JP2902161B2 - スパークプラグおよびその中心電極の製造方法 - Google Patents

スパークプラグおよびその中心電極の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、スパークプラグの中
心電極の熱引きの向上に関わり、特に自動車レース用エ
ンジンに好適なスパークプラグの熱価の向上に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンなどのガソリン機関で
は、性能向上のため、高負荷、高速運転から低負荷、低
速運転に到る広い運転条件(ワイドレンジ)で、スパー
クプラグの先端部の過熱によるプレイグニッションが防
止できる、いわゆる熱価の高いスパークプラグが望まれ
ている。この熱価増大のためには、中心電極の熱引きを
良くし、中心電極先端部の温度の過昇温を防止できる構
造にするだけでなく、絶縁碍子の先端部の熱引きを良く
することが有効である。従来のスパークプラグは、Ni
合金製母材に熱電導性に優れたCu芯を入れた中心電極
を使用し、燃焼室に露出した中心電極の先端部表面から
受ける熱をCu芯を介して中心電極の後端側に逃がす、
いわゆる熱引きにより中心電極先端の過昇温を防いでい
た。また高速、高負荷運転では、絶縁碍子の先端部の温
度は、中心電極先端部より高温になり、プレイグニッシ
ョンの原因になりやすい。このため、従来は、絶縁碍子
の脚長部の長さを短くすることにより熱価を大きくして
いた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかるに母材であり、
中心電極の表面を形成するNi合金は、熱伝導性が悪い
ため、Cu芯に熱が伝達されるまでに時間がかかる。レ
ース用自動車エンジンなど更に高性能が要求されるエン
ジンに適用したとき、中心電極及び絶縁碍子の先端部の
温度が高くなりすぎ、充分な耐プレイグニッションを有
さない。この発明の目的は、中心電極先端部の温度と、
絶縁碍子先端の温度をともに低く維持でき、これにより
熱価が大きく、かつ耐火花消耗性の良好なスパークプラ
およびその中心電極の製造方法の提供にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的達
成のため、つぎの構成を採用した。 (1)筒状主体金具に、軸穴を有する絶縁碍子を嵌め込
み、該軸穴に中心電極を嵌着してなるスパークプラグに
おいて、中心電極は、径小に形成した純NiまたはNi
合金製母材の先端部の外周を、0.2mm〜0.8mm
の厚さを有するCuまたはAgを主体とする良熱伝導性
金属層で被覆し、前記径小部を含む母材芯部にCu芯を
配し、かつ前記母材の先端に貴金属チップを溶接して形
成され、前記良熱伝導性金属層で被覆した部分が、絶縁
碍子の先端から突出して嵌着されたことを特徴とする。 (2)中心電極の製造方法は、一端に径大部と他端に径
小部を有する円柱状のCu製円柱体と、先端部を径小と
すると共に先端が前記円柱体の径小部と嵌合する有底の
径小孔とを備えたNi合金製管と、前記Cu製円柱体と
前記Ni合金製管を外嵌し、かつ前記Ni合金製管の先
端部にCuまたはAgを主体とする良熱伝導性金属パイ
プを嵌合した嵌合体を形成し、この嵌合体を複数工程の
圧造を行って伸長し、この先端部に貴金属チップを溶接
すると共に先端をテーパー加工し、後端に鍔部の加工を
施してなる。
【0005】
【発明の作用、効果】この発明では、中心電極の先端部
の外周面に熱伝導性に優れた金属層を有するので、燃焼
室から中心電極の露出面および碍子の露出面に伝わった
熱は、金属層を介して迅速に中心電極の後端側及び絶縁
碍子の後端側に伝達される。これにより、Ni合金製母
材の中心にCu芯を設けたのみの従来のスパークプラグ
に比較し、熱引きが早くでき、中心電極及び絶縁碍子の
先端部の温度を低く維持できる。よって従来のスパーク
プラグでは達成できない高熱価プラグでワイドレンジな
スパークプラグが得られる。
【0006】
【実施例】図1は、この発明にかかるスパークプラグを
示し、先端面にL字形の外側電極11が溶接された筒状
の主体金具1内に、軸穴21付き絶縁碍子2を嵌め込
み、その段座12にパッキン15を介して絶縁碍子2の
座面23を係止し、頭部14を加締めにより絶縁碍子2
が固定されている。絶縁碍子2において、軸穴21の先
端側軸穴22には中心電極4が挿入され、先端部4Aが
絶縁碍子2の先端より突出すると共に径大の鍔部4Bが
軸穴22の段部に当接し、導電性ガラスシール33、モ
ノシリック抵抗体32及び端子31を備えた中軸3が一
体に加熱封着されている。そして、主体金具1の先端に
ねじ部13が螺刻され、ガスケット16を介して図示し
ないシリンダヘッドに固着される。
【0007】中心電極4は、図2に示すごとく、直径
2.5mmの円柱状を呈し、先端部が直径1.2mmの
径小部41となっている純NiまたはNi合金製母材4
0と、母材40の前記径小部41の外周を被覆するCu
またはAgを主体とする良熱伝導金属層42と、母材4
0の軸心部に埋設されたCu芯43とからなる。Cu芯
43の先端部44は、母材40の径小部41にあわせて
径小(断面積0.2mm 2 )となっており、前記金属層
42と軸方向位置が重なるように設けられている。また
母材40の先端は、テーパーが付けられ、先端面にP
t、IrまたはAu−Pd、Pt−Irなどからなる貴
金属チップ5が抵抗溶接されている。
【0008】このスパークプラグでは、中心電極4の絶
縁碍子2から突出した部分(中心電極先端部)および絶
縁碍子2の先端部は、燃焼室に露出しているため、燃焼
熱に晒され高温となる。露出面から中心電極4および絶
縁碍子2に伝わった熱は、一部は貴金属チップ5および
母材40の先端面に伝導し、大部分は金属層42に伝導
する。金属層42は熱伝導性が高いため、受熱は迅速に
中心電極後端に熱引きされると共に絶縁碍子2の軸穴2
2にも伝達され、更に絶縁碍子2の座面23、パッキン
15を介し、主体金具1の段座12を経由してねじ部1
3及びガスケット16よりシリンダーヘッド側に放熱さ
れる。又、熱の一部は、中軸3や絶縁碍子2の頭部より
放熱される。このため金属層42は、比較的低温に保た
れ、この結果、前記チップ5や母材40の先端面及び絶
縁碍子2の先端部の受熱も、低温に保たれている金属層
42に円滑に伝達され、過昇温が有効的に防止される。
【0009】更に金属層42は、中心電極4の先端部4
A及び絶縁碍子2の先端の温度を効率よく低下させるた
めには、金属層42は0.2mmから0.8mmの厚さ
を有するこが望ましい。厚さ0.2mm以下では熱引き
の効果が少なく、また0.8mm以上とすると、母材4
0が補足なるため中心電極4の高温時における機械的強
度が小さくなりすぎ、かつチップ5を抵抗溶接する際の
溶接強度も損なわれる。 またCu芯43の先端部44
は断面積が0.1mm2 以上であることが、上記熱引き
を円滑に行なうために必要である。
【0010】この中心電極4は、図3に示す方法で製造
される。図3のAに示すように、一端に径大部と他端に
径小部61aを有する円柱状のCu製円柱体61と、先
端部62aを径小とすると共に先端が円柱体61の径小
部61aと嵌合する有底の径小孔62bとを備えたNi
合金製管62と、Cu製円柱体61とNi合金製管62
とを嵌合し、かつNi合金製管62の先端部62aにC
uまたはAgを主体とする良熱伝導性金属のパイプ63
を嵌合した嵌合体64を形成する。この嵌合体64を複
数工程の圧造を行って図3のBに示すように伸長し、先
端面に貴金属チップ5を抵抗溶接した後、先端をテーパ
ー加工し、更に後端に鍔部4Bの加工を施し、図3のC
に示すように、中心電極4を製造する。なお、クラッド
材を用いることで、当初より図3のBの構造のものを得
ることも可能である。
【0011】次に、母材40に純Niを用い、外周にA
gを被覆した中心電極4を、脚部長さ6mmとした絶縁
碍子2に創設し、先端面から1.5mm突出した図1に
示す本発明スパークラグで、かつ金属層42の厚み
(t)種々変更したものを用意する。更に比較用とし
て、従来型スパークプラグであるSi、Cr、Alを5
重量%以内含有したNi合金の母材で被膜されたCu芯
を封入した中心電極を同様に絶縁碍子に配設する。そし
て、2サイクルエンジン、9000rpm×4/4(全
負荷)の条件で、耐熱テストを行った結果を図4に示
す。本発明のスパークプラグは、従来型スパークプラグ
に比べて、中心電極4及び絶縁碍子2の先端部の熱引き
がよく、温度を低減するための耐プレイグニション性が
向上する。特に金属層42の厚みを0.2mm以上とす
ることで従来型スパークプラグより耐プレイグニション
性を高くすることができる。
【0012】このように、この発明のスパークプラグ
は、中心電極4の先端部及び絶縁碍子2の先端部の熱引
きがよく、温度の過昇温が避けられるので、プレイグニ
ッションが生じにくく、ワイドレンジの性能が得られ
る。なおこの発明の中心電極4は、上記のごとく絶縁碍
子2の脚部の短いスパークプラグにおいてプレイグニッ
ション防止効果が顕著であるが、通常のスパークプラグ
においても絶縁体先端の降温効果が大きいなど熱価の増
大に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のスパークプラグの断面図である。
【図2】中心電極の断面図である。
【図3】中心電極の製造工程図である。
【図4】この発明の耐熱性実験結果を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 主体金具 2 絶縁碍子 3 中軸 4 中心電極 40 中心電極母材 42 良熱伝導性金属層 43 Cu芯
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01T 13/00 - 13/56

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒状主体金具に、軸穴を有する絶縁碍子
    を嵌め込み、該軸穴に中心電極を嵌着してなるスパーク
    プラグにおいて、 中心電極は、径小に形成した純NiまたはNi合金製母
    材の先端部の外周を、0.2mm〜0.8mmの厚さを
    有するCuまたはAgを主体とする良熱伝導性金属層で
    被覆し、前記径小部を含む母材芯部にCu芯を配し、か
    つ前記母材の先端に貴金属チップを溶接して形成され、
    前記良熱伝導性金属層で被覆した部分が、絶縁碍子の先
    端から突出して嵌着されたことを特徴とするスパークプ
    ラグ。
  2. 【請求項2】 一端に径大部と他端に径小部を有する円
    柱状のCu製円柱体と、先端部を径小とすると共に先端
    が前記円柱体の径小部と嵌合する有底の径小孔とを備え
    たNi合金製管と、前記Cu製円柱体と前記Ni合金製
    管を外嵌し、かつ前記Ni合金製管の先端部にCuまた
    はAgを主体とする良熱伝導性金属パイプを嵌合した嵌
    合体を形成し、この嵌合体を複数工程の圧造を行って伸
    長し、この先端面に貴金属チップを溶接すると共に先端
    をテーパー加工し、後端に鍔部の加工を施してなる中心
    電極の製造方法。
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