JP2903550B2 - グラビア印刷方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は、機械彫刻で形成された版とエッチングで形
成された版とを組み合わせた複数の版で印刷される多色
刷りのグラビア印刷方法に関する。

＜従来の技術＞ グラビア印刷方法は、一般に他の印刷方法に比べて階
調が豊富で力強いものが印刷され、また印刷スピードが
速いことから、部数の多い雑誌、週刊誌等に適した印刷
方法である。このグラビア印刷方法で用いるグラビア印
刷版を製版する方式には、大きく分けると、エッチング
による形成方法と機械彫刻による形成方法とがあるが、
機械彫刻で形成した版はエッチングで形成した版に比べ
ると調子の再現性が安定しており、またその作業工程も
少なく製版時間が短いことから、この機械彫刻による形
成方法が現在主流になりつつある。

また、従来より、平版用又は凸版用の網ポジチブや網
ネガチブ等の網分解画像を利用してグラビア印刷を行な
う方法は、例えば、特公昭58−21259号公報に示されて
おり、また平版用又は凸版用の網ポジチブを機械彫刻方
式の製版における原稿として利用し、この網ポジチブの
網点を光学的に又は電気的にボカしてから機械彫刻によ
りグラビア印刷版を作成する方法も特開昭56−161167号
公報及び特開昭57−126668号公報に示されている。

＜発明が解決しようとする課題＞ ところで、グラビア印刷を行うにあたって、機械彫刻
で形成したグラビア印刷版はエッチングで形成したグラ
ビア印刷版に比べて細線の解像力が悪いため、機械彫刻
で形成したグラビア印刷版を用いてグラビア印刷をした
場合、例えば雑誌等の本文に用いられている日本文字
（通常、スミ版で刷られている）のように細線の解像度
を必要とする部分をうまく再現できないという問題点が
ある。

一方、絵柄の再現においてスミ版は一般に全体のし
め、つまり絵柄のシャープさをもたせる役目をなしてお
り、解像度が不足すると例えば髪の毛等では十分なシャ
ープさが得られないという問題点もある。

また、エッチングで版を作る方法には版用感光シート
（カーボンチッシュ、ピグメントフイルム等）を用いる
方法として、連続階調の濃淡でできたポジチブを用いる
コンベンショナルグラビア法、平版用又は凸版用の網ポ
ジチブ又は網ネガチブ（以下網版という）を用いる網グ
ラビア法があるが、最近のグラビアにはほとんど網グラ
ビア法が使われているので網グラビア法で工程を説明す
ると、まず、版用感光シート（カーボンチッシュ、ピグ
メントフィルム等）にグラビアスクリーンを焼き付ける
工程と、この版用感光シートに網版を焼き付ける工程
と、さらに必要があれば版用感光シートと網版との間に
拡散シート等を挟んで焼き付ける工程とを施し、次に該
版用感光シートを介してグラビアシリンダをエッチング
してグラビア印刷版を得るものである。

このようなエッチングによる方法では、最シャドウ部
においては、第６図に示すようにセル12の形状は角柱形
状又は円柱形状をなしており、セルの容積を充分に大き
くすることができる。

他方、機械彫刻によりグラビア印刷版を形成した場合
においては、第７図に示すように彫刻されたセル13の形
状はほぼ角錐形状となっている。そして、このセルの表
面積はライト部においては小さく、中間調部からシャド
ウ部に向かうにつれて徐々に大きくなっていく。この場
合、原稿の最シャドウ部に相当する部分においてもグラ
ビア印刷版のセルとしては独立している必要があるた
め、セルの表面積は一定の大きさ以上にすることはでき
ない。このことはセルの形状が角錐形状であるというこ
とにより、シャドウ部におけるセル溶積はエッチングに
より得られるセル溶積よりも小さくなってしまう。すな
わち、このことは機械彫刻により得られるグラビア印刷
版は、エッチングにより得られるグラビア印刷版に比べ
てシャドウ部におけるインキ量が少ないことを意味す
る。従って、このような機械彫刻方式におけるグラビア
印刷版を用いたのでは、特にシャドウ部のインキ量が不
足しがちとなる。そして、このインキ量の不足傾向は、
特にキ、アカ、アイの３色が重なるべき部分において
は、前記インキ量の不十分が累積される結果として、イ
ンキ量の不足が顕著に現れ、全体としてシャドウ部の重
厚さに欠けた印刷物となりがちである。

従って、本発明の目的は機械彫刻方式とエッチング方
式の両方の利点を取り入れ、文字、細線の解像力が良
く、調子の安定性、及び絵柄のシャープさを得ることが
でき、しかも作業工程の少ないグラビア印刷方法を提供
することであるが、特に解決すべき課題として、機械彫
刻で形成した印刷版とエッチングで形成した印刷版を混
合して印刷すると見当がずれて見苦しい印刷物になって
しまう。この見当ずれの問題を解決したのが本発明であ
る。

＜課題を解決するための手段＞ 本発明は上記見当ずれの課題を解決するために、機械
彫刻で形成する版とエッチングで形成する版の見合わせ
を、フィルム原版をシリンダー１本分に集合させると
き、フィルム原版の位置をくわえ側とくわえ尻で変えて
くわえ尻のみシリンダーの軸方向に内側または外側に調
整して、製版を行うことにより行う。

＜発明の詳述＞ 本発明の上記課題を解決するための手段についてさら
に詳述する。

本発明は複数の版を用いてなされるグラビア印刷方法
において、少なくとも１版がエッチングで形成され、残
りの版が機械彫刻で形成されていて、前記エッチングで
作成された版と機械彫刻で形成された版の見当を下記の
方法で合わせることを特徴とするグラビア印刷方法であ
る。

主として出版グラビア版を形成するときには、版の円
周方向に４ページから６ページ、軸方向に４ページから
６ページをレイアウトして行うのが普通である。フィル
ム原版は４ページ単位でまとめられることが多い。しか
るにエッチングで版を形成する時はカーボンチッシュ又
はピグメントフィルム（カーボンチッシュの紙ベースの
代わりにフィルムベースのもの）等の版用感光フィルム
を周囲方向に２回に又は３回に分割して、版を形成する
シリンダーに転写するか、またはフィルム原版を版用シ
リンダー１本分に集合し、１枚のカーボンチッシュ又は
ピグメントフィルムに焼き付け、版を形成するシリンダ
ーに１回で転写する。

本発明は、大サイズの版用感光シートを版用シリンダ
ーに１回で転写するときのfan out現象を回避する方法
である。fan out現象とは、オフセット枚葉印刷等の水
を用いて、印圧がかかるとき刷り初めと刷り終りでは扇
のように、刷り終りの方が左右に0.5mm程度広がる現象
であり、これは版用感光フィルムを版用シンリンダーに
転写するときにも生じる。第４図の如く水７をかけなが
ら、転写ローラー４で圧をかけてシリンダー５に版用感
光シート８を転写する。第５図はfan out現象を起こし
た状態の強調説明平面図で有り、版用フイルム９のくわ
え側10に対して扇状に、くわえ尻11が広がっている。全
てエッチングで版を形成するときには各色版の間で同じ
ようにfan out現象が生じるので見当は合うが、機械彫
刻で形成された版とエッチングで形成された版が混合さ
れると見当がずれるという問題が発生する。

本発明は第１図のように、エッチングで形成する版用
のフィルム原版を台紙フィルムに貼込む。機械彫刻で形
成する版用のフィルム原版はfan out現象とは関係ない
ので第３図のように台紙フィルムの通常の位置に貼り込
む。こうすることにより、エッチングで形成される版が
転写時、fan out現象が生じても機械彫刻で形成される
版と見当が合うようになる。また、逆にエッチングの方
では調整せずに機械彫刻の方で調整する場合は、第２図
のように機械彫刻で形成する版用のフイルム原版を台紙
フイルムに貼り込む。これはエッチングで形成する版が
fan out現象を起こすことを見越してフイルム原版の位
置を調整するものである。このときエッチングで形成す
る版用のフイルム原版は第３図のごとき通常の位置に貼
り込む。

＜作用＞ 本発明のエッチングにより形成された版と機械彫刻に
より形成された版の見当を合わせることにより、エッチ
ングにより形成された版と機械彫刻で形成された版の両
者の利点を取り入れた複数の版を用いて行なうグラビア
印刷方法が可能となる。

＜実施例＞ 本発明を実施例を用いて詳細に説明する。

実施例１ カラーの写真原稿をカラースキャナーにてキ，アカ，
アイ，スミの４色用の色分解した平版用の網ネジチブを
出力した。この網ネガチブに必要なレタッチ作業を行な
った後、反転処理により平版用の網ポジチブを得た。こ
の網ポジチブを所定のレイアウトに従って配置して透明
フィルム上に４ページ単位で貼り込み、また、スミ版に
関しては写植による日本語の文字を貼り込んだ。この場
合の文字の大きさは８ポイントであり画数の多い漢字も
含んでいた。こうして得られた網ポジチブは、オフセッ
ト用の版材であるPS版へ焼き付けて校正版の印刷物をオ
フセット印刷方式により作成した。この校正刷により、
調子や配色、文字等の確認をおこなった。

次にフィルム原版（網ポジチブ）を各色版ごと、すな
わち版用シリンダー１本単位にフィルムベースに集合し
て貼り込んだ。このときエッチングで形成するスミ版は
第１図のように貼り込み、機械彫刻で形成するキ版，ア
カ版，アイ版は第３図のように貼り込んだ。くわえ尻の
内側へ寄せた距離は左右0.15mmづつでトータル0.3mmと
した。この距離は版用感光シートの種類と転写圧により
異なる。最大0.5mm程度である。このシリンダー１本単
位に集合して貼り込んだフィルム原版を用いて版用シリ
ンダーを形成する。

機械彫刻で形成するキ版，アカ版，アイ版用のフィル
ム原版は感光性のフィルム（オリエンタル写真工業社
製、商品名ルミライト）へ密着露光し現像して網ネガチ
ブとした。このものは反射タイプのネガチブである。こ
のものをヘル社製のヘリオクリッショグラフ（商品名）
と称される機械彫刻装置の原稿シリンダーへ取り付け、
網ネガチブ画像を入力させ、網点を電気的にボカす処理
をしてから出力部の彫刻針によりグラビアシリンダーへ
機械彫刻し、角錐形状のセルを有するグラビア印刷版を
得た。この場合、機械彫刻により形成したグラビア印刷
版は、キ版，アカ版，アイ版の３本であった。他方、エ
ッチングで形成するスミ版は次のようにして印刷版を得
た。まず、ピグメントフィルムにグラビアスクリーンを
密着焼き付けしてドクターブレード支持のためのドテを
形成させる潜像を形成させた。このグラビアスクリーン
を除去した後に、同じピグメントフィルムにスミ版用の
網ポジチブを密着焼き付けした。以上のようにしてグラ
ビアスクリーンの焼き付けとスミ版用の網ポジチブの２
回焼き付けを行ったピグメントフィルムをグラビアシリ
ンダーに転写し、温湯にて現像し、塩化第二鉄溶液にて
エッチングを行ってグラビア印刷版を得た。

以上の如くして得られた４色用のグラビア印刷版を用
いて、キ，アカ，アイ，スミの４色のインキでグラビア
印刷を行ったところ、機械彫刻で形成された版とエッチ
ングで形成された版との見当が良好で、機械彫刻で形成
された版のライトからシャドーまでの安定したキ，ア
カ，アイのバランスの良い調子再現と、エッチングで形
成された版と文字の良好な再現と十分な解像度を有した
印刷物が得られた。

実施例２ 上記実施例１と同じフイルム原版を用いた。フイルム
原版を各色版ごと、すなわち版用シリンダー１本単位に
フイルムベースに集合して貼り込むとき、エッチング工
程でfan out現象が生じても見当が合うように彫刻機用
フイルム原版（キ、アカ、アイ版用）を第２図のごとく
貼り込んだ。くわえ尻の外側へずらした距離は左右0.15
mmづつでトータル0.3mmとした。エッチングで形成する
版用フイルム原版（スミ版用）は第３図のごとく貼り込
んだ。このようにシリンダー１本単位に集合して貼り込
んだフイルム原版を用いて版用シリンダーを形成する。

以下の機械彫刻とエッチングで形成する方法は上記実
施例１と同様に行いグラビア印刷版を得た。

以上の如くして得られた４色用のグラビア印刷版を用
いて、キ，アカ，アイ，スミの４色のインキでグラビア
印刷を行ったところ、機械彫刻で形成された版とエッチ
ングで形成された版との見当が良好で、機械彫刻で形成
された版のライトからシャドーまでの安定したキ，ア
カ，アイのバランスの良い調子再現と、エッチングで形
成された版の文字の良好な再現と十分な解像度を有した
印刷物が得られた。

＜発明の効果＞ 本発明のグラビア印刷方法は、少なくとも１版がエッ
チングで形成され、他の版は機械彫刻で形成されている
ので、両方の利点が生かされて、調子の安定性が優れ、
かつ文字等の細線の再現性の良いバランスのとれた印刷
物が得られる。

その上、エッチングで形成された版と機械彫刻で形成
された版の見当精度の良好な印刷物が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図はエッチングにより形成される版用に用いる集合
されたフィルム原版の平面図、第２図は機械彫刻により
形成される版用に用いる集合されたフィルム原版の平面
図、第３図は調整しない通常の集合されたフイルム原版
の平面図、第４図は転写状況を示す部分断面図、第５図
は転写された版用シートがfan out現象が起こした状態
の強調説明平面図、第６図ａはエッチング方式で形成し
たグラビア印刷版のセルの形状を示す説明図、第６図ｂ
はそのＡ−Ａ断面説明図、第７図ａは機械彫刻方式で形
成したグラビア印刷版のセル形状を示す説明図、第７図
ｂはそのＢ−Ｂ断面説明図である。 １……フィルムベース、２……ページ単位の絵柄 ３……レジスターマーク、４……転写ローラー ５……シリンダー、６……くわえプレート ７……水シャワー、８、９……版用感光シート 10……版用感光シートくわえ側 11……版用感光シートくわえ尻、12、13……セル

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】機械彫刻で形成された版とエッチングで形
   成された版とが少なくとも１版以上組み合わされた複数
   の版を用いて行うグラビア印刷方法において、前記機械
   彫刻で形成された版とエッチングで形成された版の見当
   合わせを、フィルム原版をシリンダー１本分に集合させ
   るとき、フィルム原版の位置をくわえ側とくわえ尻で変
   えてくわえ尻のみシリンダーの軸方向に内側または外側
   に調整して、製版することを特徴とするグラビア印刷方
   法。