JP2891822B2 - シリコーンゴム充填剤用含水珪酸 - Google Patents

シリコーンゴム充填剤用含水珪酸

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリコーンゴム充填剤に
関し、詳しくは、シリコーンゴムの加熱による架橋反応
時において着色性の少ないシリコーンゴム用補強充填剤
として優れた含水珪酸を提供するものである。
【0002】
【従来技術】シリコーンゴム補強充填剤用のシリカ粉末
としては、従来一般的には、乾式法によるフュームドシ
リカ、及びアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と鉱酸とを中和
反応させて得られる湿式法による含水珪酸が使用されて
いる。
【0003】これらのシリカ粉末を補強充填剤として使
用したシリコーンゴムの過酸化物による架橋反応は20
0℃付近の温度で約4時間の加熱により行なわれてい
る。
【0004】この場合、湿式法による含水珪酸を補強充
填剤として使用したシリコーンゴムにおいては、加熱に
よる架橋反応時にしばしば薄黄色ないしは茶褐色に着色
するという現象が見られる。このために、この湿式法に
よる含水珪酸は、若干の着色は問題とならないような用
途とか、顔料により着色して使用するといった用途等に
限定され、乾式法によるフュームドシリカに比較してそ
の適用できる用途範囲が比較的狭かった。
【0005】着色を防止する方法として、BET比表面
積の小さい含水珪酸を使用すればある程度着色性が改善
できることは経験的に知られているが、しかしこの方法
ではシリコーンゴムパウンドの粘度が低くなり、加工性
が悪くなると同時に、十分な補強性能が得られない、あ
るいはシリコーンゴムに白濁が生じて透明性が悪くなる
といった欠点を招く。
【0006】また近年、従来問題とされていなかった程
度の着色も、需要化のより一層厳しい要望によってあら
ためて問題となる場合もある。
【0007】このような状況下において、シリコーンゴ
ムの着色を防止しようとする試みの一つとして、含水珪
酸中のカルシウム分及び鉄分を少なく調整する方法が提
案されている(特開昭64−60657号)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記提
案の方法では、着色防止の効果が未だ十分でないばかり
か、含水珪酸製造時の反応や水洗に用いる水として、多
量のイオン交換水を使用しなければならないという問題
がある。
【0009】そこで本発明者は、シリコーンゴム補強充
填剤として使用した時に、優れた補強性能を発揮する含
水珪酸であって、しかも着色性の少ない含水珪酸を、多
量のイオン交換水等を使用することなく製造できる方法
につき鋭意検討を重ねた。
【0010】その研究により、シリコーンゴムの架橋反
応時の着色性は、単に含水珪酸中の鉄分あるいはカルシ
ウム分の含有量に左右されるのではなく、含水珪酸のB
ET比表面積及びpHに大きく影響されることを見出し
た。
【0011】すなわち、シリコーンゴムの補強性能及び
着色性に共に関与するBET比表面積を、補強性能を維
持するための一定範囲に保ち、且つpH値を従来の弱酸
性域から弱アルカリ性域とすることで、シリコーンゴム
の着色を少なくできることが見出されたのである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した本発
明の目的及び知見に基づいてなされたものであり、その
特徴は、BET比表面積が130〜250m2 /g、コ
ールターカウンター法による二次粒子の平均粒径が1〜
12μm、4%水懸濁液の電気伝導度が20〜500μ
S/cmであり、且つ4%水懸濁液のpHが7.5〜9
であるシリコーンゴム充填剤用含水珪酸にある。
【0013】本発明の含水珪酸は、BET比表面積が1
30〜250m2 /g、好ましくは140〜230m2
/gであり、二次粒子の平均粒径が1〜12μm、好ま
しくは5〜10μmであるものがよい。BET比表面積
が上記範囲より低い場合は前記した着色性は少なくなる
が、補強性能に劣り、また含水珪酸の一次粒子が大きく
なるためか、シリコーンゴムの透明性が損なわれて白濁
してくるといった別の問題を招く。
【0014】反対に含水珪酸のBET比表面積が上記範
囲よりも高い場合には、補強性能の向上は殆ど改良され
ないが、シリコーンゴムパウンドの粘度が高くなり過ぎ
て加工性が悪くなると同時に、着色性が大きくなるとい
う問題を招く。
【0015】含水珪酸の二次粒子の平均粒径は、上記範
囲内であることが必要であり、この範囲より粒子が粗い
場合には、シリコーンゴム中への分散が悪くなって白濁
や補強性能の低下をもたらし、反対に上記範囲よりも粒
子が細かい場合には、分散性は向上し透明性が向上する
反面、黄色着色がより顕現化されるようになり、本発明
の目的が実現できない。また平均粒径を小さく微粉化す
ると、粉塵飛散が大きくなって、作業性の低下をもたら
すという欠点も招く。
【0016】本発明の含水珪酸はまた、4%水懸濁液の
電気伝導度が20〜500μS/cm、好ましくは50
〜300μS/cmであることがよい。電気伝導度がこ
の範囲を越えると、水洗の不充分性に由来する残留塩類
が多量に存在することになり、補強性能が悪くなるとい
った別の問題を生じ、またこの範囲以下では弱アルカリ
性を維持するためのアルカリ性イオン種が不足するため
か、本発明の着色を少なくするという効果が得られなく
なる。
【0017】本発明の含水珪酸は、4%水懸濁液のpH
が7.5〜9であることが必要であり、好ましくはpH
7.5〜8.5の範囲のものであることがよい。pHの
値がこの範囲より低いと、着色性を抑制する効果が得ら
れず、反対にこの範囲を越える場合には、着色性を抑制
できるものの、シリコーンゴムパウンドの粘度が以上に
高くなって加工性が悪化し、本発明の目的を達成するこ
とができない。
【0018】本発明の含水珪酸は、以上の特性を満足す
るものであれば他の特性値等は特に制限されることな
い。例えば、吸着水分量は通常範囲の3〜7%の値とし
たものを特に限定されることなく用いることができる。
また嵩密度も特に限定されるものはないが例えば、30
〜100g/l(JIS K−5105−18による)
程度の通常の範囲とすればよい。
【0019】本発明の含水珪酸を得るための製造方法
は、特に限定されるものではなく、公知の反応方法によ
り製造することができる。例えば、アルカリ金属珪酸塩
水溶液(市販のケイ酸ソーダ)と鉱酸(硫酸)を反応さ
せて含水珪酸を沈澱析出させる方法としては、例えば所
定の濃度に調整されたケイ酸ソーダ溶液を張り込んだ反
応槽中に、一定濃度を保ちながら硫酸を一定時間添加す
る片側添加反応方式、あるいは予め一定量の温水を張り
込んだ反応槽中に、pH,温度を一定に保ちながらケイ
酸ソーダ溶液及び硫酸を一定時間添加する同時添加方式
等を用いることができる。
【0020】含水珪酸の一次粒子径あるいは構造性のコ
ントロールが必要である場合には、上記片側添加方式あ
るいは同時添加方式のいずれの方式でも適宜の昇温や熟
成の操作が行なわれることが多いが、これらいずれの処
理法を採用した方法で製造した含水珪酸であっても、本
発明の含水珪酸としての上記特性を満足するものであれ
ば制限されることなく用いることができる。
【0021】含水珪酸のpHを特定の範囲内にコントロ
ールする方法としては、例えば鉱酸又はケイ酸ソーダ溶
液の使用量を調整することにより、反応終了時のpHを
制御する方法、濾過水先後の含水珪酸ケーキを再スラリ
ー化し、気流乾燥する前段階の該スラリー液中に苛性ソ
ーダ、苛性カリ等のアルカリ金属水酸化物、あるいはア
ンモニア等の水溶性アルカリ物を添加する方法等を例示
することができる。
【0022】その他、乾燥、粉砕、分級等の操作も、通
常一般の方法を特に制限されることなく用いることがで
きる。
【0023】本発明の含水珪酸は、上記した特性を有す
る含水珪酸を単独で使用する場合は勿論の他、一般的な
弱酸性域のpHを有する含水珪酸と、pH8〜11程度
の高いpHの含水珪酸を混合して、本発明の上記諸特性
(BET比表面積、二次粒子の平均粒径、電気伝導度及
びpH)を満足するものであってもよい。
【0024】本発明の含水珪酸をシリコーンゴム補強充
填剤として用いた場合に、シリコーンゴムの着色性が少
なくなる機構は必ずしも明らかではないが、一般に、含
水珪酸の表面シラノール基に関与する表面酸性度あるい
は強酸点等が着色性に影響していると考えられるのに対
し、本発明の含水珪酸は、上記した特性を有すること、
すなわち含水珪酸が全体として弱アルカリ性であること
によって、含水珪酸の表面又は表面層近くの酸性度に関
与する部分が添加されているアルカリ性物質により中和
されるためと推測される。
【0025】本発明の含水珪酸のシリコーンゴムへの充
填は、特に制限されることなく公知の方法と同様に行な
うことができる。
【0026】例えばシリコーン生ゴムに含水珪酸及び湿
潤剤をロール等で練り込み、熱処理し、シリコーンゴム
パウンドとした後、再度このシリコーンゴムパウンドに
ロール等を用いて架橋剤を混練し、一次架橋及び二次架
橋を行なうことによりシリコーンゴムを得ることができ
る。
【0027】この時の架橋温度としては、一次架橋14
0〜180℃及び二次架橋180〜220℃が一般的で
あり、含水珪酸の充填量としては、特に制限されないが
一般的にはシリコーンゴムに対して25〜50重量%の
広い範囲で充填することが可能である。
【0028】
【実施例】以下本発明を更に具体的に実施例及び比較例
を挙げて説明する。なお各物性値等の測定は次に示す方
法により実施した。
【0029】(1)BET比表面積BET比表面積は、常法に従って カンターソープ(米国
Quantachrome社製)を用いて1点法により
測定した。測定は、一般的なN 2 分子の吸着を用いサン
プル量約0.04gを200℃×30分の前処理をした
後、行った。
【0030】コールターカウンターTA−II(Coulter
Electronics Ins.製)を用いて、70μアパーチャーチ
ューブにより測定した。
【0031】50mlビーカーに分散媒として付属のIs
oton−II液(0.85%NaCl水溶液)20mlを入
れ、これに投入した微量の試料の分散は、40秒間の超
音波分散により行なった。
【0032】(3)電気伝導度 50ml蒸留水中に4gの試料を添加し、よく混合した
後5分間煮沸処理する。その後蒸留水を用いて全容量を
100mlに調整した後濾別する。
【0033】この濾液について、電気伝導度計(型式A
OC−10;電気化学計器社製)を用いて測定した。
【0034】(4)pH 調整水(蒸留水に少量の苛性ソーダを加えてpHを6.
8〜7.0に調整した水)50mlを100mlビーカ
ーに採り、試料2gを加える。約5分間充分にかき混ぜ
た後の安定した値を、ガラス電極pHメーターで読み取
る。
【0035】(5)着色性の測定 測色計(型式MSC−CH;スガ試験機社製)を用いて
黄色度を測定した。
【0036】架橋ゴム試料裏側に標準白色板を当て、反
射光で測定しYIの数値で示した。数値が低いほど白色
であることを示し、数値が高いほど黄色が強いこと を
示す。
【0037】(6)ゴム補強特性の測定(引張り強度、
硬度) JIS K6301の架橋ゴム物性試験方法に従って実
施した。
【0038】実施例1 2m3 反応槽に予めNa2 O濃度0.84mol/l,
SiO2 /Na2 Oモル比3.2のケイ酸ソーダ水溶液
(市販のケイ酸ソーダを希釈した水溶液、以下同様)2
34リットル及び水を添加し、撹拌混合しながら液温を
85℃まで昇温して全容量を1218リットルとした。
次いで上記ケイ酸ソーダ水溶液を3.64リットル/m
in及び濃硫酸(硫酸98%、以下同様)を0.235
リットル/minの速度で、反応温度を85±2℃に保
ちながら同時に添加した。
【0039】反応途中ゲル化発生と共に10分間添加を
中断し、以後全同時添加反応時間が150分になるまで
反応を実施した。さらに同温度で30分間の熟成後、反
応スラリー液のpHが6になるまで濃硫酸を添加し反応
を終了した。
【0040】得られた反応スラリー液をフィルタープレ
スを用いて濾過・水洗後、フィルターケーキを再スラリ
ー化し、気流乾燥し、更に粉砕分級を行って含水珪酸を
得た。
【0041】この含水珪酸の特性値を第1表に示した。
【0042】次に、シリコーン生ゴム100部、上記含
水珪酸40部、及び架橋剤0.5部を6インチのロール
で混練し、一次架橋170℃で10分、二次架橋200
℃で4時間架橋したのち、ゴムの着色性(黄色度)、引
張り強度及び硬度を測定した(以下、実施例及び比較例
においても同様)。
【0043】その結果を第1表に示した。
【0044】実施例2 実施例1において、反応終了時のpHを3とした以外は
同様の反応を行ない、弱酸性の水洗済みフィルターケー
キを得た。このフィルターケーキを再スラリー化(pH
5.7)し、水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱アルカ
リのスラリー液(pH8.1)として気流乾燥後粉砕,
分級して含水珪酸を得た。得られた含水珪酸の特性及び
シリコーンゴムへの充填後の諸物性を測定した。
【0045】結果を第1表に示した。
【0046】実施例3 実施例2において、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに
アンモニア水を用いてpH9.5のスラリー液として気
流乾燥した以外は同様の方法により含水珪酸を得た。得
られた含水珪酸の特性及びシリコーンゴムへの充填後の
諸物性を測定し、結果を第1表に示した。
【0047】実施例4 実施例1において、反応温度を74℃とした以外は同様
の方法により含水珪酸を得た。
【0048】得られた含水珪酸の特性及びシリコーンゴ
ムへの充填後の諸物性を測定し、結果を第1表に示し
た。
【0049】比較例1 実施例1において、反応終了時のpHを3とした以外は
同様の方法により含水珪酸を得た。
【0050】得られた含水珪酸の特性及びシリコーンゴ
ムへの充填後の諸物性を測定し、結果を第1表に示し
た。
【0051】比較例2 市販のアルカリ性含水珪酸、ニップシールNA(日本シ
リカ工業社製)を用いて同様のテストを実施した。結果
を第1表に示した。
【0052】実施例5 比較例1で得られた含水珪酸に比較例2のニップシール
NAを5wt%混合して弱アルカリの含水珪酸とした。
得られた混合含水珪酸を用いて同様のテストを実施し、
その結果を第1表に示した。
【0053】比較例3,4 比較例3として市販の弱アルカリの含水珪酸(ニップシ
ールER)、及び比較例4として高BET比表面積の含
水珪酸(ニップシールHD;いずれも日本シリカ工業社
製)を用いて、シリコーンゴムに充填後の諸物性を測定
した。
【0054】結果を第1表に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】本発明のシリコーンゴム補強充填用剤含
水珪酸は、そのBET比表面積値、平均粒径、電気伝導
度及びpH値等、含水珪酸の表面活性が特定の範囲に調
整されているため、シリコーンゴムへ充填した時、シリ
コーンゴムの着色が少なく、したがって無色透明性に優
れ、しかも高補強性のシリコーンゴムを得ることができ
るという効果がある。
【0057】また、本発明の含水珪酸は、従来公知の製
造方法を利用して製造することが可能であって、多量の
イオン交換水を使用する必要がないため、製造設備、製
造コストも安価とできる効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 炭村 信義 山口県新南陽市本陣町16−19 (56)参考文献 「フィラーハンドブック」 日本ゴム 協会ゴム工業技術員会編 株式会社大成 社発行 昭和60年11月25日 第42頁−第 49頁 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G08K 3/36 C08L 83/04

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 BET比表面積が130〜250m2
    g、コールターカウンター法による二次粒子の平均粒径
    が1〜12μm、4%水懸濁液の電気伝導度が20〜5
    00μS/cmであり、且つ4%水懸濁液のpHが7.
    5〜9であることを特徴とするシリコーンゴム充填剤用
    含水珪酸。
JP16292892A 1992-06-22 1992-06-22 シリコーンゴム充填剤用含水珪酸 Expired - Lifetime JP2891822B2 (ja)

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JP4235337B2 (ja) * 2000-03-02 2009-03-11 東ソー・シリカ株式会社 インクジェット記録シート用填料
JP4395355B2 (ja) * 2003-11-12 2010-01-06 信越化学工業株式会社 シリコ−ンゴム組成物
JP4704713B2 (ja) * 2004-09-21 2011-06-22 信越化学工業株式会社 シリコーンゴム組成物
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「フィラーハンドブック」 日本ゴム協会ゴム工業技術員会編 株式会社大成社発行 昭和60年11月25日 第42頁−第49頁

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