JP2905515B2 - 自発浸透法による金属マトリックス複合体の形成方法 - Google Patents

自発浸透法による金属マトリックス複合体の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、自発浸透法による金属マトリックス複合体
の形成に関する。詳細には、浸透増進剤及び/又は浸透
増進剤前駆体を、マトリックス金属と溶融マトリックス
により浸透される充填材(又はプレフォーム)の間又は
間の界面に少なくとも部分的に配置することができる。
更に、プロセス中の少なくともある時点で、浸透雰囲気
は、充填材若しくはプレフォーム及び/又はマトリック
ス金属と連通状態にしてもよい。
〔従来の技術及び発明が解決すべき課題〕
金属マトリックスと粒状セラミック、ウイスカー、繊
維等の補強又は強化相からなる複合体製品は、強化相が
有する剛性及び耐摩耗性の一部と金属マトリックスが有
する延性及び靱性を併せ持つので、種々の用途に使用さ
れる大きな見込みがある。一般的に、金属マトリックス
複合体では、単一材料のマトリックス金属が持つ強度、
剛性、耐接触摩耗性、高温強度等の性質は向上するが、
特定の性質が向上する程度は、特定の成分、容積分率又
は重量分率及び複合体を形成する際の処理方法によって
大きく異なる。ある場合には、複合体が、マトリックス
金属自体よりも重量が軽いこともある。例えば、粒状、
ペレット状又はウイスカー状の炭化珪素等のセラミック
スで強化したアルミニウムマトリックス複合体は、剛
性、耐摩耗性及び高温強度がアルミニウムよりも高いの
で有用である。
アルミニウムマトリックス複合体の製造に関しては、
種々の金属プロセスが報告されており、例えば、粉末冶
金法並びに圧力鋳造、真空鋳造、攪拌及び湿潤剤を使用
する液体金属浸透法に基づいた方法が挙げられる。粉末
冶金法の場合、粉末状の金属と粉末、ウイスカー、チョ
ップトファイバー等の形態の強化剤とを混合し、その
後、常温成形し焼結するか、又はホットプレスする。こ
の方法により製造された炭化珪素強化アルミニウムマト
リックス複合体における最大セラミック体積分率は、ウ
イスカーの場合は約25体積%であり、粒状の場合は約40
体積%であると報告されている。
従来のプロセスを利用した粉末冶金法による金属マト
リックス複合体の製造には、得られる製品の特性に関し
てある種の制限がある。即ち、複合体におけるセラミッ
ク相の体積分率は、一般的に、粒状の場合には、約40%
に制限される。又、圧縮操作の場合には、得られる実際
の大きさが制限される。更に、後で加工(例えば、成形
又は機械加工)をせず又複雑なプレスに頼らずに得られ
る製品は、比較的簡単な形状のものしかない。又、焼結
中に不均一な収縮を生じるほか、圧縮粉の凝離及び結晶
粒成長のためにミクロ構造が不均一となる。
1976年7月20日に許可された、ジェイ・シー・キャネ
ル(J.C.Cannell)等による米国特許第3,970,136号に
は、所定の繊維整列パターンを有する繊維強化材、例え
ば、炭化珪素又はアルミナウイスカーを含有せめした金
属マトリックス複合体を形成する方法が記載されてい
る。この複合体は、共面繊維の平行マット又はフェルト
を金型に入れてマットの少なくとも一部分の間に溶融マ
トリックス金属、例えば、アルミニウムの溜を配置し、
圧力をかけて溶融金属をマットに浸透させ配列している
繊維を包囲させる。又、溶融金属を、マットの積層体上
に注ぎながら、加圧下してマット間に流すことができ
る。これに関して、強化繊維を複合体に最大約50体積%
充填されたことが報告されている。
繊維マットの積層体を通して溶融マトリックス金属を
押し入れるのは外力に依存しているので、上記した浸透
法は、圧力誘発流動プロセス特有の変動、即ち、マトリ
ックスの生成や、多孔率等が不均一となる可能性があ
る。たとえ、溶融金属を繊維アレイ内の複数の部位に導
入しても、性質は不均一になる可能性がある。その結
果、複雑なマット/溜配置及び流賂を設けて、繊維マッ
トの積層体に十分且つ均一に浸透できるようにする必要
がある。又、上記した圧力浸透法では、体積の大きなマ
ットに強化材を浸透させることが元来困難であるので、
マトリックス体積に対する強化材の割合が比較的低いも
のしか得られない。更に、加圧下で溶融金属を含有させ
るために型が必要であり、費用がかさむ。最後に、整列
させた粒子又は繊維への浸透に限定されている上記の方
法は、ランダムに配列した粒子、ウイスカー又は繊維の
形態の物質で強化したアルミニウム金属マトリックス複
合体の生成には用いられない。
アルミニウムマトリックス・アルミナ充填複合体の製
造では、アルミニウムは容易にはアルミナを湿潤せず、
凝集した製品を形成するのが困難となる。この問題に対
しては種々の解決法が提案された。このような手法の一
つとして、アルミナを金属(例えば、ニッケル又はタン
グステン)で被覆後、アルミニウムとともにホットプレ
スする。別の手法では、アルミニウムをリチウムと合金
し、アルミナをシリカで被覆してもよい。しかしなが
ら、これらの複合体は、性質にバラツキがみられたり、
被膜が充填材を劣化させる場合があるか、又はマトリッ
クスがリチウムを含有しマトリックスの性質に影響を及
ぼすことがある。
アール・ダブリュ・グリムシャー(R.W.Grimshaw)等
による米国特許第4,232,091号では、アルミニウムマト
リックス・アルミナ複合体の製造で遭遇する当該技術に
おける困難はある程度克服される。この特許では、75〜
375kg/cm2の圧力をかけて、溶融アルミニウム(又は溶
融アルミニウム合金)を、700〜1050℃に予備加熱した
アルミナの繊維又はウイスカーマットに押し入れること
が記載されている。この際、得られた一体鋳物における
金属に対するアルミナの最大体積比は、0.25/1であっ
た。この方法でも、浸透を行うのは外力に依存するの
で、キャネル(Cannel)等と同様な欠陥がある。
ヨーロッパ特許出願公開公報第115,742号では、予備
成形したアルミナのポイドを溶融アルミニウで充填する
ことにより、電解槽部材として特に有効であるアルミニ
ウム・アルミナ複合体を作製することが記載されてい
る。この出願では、アルミニウムによるアルミナの非湿
潤性が強調されており、プレフォーム全体にわたってア
ルミナを浸潤するための種々の手法が用いられている。
例えば、アルミナを、チタン、ジルコニウム、ハフニウ
ム若しくはニオブの二硼化物からなる湿潤剤又は金属、
即ち、リチウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、
クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム若しく
はハフニウムで被覆する。この際、アルゴン等の不活性
雰囲気を用いて湿潤を容易にする。又、この出願も、圧
力をかけて、溶融アルミニウムを未被覆マトリックスに
浸透させることを記載されている。この態様では、孔を
排気後、不活性雰囲気(例えば、アルゴン)中で溶融ア
ルミニウムに圧力を加えることにより達成される。又、
溶融アルミニウムを浸透させてボイドを充填する前に、
プレフォームにアルミニウムを気相蒸着により浸透させ
て表面を湿潤することもできる。プレフォームの孔にア
ルミニウムを確実に保持するためには、真空中又はアル
ゴン中で、熱処理(例えば、1400〜1800℃)することが
必要である。このようにしないと、圧力浸透物質をガス
に暴露したり又は浸透圧を取り除くと、物体からのアル
ミニウムの損失が生じる。
湿潤剤を用いて電解槽のアルミナ成分に溶融金属を浸
透させることは、ヨーロッパ特許出願公開第94353号に
も記載されている。即ち、この公開公報には、セルライ
ナー又は支持体として陰極電流供給手段を有するセルを
用いて、電解採取によりアルミニウムを製造することが
記載されている。この支持体を溶融氷晶石から保護する
ために、湿潤剤と溶解抑制剤との混合物の薄い被膜を、
セルの始動前又は電解法で製造した溶融アルミニウムに
浸漬中に、アルミナ支持体に塗布する。湿潤剤として
は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、マグネ
シウム、バナジウム、クロム、ニオブ又はカルシウムが
が開示されており、チタンが好ましい湿潤剤として記載
されている。又、硼素、炭素及び窒素の化合物が、溶融
アルミニウムの湿潤剤への溶解度を抑制するのに有効で
あると記載されている。しかしながら、この刊行物は、
金属マトリックス複合体の製造を示唆していないばかり
か、このような複合体を、例えば、窒素雰囲気中で形成
することも示唆していない。
圧力の付加及び湿潤剤の塗布の他に、真空にすること
により多孔性セラミック成形体への溶融アルミニウムの
浸透が促進されることも開示されている。例えば、1973
年2月27日に許可されたアール・エル・ランディングハ
ム(R.L.Landingham)による米国特許第3,718,441号に
は、セラミック成形体(例えば、炭化硼素、アルミナ及
びベリリア)に、10-6トール未満の真空下で、溶融アル
ミニウム、ベリリウム、マグネシウム、、チタン、バナ
ジウム、ニッケル又はクロムを浸透することが報告され
ている。10-2〜10-6トールの真空では、溶融金属による
セラミックの湿潤が不良で、金属がセラミックのボイド
空間に自由に流れ込まなかった。しかしながら、真空を
10-6トール未満まで減少させると、湿潤が向上したと記
載されている。
1975年2月4日に許可されたジー・イー・ガザ(G.E.
Gazza)等による米国特許第3,864,154号にも、真空を用
いて浸透を行う旨の記載がある。又、この特許には、AI
B12粉末の常温圧縮成形体を常温圧縮アルミニウム粉末
のベッド上に添加することが記載されている。その後、
更に、アルミニウムをAIB12粉末成形体の上部に配置す
る。アルミニウム粉末の層間に「挟んだ」AIB12成形体
を装填したルツボを真空炉に入れる。この炉を、約10-5
トールまで排気してガス抜きをする。続いて、温度を11
00℃に上昇し、3時間維持する。これらの条件で、溶融
アルミニウムを多孔性AIB12成形体に浸透させる。
1968年1月23日に許可されたジョン・エヌ・レッディ
ング(John N.Reding)等による米国特許第3,364,976号
には、物体に自己発生真空を作り出して、溶融金属の物
体への浸透を促進することが開示されている。即ち、物
体、例えば、黒鉛金型、鋼金型又は多孔性耐火材を、溶
融金属に完全に浸すことが開示されている。金型の場
合、金属と反応性のあるガスで満たした金型キャビティ
が、外部に位置する溶融金属と、金型内の少なくとも一
つのオリフィスを介して連通している。金型を溶融液に
浸漬すると、キャビティ内のガスと溶融金属との間の反
応で自己発生真空が生じるとともにキャビティが金属で
満たされていく。この際の真空は、金属が酸化物固体状
態になる結果生じる。従って、レッディング等には、キ
ャビティ内のガスと溶融金属との間の反応を引き起こす
ことが必須であることが開示されている。しかしなが
ら、金型を用いるには本来制限があり、真空を生じさせ
るために金型を使用することは望ましくない。即ち、ま
ず、金型を機械加工して特定の形状にし;その後、仕上
げ機械加工して、金型上に許容できる鋳造表面を形成
し;使用前に組立;使用後に分解して注型品を取り出
し;その後、最も一般的には、金型表面を最仕上げして
金型を再生するか、又はもはや使用できない状態の場合
には金型を捨ててしまう必要がある。金型を複雑な形状
に機械加工するのは、非常にコストがかかるとともに時
間がかかる場合がある。更に、複雑な形状をした金型か
ら成形品を取り出すのも困難のことがある(即ち、複雑
な形状を有する注型品は、金型から取り外すとき壊れる
ことがある)。更に、多孔性耐火材の場合、金型を使用
せずに、直接溶融金属に浸漬できることも述べられてい
るが、容器金型を使用せずに弱く結着されるか又は分離
した多孔性材料に浸透させる手段がないので、耐火材は
一体品でなければならない(即ち、粒状物質は、溶融金
属に入れたときに、一般的に解離するかは浮かんで離れ
てしまう)。更に、粒状物質又は弱く成形したプレフォ
ームに浸透させようとする場合、浸透金属が粒子又はプ
レフォームの少なくとも一部分と置換してしまって不均
一なミクロ構造を生じることのないように注意しなけれ
ばならない。
従って、圧力を加えたり真空にしたり(外部から印加
するか、内部で生じさせるかとは無関係に)する必要の
ないか、又は湿潤材を損傷しないで、セラミック材料等
の別の材料を埋め込んだ金属マトリックスを生成する、
賦形金属マトリックス複合体を製造するための簡単で信
頼性のある方法が長年求められていた。更に、金属マト
リックス複合体を製造するのに要する最終的な機械加工
操作を最少限にすることも長年求められていた。本発明
は、処理の少なくともある時点で浸透増進剤が存在する
限り、標準大気圧下の浸透雰囲気(例えば、窒素)の存
在下において、プレフォームに成形できる材料(例え
ば、セラミック材料)に溶融マトリックス金属(例え
ば、アルミニウム)を、浸透させるための自発浸透機構
を提供することによりこれらの必要性を満たすものであ
る。
本発明の主題は、他のいくつかの本出願人による米国
特許出願及び日本出願に関連している。具体的には、こ
れらの他の特許出願(以下、しばしば、「同一出願人に
よる金属マトリックス特許出願」と称する)には、金属
マトリックス複合材料を製造する新規な方法が記載され
ている。
金属マトリックス複合材料を製造する新規な方法は、
「メタル マトリックスコンポジッツ(Metal Matrix C
omposites)」と題する1987年5月13日出願の本出願人
による米国特許出願第049,171号〔発明者:ホワイト(W
hite)等〕及び特開平1-52040号に開示されている。ホ
ワイト等の発明の方法によれば、金属マトリックス複合
体は、充填材の通気性素材(例えば、セラミック又はセ
ラミック被覆材料)に、少なくとも約1重量%のマグネ
シウム、好ましくは少なくとも約3重量%のマグネシウ
ムを含有する溶融アルミニウムを浸透させることにより
製造される。この際、外部圧力又は真空を印加しなくて
も、自発的に浸透が起きる。供給溶融金属と充填材の素
材とを、約10〜100体積%、好ましくは少なくとも約50
体積%の窒素を含有するとともに残り(存在すれば)が
非酸化性ガス(例えば、アルゴン)であるガスの存在下
において、少なくとも約675℃の温度で接触させる。こ
れらの条件下で、溶融アルミニウム合金が標準大気圧下
でセラミック素材に浸透して、アルミニウム(又はアル
ミニウム合金)マトリックス複合体が形成される。所望
量の充填材に溶融アルミニウム合金を浸透させたら、温
度を低下させて合金を固化することにより、強化充填材
を埋め込んだ固形金属マトリックス構造を形成する。通
常及び好ましくは、送り出される溶融金属の供給量は、
実質的に充填材の素材の境界まで浸透するに十分な量で
ある。ホワイト等により製造されるアルミニウムマトリ
ックス複合体中の充填材の量は、非常に高くすることが
できる。即ち、合金に対する充填材の体積比が1:1を超
えるものを得ることができる。
前記したホワイト等の発明におけるプロセス条件下で
は、アルミニウムマトリックス全体に分散した形態で、
窒化アルミニウムの不連続相を形成することができる。
アルミニウムマトリックスにおける窒化物の量は、温
度、合金組成、ガス組成及び充填材等の因子によって異
なっていてもよい。従って、系におけるこのような因子
の一つ以上を制御することにより、複合体の一定の性質
を所望のものに合わせることができる。しかしながら、
ある最終用途の場合、複合体が窒化アルミニウムをほと
んど含有しないことが望ましい場合がある。
温度が高いほど浸透には有利であるが、このプロセス
により窒化物が生成しやすくなる。ホワイト等の発明で
は、浸透速度と窒化物生成との間のバランスをとること
ができる。
金属マトリックス複合体生成に使用するのに適当なバ
リヤー手段の例が、「メソッド オブ メーキング メ
タル マトリックス コンポジット ウイズ ザ ユー
ス オブ ア バリヤー(Method of Making Metal Mat
rix Composite with the Use of a Barrier)」と題す
る1988年1月7日出願の本出願人による米国特許出願第
141,642号〔発明者:ミカエル・ケー・アグハジァニア
ン(Michael K.Aghajanian)等〕及び特開平1-215935号
に開示されている。アグハジァニアン等の発明の方法に
よれば、バリヤー手段〔例えば、粒状二硼化チタン又は
商品名がグラフォイル(商標)であるユニオンカーバイ
ド社製の軟質黒鉛テープ製品等の黒鉛材料〕が、充填材
とマトリックス合金の規定された表面境界に配置され、
バリヤー手段により形成される境界まで浸透する。この
バリヤー手段は、溶融合金の浸透を阻止、防止又は終了
させるのに用いられ、得られた金属マトリックス複合体
中に網又は網に近い形状を形成する。従って、形成した
金属マトリックス複合体の外形は、バリヤー手段の内部
形状と実質的に一致する。
米国特許出願第049,171号及び特開平1-52040号に記載
の方法は、「メタル マトリックス コンポジッツ ア
ンド テクニクス フォー メーキング ザ セイム
(Metal Matrix Composites and Techniques for Makin
g the Same)」と題する1988年3月15日出願の本出願人
による米国特許出願第168,284号〔発明者:ミカエル・
ケー・アグハジァニアン(Michael K.Aghajanian)及び
マーク・エス・ニューカーク(Mark S.Newkirk)〕及び
特開平1-273935号によって改善された。この米国特許出
願に開示された方法によれば、マトリックス金属合金
は、第一金属源及び、例えば、重力流れにより第一溶融
金属源と連通するマトリックス金属合金の溜として存在
する。特に、これらの特許出願に記載されている条件下
では、第一溶融マトリックス合金が、標準大気圧下、充
填材の素材に浸透し始め、従って、金属マトリツクス複
合体の生成が始まる。第一溶融マトリックス金属合金源
は、充填材の素材への浸透中に消費され、自発浸透の継
続とともに、必要に応じて、好ましくは連続的な手段に
より、溶融マトリックス金属の溜から補充することがで
きる。所望量の通気性充填材に溶融マトリックス合金が
自発浸透したら、温度を低下させて合金を固化すること
により、強化充填材を埋め込んだ固形金属マトリックス
を形成する。金属の溜を使用することは、この特許出願
に記載されている発明の一実施態様にすぎず、溜の実施
態様を、開示されている発明の別の各実施態様と組み合
わせる必要はないが、実施態様の中には、本発明と組み
合わせて使用するのが有益な場合もある。
金属の溜は、所定の程度まで充填材の通気性素材に浸
透するに十分な量の金属を提供する量で存在することが
できる。又、任意のバリヤー手段を、充填材の通気性素
材の少なくとも一方の表面に接触させて、表面境界を形
成することができる。
更に、送り出す溶融マトリックス合金の供給量は、少
なくとも、充填材の通気性素材の境界(例えば、バリヤ
ー)まで実質的に自発浸透するに十分な量でなければな
らないが、溜に存在する合金の量は、このような十分な
量を超えてもよく、合金量が完全浸透に十分な量である
ばかりでなく、過剰の溶融金属合金が残存して金属マト
リックス複合体に固定してもよい。従って、過剰の溶融
合金が存在するとき、得られる物体は、金属マトリック
スを浸透させたセラミック物体が溜に残存している過剰
の金属に直接結合している複雑な複合体(例えば、マク
ロ複合体)である。
上記した本出願人による金属マトリックスに関する特
許出願には、金属マトリックス複合体の製造方法及び該
方法から製造される新規な金属マトリックス複合体が記
載されている。前記した本出願人による金属マトリック
スに関する特許出願の全ての開示事項は、特に本発明に
利用できる。
〔課頴を解決するための手段〕
本発明によれば、金属マトリックス複合体が、充填材
又はプレフォームの通気性素材に溶融マトリックス金属
を自発的に浸透させることにより製造される。具体的に
は、マトリックス金属と充填材又はプレフォームの通気
性素材との間の界面の一部分に、浸透増進剤及び/又は
浸透増進剤前駆体を含ませる。更に、ブリセス中のある
時点で、浸透雰囲気が、充填材若しくはプレフォーム及
び/又はマトリックス金属のうちの少なくとも一つと連
通状態にあるようにする。浸透増進剤及び/又は浸透増
進剤前駆体及び/又は浸透雰囲気が存在するにより、マ
トリックス金属は、溶融されると、充填材又はプレフォ
ームに自発的に浸透する。好ましい実施態様において
は、浸透増進剤前駆体を、マトリックス金属の固体イン
ゴットと充填材又はプレフォームの通気性素材との間の
界面に設ける。浸透増進剤前駆体は、例えば、充填材又
はプレフォームの多孔性のために浸透雰囲気と連通し、
浸透雰囲気が充填材又はプレフォームを通って流れる。
この浸透増進剤前駆体は、マトリックス金属の固体イン
ゴット及び/又は充填材若しくはプレフォームの少なく
とも一つ又は両方の表面にゆるく適用すればよい(例え
ば、粒状物又は固体材料として)。又、浸透増進剤前駆
体からスラリー混合物を生成して、それを適当な手段
(例えば、塗装又は噴霧)により、マトリックス金属の
固体インゴット及び/又は充填材若しくはプレフォーム
の少なくとも一つ又は両方の表面に適用してもよい。
別の好ましい実施態様では、浸透増進剤を、マトリッ
クス金属の固体インゴットと充填材又はプレフォームの
通気性素材との間の界面に設ける。浸透増進剤は、マト
リックス金属の固体インゴット及び/又は充填材若しく
はプレフォームの少なくとも一つ又は両方の表面にゆる
く適用すればよい(例えば、粒状物又は固体材料とし
て)。又、浸透増進剤からスラリー混合物を生成して、
それを適当な手段(例えば、塗装又は噴霧)により、マ
トリックス金属の固体インゴット及び/又は充填材若し
くはプレフォームの少なくとも一つ又は両方の表面に適
用してもよい。
更に、浸透増進剤及び/又は浸透増進剤前駆体は、浸
透される充填材若しくはプレフォームの通気性素材の表
面の少なくとも一部分にのみ(いずれかの適当な手段
で)適用してもよい。その後、溶融マトリックス金属
と、浸透される充填材又はプレフォームの表面とを接触
させて、溶融マトリックス金属の少なくとも一部分が浸
透増進剤及び/又は浸透増進剤前駆体と接触するように
する。更に、プロセス中の少なくともある時点で、浸透
雰囲気が、マトリックス金属及び/又は浸透増進剤前駆
体及び/又は浸透増進剤及び/又は充填材若しくはプレ
フォームの少なくとも一つと連通状態にあるようにして
もよい。基本的には、浸透増進剤前駆体を用いるか、浸
透増進剤を用いるかとは無関係に、少なくとも自発浸透
中は、浸透増進剤を、マトリックス金属と充填材又はプ
レフォームとの間の界面の少なくとも一部分に位置させ
なければならない。
本明細書においては、主にアルミニウムマトリックス
金属について説明する。この金属は、金属マトリックス
複合体の形成中のある時点で、浸透雰囲気として作用す
る窒素の存在下で、浸透増進剤前駆体として作用するマ
グネシウムと接触させる。即ち、アルミニウム/マグネ
シウム/窒素からなるマトリックス金属/浸透増進剤前
駆体/浸透雰囲気系は、自発浸透を示す。しかしなが
ら、他のマトリックス金属/浸透増進剤前駆体/浸透雰
囲気系も、アルミニウム/マグネシウム/窒素と同様に
挙動することができる。例えば、同様の自発浸透の挙動
が、アルミニウム/ストロンチウム/窒素系;アルミニ
ウム/亜鉛/酸素系;及びアルミニウム/カルシウム/
窒素系において観察された。従って、本明細書では、ア
ルミニウム/マグネシウム/窒素系について主に説明す
るが、他のマトリックス金属/浸透増進剤前駆体/浸透
雰囲気系も、同様に挙動することができる。
マトリックス金属がアルミニウム合金からなるとき、
このアルミニウム合金を、充填材(例えば、アルミナ又
は炭化珪素)のプレフォーム又は充填材の固く結合して
いない素材と接触させる。この際、充填材又はプレフォ
ームの表面にはマグネシウムが適用されている。同様
に、プロセスを、マトリックス金属の固体インゴットか
ら始める場合、マグネシウムを、固体マトリックス金属
の表面に適用できる。更に、好ましい実施態様では、ア
ルミニウム合金及び/又はプレフォーム若しくは充填材
を、プロセスの少なくとも一部分の間、窒素雰囲気中に
入れる。プレフォームは自発的に浸透され、金属マトリ
ックスの自発浸透の程度又は速度は、例えば、系に供給
されるマグネシウムの濃度(例えば、アルミニウム合金
上又は充填材若しくはプレフォームの表面上の濃度)、
プレフォーム又は充填材粒子のサイズ及び/又は組成、
浸透雰囲気中の窒素濃度、浸透のために与えられる時
間、及び/又は浸透が生じる温度をはじめとする一定の
処理条件に応じて異なる。浸透は、一般的に、実質的に
完全にプレフォーム又は充填材を埋め込むのに十分な程
度まで起きる。
定義 本明細書で使用する「アルミニウム」とは、実質的に
純粋な金属(例えば、比較的純粋で市販されている未合
金化アルミニウム)又は不純物及び/若しくは鉄、珪
素、銅、マグネシウム、マンガン、クロム、亜鉛等の合
金成分を有する市販の金属等の他のグレードの金属及び
金属合金を意味するとともにそれらを含む。この定義で
用いているアルミニウム合金は、アルミニウムが主成分
である合金又は金属間化合物である。
本明細書で使用する「残部非酸化性ガス」とは、浸透
雰囲気を成す主要ガスの他に存在するガスで、プロセス
条件下でマトリックス金属と実質的に反応しない不活性
ガス又は還元性ガスであることを意味する。使用される
ガス中の不純物として存在してもよい酸化性ガスで、プ
ロセス条件下でかなりの程度までマトリックス金属を酸
化するには不十分でなければならない。
本明細書で使用する「バリヤー」又は「バリヤー手
段」とは、充填材の通気性素材(permeable mass)又は
プレフォームの表面境界を超えて溶融マトリックス金属
が移動、動き等をするのを妨げ、妨害、防止又は終了さ
せるいずれかの適当な手段を意味する。この場合、表面
境界は、前記バリヤー手段により形成されている。適当
なバリヤー手段としては、プロセス条件下で、ある程度
の一体性を維持し且つ実質的に揮発しない(即ち、バリ
ヤー材はバリヤーとして機態しないほどには揮発しな
い)材料、化合物、要素、組成物等を挙げることができ
る。
更に、適当な「バリヤー手段」としては、用いられる
プロセス条件下で、移動する溶融マトリックス金属で実
質的に湿潤しない材料が挙げられる。この種のバリヤー
は、溶融マトリックス金属に対しては実質的に何ら親和
性を示さないと思われ、充填材の素材又はプレフォーム
限定された表面境界を超えて溶融マトリックス金属が移
動するのがバリヤー手段によって妨げられる。このバリ
ヤーは、必要とされるかもしれない最終的な機械加工又
は研磨を減らし、得られる金属マトリックス複合体製品
の表面の少なくとも一部分を形成する。このバリヤー
は、ある場合には、通気性若しくは多孔性又は、例え
ば、孔をあけるか若しくはバリヤーに穴をあけることに
より通気性にして、ガスを溶融マトリックス金属に接触
させてもよい。
本明細書で使用する「カーカス(carcass)」又は
「マトリックス金属のカーカス」とは、金属マトリック
ス複合体物体の形成中に消費されなかった残存している
マトリックス金属の最初の物体を意味し、一般的には、
冷却すると、形成された金属マトリックス複合体と少な
くとも部分的に接触したままの状態を維持する。又、カ
ーカスは、第二又は外来金属も含んでいてもよい。
本明細書で使用する「充填材」とは、マトリックス金
属と実質的に反応せず及び/又はマトリックス金属への
溶解度が限られている単一成分又は成分の混合物が含ま
れ、単相又は複相であってもよい。充填材は、粉末、フ
レーク、板状、小球体、ウイスカー、バブル等の多種多
様の形態で使用でき、緻密でも多孔でもよい。又、「充
填材」は、繊維、チョップトファイバー、粒体、ウイス
カー、バブル、球体、繊維マット等の形態のアルミナ又
はシリコンカーバイド等のセラミック充填材並びに炭素
が、例えば、溶融アルミニウム母材金属によって侵食さ
れるのを防止するためにアルミナ若しくは炭化珪素で被
覆した炭素繊維等のセラミック被覆充填材でもよい。
又、充填材は金属でもよい。
本明細書で使用される「浸透雰囲気(Infiltrating a
tmosphere)」とは、マトリックス金属及び/又はプレ
フォーム(又は充填材)及び/又は浸透増進剤前駆体及
び/又は浸透増進剤と相互作用し、マトリックス金属の
自発浸透を生じさせ又は促進させる存在雰囲気を意味す
る。
本明細書で使用される「浸透増進剤(Infiltration E
nhancer)」とは、マトリックス金属が充填材若しくは
プレフォームに自発浸透するのを促進又は補助する物質
を意味する。浸透増進剤は、例えば、浸透増進剤前駆体
を浸透雰囲気と反応させて、(1)ガス状物及び/又は
(2)浸透増進剤前駆体と浸透雰囲気との反応生成物及
び/又は(3)浸透増進剤前駆体と充填材若しくはプレ
フォームとの反応生成物を生成することにより製造でき
る。更に、浸透増進剤は、プレフォーム及び/又はマト
リックス金属及び/又は浸透雰囲気の少なくとも一つに
直接供給して、浸透増進剤前駆体と別の種との間の反応
で生成させた浸透増進剤と実質的に同様の方法で作用さ
せてもよい。基本的には、少なくとも自発浸透中は、浸
透増進剤は自発浸透を達成するために充填材又はプレフ
ォームの少なくとも一部分の中又は上に位置していなけ
ればならない。
本明細書において使用される「浸透増進剤前駆体(In
filtration Enhancer Precursor)」とは、マトリック
ス金属、プレフォーム及び/又は浸透雰囲気と組み合わ
せて使用すると、マトリックス金属の充填材又はプレフ
ォームヘの自発浸透を誘発又は補助する物質を意味す
る。特別な原理又は説明には限定されないが、浸透増進
剤前駆体が浸透雰囲気及び/又はプレフォーム若しくは
充填材及び/又は金属と相互作用できる位置に、浸透増
進剤前駆体が配置若しくは移動できることが必要であ
る。例えば、あるマトリックス金属/浸透増進剤前駆体
/浸透雰囲気系では、浸透増進剤前駆体が、マトリック
ス金属の溶融温度、その近くの温度又は場合によっては
それよりもいくらか高い温度で揮発することが望まし
い。このような揮発により、(1)浸透増進剤前駆体と
浸透雰囲気との反応による、マトリックス金属による充
填材又はプレフォームの湿潤を増進するガス状物の生
成;及び/又は(2)浸透増進剤前駆体と浸透雰囲気と
の反応による、充填材又はプレフォームの少なくとも一
部に湿潤を増進する固体状、液状又はガス状浸透増進剤
の生成;及び/又は(3)充填材又はプレフォームの少
なくとも一部分内において湿潤を増進する固体状、液状
又はガス状浸透増進剤を生成する充填材又はプレフォー
ム内の浸透増進剤前駆体の反応が生じる。
本明細書において使用される「マトリックス金属」又
は「マトリックス金属合金」とは、金属マトリックス複
合体の形成に用いられる金属(例えば、浸透前)及び/
又は充填材と混じり合って金属マトリックス複合体を形
成している金属(例えば、浸透後)を意味する。上記金
属をマトリックス金属と称する場合には、マトリックス
金属には、実質的に純粋な金属、不純物及び/若しくは
合金成分を有する市販の金属、金属が主成分である金属
間化合物又は合金も含まれる。
本明細書において使用される「マトリックス金属/浸
透増進剤前駆体/浸透雰囲気系」又は「自発系」とは、
プレフォーム又は充填材への自発浸透を示す物質の組み
合わせを意味する。「/」が、例示するマトリックス金
属、浸透増進剤前駆体及び浸透雰囲気の間に用いられる
ときは、特定の方法でそれらを組み合わせると、プレフ
ォーム若しくは充填材への自発浸透を示す系又は物質の
組み合わせを示すために使用される。
本明細書において使用される「金属マトリックス複合
体(Metal Matrix Composite)」又は「MMC」は、プレ
フォーム又は充填材を埋め込んだ、二次元若しくは三次
元的に連続する合金又はマトリックス金属からなる材料
を意味する。マトリックス金属に種々の合金元素を含有
せしめて、特に所望の機械的及び物理的性質を有するよ
うにしてもよい。
マトリックス金属と「異種」の金属とは、マトリック
ス金属と同じ金属を、主要成分として含有しない金属を
意味する(例えば、マトリックス金属の主要成分がアル
ミニウムの場合には、「異種」の金属は、例えば、ニッ
ケルを主要成分として有することができる。
「マトリックス金属を入れるための非反応性容器」と
は、プロセス条件下で、充填材(若しくはプレフォー
ム)及び/又は溶融マトリックス金属を入れるか又は収
容することができ且つ自発浸透機構に対して顕著な悪影
響を及ぼすような方法では、マトリックス及び/又は浸
透雰囲気及び/又は浸透増進剤前駆体及び/又は充填材
若しくはプレフォームとは反応しない容器を意味する。
本明細書において使用される「プレフォーム(Prefor
m)」又は「通気性プレフォーム(permeable prefor
m)」とは、浸透するマトリックス金属の境界を実質的
に形成する少なくとも一つの表面境界を用いて製造され
る充填材又は充填材の多孔性素材(porous mass)を意
味する。このような素材は、マトリックス金属を浸透さ
せる前に、寸法忠実性を提供するに十分な形状保持性及
び生強度を維持する。又、この素材は、自発浸透でマト
リックス金属を受け入れるに十分な程度に多孔性でなけ
ればならない。プレフォームは、一般的には、充填材
が、均一若しくは不均一の形態で、結着して充填又は配
置されてなり、適当な物質(例えば、セラミック及び/
又は金属の粒子、粉末、繊維、ウイスカー等並びにそれ
らの組み合わせ)からなってよい。プレフォームは、単
独でも集成体で存在してもよい。
本明細書で使用される「溜(reservoir)」とは、金
属が溶融したとき、流れて、充填材若しくはプレフォー
ムと接触しているマトリックス金属の部分、セグメント
若しくは源を補充又は、ある場合には、最初にマトリッ
クス金属を提供しかつ続いて補充するために、充填材又
はプレフォームの素材に対して分離して配置されたマト
リックス金属の別個の物体を意味する。
本明細書で使用される「自発浸透(Spontaneous Infi
ltration)」とは、圧力又は真空を印加(外部から印加
するか若しくは内部で発生させるかとは無関係に)しな
くても、マトリックス金属が充填材又はプレフォームの
通気性素材に浸透することを意味する。
以下の図は、本発明の理解を深めるために示したもの
であるが、本発明の範囲はこれらによっては限定されな
い。各図において、同様な構成要素は同様な参照番号を
用いてある。
本発明は、充填材のゆるい素材又はプレフォームに溶
融マトリックス金属を自発的に浸透させることによる金
属マトリックス複合体の形成に関する。詳細には、浸透
増進剤及び/又は浸透増進剤前駆体を、マトリックス金
属と充填材若しくはプレフォームとの間の界面に、自発
浸透が生じる前に適用するか、溶融マトリックス金属と
充填材又はプレフォームとの接触と実質的に連続して適
用してもよい。基本的には、少なくとも自発浸透中は、
浸透増進剤を、少なくとも、充填材又はプレフォームと
マトリックス金属との間の界面並びに/又は充填材又は
プレフォームの少なくとも一部分に位置させなければな
らない。
具体的には、浸透増進剤前駆体は、浸透雰囲気と少な
くとも部分的に反応させて、溶融マトリックス金属と充
填材又はプレフォームとの接触の前又は実質的に連続し
て、浸透増進剤が、充填材又はプレフォームの少なくと
も一部分に生成するようにすることができる(例えば、
マグネシウムが浸透増進剤前駆体で、窒素が浸透雰囲気
の場合、浸透増進剤は窒化マグネシウムでよく、プレフ
ォーム又は充填材の少なくとも一部分の表面又は少なく
とも一部分の中に位置させる)。
マトリックス金属/浸透増進剤前駆体/浸透雰囲気系
の一例として、アルミニウム/マグネシウム/窒素系が
挙げられる。具体的には、アルミニウムマトリックス金
属を、プロセス条件下で、アルミニウムを溶解させたと
きにアルミニウムマトリックス金属及び/又は充填材若
しくはプレフォームと反応しない適当な耐火容器内に入
れることができる。充填材又はプレフォームは、表面に
マグネシウムを有していてもよく、又、処理中の少なく
ともある時点で、窒素雰囲気に暴露してもよい。溶融ア
ルミニウムマトリックス金属を、表面にマグネシウムを
有するプレフォーム又は充填材と接触させると、マトリ
ックス金属が、充填材又はプレフォームに自発的に浸透
する。
更に、浸透増進剤前駆体を供給するのではなく、浸透
増進剤を、プレフォーム及び/又はマトリックス金属の
少なくとも一つに(それらの間の界面に)、直接供給し
てもよい。
本発明の方法に用いられる条件下では、アルミニウム
/マグネシウム/窒素自発浸透系の場合に、充填材又は
プレフォームは、窒素含有ガスが、プロセス中のある時
点で充填材又はプレフォームに浸透若しくは通過し及び
/又は溶融マトリックス金属と接触するのに十分な程度
通気性でなければならない。更に、通気性充填材又はプ
レフォームに溶融マトリックス金属を浸透させて、窒素
透過充填材又はプレフォームに溶融マトリックス金属を
自発浸透させることにより、金属マトリックス複合体を
形成し、及び/又は窒素を浸透増進剤前駆体と反応させ
て浸透増進剤を充填材又はプレフォームの表面及び/又
は充填材又はプレフォーム内の少なくとも一部分に形成
して自発浸透を生じさせることができる。自発浸透及び
金属マトリックス複合体生成の程度又は速度は、充填材
又はプレフォームの表面に配置するマグネシウムの量、
充填材若しくはプレフォームの表面又は充填材若しくは
プレフォーム内の少なくとも一部分に配置する窒化マグ
ネシウムの量、追加の合金元素(例えば、珪素、鉄、
銅、マンガン、クロム、亜鉛等)の有無、充填材の平均
サイズ(例えば、粒径)、充填材の表面状態及び種類、
浸透雰囲気の窒素濃度、浸透に与えられる時間並びに浸
透が生じる温度を含む一定のプロセス条件により異な
る。
比較として、例えば、溶融アルミニウムマトリックス
金属の浸透を自発的に生じさせるために、アルミニウム
を、合金重量に対して少なくとも約1重量%、好ましく
は少なくとも約3重量%のマグネシウム(浸透増進剤前
駆体として機能する)と合金化することができる。又、
上記で説明した補助合金元素をマトリックス金属に含有
せしめて、特定の性質を作り出してもよい。(更に、補
助合金元素は、充填材又はプレフォームの自発浸透を生
じさせるためのマトリックスアルミニウム金属に必要と
されるマグネシウムの最少量に影響する場合がある。)
例えば、揮発による自発系からのマグネシウムの損失
は、浸透増進剤を形成するのにマグネシウムが全く存在
しない程度までは生じてはならない。従って、十分な濃
度の初期合金元素を用いて、自発浸透が揮発によって悪
影響されないようにすることが望ましい。更に、充填材
若しくはプレフォームの表面及び/又はマトリックス金
属の表面の両方にマグネシウムが存在すると、自発浸透
を達成するのに必要なマグネシウムの量が減少する場合
がある(詳細については後述する)。
窒素雰囲気における窒素体積%も、金属マトリックス
複合体の生成速度に影響を及ぼす。即ち、約10体積%未
満の窒素が雰囲気に存在する場合、自発浸透が非常にゆ
っくり生じるか又はほとんど生じない。即ち、少なくと
も約50体積%の窒素が雰囲気に存在して、それにより、
例えば、浸透速度をはるかに大きくして浸透時間を短く
することが好ましいことが見い出された。浸透雰囲気
(例えば、窒素含有ガス)を充填材若しくはプレフォー
ム及び/又はマトリックス金属に直接供給してもよい
し、又は物質の分解から生成若しくは生じさせてもよ
い。
セラミック充填金属マトリックス複合体を得るため
に、マトリックス金属と充填材又はプレフォームとの間
の界面に配置する必要最少マグネシウム含量は、処理温
度、時間、珪素又は亜鉛等の補助合金元素の有無、充填
材の性質、雰囲気の窒素含量及び窒素雰囲気の流速等の
一種又はそれ以上の変数によって異なる。マグネシウム
含量を増加すれば、より低温又はより短い加熱時間で完
全な浸透を達成することができる。叉、一定のマグネシ
ウム含量の場合、亜鉛等のある種の補助合金元素を添加
すると、より低温を用いることが可態となる。
比較のために、例えば、使用範囲の下端、即ち、約1
〜3重量%でのマトリックス金属のマグネシウム含量
を、上記した最低処理温度、高窒素濃度又は一種以上の
補助合金元素の少なくとも一つとの組み合わせで用いて
もよい。充填材又はプレフォームにマグネシウムを全く
添加しない場合には、多種多様なプロセス条件にわたる
一般的な実用性に基づいて、約3〜5重量%のマグネシ
ウムを含有する合金が好ましく、より低い温度及びより
短い処理時間を用いる場合には、少なくとも約5%が好
ましい。叉、浸透に必要とする温度条件を和らげるため
に、アルミニウムのマグネシウム含量を約10重量%を超
えるものとしてもよい。補助合金元素と組み合わせて用
いるときには、マグネシウム含量を減少させてもよい
が、これらの合金元素は補助的機能しか果たさないの
で、少なくとも上記で規定した最少量のマグネシウムと
一緒に用いる。例えば、10%珪素だけと合金化した公称
純アルミニウムは、1000℃では500メッシュの39クリス
トロン(Crystolon)〔ノートン社(Nortom Co.)製純
度99%炭化珪素〕のベッドに実質的に浸透しなかった。
しかしながら、マグネシウムが存在すると、珪素が浸透
工程を促進することが判明した。
更に、マグネシウムを専らプレフォーム又は充填材に
供給する場合には、その量は異なる。マグネシウムを、
マトリックス金属とプレフォーム又は充填材との間の界
面に配置するとき、自発系に供給されるマグネシウムの
量(重量%)がもっと少なくても自発浸透が生じること
が判明した。金属マトリックス複合体において、望まし
くない金属間化合物が生成するのを防止するためには、
マグネシウムの量は少ない方が望ましい。
炭化珪素プレフォームの場合には、マグネシウムを少
なくとも約1重量%含有するプレフォームを、実質的に
純粋な窒素雰囲気の存在下で、アルミニウムマトリック
ス金属と接触させると、マトリックス金属がプレフォー
ムに自発的に浸透する。アルミナプレフォームの場合、
許容できる自発浸透を達成するのに必要なマグネシウム
の量は、これよりわずかに大きい。即ち、アルミナプレ
フォームを同様なアルミニウムマトリックス金属と接触
させると、炭化珪素プレフォームに浸透したアルミニウ
ムとほぼ同じ温度で且つ同じ窒素雰囲気下で、すぐ上で
説明した炭化珪素プレフォームで達成されたのと同様な
自発浸透を達成するには、少なくとも約3重量%のマグ
ネシウムが必要であることが判明した。しかしながら、
充填材又はプレフォームにマトリックス金属を浸透させ
る前に、自発系に対して、浸透増進剤前駆体及び/又は
浸透増進剤を、合金の表面及び/又はプレフォーム若し
くは充填材の表面に供給することにより、自発浸透を達
成するのに必要とするマグネシウムの量を減少すること
ができる。マグネシウムをマトリックス金属の表面に適
用する場合には、その表面は、充填材の通気性素材に近
接若しくは好ましくは接触している表面であること、又
はマグネシウムを充填材の通気性素材の表面に通用する
ときはその表面がマトリックス金属の表面に最も近接若
しくは好ましくは接触していることが好ましい。
更に、表面への適用、合金化及びプレフォームの少な
くとも一部分中へのマグネシウムの配置のいくつかを組
み合わせて使用することができる。浸透増進剤及び/又
は浸透増進剤前駆体の適用の組み合わせにより、プレフ
ォームヘのマトリックスアルミニウム金属の浸透を促進
するために必要なマグネシウムの総重量%の減少ができ
るとともに、浸透が生じる温度を低下させることができ
る。更に、マグネシウムが存在するために生成する望ま
しくない金属間化合物の量も最少に抑えることもでき
る。
一種以上の補助合金元素の使用及び周囲ガス中の窒素
濃度も、所定温度でのマトリックス金属の窒化の程度に
影響する。例えば、合金に含ませるか又は合金の表面に
置く亜鉛若しくは鉄等の補助合金元素を使用して、浸透
温度を低下し、それにより、窒化物の生成量を減少で
き、一方、ガス中の窒素濃度を増加すると窒化物の生成
を促進できる。
合金及び/又は充填材若しくはプレフォームの少なく
とも表面に配置されるマグネシウムの濃度も、所定温度
での浸透の程度に影響する傾向がある。その結果、マグ
ネシウムがプレフォーム又は充填材とほとんど直接接触
しない場合には、少なくとも約3重量%のマグネシウム
を合金に含ませて自発浸透を行うことが好ましい。1重
量%のように、この量未満の合金含量では、浸透には、
より高温のプロセス温度又は補助合金元素が必要な場合
がある。(1)合金のマグネシウム含量のみを、例え
ば、少なくとも約5重量%に増加する場合;及び/又は
(2)合金成分を充填材の通気性素材と混合するとき;
及び/又は(3)亜鉛又は鉄等の別の元素がアルミニウ
ム合金に存在する時は、本発明の自発浸透法を行うのに
必要とする温度はもっと低くてもよい。温度も、充填材
の種類により異なる。一般的に、自発的でかつ進行する
浸透は、少なくとも約675℃、好ましくは少なくとも約7
50〜800℃のプロセス温度で生じる。1200℃を超える温
度では、一般的に、本方法には利点がないと思われ、特
に有効な温度範囲は、約675℃〜約1200℃であることが
判明した。しかしながら、原則として、自発浸透温度
は、マトリックス金属の融点を超え且つマトリックス金
属の蒸発温度未満である。更に、自発浸透温度は、充填
材の融点よりも低くなければならない。更に、温度が増
加するとともに、マトリックス金属と浸透雰囲気との間
の反応生成物が生成する傾向が増加する(例えば、アル
ミニウムマトリックス金属と窒素浸透雰囲気の場合、窒
化アルミニウムが生成する場合がある)。このような反
応生成物は、金属マトリックス複合体の意図する用途に
より、望ましいこともあれば、望ましくない場合もあ
る。更に、浸透温度を達成するために、電気加熱が一般
的に使用される。しかしながら、マトリックス金属が溶
融状態となり、自発浸透に悪影響を及ぼさない加熱手段
であれば、本発明で使用することができる。
本発明の方法においては、例えば、充填材の通気性素
材又はプレフォームが、プロセス中の少なくともある時
点で窒素含有ガスの存在下で、溶融アルミニウムと接触
状態とする。この窒素含有ガスは、ガスの連続流を充填
材若しくはプレフォーム及び/又は溶融アルミニウムマ
トリックス金属の少なくとも一つと接触を維持すること
により供給できる。窒素含有ガスの流量は重要ではない
けれども、合金マトリックスにおける窒化物の生成によ
り雰囲気から損失する窒素を補償するに十分であり、且
つ溶融金属を酸化する場合のある空気の進入を防止又は
阻止するに十分な流量であることが好ましい。
金属マトリックス複合体を形成する方法は、多種多様
の充填材に適用でき、どの充填材を選択するかは、マト
リックス合金、プロセス条件、溶融マトリックス合金と
充填材との反応性及び最終複合体製品に求められる性質
等の因子により異なる。例えば、アルミニウムがマトリ
ックス金属の場合、適当な充填材としては、(a)酸化
物、例えば、アルミナ;(b)炭化物、例えば、炭化珪
素;(c)硼化物、例えば、アルミニウムドデカボライ
ド;及び(d)窒化物、例えば、窒化アルミニウムが挙
げられる。充填材が溶融アルミニウムマトリックス金属
と反応する傾向がある場合には、浸透時間及び温度を最
少限度とするか、又は充填剤に非反応性被覆を設けるこ
とにより適応できる。充填材は、カーボン又は他の非セ
ラミック材料等の基材を包合し、この基材は侵食又は分
解から保護のためにセラミック被膜を有している。適当
なセラミック被膜としては、酸化物、炭化物、硼化物及
び窒化物が挙げられる。本発明の方法に用いるのに好ま
しいセラミックとしては、粒子状、板状、ウイスカー状
及び繊維状のアルミナ及び炭化珪素が挙げられる。繊維
は、不連続(細断した形態)でも又はマルチフィラメン
トトウ等の連続フィラメントでもよい。更に、充填材又
はプレフォームは、均一でも又は不均一でもよい。
又、特定の充填材は、同様な化学組成を有する充填材
に対して優れた浸透性を示すことが判明した。例えば、
「ノーベル セラミック マテリアルズ アンド メソ
ッズ オブ メーキング セーム(Novel Ceramic Mate
rials and Methods of Making Same)と題する、マーク
・エス・ニューカーク(Mark S.Newkirk)等による1987
年12月15日発行の特開昭61-6173号に開示されている方
法により製造した破砕アルミナ物体は、市取のアルミナ
製品よりも所望の浸透性を示す。更に、「コンポジット
セラミック アーティクルズ アンド メソッズ オ
ブ メーキング セーム(Composite Ceramic Articles
and Methods of Making Same)と題する同時継続及び
同一出願人による特開昭61-6173号〔発明者:マーク・
エス・ニューカーク(Mark S.Newkirk)等〕に開示され
ている方法により製造した破砕アルミナ物体も、市販の
アルミナ製品よりも所望の浸透性を示す。上記特許及び
特許出願の各々の内容は、本発明に利用できる。従っ
て、上記した米国特許及び特許出願の方法により製造し
た破砕又は粉砕した物体を用いることにより、より低い
浸透温度及び/又はより短い浸透時間で、セラミック材
の通気性素材の完全浸透が生じることが判明した。
充填材又はプレフォームのサイズ及び形状は、複合体
において望ましい性質を得るのに必要されるいずれのも
のでもよい。従って、浸透は充填材の形状によっては制
限されないので、充填材は、粒子状、ウイスカー状、板
状又は繊維状でよい。球体、小管、ペレット、耐火繊維
布等の他の形状を用いてもよい。更に、大きな粒子の場
合よりは小さい粒子の素材を完全に浸透させるには温度
を高めるか又は時間を長くすることが必要な場合がある
が、浸透は、充填材のサイズによっては制限されない。
賦形してプレフォームとしてもよい浸透されるべき充填
材の素材は、通気性でなければならない、即ち、溶融マ
トリックス金属透過性及び浸透雰囲気透過性でなければ
ならない。
溶融マトリックス金属をプレフォーム又は充填材の素
材に押し込むか又は押し入れるために圧力の使用に依存
しない本発明による金属マトリックス複合体を形成する
方法は、高い充填材体積%及び低い多孔率を有する実質
的に均一な金属マトリックス複合体を製造することが可
能である。充填材の多孔率がより小さい最初の素材を使
用することにより、充填材の体積分率をより高めること
ができる。又、素材が、溶融合金による浸透を禁止する
閉孔を有する成形体又は完全に密な構造に転換されない
かぎり、充填剤の素材を圧縮又は圧密化することによ
り、体積分率を高めることができる。
セラミック充填材の周囲へのアルミニウムの浸透とマ
トリックスの形成の場合、アルミニウムマトリックスに
よるセラミック充填材の湿潤は、浸透機構の重要な要素
の場合があることが判明した。更に、低い処理温度で
は、金属の窒化は無視できる程度又は極少量であり、窒
化アルミニウムの生成は金属マトリックスに分散した形
態で不連続相が極少量が生成するだけである。温度範囲
の上限に接近するにつれて、金属の窒化はもっと生じ易
くなる。従って、金属マトリックスにおける窒化物相の
量は、浸透が生じるプロセス温度を変えることにより制
御できる。窒化物生成がより顕著になる特定のプロセス
温度も、使用されるマトリックス金属合金、充填材若し
くはプレフォームの体積に対する該合金の量、浸透され
るべき充填材及び浸透雰囲気の窒素濃度等の因子により
異なる。例えば、一定のプロセス温度での窒化アルミニ
ウム生成の程度は、合金が充填材を湿潤する聴力の減少
及び雰囲気の窒素濃度の増加とともに増加するものと思
われる。
従って、複合体の形成中に金属マトリックスの構造を
作り出し、得られる生成物に特定の特性を付与すること
が可能である。一定の系の場合、プロセス条件を、窒化
物生成を制御するように選択することができる。窒化ア
ルミニウム相を含有する複合体生成物は、生成物に対し
て好ましいか又はその性能を向上できるある種の性質を
示す。更に、アルミニウム合金を自発浸透させるための
温度範囲は、使用するセラミックにより異なってもよ
い。充填材としてアルミナを用いる際、窒化物が著しく
生成することによりマトリックスの延性が減少しないこ
とが望ましい場合には、浸透温度は、好ましくは約1000
℃を超えてはならない。延性がもっと小さく且つ剛さの
大きなマトリックスを有する複合体を製造することが望
ましい場合には、1000℃を超える温度を用いてもよい。
炭化珪素を充填材として用いるときには、アルミニウム
合金は、充填剤としてアルミナを使用するときよりは窒
化の程度が小さいので、炭化珪素に浸透させるには、よ
り高い温度である約1200℃を用いてもよい。
更に、マトリックス金属の溜を用いて、充填材を確実
に完全に浸透させたり及び/又はマトリックスの第一源
とは異なる組成を有する第二金属を供給することが可能
である。即ち、ある場合には、マトリックス金属の第一
源とは組成が異なるマトリックス金属を溜に用いること
が望ましい場合がある。例えば、アルミニウム合金をマ
トリックス金属の第一源として用いる場合、実際に処理
温度で溶融するいずれの他の金属又は金属合金を溜金属
として用いてもよい。溶融金属は互いに非常によく混和
することがあり、この際、混合が生じるに十分な時間が
ある限り、溜金属はマトリックス金属の第一源と混合す
る。従って、マトリックスの第一源とは異なる組成の溜
金属を用いることにより、種々の操作要件を満たすよう
に金属マトリックスの性質を合わせ、それにより、金属
マトリックス複合体の性質を作り出すことができる。
又、本発明と組み合わせてバリヤーを使用することも
できる。具体的には、本発明で使用するバリヤー手段
は、充填材の規定された表面境界を超えて、溶融マトリ
ックス合金(例えば、アルミニウム合金)が移動、動き
等をするのを妨害、阻止、防止又は終了させるいずれか
の適当な手段でよい。適当なバリヤ一手段としては、本
発明のプロセス条件下で、一体性を維持し、揮発せず且
つ好ましくは本発明で使用するガスを透過するととも
に、充填材の規定された表面を超えて連続して浸透又は
その他の動きをするのを局部的に阻止、停止、妨害、防
止等をすることが可能な材料、化合物、元素、組成物等
が挙げられる。
適当なバリヤ一手投としては、用いられるプロセス条
件下で移動している溶融金属によって実質的に湿潤され
ない材料が挙げられる。この種のバリヤーは、溶融マト
リックス合金に対してほとんど親和性を示さず且つ溶融
マトリックス金属を充填材の規定された表面境界を超え
ては実質的に移動させない。バリヤーは、金属マトリッ
クス複合体製品の最終機械加工又は研磨の必要性を減少
させる。上記したように、このバリヤーは、通気性若し
くは多孔性であるか又は穴あけにより通気性にして、ガ
スを溶融マトリックス合金に接触させることができなけ
ればならない。
アルミニウムマトリックスに特に有効なバリヤーの適
当なものとしては、炭素、特に黒鉛として知られている
結晶性同素体状炭素を含有するものが挙げられる。黒鉛
は、説明したプロセス条件下では、溶融アルミニウム合
金によっては実質的に湿潤されない。特に好ましい黒鉛
としては、グラフォイル(Grafoil)(ユニオンカーバ
イド社の登録商標)として取売されている黒鉛テープ製
品が挙げられる。黒鉛テープは、充填材の規定された表
面境界を超えて溶融アルミニウム合金が移動するのを防
止するシーリング性を示す。又、黒鉛テープは、耐熱性
であり且つ化学的に不活性である。グラフォイルは可撓
性、適合性(conpatible)、従型性(conformable)、
弾性(resilient)である。グラフォイル黒鉛テープ
は、バリヤーの用途に適合するように種々の形状に作製
することができる。しかしながら、黒鉛バリヤー手段
は、充填材又はプレフォームの周囲及び境界に、スラリ
ー、ペースト又は塗膜としてでも用いることができる。
グラフォイルは、可撓性黒鉛シートの形態であるので特
に好ましい。使用に際して、この紙様黒鉛は、充填材又
はプレフォームの周囲に簡単に成形される。
窒素雰囲気におけるアルミニウム金属マトリックス合
金に関する他の好ましいバリヤーとして、このバリヤー
材を用いたときに使用する一定のプロセス条件下で、溶
融アルミニウム金属合金により一般的に湿潤されない遷
移金属硼化物〔例えば、二硼化チタン(TiB2)〕であ
る。この種のバリヤーの場合、プロセス温度は約875℃
を超えてはならず、この温度を超えると、バリヤー材の
有効性が低下し、実際に、温度を上げるとバリヤーヘの
浸透が生じる。遷移金属硼化物は、一般的には粒状(1
〜30ミクロン)である。バリヤー材は、スラリー又はペ
ーストの形態で、好ましくはプレフォームとして賦形し
たセラミック充填材の通気性素材の境界に適用してもよ
い。
窒素雰囲気におけるアルミニウム金属マトリックス合
金に関する他の好ましいバリヤーとして、充填材又はプ
レフォームの外表面上にフィルム又は層として適用され
る低揮発性有機化合物が挙げられる。窒素中、特に本発
明のプロセス条件で焼成すると、有機化合物が分解して
カーボンスート(soot)フィルムが残る。有機化合物
は、塗装、噴霧、浸漬等の従来の手段により適用でき
る。
更に、微粉砕した粒状物質は、粒状物質への浸透が充
填材への浸透より遅い速度で生じる限り、バリヤーとし
て機能することができる。
したがって、バリヤー手段は、規定された表面境界を
バリヤー手段の層で被覆する等の何れかの適当な手段に
より適用できる。このようなバリヤー手段の層は、塗
装、浸漬、スクリーン印刷、蒸着、又は液体、スラリー
若しくはペーストの形態でバリヤー手段に塗布すること
により、又は揮発性バリヤー手段のスパッタリングによ
り、又は固形粒子バリヤー手段の層を単に付着させるこ
とにより、又はバリヤ一手段の固形薄シート若しくはフ
ィルムを、規定された表面境界上に適用することにより
適用できる。所定の位置にバリヤー手段を用いた場合、
浸透マトリックス金属が規定された表面境界に到達し且
つバリヤー手段に接触すると、自発浸透が実質的に終了
する。
〔実施例〕
以下、実施例により種々の態様を説明する。しかしな
がら、実施例は、本発明を説明するものであって、特許
請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものでは
ない。
実施例1 第1図は、金属マトリックス複合体を形成するのに使
用することのできるアセンブリーの断面図である。具体
的には、ノートン社(Norton Co.)社製で38アランダム
の商品名で販売されている220グリット(66μm)アル
ミナ粒子からなる充填材(3)を、耐火容器(1)に入
れた。この耐火容器は、寸法が約100mm×45mm×19mm
で、高純度アミナ材料〔BTC-AL99.7%;ボルト・テクニ
カル・セラミックス・インコーボレイテッド(Bolt Tec
hnical Ceramics,Inc.);コンロー(Conroe)、TX〕か
らなるものであった。エサー社(Aesar)のジョンソン
・マセイ(Johnson Mathey)の一部門から入手したマグ
ネシウム削り屑(4)約2.7gの層をアルミナフィルター
(3)の上表面に配置した。寸法が約2インチ×1イン
チ×l/2インチ(5.1cm×2.5cm×1.3cm)で、重量が41.9
グラムであるマトリックス金属合金(2)を、マグネシ
ウム削り屑(4)層の上に配置した。この合金(2)
は、1100アルミニウムとして知られている公知の市販の
アルミニウム合金であり、Alを約99重量%及びZn、Cu、
Fe、Si及びMnをはじめとする不純物を少量含有してい
た。耐火容器(1)とその内容物を、電気抵抗型制御雰
囲気管炉内に配置した。その後、シールし、約1×10-2
トールまで排気し、窒素約96体積%及び水素約4体積%
からなる生成ガスで裏込めした。この際、生成ガスは、
約250cc/分の速度で連続的に流した。炉温を、約150℃
/時間の昇温速度で、約875℃の温度まで上昇させ、約8
75℃で5時間保持後、約200℃/時間の速度で、室温ま
で低下させた。ボート(1)及びその内容物を炉から取
り出して観察したところ、合金(2)が充填材(3)に
実質的に完全に浸透したことが判明した。
実施例2 Mg削り屑(4)の層1.3gを充填材(3)とマトリック
ス金属合金(2)との間に配置したこと及び合金(2)
の重量が約41.1gであったことを除いて、実施例1と同
様の操作を繰り返した。この場合も、マトリックス金属
が充填材(3)に実質的に完全に浸透した。
〔発明の効果〕
上記で説明したように、本発明による金属マトリック
ス複合体の形成方法によれば、マトリックス金属源と充
填材との間の界面の少なくとも一部分に浸透増進剤及び
/又は浸透増進剤前駆体を供給することにより、マトリ
ックス金属を、溶融した状態で、充填材に効率よく自発
的に浸透させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1で金属マトリックス複合体を形成す
るのに使用するのに使用したアセンブリーの断面図であ
る。 1……耐火容器、2……マトリックス金属合金、3……
充填材、4……マグネシウム削り屑
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 アラン スコット ナゲルバーグ アメリカ合衆国,デラウェア 19808, ウィルミントン,イー.ティンバービュ ウ コート 5521 (56)参考文献 特開 昭48−311(JP,A) 特開 昭49−42504(JP,A) 特開 昭57−31466(JP,A) 特開 平1−279715(JP,A) 特開 平1−279721(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 1/09 B22D 19/00,19/14

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マトリックス金属源(1)、前記マトリッ
    クス金属源に隣接する実質的に非反応性の充填材
    (2)、浸透増進剤前駆体が前記マトリックス金属源中
    に合金要素として実質的に存在しないことを条件とし
    て、前記マトリックス金属源と前記充填材の間の界面の
    少なくとも一部分に設けた浸透増進剤および浸透増進剤
    前駆体の少なくとも一つ(3)、ならびに前記マトリッ
    クス金属の自発的浸透を許容するかまたは増進させかつ
    浸透期間の少なくとも一部分において前記マトリックス
    金属および前記充填材の少なくとも一つと連通する浸透
    雰囲気(4)を設け、そして 前記マトリックス金属の融点より高い温度において、前
    記マトリックス金属の溶融体を前記充填材の少なくとも
    一部分に自発的に浸透させることを特徴とする、金属マ
    トリックス複合体の形成方法。
  2. 【請求項2】前記充填材または前記浸透雰囲気に、少な
    くとも幾らかの浸透増進剤前駆体または浸透増進剤を付
    加する工程を、さらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】前記充填材がプレフォームを含む、請求項
    1に記載の方法。
  4. 【請求項4】前記充填材の表面境界にバリヤーを設け、
    このバリヤーまで前記マトリックス金属が自発的に浸透
    する、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】自発的に浸透する期間の温度を、前記マト
    リックス金属の融点より高いが、このマトリックス金属
    の蒸発温度および前記充填材の融点より低い温度とす
    る、請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】前記マトリックス金属がアルミニウムを含
    み、かつ前記充填材が酸化物、炭化物、硼化物および窒
    化物よりなる群から選ばれた少なくとも一つの物質を含
    む、請求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】前記浸透増進剤前駆体及び浸透増進剤の少
    なくとも一つを、前記マトリックス金属源と前記充填材
    との間の界面に、固体物質として緩く適用する、請求項
    1に記載の方法。
  8. 【請求項8】前記マトリックス金属源がマトリックス金
    属の固体インゴットを含み、かつ前記浸透増進剤前駆体
    および浸透増進剤の少なくとも1つを、前記インゴット
    の少なくとも一部分に被覆として設ける、請求項1に記
    載の方法。
  9. 【請求項9】前記充填材がプレフォームを含み、かつ前
    記浸透増進剤前駆体および浸透増進剤の少なくとも一つ
    を、前記プレフォームの少なくとも一部分に被覆として
    設ける、請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】前記実質的に非反応性の充填材がセラミ
    ックの又はセラミック被覆せる材料を含む、請求項1記
    載の方法。
  11. 【請求項11】マトリックス金属源(1)、前記マトリ
    ックス金属源に隣接する実質的に非反応性のセラミック
    の又はセラミック被覆せる充填材(2)、前記マトリッ
    クス金属源と前記充填材との間の界面の少なくとも一部
    分に設けた浸透増進剤および浸透増進剤前駆体の少なく
    とも一つ(3)、ならびに前記マトリックス金属の自発
    的浸透を許容するかまたは増進させかつ浸透期間の少な
    くとも一部分においてマトリックス金属および充填材の
    少なくとも一つと連通する浸透雰囲気(4)を設け、 前記、マトリックス金属の融点より高い温度において、
    前記マトリックス金属の溶融体を、前記充填材の少なく
    とも一部分に自発的に浸透させ、且つ、前記浸透増進剤
    前駆体がマグネシウム以外の少なくとも一つの物質を含
    むことを特徴とする、金属マトリックス複合体の形成方
    法。
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