが認められた。
この時は磁化力1000A/mにおける磁束密度B10値はB10
=1.98(T)であった。
実施例8 C:0.020%、Mn:0.075%、S:0.016%、sol Al:0.021%
およびN:0.0090%を含有し、残部はFeおよび不可避的不
純物よりなるけい素鋼塊を、1250℃に加熱したのち、2.
2mm厚まで熱間圧延し、ついで冷間圧延によって0.20mm
厚に仕上げたのち、200℃から700℃までの間を20℃/hの
昇温速度で加熱し、ついで湿水素中で850℃、5分間の
脱炭焼鈍を施して得た鋼板に、スキンパスによって2%
の塑性歪を導入した。この鋼板にSrSO4を15%含有するM
gOを焼鈍分離剤として塗布したのち、肉厚が10mmで直径
が550mm、幅が1000mmのコイルを作製し、被処理材とし
た。
この被処理材のコイルエッヂ部の圧延面を直角に研削
して鋼板幅方向に0.5mm除去した後、研磨によりRa<0.2
μmの清浄な鏡面に仕上げた。
一方Si:2.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物よりなる長さ:10mm、幅:5mm、厚さ:0.2mmで(110)面
が板面に平行でしかも長さ方向が[110]方向の板状単
結晶の表面を研削と研磨によりRa<0.2μmの清浄な鏡
面に仕上げた後、めっきによりSnを1μm厚にコーティ
ングし種材とした。
次にこの種材を被処理材のコイル中心に向けてその間
隔が20mmとなるように種材のめっき面と被処理材の研磨
面とを密着させ、接合面に10g/mm2の圧縮荷重と共に60k
zHの超音波を付与しながら加熱して接合した。
次に通常のBox炉で接合面に3g/mm2の圧縮荷重を付与
しながらN2中で最高温度が910℃を超えないよう焼鈍し
た。800℃、3時間の平坦化焼鈍後、被処理材の結晶組
織を調査したところ、種材が被処理材中に生長している
ことが認められた。
この時の磁化力1000A/mにおける磁束密度B10値はB10
=2.13(T)であった。
実施例9 C:0.058%、Si:3.15%、Mn:0.075%、S:0.015%、sol
Al:0.025%およびN:0.0075%を含有し、残部はFeおよ
び不可避的不純物よりなる溶鋼を、1600℃から水冷銅鋳
型で厚さ150mmに傾斜鋳造し、1150℃まで急速冷却した
のち5分間同温度に保持し、直に熱延して2.5mm厚とし
た。ついで冷間圧延によって0.22mm厚に仕上げたのち、
200℃から700℃までの間を20℃/hの昇温速度でAr中で加
熱した。ついで湿水素中で820℃、3分間の脱炭焼鈍を
施して得た鋼板MgSO4:1.7%含有するMgO焼鈍分離材を塗
布したのち、肉厚が10mm、内径が550mm、幅が1000mmの
コイルを作製し、被処理材とした。
この被処理材のコイルエッヂ部を圧延面に直角に研削
して鋼板幅方向に0.5mm除去するとともに研磨によりRa
<0.2μmの清浄な鏡面に仕上げた。
一方Si:3.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物よりなる長さ:10mm、幅:5mm、厚さ:0.2mmで(110)面
が板面に平行でしかも長さ方向が[110]方向の板状単
結晶の表面を研磨によりRa<0.2μmの清浄な鏡面に仕
上げ、この鏡面にSnを2μm厚にめっき種材とした。
次にこの種材の長さ方向を被処理材のコイル中心に向
けてその互の間隔が20mmとなるように被処理材の研磨面
に種材をめっき面を密着接合し、接合面に10g/mm2の圧
縮荷重を付加するとともに超音波を印加しながら加熱し
た。加熱は種材側端部より入熱し、20℃/hの昇熱速度で
実施し、種材と逆の端部温度が1100℃になるまで昇温し
た。
次に両端とも水素中での1200℃、20時間の純化焼鈍を
施した。得られたコイル幅方向の平均磁気特性はB8=2.
00(T)であった。
実施例10 実施例9と同一組成よりなる溶鋼を1600℃から水平薄
スラブ連鋳機で厚さ25mmに鋳造し、950℃まで急冷した
後3分間保持し、直ちに熱延して0.35mm厚にするととも
に550℃で24時間保持後冷却した。ついで湿水素中で820
℃、5分間の脱炭焼鈍を施して得た鋼板にSrSO4=1.7%
含有するMgO焼鈍分離剤を塗布したのち、肉厚が10mm、
内径が550mm、幅が100mmのコイルを作製し被処理材とし
た。
この被処理材のコイルエッジ部を圧延面に直角に研削
して鋼板幅方向に0.5mm除去するとともに、研磨によりR
a<0.2μmの清浄な鏡面に仕上げた。
一方Si:3.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物よりなる長さ:10mm、幅:5mm、厚さ:0.2mmで(110)面
が板面に平行でしかも長さ方向が[110]方向の板状単
結晶の表面を研磨によりRa<0.2μmの清浄な鏡面に仕
上げ、この鏡面にInを2μm厚にめっき種材とした。
以降実施例9と同様に処理して得られたコイル幅方向
の平均磁気特性は、熱延方向の磁化特性B8=2.00
(T)、熱延方向と直化方向の磁化特性B8=2.01(T)
であった。
実施例11 実施例9と同一組成よりなる溶鋼を1600℃から水冷銅
鋳型で厚さ5mmに傾斜鋳造したのち、600℃まで急冷し、
直に温間圧延して0.22mm厚に仕上げた。ついで200℃か
ら700℃まての間を20℃/hの昇温速度でAr中で加熱した
のち、湿水素中で820℃、3分間の脱炭焼鈍を施して得
た鋼板に窒化フェロマンガン4%を含有するMgO焼鈍分
離剤を塗布したのち、肉圧が10mm、内径が550mm、幅:10
0mmのコイルを作製し被処理材とした。
以降実施例9と同様に処理して得られたコイル幅方向
の平均磁気特性はB8=2.01(T)であった。
実施例12 C:0.005%、Si:4.5%、Mn:0.080%、S:0.012%、sol
Al:0.015%およびN:0.0080%を含有し、残部はFeおよび
不可避的不純物よりなる溶鋼から350μm厚の薄帯を直
接急冷することによって作り、この薄帯を550℃に加熱
しながら直ちに温間圧延して厚さ0.20mmに仕上げ、550
℃で24時間保持後冷却した。ついで湿水素中で820℃、
3分間の脱炭焼鈍を施して得た鋼板に、MgO焼鈍分離剤
を塗布したのち肉厚が10mm、内径が550mm、幅が100mmの
コイルを作成し、被処理材とした。
以降実施例2と同様に処理して得られたコイル幅方向
の平均磁気特性は、熱延方向の磁化特性、B8=2.01
(T)、熱延方向と直角方向の磁化特性B8=1.90(T)
であった。
(発明の効果) かくしてこの発明に従い、コイル単位で結晶方位を制
御することにより、従来、両立し得なかった結晶方位の
厳密制御と実際的な大量工業生産が可能となり、結晶方
位に依存する特性の安定向上と良製品の安定供給に大き
く貢献する。
【図面の簡単な説明】
第1図a,bおよびcはそれぞれ、この発明に従う種材の
コイル渦巻端面への載置状態を示した図、 第2図a,b,cおよびdはそれぞれ、従来法に従う特定方
位結晶体の製造要領を示した工程図、 第3図は、接合体表面の研磨状態および付加応力が接合
界面における結晶粒界の消失に及ぼす影響を示したグラ
フ、 第4図は、種材の植付け間隔と圧延面からの方位のずれ
との関係を、コイル直径をパラメータとして示したグラ
フである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コイル状鋼帯を被処理材とし、この被処理
    材と同じ又は類似の結晶構造を有し、かつ該被処理材よ
    りも低いエネルギー状態にある所定結晶方位を有する種
    材を、該コイル状鋼帯の渦巻端面に、接合面が活性状態
    下で接触させて接合し、ついで粒界移動を生起させる温
    度に加熱することにより、コイル状鋼帯を所定結晶方位
    の結晶体とすることを特徴とする方位制御鋼帯の製造方
    法。
  2. 【請求項2】コイル状鋼帯を被処理材とし、この被処理
    材と同じ又は類似の結晶構造を有し、かつ該被処理材よ
    りも低いエネルギー状態にある所定結晶方位を有する種
    材を、該コイル状鋼帯の渦巻端面に、該種材および被処
    理材よりも融点が低いインサート材の介在下に接合し、
    ついで粒界移動を生起させる温度に加熱することによ
    り、コイル状鋼帯を所定結晶方位の結晶体とすることを
    特徴とする方位制御鋼帯の製造方法。
  3. 【請求項3】被処理材と種材との接合が応力付与下であ
    る請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】加熱雰囲気が非酸化性雰囲気である請求項
    1,2又は3記載の方法。
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