JP2889969B2 - 建設機器等用の耐摩性凸起付鋼板及びその製造法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 Ｉ）…本発明の目的 本発明は、主として建設機械器具の各種摩耗部品、例
えばシャベル、バケット等における特に激しい摩耗にさ
らされる部分に、適当寸法に切断した本発明耐摩性凸起
付鋼板を、対象部分の表面形状に合わせて母材鋼板を曲
成しつつ当接し、溶接固着することによって、該部品の
耐摩耗強度を著しく向上することを目的とする、建設機
器等用の耐摩性凸起付鋼板及びその製造法に係るもので
ある。

II）…従来の課題 （１）…従来、建設機器等の各種摩耗部品の摩耗に激し
い部分を補強するために、適宜形状の鋼板を溶接固着す
ることは、現場において時折行われていたが、例えば、
シャベル、バケット等の補強必要部分が大体曲線形状で
あるため、曲げ加工（特に、現場において人力によっ
て）が容易に行えるような低硬度の鋼板を用いざるを得
ず、充分な耐摩耗性能が得られないのが現状であった。

（２）…一方、建設機器等のメーカーサイドからすれ
ば、シャベル、バケット等は消耗品であって、一定期間
の使用に耐久すれば充分であるというのが基本的な考え
であり、また、補強材を付加加工すると、それだけコス
ト高となり、重量が増加して好ましくない等の理由か
ら、積極的には何ら対応していなかったものである。

（３）…そこで、本発明は、特に現場からの強い要望に
よって行われたものであり、現場において、シャベル、
バケット等の補強対象部分の表面形状に合わせて、人力
によって容易に曲成することが可能な軟性を有し、しか
も外部からの激しい摩耗に対しては強い耐摩耗性を有す
るという、背反する性能を兼用した、全く新規な耐摩耗
性補強材の開発に成功したものである。

III）…本発明製造法 本発明は、低炭素、低合金高張力鋼板若しくは軟鋼鋼
板等の低硬度で曲げ加工自在な素材鋼板を設定長の狭長
板状に載断して母材鋼板を形成し、 １方向に向って設定寸法宛間欠移動する該母材鋼板の
平面上に、複数本の高炭素、高合金鋼ワイヤー（溶接
棒）を整列垂設し、 下向きアーク溶接手段をもって、母材鋼板表面と各ワ
イヤー下端間をアークして母材鋼板表面のアーク位置を
溶融すると同時に該位置に溶融ワイヤーを滴下し、該溶
融滴下による消耗に合わせてワイヤーを下方供給しつ
つ、母材鋼板表面に定量の溶融ワイヤーによる略凸レン
ズ状の円形溶融池を形成したのち、アークを止めて母材
鋼板を設定寸法移動し、 続いて、各ワイヤー下端と新規に相対した母材鋼板表
面間をアークして上記同様に円形溶融池を形成し、 上記のようにして次々と形成される円形溶融池を母材
鋼板の移動に伴い冷却硬化し、母材鋼板の全表面に高硬
度の耐摩性凸起を等間隔整列状態に溶着形成することを
特徴とする、 建設機器等用の耐摩性凸起付鋼板の製造法である。

IV）…本発明耐摩性凸起付鋼板の構成 また、本発明は上記製造法によって製造した耐摩性帯
状鋼板の構成に係る。

即ち、本発明耐摩性凸起付鋼板は、厚さ10〜20mmの低
炭素、低合金高張力鋼板若しくは軟鋼鋼板を幅80〜120m
m、長さ1000〜3000mmの狭長板状に載断して設けた母材
鋼板の全表面に、高炭素、高合金鋼ワイヤー（溶接棒）
をアーク溶接手段によって溶融滴下、冷却溶着して、直
径20〜30mm、高さ２〜5mmの円形凸レンズ状で高硬度の
耐摩性凸起を等間隔に整列して設けたものである。

Ｖ）…実施例 以下に、本発明の実施例を図面につき説明する。

（１）…第１図、第２図は本発明製造法にて製造した耐
摩性凸起付鋼板の実施例の一部正面図、背面図及び側面
図であり、第２図はそのＡ′−Ａ′線拡大断面図であ
る。

而して、低炭素、低合金高張力鋼板若しくは軟鋼鋼板
を載断して形成した狭長板状の母材鋼板１（例、厚さ10
mm、幅80mm、長さ3000mm）の表面に、高硬度の高炭素、
高合金鋼ワイヤー３（溶接棒）をアーク溶融滴下して、
直径22mm、中心部の高さ2.5mmの円形凸レンズ状の耐摩
性凸起２を等間隔に４列整列状態に形成して設けた、本
発明耐摩性凸起付鋼板Ａである。

なお、該実施例において、 （１）、母材鋼板１は硬度HB220〜240（HRC18〜22）
で、高張力鋼板75〜80kgf/mm²相当である。

よって、例えば母材鋼板１の先端をバケット等の目的
部分に溶接した状態で、人力によって該バケットの外面
に合わせて曲成可能である。

（２）、また、耐摩性凸起２は硬度HB510〜550（HRC52
〜55）またはそれ以上であって、ブルドーザ用トラック
リンクの表面硬度と略同等であり、高張力鋼板55kgf/mm
²に比較して略13.7倍の硬度を有する。

該耐摩性凸起２の溶接素材ワイヤーは、高炭素（Ｃ…
…0.43）、高合金（特に、Si、Mn、Crを多量に含）鋼で
あり、溶接のままで硬い炭化物を析出させると共に冷却
により焼きが入り耐摩耗性を増大している。

（２）……第３図は本発明製造法の実施例の概略説明図
である。

即ち、１方向に向って設定寸法（5cm）宛間欠移動す
る母材鋼板１に対し、４本のワイヤー３を垂直に配設
し、該ワイヤー３下端と母材鋼板１の表面相対位置間
に、アーク溶接手段によってアークして、ワイヤー３の
溶融滴下によって略凸レンズ状の円形溶融池２′を形成
したのち、アークを止めて母材鋼板１を設定寸法移動
し、これを繰り返して次々と円形溶融池２′を形成し、
該円形溶融池２′が母材鋼板１の移動に従い冷却して耐
摩性凸起２となり、そして、上記のように母材鋼板１の
表面に耐摩性凸起２が等間隔に４列整列状態に形成され
たものを、3000mm毎に切断して、厚さ10mm、幅80mm、長
さ3000mm、耐摩性凸起の直径22mm、中心部の高さ2.5m
m、母材鋼板１の硬度HB220〜240（HRC18〜22）、耐摩性
凸起２の硬度HB510〜550（HRC52〜55）の、本発明耐摩
性凸起付鋼板４を製造するものである。

VI）…作用 （１）…設定長（例1000〜3000mm）に製造された本発明
耐摩性凸起付鋼板は、この状態で保管、運搬し、また建
設機器等の耐摩耗補強が必要な部分、例えばシャベル、
バケットの摩耗が激しい部分（第４図の（イ）〜（ハ）
参照）、ダンプカーの荷台の荷ずれ部分等に、目的長に
切断したものを溶接によって固着して、該部分の耐摩耗
性を向上する。

（２）…目的長切断は、工場又は工事現場にて、高速切
断機等研磨材ディスクで行うのが最適であるが、その他
ガス切断で行う。この場合母材鋼板の裏面から行うよう
にするが、予熱は不要である。

（３）…目的長に切断したものを、目的位置に溶接する
に先だって、目的位置の形状（例、アール状）に合わせ
て曲げ加工する。

この場合、例えば、母材鋼板の一方先端だけを溶接し
たのち、対象形状に合わせて、手で曲げ成形する。

前述の如く母材鋼板は低硬度なので人力で曲成加工し
得る。

なお、必要に応じて母材鋼板を予熱し、加熱が必要と
判断される時は、裏面側を200℃を限度として加熱す
る。

（４）……上記曲げ加工したものを目的位置に当接した
状態で、母材鋼板の周辺部を目的物に溶接して固着す
る。

該溶接は通常の溶接棒で可であり、通常の溶接で足り
る。

VII）…効果 （１）…本発明耐摩性凸起付鋼板は、その母材鋼板を設
定長、設定幅の狭長板状に形成したので、製造、保管、
運搬がしやすく、また、何処にても簡単に目的長に切断
して使用し得る。

（２）…母材鋼板を低硬度素材で曲成可能に設けたの
で、建設機器等の各種摩耗部品、例えばシャベル、バケ
ット等の補強目的位置の形状に合わせて、人力によって
容易に曲成当接して、溶接固着し得る。

（３）…母材鋼板は低高硬であるが、その全表面に整列
形成した耐摩性凸起は、高炭素、高合金鋼を溶接形成し
たものであるので、極めて高硬度で耐摩耗性に秀れてお
り、よって、本発明鋼材溶接固着箇所の耐摩耗性を著し
く増大して、シャベル、バケット等の耐久性を格段に向
上し得る秀れた特徴がある。

（４）…耐摩性凸起は母材鋼板の表面上にアーク溶接手
段によって形成したものであるので、母材鋼板の表面も
アークで溶融して溶融滴下ワイヤーと融合するため、冷
却硬化後もその溶接固着強度が大であり、従って、母材
鋼板の曲げ加工によって耐摩性凸起が剥離するような恐
れは全くない。

（５）…なお、本発明耐摩性凸起付鋼板は、上記建設機
械に限らず、例えば、ダンプカーの荷台の荷ずれ箇処な
ど、強い摩耗に対する補強を必要とする目的に汎用し得
るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明製造法をもって製造した本発明耐摩性凸
起付鋼板の実施例の正面図、背面図及び側面図、 第２図は第１図のＡ′−Ａ′線拡大断面図、 第３図は本発明製造法の実施例の概略説明図、 第４図の（イ）、（ロ）、（ハ）は本発明鋼板を溶接固
着した建設機械の各種バケットの斜視図である。 付号の説明 Ａ……本発明耐摩性凸起付鋼板 １……母材鋼板 ２……耐摩性凸起 ２′……円形溶融池 ３……ワイヤー（溶接棒）

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】低炭素、低合金高張力鋼板若しくは軟鋼鋼
   板等の低硬度で曲げ加工自在な素材鋼板を設定長、設定
   幅の狭長板状に裁断して母材鋼板を形成し、 １方向に向って設定寸法宛間欠移動する該母材鋼板の平
   面上に、複数本の高炭素、高合金鋼ワイヤー（溶接棒）
   を整列垂設し、 下向きアーク溶接手段をもって、母材鋼板表面と各ワイ
   ヤー下端間をアークして母材鋼板表面のアーク位置を溶
   融すると同時に該位置に溶融ワイヤーを滴下し、該溶融
   滴下による消耗に合わせてワイヤーを下方供給しつつ、
   母材鋼板表面に定量の溶融ワイヤーによる略凸レンズ状
   の円形溶融池を形成したのち、アークを止めて母材鋼板
   を設定寸法移動し、 続いて、各ワイヤー下端と新規に相対した母材鋼板表面
   間をアークして上記同様に円形溶融池を形成し、 上記のようにして次々と形成される円形溶融池を母材鋼
   板の移動に伴い冷却硬化し、母材鋼板の全表面に高硬度
   の耐摩性凸起を等間隔整列状態に溶着形成することを特
   徴とする、 建設機器等用の耐摩性凸起付鋼板の製造法。
2. 【請求項２】厚さ10〜20mmの低炭素、低合金高張力鋼板
   若しくは軟鋼鋼板を幅80〜120mm、長さ1000〜3000mmの
   狭長板状に載断して設けた母材鋼板の全表面に、高炭
   素、高合金鋼ワイヤー（溶接棒）をアーク溶接手段によ
   って溶融滴下、冷却溶着して、直径20〜30mm、高さ２〜
   5mmの円形凸レンズ状で高硬度の耐摩性凸起を等間隔に
   整列して設けた、 建設機器等用の耐摩性凸起付鋼板。