JP2893629B2 - プレート式熱交換器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、熱交換器に係り、特に
伝熱板を積層してなるプレート式熱交換器に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の技術においては、例えば特開昭６
０−７１８４９号公報や特開昭６１−１２２４９４号公
報に記載のプレート式熱交換器に提示されているよう
に、伝熱板を多数積層してなる伝熱板群の外周部におい
て、溶接及びロー付あるいはガスケットを挿入して接合
することで、全ての接面はシール状態を形成している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術は、伝
熱板内の流体の圧力が高くなるとこの内圧を受けるた
め、伝熱板の剛性を高めるため及び伝熱板の形状保持の
ために板厚を大きくする必要が生じていた。この板厚の
増大により、熱伝達の効率の低下、材料原価増大、熱交
換器の大型化、という問題があった。

【０００４】さらに上述の溶接やロー付けの個所および
ガスケットの数も多く製作上からも精度の低下と製作時
間増大、材料原価増大をきたしている、という問題があ
った。

【０００５】本発明の目的は、波形薄板で構成される伝
熱板の板厚を小さくして、熱伝達効率を向上させると共
に低価格のプレート式熱交換器の製造を可能ならしめる
ために、流体の圧力に対して十分な強度と剛性を確保
し、かつ必要最小限の部品数と作業工程数とし、さらに
外形寸法の小さい熱交換器の構造を得ることにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の構造は、多数の波形或は多数の凹凸の断
面を持つ薄板成形板２枚を重ね合わせ、周囲並びに流体
の通路口とを接合して袋状の伝熱板とし、前記袋状の伝
熱板を複数枚積層した伝熱板群として全周を囲むよう容
器に入れ、前記薄板成形板をはさんで温度の異なる２種
類の流体を流れるようにし、前記袋状の伝熱板の周囲に
は平行部を有する傾斜壁面を設けて、前記袋状の伝熱板
の積層に当り、前記傾斜壁面でそれぞれ嵌合状態を形成
させることを特徴とした。

【０００７】

【作用】傾斜壁面を有して積層するよう構成したこと
は、従来技術に見られるガスケットの挿入を皆無にして
いる。そして傾斜壁面の先に設けた伝熱板と平行な部分
は、接合作業において溶接する場合では傾斜壁面の溶融
や変形を避け嵌合面の精度確保を目的に、またロー付け
する場合ではロー材の設置台並びに溶融ロー溜り等施工
上の必要条件を満たす構造としている。

【０００８】また、袋状の伝熱板と傾斜壁面が接する箇
所に、膨らみ部分を設けることにより、積層時の袋状の
伝熱板の形状が保持され、ひいては伝熱性能の低下が回
避でき、更に波形薄板の板厚を薄くすることが可能とな
る。

【０００９】袋状の伝熱板の周囲に設けた傾斜壁面部分
から、前述の膨らみ部分にかけて、袋状の伝熱板どうし
が積層時に接触するようになっており、いわゆる面接触
を形成している。これは、一点だけで接触するいわゆる
点接触と比較すると密閉の程度が高い、という長所を有
している。密閉の程度が高いことは、袋状の伝熱板と容
器との隙間を流れる流量が小さく、従って伝熱性能が高
めることが可能である。

【００１０】複数組の伝熱板を積層し、傾斜壁面で嵌合
した内部空間には熱交換器に流通させる２つの流体
（Ａ，Ｂ）のうち圧力差があるときは高い方の流体（仮
にＢ）をここに流し、同時に伝熱板群を収納した容器に
も同Ｂ流体が充満する。

【００１１】つまり、傾斜壁面嵌合部は密着状態が形成
されているため、その内側と外側部分においては、流体
の多量の流出は阻止されるが、完全密閉ではないことか
ら若干の流出はあるためである。したがって、容器内壁
にかかる圧力と、傾斜壁面で嵌合した内部空間の圧力
は、同圧を保つことになる。そして容器に充満させ、各
伝熱板の積層部にも流通させた圧力の高い方のＢ流体
は、外圧として波形薄板に多数分布する凹凸接点を常時
接触させるよう作用して、薄板に生じる応力・変形共に
小さくできる。その結果、熱交換器の精度が保持され安
定した性能を得ることができる。

【００１２】

【実施例】以下本発明の一実施例について図を用いて説
明する。まず図３はプレート式熱交換器の上面図を示
し、熱交換器用流体の出入口部分の断面イ−イ'を図４
に熱交換器中央部分の部面ロ−ロ'を図５に示す。

【００１３】図３において周囲を溶接８した容器７内に
は伝熱板群１を収納しており、熱交換器用流体は、それ
ぞれ流体Ａは導入管３の通路入口２ａから入り波形薄板
で構成した伝熱板間を流通して通路出口２ｂへ、また流
体Ｂは導入管５の通路入口４ａから伝熱板間を流通して
通路出口４ｂへと互に対向流を形成している。

【００１４】本発明の主体をなす伝熱板群１の構成を、
図４及び同図中の円形部の拡大図として溶接タイプを図
１に、ロー付けタイプを図２に示す。同図より周囲に水
平部と傾斜壁面を有する波形薄板１１ａと１１ｂ，１２
ａと１２ｂ，１３ａと１３ｂ，・・・・・・をあらかじ
め組合せ、周囲接合部であるｄ部分及び、通路入口４
ａ，通路出口４ｂにおける接合部であるｃ部分をそれぞ
れ溶接あるいはロー付け接合して、伝熱板１１，１２，
１３・・・・・の袋形状とし、これを複数組積層して傾
斜壁面で嵌合させることで、周囲に密着部分ｅを形成し
ている。次に通路入口２ａ，通路出口２ｂにおいて、波
形薄板１１ａと導入管３，１１ｂと１２ａ，１２ｂと１
３ａ，をそれぞれ溶接あるいはロー付け接合して、通路
入口４ａ，通路出口４ｂを流通する流体と混合しないよ
うにする。

【００１５】上記構成において流体の流れを図４及び図
５で見ると、まず流体Ａは伝熱板１１ａに接合された導
入管３から通路口２ａに入り１１ａと１１ｂ間，１２ａ
と１２ｂ間，１３ａと１３ｂ間，・・・・・から伝熱板
の長手方向（図１の下から上へ）に流れ通路口２ｂに出
る。この間各伝熱板１１，１２，１３，・・・はその周
囲部と通路口部は完全に接合した袋状になっているので
流体の流出は生じない。

【００１６】次に流体Ｂは、外筒容器７に溶接９した導
入管５から通路口４ａに入り大部分は伝熱板１１と１２
間，１２と１３間，１３と・・・・・ｎ間から流体Ａに
対向して流れ（図１の上から下へ）通路口４ｂに出て熱
交換作用を行う。そして一部分は外筒容器７の内壁と伝
熱板１１との間に設けているリング状のスペーサリング
６（接合せず）の隙間から流出し、また伝熱板１１，１
２，１３，・・・・・の傾斜壁面での嵌合密着部分ｅか
らも若干の流出があるため、Ｂ流体は伝熱板群１と容器
７内の隙間に充満し、したがって、容器７の内壁にかか
る圧力と、傾斜壁面で嵌合した内部空間の圧力は、同圧
を保つことになる。

【００１７】ここで流体Ａ，Ｂ間に圧力差がある場合は
高い方をＢ流体とする。その結果、袋形状に構成され内
側にＡ流体が流れている各伝熱板１１，１２，１３，・
・・は外側より力を受け図５に示すように波形凹凸部が
常時接触することになる。そして熱交換器効率の生命と
もいえる凹凸形状の寸法・精度が確保され信頼性の高い
プレート式熱交換器が得られる。

【００１８】なお、上述の内容とは逆に使用する、つま
り圧力が低い方をＢ流体、高い方をＡ流体として、この
熱交換器を使用することも可能である。

【００１９】また、伝熱板の板厚が小であるほど、袋状
の伝熱板を嵌合し積層する際、袋状の伝熱板の水平部と
傾斜壁面と接する箇所の空間がつぶれやすく、これによ
り、この部分の伝熱性能が低下し、また積層した伝熱板
群１の上部と下部では袋状の伝熱板の寸法形状が異なる
状態が発生する。このため、図１及び２に示される膨ら
み部分ｆを設け、積層の際、大きな力を加えた場合で
も、袋状の伝熱板の寸法形状は変わらず、従って伝熱性
能の低下を防ぐことができる。

【００２０】伝熱板周囲の傾斜壁面の先に設けた水平形
状は、図１に示すごとくする際溶接タイプにおいては嵌
合面に溶接熱影響を及ぼさない位置で、かつ波形薄板の
１１ａと１１ｂ，１２ａと１２ｂ，１３ａと１３ｂ，・
・・とを組合せ両者が板端で面一致する溶接継手が準備
できる形状・寸法としている。

【００２１】同様に図２に示すロー付けタイプにおいて
は、傾斜壁面のロー付け部にロー材を設置し、（ロー付
け時の姿勢は図２の上・下を逆にして作業する）かつ溶
融ローのロー溜りの形成も兼ね適当量の間隙を有した寸
法で水平形状をなしている。尚図中１０は伝熱板群１と
外筒容器７内の空間に充満させた流体の多量の流れ現象
が発生すると熱交換効率に影響を及ぼすので、これを防
止するために挿入したスペーサ板である。

【００２２】

【発明の効果】本発明は以上説明したように構成してい
るので以下に記載する効果を奏する。 （１）波形薄板の周囲に設けた傾斜壁面により組合せが
容易に行え、従って製作時間の低減が図られ、かつ伝熱
板としてこの壁面で信頼性の高いロー付けならびに水平
部分は嵌合面の精度を保持して溶接作業が行える。従っ
て、品質の向上が図られる。

【００２３】また、袋状の伝熱板と傾斜壁面が接する箇
所に膨らみ部分を設けることにより、積層時の袋状の伝
熱板の形状保持、及び波形薄板の板厚を薄くすることが
可能となる。

【００２４】（２）複数組の伝熱板を積層した伝熱板群
としての傾斜壁面部は、ガスケットを不用とし、従って
材料費の低減が図られる。かつ、嵌合密着面で、若干は
漏れることで容器内に充満させた流体により圧力を形成
し伝熱板波形凹凸部が常時接触することにより、伝熱性
能向上が図られる。

【００２５】（３）上記（２）項の構造により、母材及
び溶接あるいはロー付接合の継手部に作用する応力を大
幅に軽減したことで、波形薄板の板厚を薄くした熱交換
効率の高く、かつ安価で、小型のプレート式熱交換器を
量産することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のプレート式熱交換器の拡大断面図（溶
接タイプ）である。

【図２】本発明のプレート式熱交換器の拡大断面図（ロ
ー付タイプ）である。

【図３】本発明のプレート式熱交換器の全体を示す上面
図である。

【図４】図３のイ−イ'面から見た断面図である。

【図５】図３のロ−ロ'面から見た断面図である。

【符号の説明】 １…伝熱板群， ２，４…流体通路
口 ３，５…導入管， ６…スペーサリン
グ ７…容器， ８，９…溶接 １０…スペーサ板， １１ａ，１１ｂ，１２ａ，…波形薄板である伝熱板， １１，１２，１３，…ｎ …袋状の伝熱板， ｃ，ｄ…溶接あるいはロー付け部， ｅ…不接合の密着
部分 ｆ…膨らみ部分

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F28D 1/00 - 9/00 B21D 53/02 - 53/08 F28F 3/00 - 3/14

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】多数の波形或は多数の凹凸の断面を持つ薄
   板成形板２枚を重ね合わせ、周囲並びに流体の通路口と
   を接合して袋状の伝熱板とし、 前記袋状の伝熱板を複数枚積層した伝熱板群として全周
   を囲むよう容器に入れ、前記薄板成形板をはさんで温度
   の異なる２種類の流体を流れるようにし、 前記袋状の伝熱板の周囲には平行部を有する傾斜壁面を
   設けて、前記袋状の伝熱板の積層に当り、前記傾斜壁面
   でそれぞれ嵌合状態を形成させることを特徴とするプレ
   ート式熱交換器。
2. 【請求項２】請求項１に記載のプレート式熱交換器にお
   いて、 袋状の伝熱板は平行部を有する傾斜壁面を有し、 前記袋状の伝熱板と前記傾斜壁面との間には前記袋状の
   伝熱板の形状保持のための膨らみ部分を形成しており、 前記袋状の伝熱板の積層時には前記膨らみ部分において
   も前記袋状の伝熱板どうしが接していることを特徴とす
   るプレート式熱交換器。
3. 【請求項３】請求項１または請求項２に記載のプレート
   式熱交換器において、 多数の波形或は多数の凹凸の断面を持つ薄板成形板２枚
   の、 周囲並びに流体の通路口を溶接により接合することを特
   徴とするプレート式熱交換器。
4. 【請求項４】請求項１または請求項２に記載のプレート
   式熱交換器において、 多数の波形或は多数の凹凸の断面を持つ薄板成形板２枚
   の、 周囲並びに流体の通路口をロー付けにより接合すること
   を特徴とするプレート式熱交換器。
5. 【請求項５】請求項１、２、３または４に記載のプレー
   ト式熱交換器において、 前記の熱交換器に流入する２種類の流体の圧力に差があ
   る場合に、 圧力の低い方の流体が、 袋状の伝熱板の内側に入り、 圧力の高い方の流体が、 前記の袋状の伝熱板の外側及び、 重ね合わせた前記の袋状の伝熱板を格納した容器の内壁
   と前記の重ね合わせた袋状の伝熱板との隙間に入ること
   を特徴とするプレート式熱交換器。