JP2892619B2 - 光学部品用の有機系被膜形成性物質を含浸固化している多孔質セラミックス焼結体 - Google Patents

光学部品用の有機系被膜形成性物質を含浸固化している多孔質セラミックス焼結体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学部品用の有機系被膜
形成性物質を含浸固化している多孔質セラミックス焼結
体に関するものである。本発明の多孔質セラミックス焼
結体は、無機物系蒸着被膜形成手段と有機物系蒸着被膜
形成手段とを有する真空蒸着装置内で、光学部品等を無
機物系蒸着物質で真空蒸着処理した上に、さらに有機保
護被膜を形成することを特徴とする真空蒸着方法におけ
る、有機物系蒸着被膜形成手段において使用されるもの
である。
【0002】
【従来の技術】一般に化学物質は融点・沸点を有するも
のであるが、特に沸点においては圧力依存性があり高圧
では高く減圧側で低くなる。このことから通常の圧力で
は沸騰しにくい物質も減圧をすることで容易に蒸発が起
きるようになる。この時蒸発物質の通り道に固形物を存
在させることによって、その表面が蒸発物の析出物で覆
われるが、これが真空蒸着の原理である。
【0003】光学部品を真空蒸着で処理をすると、その
処理の性格上被処理物表面は無機性蒸着物質の結晶の付
着によって生じる非常に小さい激しい凹凸が生じる。こ
の凹凸の隙間を充填して滑らかにし、光学的な性質を損
ねることなく保護膜を形成することが必要である。メガ
ネのレンズの場合、マルチコート(多層反射防止膜)の
最表面は2酸化珪素の膜であり、これは空気中の水分や
飛沫水で簡単に白濁し、いわゆる白焼けとなるので、撥
水性被膜を付けることにより白焼け防止をすることがで
きる。また、手指などが触れたりして生じる汚染から保
護するために保護被膜が使用される。
【0004】被膜形成物質を溶液として塗布することに
より、一定の効果があることが知られているが、非常に
薄い膜を成膜しなければならないため大量の溶剤で希薄
な溶液としている。従来技術で使用する溶剤はいわゆる
フロン系のオゾン層破壊物質であり、近年開発された非
フロン系の溶剤も将来規制物質検討の対象として考えら
れる有機フッ素系ないしは有機塩素系化合物である。
【0005】また、従来技術では蒸着装置から取り出し
た後、別に用意した工程で被膜を形成するが、その工程
は溶液の濃度調整、塗布、乾燥とに分かれ、従来技術で
通常に操作すると真空蒸着装置内部は蒸着終了後直ちに
大気圧に解放され品物が取り出され、この時被処理物の
表面に蒸着された結晶性の物質が表面に粒子状に付着し
ているので外部からの汚染に非常に弱い状態となってい
るばかりでなく、大気解放の際空気または窒素ガスなど
を導入して生じた気流によって装置内に堆積していた蒸
着物質が舞い上がり、被処理物に再付着するため、次工
程で湿式の洗浄工程が欠かせない等の問題があることは
周知の通りである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の保護
被膜の形成には使用溶剤による環境汚染の問題と、工程
上からもたらされる表面洗浄の問題があったことは周知
の通りであり、従って本発明はこれら従来不可欠とされ
てきた溶剤の使用と、湿式洗浄工程の使用の欠点を解消
することを目的とするものであり、特に有機物系の被膜
形成物質を溶媒を全く使用することなく蒸発させて付着
固化させる被膜形成性物質を含浸固化させた多孔質セラ
ミックス焼結体を提供することを目的とするものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、真空中で気化
し得る光学部品用の有機系被膜形成性物質を含浸固化し
ていることを特徴とする多孔質セラミックス焼結体であ
る。上記有機系被膜形成性物質は光学部品用の有機系被
膜形成性物質である。
【0008】すなわち、本発明はこれまで不可欠とされ
てきた溶剤の使用を完全に不要とする無溶剤化の原理に
よって有機物系の被膜形成性物質を蒸発し付着固化させ
るものであるが、この場合被膜形成性物質の溶融液や溶
液を容易に吸収することができ、しかも真空中で蒸発し
ない媒介物が必要であり、この目的のため一般に多孔質
セラミックス体の使用が望ましいものである。
【0009】多孔質セラミックス体は好ましくは焼結し
たセラミックス体である。多孔質セラミックス焼結体の
形状は特に制限はなく、15×15×1ミリメートルの
板状体、直径φ17×7ミリメートルの円盤状体、直径
φ15ミリメートル球状体、直径φ12×10の円柱状
体、不定形に破砕したものなどが例示される。
【0010】真空中で気化し得る有機系被膜形成性物質
としては、メガネ、カメラなどのレンズで代表される光
学部品の表面に有機系被膜を形成することのできる物質
であれば何でもよく、ポリエチレンワックス、シリコー
ン樹脂化合物などが例示される。
【0011】有機系被膜形成性物質は溶融状態あるいは
溶液状態にして多孔質セラミックス焼結体に含浸固化さ
れる。被膜形成性物質は多孔質セラミックス焼結体に吸
収されているが、有機物系化合物が無溶剤の物であって
も全く差し支えがない。溶剤を使用した場合でも、当該
セラミックス焼結体製造工程までの間に回収することが
できる。
【0012】
【実施例】本発明を実施例によって説明する。本発明は
この実施例によって何ら限定されない。
【0013】実施例1 有機物系の被膜形成物質である蒸着物質としてポリエチ
レンワックスを溶融し、あらかじめ十分乾燥してある1
5×15×1ミリメートルの多孔性セラミックスに吸収
させた。このセラミックスの増量は1個あたり0.20
グラムである。
【0014】ここで得たセラミックス1個を直径φ60
0ミリメートルの真空蒸着装置に挿入し通常の蒸着操作
の後85℃に加熱して蒸発させた。干渉法によって膜厚
を測定すると0.03マイクロメートルであった。メガ
ネのレンズに形成された撥水性の膜は、干渉法によって
膜厚を測定すると0.03マイクロメートルであった。
これは保護膜として充分機能する厚みである。
【0015】実施例2 有機物系の被膜形成物質である蒸着物質としてシリコー
ン樹脂化合物(パーフロロアルキルシラザン)の溶液を
用いた。この物の蒸発残留物は3%であった。直径φ1
5ミリメートル球状の多孔性セラミックス焼結体を用意
し、あらかじめ充分に乾燥した後シリコーン樹脂溶液を
吸収させて溶剤回収装置の付いた乾燥装置で10-6トー
ルまで減圧乾燥し蒸発性物質を除去した。この操作によ
るセラミックスの増量は1個当たり0.50グラムであ
るようにした。
【0016】このセラミックス2個を直径φ800ミリ
メートル真空蒸着装置に挿入し通常に蒸着操作の後、1
50℃に加熱して蒸発させた。メガネのレンズに形成さ
れた撥水性の膜は、干渉法によって膜厚を測定すると
0.08マイクロメートルであった。これは保護膜とし
て充分機能する厚みである。撥水性の目安となる数字で
水の接触角という言葉があるが、パーフロロアルキルシ
ラザンを蒸着したとき、従来の方法では110度以下だ
ったものが本発明の方法によれば120度程度にまで上
がる。パーフロロアルキルシラザンは不安定な分解し易
い部分があり、通常は大量の溶剤中で保管しているもの
である。それを濃縮するので安定性が問題になるが、本
実施例の方法ではにセラミックス焼結体の化学成分と1
部のパーフロロアルキルシラザンが化学的に結合し加熱
によって蒸発するまで安定に保持される。
【0017】実施例3 有機物系被膜形成物質である蒸着物質として脱アンモニ
ア型ウレタンモノマーを用いた。この物の蒸発残留物は
25%であった。この物を不定形に破砕して充分に乾燥
した多孔性セラミックスに吸収させて実施例2で用いた
乾燥装置で乾燥した。この操作によるセラミックス1.
0グラムあたりの増量は0.2グラムすなわち20%で
あった。このセラミックスを2グラム分け取り直径80
0ミリメートル真空蒸着装置に挿入し通常に蒸着操作の
後、80℃に加熱して蒸発させた。
【0018】また被処理物上で反応を促進するため、別
の加熱装置により被処理物を150℃に保った。蒸着処
理後真空蒸着装置を開けるとアンモニア臭がして脱アン
モニア反応が起きていることが確認された。干渉法によ
って膜厚を測定すると0.05マイクロメートルであっ
た。これは保護膜として充分機能する厚みである。
【0019】
【発明の効果】被膜形成性物質の量が調整でき、真空蒸
着装置に熟練を要することなく、いつも決まった量(微
量でも良い)の被膜形成性物質を供給でき、容器などに
入れて加熱することにより、簡単に使用できる真に無溶
剤の被膜形成性物質を含浸固化させた多孔質セラミック
ス焼結体を提供することができる。これをレンズなどの
製造工程において保護皮膜形成処理に用いれば溶剤を使
用することなく溶剤処理も不要である。
【0020】セラミックスの大きさ、溶液の粘度などを
調整することで被膜形成物質の量が調整でき、その作用
を及ぼす必要のある被処理物の量が一定している真空蒸
着装置に対していつも決まった量を供給できる。特にそ
の必要量が微量でよい場合は純粋な被膜形成物質のみで
は計量に困難を伴い熟練を要するがいつも一定量をセラ
ミックスに吸収させてあれば特別な計器を必要とせず係
数が容易である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/00 - 14/58 G02B 1/10

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空中で気化し得る光学部品用の有機系
    被膜形成性物質を含浸固化していることを特徴とする多
    孔質セラミックス焼結体。
  2. 【請求項2】 有機系被膜形成性物質がポリエチレンワ
    ックスである請求項1の多孔質セラミックス焼結体。
  3. 【請求項3】 有機系被膜形成性物質がシリコーン樹脂
    化合物である請求項1の多孔質セラミックス焼結体。
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