JP3824970B2 - 耐摩耗性低炭素鋼ボス部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2つの部品を回動可能に連結するのに有用なボス部材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ボス部材としては、例えば、油圧ショベルなどの建設機械においてアームとバケットとの接続に使用される概略円筒形状のボス部材が使用されている。このボス部材は、アームの先端側に溶接によって取付けられており、その両端はバケットから延出する一対のブラケット部によって挟まれている。そしてボス部材とブラケット部とを連結ピンで貫通することによって、バケットはアーム先端に軸着される。
【0003】
前記ボス部材は、前記ブラケットと接触する端面が隆起形成されており、ボス部乃至ブラケット部に作用するスラスト荷重を該端面で受けることによって、ボス部に対するブラケット部のスラスト方向(連結ピンの軸方向)へのガタツキを防止している。
【0004】
このような油圧ショベルでは、前記アームとして例えばSMC490(JIS G3160)等の溶接構造用圧延鋼板を用いた製缶構造品が使用されている一方、このアーム先端に溶接にて固着される前記ボス部材は、アームへの溶接性の観点、即ち予熱なしで溶接できることを目的として一般的にはS30Cに代表される低炭素鋼材が用いられている。
【0005】
ところが、バケットが多量の土砂を扱うため、ボス部端面とブラケット部との間の僅かな隙間内に土砂等が頻繁に侵入してしまう。そして前記S30Cなどの低炭素鋼材からなるボス部材は焼入性が悪いため、すなわち空冷では熱処理を施してもさほど硬度を高くすることはできないため、ボス部の端面が著しく摩耗してしまう。またボス部端面に摩耗等が生じると、ボス部とブラケット部の間のスラスト方向の隙間が大きくなってガタツキを生じ、更にはボス部内周面の外端側がラッパ状に摩耗し、ガタツキを一層助長してしまう。
【0006】
端面ではないが、摺動材の耐摩耗性を高める方法として、例えば、特開平2−173212号公報では、軸状部材の摺動面(外周面)を、収束された高密度熱源(レーザービーム、電子ビーム、TIGアーク、プラズマアークなど)によって局部的に加熱して焼入硬化し、非硬化部を除去することで摺動面(外周面)に硬質凸部と非硬質凹部とを形成することが開示されている。収束された高密度熱源は、焼入性の低い低炭素鋼を焼き入れるのに有用な技術であるものの、反面ピンポイント的にしか加熱することができず、ある程度の面積を焼入するには加熱部をずらしながら長時間に亘って加熱を継続する必要があり、生産性が極めて低く、実用化が困難である。
【0007】
一方、ボス部材の端面の硬化方法は、例えば、特開平9−184518号公報や特開2001−329356号公報に開示されている。これら公報では、焼入性の低い低炭素鋼の摩耗性を現実的に高めるためか、焼入を離れることが提案されている。すなわちボス部端面に超硬合金材やセラミックス材料等の耐摩耗材料を溶射し、耐摩耗層を形成することが開示されている。しかしこの方法では、超硬合金材やセラミックス材料を溶射のために溶解するのに時間がかかるため、いまだ生産性が不十分である。更に耐摩耗層は耐衝撃性に劣るため、亀裂を生じたり、部分剥離したりすることがある。さらには均一な耐摩耗層を形成するには熟練を要し、材料費並びに溶射処理装置を含む付帯設備が高価となり、コストアップの大きな要因となる。
【0008】
従って耐摩耗性と溶接性に優れたボス部材を簡便に製造できる技術はいまだ確立されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐摩耗性と溶接性に優れたボス部材を簡便に製造できる方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、溶接性と耐摩耗性とを両立でき、耐摩耗層が剥離することがないボス部材を製造できる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねる過程において、まず溶接性を確保するために低炭素鋼でボス部材を使用することとし、この低炭素鋼の耐摩耗性を高めるために高周波焼入に着目した。高周波焼入は、大型の焼入装置が不要でありしかも作業効率に優れるため、低炭素鋼ボス部材の耐摩耗性を簡便に高めるのに有用と思われるためである。特に高周波焼入の冷却条件を空冷にすると、水冷設備が不要となり、高周波電源容量も下げることができるため極めて有用であると思われる。ところが、高周波誘導加熱及び空冷の組み合わせでは、低炭素鋼を焼入することはできないと考えられていた。そして本発明者らも、確かに全面的に高周波焼入する場合には焼入ができず、しかも部分的に高周波焼入する場合であっても連続的に(例えば渦巻き状に)焼入する場合には高硬度には焼入ができないことを確認した。しかし、焼入部分を非連続的に(例えば、断続的に)形成するように焼入れすることとすると、高周波焼入であっても技術常識に反して高硬度に焼きが入ることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明に係る耐摩耗性低炭素鋼ボス部材の製造方法は、低炭素鋼(例えば、炭素含有量が0.4質量%以下程度の低炭素鋼)からなるボス部材の端面を焼入部分が非連続的になるように複数箇所に亘って高周波誘導加熱し、該加熱部を自然放冷する点に要旨を有しており、部分焼入されたボス部材を製造するものである。非連続的に部分焼入するに際しては、例えば、下記1〜4のステップをこの順で複数回にわたって繰り返せばよい。
【0013】
1:部分焼入予定部の面積と略同等の面積の加熱導体部を有する高周波コイルを前記ボス部材の端面に近接させる
2:該高周波コイルに通電することによってボス部材を部分的に誘導加熱する
3:該高周波コイルの通電を停止して空冷する
4:通電を停止したまま、該高周波コイルを他の部分焼入予定部の近傍に相対的に移動する
また複数の高周波コイルを組み合わせてコイル部が非連続的パターンを形成するようにし、この組み合わせコイルを前記端面に近接させることによって高周波部分焼入部を非連続的に形成する手法を採用してもよい。上記高周波部分焼入では、周波数10〜50kHz、電源出力16kW以上、加熱時間1秒以下の条件で加熱し、各部分焼入部の長さを5〜30mm、各部分焼入部の幅を3〜7mm、焼入部同士の再近接部位間の距離を1mm以上にするのが望ましい。
【0014】
なお本明細書において、用語「空冷」とは、室温下での自然放冷を含む意味で使用する。また本明細書において、焼入部の硬さ(HRC)は、小数点以下第1位を四捨五入することによって得られる値を意味する(実施例の欄を除く)。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して、適宜図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお図示例では、同じ構成部分については同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0016】
図1は本発明によって得られるボス部材をアーム先端部に備えた油圧ショベルの概略側面図であり、図2は前記アーム先端部の拡大断面図である。この油圧ショベル1では、車両本体部2から延出するブーム3、このブーム3の先端に回動自在に連結するアーム4、このアーム4の先端に回動自在に連結しかつ土砂等を処理するためのバケット5で作業部6が構成されており、これらブーム3,アーム4,バケット5を、それぞれに接続する伸縮自在の油圧シリンダ7a,7b,7cによって有機的に可動させることによってバケット5で土砂等を自在に処理することができる。
【0017】
このような油圧ショベル1において、前記バケット5とアーム4との連結は、アーム先端部に形成されたボス部10aと、バケット5の後端に形成された一対のブラケット8a,8bとを連結ピン20で貫通支持することによって行われている(図2参照)。より詳細には、前記ボス部10aは、アーム先端側の両側部に溶接された一対のボス側ブラケット部11a,11bと、このボス側ブラケット部11a,11bを連結する筒型部12とで構成されており、このボス部10aの両端面13a,13bは、前記一対のブラケット8a,8bに挟まれている。そして、これらボス部10a(ボス側ブラケット11a,11b)及びバケット側ブラケット8a,8bには略同径の貫通孔が形成されており、この貫通孔に連結ピン20を挿通することによって、バケット5をアーム4に対して回動自在に軸着することができる。
【0018】
なおこの例では、ブラケット8a,8bの内側面に支持板21a,21bが溶接によって固着されており、ブラケット8a,8bを補強している。更にこの例では、前記ボス部10aを構成する筒型部12に、グリース等の潤滑剤を供給するためのライン30が取付けられており、このライン30の他端には潤滑剤供給口31が接続している。この潤滑剤供給口31から潤滑剤を供給することによって、前記筒型部12の内部32を潤滑剤保留部として利用できる。そしてこの保留部32の潤滑剤は、ボス部材10aと連結ピン20との摺動性を高めるために利用される。さらには図示しない流路を通じてボス部10aの両端面13a,13bに潤滑剤が供給されるようになっており、ボス部10aとブラケット8a,8bの摺動性も高められている。
【0019】
このような油圧ショベル1では、上述したようにボス部10aをブラケット8a,8bで挟みつけているため、ボス部10aにスラスト荷重が作用している。従って、ボス部10aの両端面13a,13bに潤滑剤を供給する場合であっても、この両端面13a,13bは摩耗しやすい状況になっている。特にボス部10aとブラケット8a,8bとの間(この例では、正確には、ボス部10aとブラケット支持板21a,21bとの間)はオイルシール18で保護されているにも拘わらず、使用条件が過酷であるためにこの間に土砂等が入り込んでしまう場合がある。特にショベルでは、バケットなどの作業用アタッチメントを目的に応じて作業現場で取り替えることがあり、ボス部端面13a,13bは交換作業時に剥き出しになり、土砂等が極めて付着しやすくなる。しかも本発明の油圧ショベルでは、前記ボス部10aは溶接性を考慮して低炭素鋼から製造されている。これらのため、端面13a,13bは、一段と摩耗しやすい状況になっている。
【0020】
そこで本発明では、低炭素鋼からなるボス部材10aの端面13a,13bを部分的に、しかも非連続的に複数箇所に亘って高周波誘導加熱し、該加熱部を空冷することによって、ボス部材10aの耐摩耗性を高めている。高周波焼入によって耐摩耗性を高めるのは、耐摩耗層(焼入硬化層)の剥離の虞がないからである。焼入するに際して、高周波誘導加熱を利用するのは、大型の焼入装置が不要でありしかも作業効率に優れるためである。空冷をするのは、水冷によると水冷設備が余分に必要となり、しかも高周波電源容量を大きくする(例えば、200kW以上とする)必要があり、設備費用やランニングコストが高騰するためである。ところで、上述したように、高周波誘電加熱及び空冷では、低炭素鋼を焼入れするのが難しい。そこで本発明では、高周波焼入を部分的に非連続的に施すことによって、低炭素鋼でも焼入できるようにしている。高周波部分焼入を非連続的に施すと、次のような利点もある。すなわちボス部材10aは、内周部(ボス穴)が仕上切削加工されるので、端面全体が焼入されているとこの仕上切削加工が極めて困難となり、例えば、超硬バイトを使っても工具寿命が極めて短くなり、生産性に劣ることとなるのに対して、高周波焼入を部分的に非連続的に施すと、このような不具合がない。またボス部材の外周面を含めた全体に対して焼入を施しても、激しい摩耗が生じやすいのは端面のみであるため無駄が生じるのに対して、端面に焼入すると、このような不具合がない。なお本発明は、ボス部材全体を調質することを否定するものではない。
【0021】
以下、上記高周波焼入方法について、図3の概略斜視図に基づいてより詳細に説明する。高周波焼入では、部分焼入部16の面積(形状)に略等しい加熱導体部(加熱面)31を有する高周波コイル30をボス部材に近接させ、高周波コイル30に通電することによってボス部材を部分的に加熱した後、高周波コイル30の通電をストップして放冷(空冷)することによって焼入を行う。通電した高周波コイルを焼入すべき部位に近接させると、その部分のみが誘導加熱により急激に局所加熱され、通電を断つと加熱部周囲への熱伝導によって急速冷却が生じるため、加熱部分がマルテンサイト変態して焼入硬化する。この焼入の際の冷却速度が熱伝導に支配されるため、焼入部分は連続的ではなく適当な間隔を空けて非連続的(例えば断続的)に配置することが重要ある。
【0022】
ボス部材端面を部分的に非連続的に焼入することができる限り、高周波誘導加熱の方法は特に限定されないが、高周波コイル30を単独で使用する場合、複数の高周波コイルを組み合わせて使用する場合に応じて、下記のようにして加熱するのが便利である。
【0023】
(1)高周波コイルを単独で使用する場合
下記1〜4のステップをこの順で複数回にわたって繰り返す。
【0024】
1:部分焼入予定部の面積(形状)と略同等の面積(形状)の加熱導体部を有する高周波コイルを前記ボス部材の端面に近接させる
2:該高周波コイルに通電することによってボス部材を部分的に誘導加熱する
3:該高周波コイルの通電を停止して空冷する
4:通電を停止したまま、該高周波コイルを他の部分焼入予定部の近傍に相対的に移動する
なおステップ4の高周波コイルの相対的な移動に際しては、高周波コイルを移動させてもよく、ボス部材を移動(例えば、回転)させてもよい。
【0025】
(2)複数の高周波コイルを組み合わせて使用する場合
複数の高周波コイルを組み合わせてコイル部が非連続的パターンを形成するようにし、この組み合わせコイルを前記端面に近接させることによって高周波焼入部を非連続的に形成する。
【0026】
上記いずれの場合にしても、コイル部が大きすぎると、一度に加熱される面積が広くなり過ぎるため、焼きが入りにくくなる。従って本発明では、十分に小さなコイルを使用するのが望ましく、上記具体例においては部分焼入予定部と略同等の長さ及び幅(直径)の加熱導体部を有する高周波コイルを使用することとしている。
【0027】
上述のようにして焼入するとボス部材の端面が種々のパターンで部分焼入されることとなる。図4は前記高周波部分焼入が施されたボス部端面13の一例を示す概略正面図である。この図4では、高周波部分焼入された部分を黒く塗りつぶしている(なお塗りつぶしは、発明を説明するための便宜上のものであって、実際のボス部の端面13a,13bが黒く塗りつぶされているわけではない)。そしてこの図示例では、複数の高周波部分焼入部16aが略等間隔で形成されていると共に、全体として放射状となるように形成されている。このような場合も非連続的に高周波部分焼入されているため、低炭素鋼であっても十分に高硬度に焼入することができ、端面13a,13bの耐摩耗性を十分に高めることができる。なお本発明では部分的に高硬度部(焼入部)を形成しているため、軟質部15が残っている。この軟質部15は、焼入部(硬化部)16aに割れが発生した場合の割れの伝播を防止するのに有用であり、さらには油圧ショベル1の使用中に摩耗することによって、潤滑剤保持部として機能するため有益である。加えて本発明では、この摩耗部は、土砂等の退避場所としても機能するため、端面13a,13bの摺動性をより高めることができる。
【0028】
高周波部分焼入部16aを放射状に形成する場合、上記図4のように各部分焼入部16aを半径方向に沿って形成してもよいが、周方向に向けて傾斜するように形成してもよい。図5は周方向に傾斜する部分焼入部16bが形成されている端面13a,13bの概略正面図であり、この例では部分焼入部16bはいずれも略等しい角度で傾斜している。
【0029】
また部分焼入部を周方向に沿って形成するのも望ましい。図6,図7は、このような端面13a,13bの概略正面図である。図6の例では、周方向に沿って複数の部分焼入部16cが一列になって(全体として円を形成するように)形成されている。そしてこの部分焼入部16cの列の内側にも、第2の部分焼入部16dの列が形成されており、これら2つの列(円)は同心円状に形成されている。なお図6の例では、外側にある第1の列(円)を構成する部分焼入部16cと、内側にある第2の列(円)を構成する部分焼入部16dとは、半径方向に揃うように形成されている。一方図7の例は、外側の部分焼入部16eの列と内側の部分焼入部16fの列とが、同心円状に形成されている点では図6と同様であるが、外側の部分焼入部16eと内側の部分焼入部16fとが、周方向にみたときに交互になるように形成されている点で図6と異なる。外側の部分焼入部と内側の部分焼入部が交互に形成されている方が、焼入硬化が容易になり、さらには摩耗した軟質部15において潤滑剤を保持しやすくなる。なお前記列(円)の数は2つに限定されず、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0030】
なお高周波部分焼入部16は、端面13a,13bに非連続的(例えば、断続的)に形成する限り、その数や形成箇所は特に限定されないものの、略等間隔に複数個形成するのが望ましい。略等間隔に形成することによって、端面13a,13bの耐摩耗性を略均等に高めることができ、さらには軟質部15をも略均等に残すことができるため、端面13a,13bの摺動性も略均等に高めることができる。また高周波部分焼入部16a〜16fは、両端面13a,13bに同じパターンで形成してもよく、異なるパターンで形成してもよい。
【0031】
本発明では高周波誘導加熱後の冷却を空冷(熱伝導)によって行っているため、上述したように、連続的ではなく適当な間隔を空けて非連続的(例えば断続的)に焼入するのが重要であり、各部分焼入部が略等間隔になるようにすることが多い。部分焼入部間の間隔は、その最近接部分の距離が例えば、1mm以上となるようにするのが望ましい。なお前記距離の上限は、非焼入部が摩耗したときにガタツキが生じない限り特に限定されないが、通常、端面全体の半分(面積基準)程度は部分焼入を施すため、前記距離の上限は部分焼入部の幅と同程度とすることが多い。
【0032】
前記部分焼入部は、略長方形状、略楕円形状などの異方的形状であることが多く、長さ(長軸の長さ)は、例えば、5〜30mm程度であり、幅(短軸の長さ)は、例えば、3〜7mm程度である。
【0033】
なお本発明では、高周波誘導加熱の条件を以下のように設定するのが望ましい。
【0034】
(1)周波数
周波数が高すぎると焼入深さが浅くなり過ぎるため、十分な耐摩耗性が得られない。従って周波数は、10kHz以上、好ましくは20kHz以上とする。一方、周波数が低すぎると深部まで加熱され過ぎるために、空冷時の冷却速度が遅くなりすぎ、十分な焼入硬化を得ることができない。従って周波数は、50kHz以下、好ましくは30kHz以下とする。特に好ましい周波数は、焼入深さを約1〜2mmとするのに必要な程度であり、後述の鋼を焼き入れる場合には約23〜27kHz程度(特に25kHz程度)である。
【0035】
(2)焼入時間(加熱時間)
焼入時間の下限は、鋼をマルテンサイト化及び/又はベイナイト化できる限り特に限定されないものの、焼入時間が短すぎると、高周波コイルに通電のON−OFF制御が困難となるため、焼入時間は、例えば、0.2秒以上にするのが望ましい。一方、焼入時間が長すぎると、高温になりすぎ、空冷時の冷却速度が遅くなりすぎるため、十分な焼入硬化を得ることができない。さらには作業効率も低下する。従って焼入時間は1秒以下、好ましくは0.5秒以下とする。
【0036】
(3)電源出力
電源出力は、鋼の焼入性、焼入面積などに応じて適宜設定できるが、例えば、16kW以上(好ましくは20kW以上、さらに好ましくは24kW以上)とする。焼入面積を広くするほど、大きな電源出力を必要とする。なお焼入面積が広くなり過ぎると、十分な焼入硬化を得ることができなくなるため、電源出力の上限は焼入硬化可能な範囲から選択する。電源出力は、通常、100kW以下程度である。
【0037】
なお焼入部への入熱量は、上記焼入時間及び電源出力によって決定されるが、所定の焼入硬さが達成できる限り、入熱量は少ないほど望ましい。入熱量を少なくすると、ボス部材の熱変形や熱歪の発生を少なくでき、寸法精度を維持することができる。
【0038】
高周波コイルを単独で使用する場合の高周波コイルの相対的移動速度は、例えば、5〜13mm/秒程度である。
【0039】
本発明では、低炭素鋼でボス部材10aを製造する。低炭素鋼を使用するのは、ボス部材10aをアーム4に溶接する際に予熱する必要がなく、溶接性に優れるためである。また低炭素鋼を使用すれば、中〜高炭素鋼を使用する場合に比べて、製造コストを低減することもできる。前記低炭素鋼の炭素含有量は、例えば、0.4質量%以下、好ましくは0.35質量%以下である。なお炭素含有量が少なすぎると、高周波部分焼入を行っても所定の硬さを達成するのが困難であるため前記炭素量は、例えば、0.25質量%以上、好ましくは0.30質量%以上とする。なお前記低炭素鋼にはBを添加していてもよい。Bを添加すると、焼入性を高めることができ、さらには溶接熱影響部(HAZ部)の靭性も高めることができる。Bの含有量は、例えば、0.0005質量%以上であり、0.003質量%以下(好ましくは0.002質量%以下)である。
【0040】
端面の部分焼入部の硬さ(HRC)は、45以上、好ましくは48以上、さらに好ましくは50以上である。本発明では、焼入性の低い低炭素鋼を使用していても、非連続的に高周波部分焼入しているため、空冷であっても所定以上の硬さを達成することができる。一方、前記焼入部の硬さは、通常、65以下であり、60以下であることが多い。なお非焼入部の硬さ(ブリネル硬さHB)は、通常、130〜200程度である。
【0041】
本発明のボス部材は、ショベルの他、土砂等を取り扱う作業アタッチメント(法面作業用バケット、掘削用バケット、除雪用バケットなどのバケット類など)と、この作業アタッチメントを軸支するためのアーム部材とを有する作業機械であれば、種々の作業機械(土木作業用又は建設作業用機械など)に適用することができ、例えば、ホイールローダ、除雪機などの種々の作業機械に適用することもできる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0043】
実験例1
端面の隆起部の直径が170mm、ボス穴の直径が109mmであるボス部材(S30C製)の端面に、図4のパターンとなるように高周波部分焼入を施した。より詳細には、高周波コイル[加熱導体部の面積=6mm×19mm(略矩形)]をボス部材に近接させて0.5秒間通電(周波数25kHz)して誘導加熱した後、通電を停止し、約0.5秒かけて高周波コイルをスライドさせ、再び0.5秒間通電して誘導加熱する操作を繰り返すことによって、図4のパターンとなるように片面当たり均等に48カ所を部分焼入した。各焼入部の大きさは、約4mm×約17mmであった。
【0044】
電源出力を16〜25kWの範囲から7水準で選択し、いずれの場合においても前記繰り返し操作によってボス部材の端面を48カ所焼入した後、均等に6カ所の部分焼入部を選択し、各部分焼入部のロックウェル硬さを測定し、所定硬さ以上の高周波焼入が施されているか否かを確認した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より明らかなように、本発明によれば、断続的に高周波焼入を行っているため、低炭素鋼であっても所定の硬さに焼入することができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、焼入性に劣る低炭素鋼からなるボス部材を焼入するに際して高周波誘導加熱及び空冷という焼入しにくい条件を採用しても、非連続的に焼入しているため、焼入硬化することができる。そのため耐摩耗性と溶接性に優れたボス部材を簡便に製造できる。また耐摩耗層が剥離する虞も少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は作業機械の一例を示す概略側面図である。
【図2】 図2はボス部材の一例を示す概略断面図である。
【図3】 図3はボス部材端面の焼入方法を説明するための概略斜視図である。
【図4】 図4はボス部材端面の焼入パターンの一例を示す概略正面図である。
【図5】 図5はボス部材端面の焼入パターンの他の例を示す概略正面図である。
【図6】 図6はボス部材端面の焼入パターンのさらに他の例を示す概略正面図である。
【図7】 図7はボス部材端面の焼入パターンの別の例を示す概略正面図である。
【符号の説明】
10a ボス部材
13a,13b 端面
16a〜16f 部分焼入部
Claims (5)
- 低炭素鋼からなるボス部材の端面を焼入部分が非連続的になるように複数箇所に亘って高周波誘導加熱し、該加熱部を自然放冷することを特徴とする部分焼入された耐摩耗性低炭素鋼ボス部材の製造方法。
- 下記1〜4のステップをこの順で複数回にわたって繰り返すことにより、高周波部分焼入部を複数箇所に亘って非連続的に形成する請求項1記載の耐摩耗性低炭素鋼ボス部材の製造方法。
1:部分焼入予定部の面積と略同等の面積の加熱導体部を有する高周波コイルを前記ボス部材の端面に近接させる
2:該高周波コイルに通電することによってボス部材を部分的に誘導加熱する
3:該高周波コイルの通電を停止して空冷する
4:通電を停止したまま、該高周波コイルを他の部分焼入予定部の近傍に相対的に移動する - 複数の高周波コイルを組み合わせてコイル部が非連続的パターンを形成するようにし、この組み合わせコイルを前記端面に近接させることによって高周波部分焼入部を非連続的に形成する請求項1に記載の耐摩耗性低炭素鋼ボス部材の製造方法。
- 周波数10〜50kHz、電源出力16kW以上、加熱時間1秒以下の条件で高周波部分焼入することとし、各部分焼入部の長さを5〜30mm、各部分焼入部の幅を3〜7mm、部分焼入部同士の再近接部位間の距離を1mm以上にする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性低炭素鋼ボス部材の製造方法。
- 炭素含有量が0.4質量%以下の低炭素鋼を高周波部分焼入する請求項1〜4のいずれかに記載の耐摩耗性低炭素鋼ボス部材の製造方法。
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