JP2886040B2 - 雰囲気炉の非接触式シール装置 - Google Patents

雰囲気炉の非接触式シール装置

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JP2886040B2 JP16301093A JP16301093A JP2886040B2 JP 2886040 B2 JP2886040 B2 JP 2886040B2 JP 16301093 A JP16301093 A JP 16301093A JP 16301093 A JP16301093 A JP 16301093A JP 2886040 B2 JP2886040 B2 JP 2886040B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば浸炭炉のように
通板される金属帯の近傍の雰囲気ガス組成,組成ガス濃
度,炉内温度等の雰囲気を制御する各種の雰囲気炉にあ
って、これらの雰囲気を区画し、夫々区画された各雰囲
気を個別に制御するために,少なくとも当該金属帯に向
けてシールガスを吐出し、これにより隣合う雰囲気間を
シールする雰囲気炉の非接触式シール装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車産業のような金属二次加工
産業界では、加工対象金属板に対してより高い加工性と
強度との両立が要求されている。具体的に前記自動車産
業界では、昨今問題化されている地球環境問題から低燃
費化を追求するために車体を軽量化する必要から、プレ
ス加工焼付塗装鋼板等に対して従来の深絞り性を維持し
た上でより強度の高い薄鋼板が要求される。
【0003】このような金属板の評価指標としては、例
えば延性,深絞り性,時効性,強度,二次加工脆性,焼
付硬化性,スポット溶接性等が考えられる。そこで、前
記の深絞り性を特に重要視して,この深絞り性をランク
フォード値(以下r値:金属板幅歪み/板厚歪み)で評
価した場合、鋼中の炭素(以下Cと記す)量を低減する
ことが最も有利であることは公知であり、加えてこの低
炭素化により延性(Elongation:El)や常温遅時効性
(Aging Index :AIは一般に低い程良い)も向上す
る。ところが一方で、鋼中のC量が低下するに従ってそ
の他の評価指標は大方について劣化する。例えば、析出
物が減少して組織強度が低下するために引張強度(Tens
ile Strength:TS)が低下し、粒界強度が低下するた
めに二次加工脆性が劣化し、固溶C量が低下するために
焼付硬化性が劣化する。また、鋼中C量が50ppm以
下では,溶接による加熱で粒成長速度が促進されて,熱
影響部(Heat Affected Zone:HAZ)の粗粒化によっ
てスポット溶接性が劣化する。
【0004】そこで、図1に示すように極低炭素鋼から
なる金属帯を連続焼鈍処理によって再結晶焼鈍すること
により前記延性,深絞り性,時効性を得ながら、これに
続いて,連続浸炭処理によって表層部に固溶Cを存在さ
せることにより前記引張強度,二次加工脆性,BH性,
スポット溶接性を向上するために、本出願人は図2に示
すような特開平4−88126号公報に記載される連続
焼鈍浸炭設備を開発した。
【0005】この連続焼鈍浸炭設備によれば、加熱帯2
又は均熱帯3で金属帯に対して所定の再結晶焼鈍を行っ
た後、浸炭帯4で鋼板温度,雰囲気諸元,搬送速度(在
炉時間),及び第1及び第2冷却帯5,6で冷却条件を
制御した適切な浸炭処理を行うことにより、金属帯の材
質仕様を満足させながら表層浸炭深さと濃度分布を所望
の値とした金属帯を連続的に製造することを可能とす
る。この金属帯には、種々の材質仕様の鋼板を溶接等に
より一連に接続したストリップが用いられることが多
い。
【0006】ところで、前記浸炭帯に適用される浸炭炉
には,所要床面積を小さくするためにも,通板されるス
トリップが複数のパスを昇降する竪型連続ガス浸炭炉が
用いられる。この竪型連続ガス浸炭炉内を上下に折り返
されるように通板されるストリップSは,図2に示すよ
うにハースロール10を介して通板方向が変更される。
具体的にハースロール外周のほぼ半周にわたってストリ
ップを巻回すれば180°の方向変換が可能となる。
【0007】このハースロールは,その高温での使用条
件下における機械的強度を向上するためにクロムCr合
金を使用することが行われているが、このCr化合物を
含有するハースロールを,前記浸炭雰囲気ガス中に曝す
と、浸炭されて耐用寿命が低下することが明らかとなっ
てきた。そのために、このハースロールを,前記浸炭処
理を行う熱処理室とは個別のロール室内に区画し、通板
路の近傍の熱処理室とロール室との間には適宜のシール
装置を介装して,両室内を個別に雰囲気制御する必要が
ある。具体的には、浸炭熱処理室内の浸炭雰囲気に対し
て、ロール室内は,ハースロールへの浸炭を促進しない
程度の弱浸炭雰囲気か若しくは非浸炭雰囲気に制御しよ
うとするものである。従って、このシール装置は,その
目的から熱処理室内の浸炭雰囲気ガスがロール室内に侵
入するのを防止しなければならない。一方で,前記弱浸
炭雰囲気ガスや非浸炭雰囲気ガスが熱処理室内に侵入す
ると当該熱処理室内の浸炭雰囲気ガスに濃度組成分布が
生じて,浸炭量や浸炭濃度分布にムラが生じる虞れがあ
るため、この方向へのリークも防止しなければならな
い。
【0008】このようなシール装置のうち,接触式シー
ル装置の代表的なものとしてはピンチロール等の回転ロ
ールを直接ストリップに接触回転させるものがあるが、
このような接触式シール装置ではストリップ板面に疵が
ついたり,熱変形が生じる等の不具合がある。また、そ
のシール性も十分なものとはし難い。そこで、シールガ
スをストリップ板面に吐出し、当該板面との間に生じる
シールガスの静圧によって,区画される両雰囲気間をシ
ールする非接触式シール装置が提案され、その代表的な
ものとして特開昭62−270729号公報に記載され
るものがある。
【0009】この公報に記載される非接触式シール装置
は、通板される金属帯の表裏各面において,シールガス
を互いに向き合うように板面に対して金属帯の通板方向
斜めに吐出するスリット状の吐出ノズルを設け、この吐
出ノズル以外の部分を受圧面とし、且つ各板面側の吐出
ノズルの間隔を互いに異ならしめたものである。この非
接触式シール装置によれば、特に金属帯の板面から外れ
る箇所,即ち金属帯幅方向側方において,各板面側の吐
出ノズルから吐出されるシールガスが互いに衝突するこ
とがなく、従来,衝突に伴う反転によってシール装置か
らリークするシールガスの流れを抑制することができ
る。なお、区画される各雰囲気側の吐出ノズルには当該
近接する雰囲気の気体をシールガスとして用いることに
より、リークに伴う雰囲気の変化を抑制することも合わ
せて行われている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た非接触式シール装置によっても十分なシール性を得ら
れない場合もあり、未だ改善の余地がある。即ち、前記
の非接触式シール装置は、シール部に投入したシールガ
スの排出口を持たないため,シール部で混合したガスが
区画されたいずれかの雰囲気にリークする。その結果、
シール部近傍での当該雰囲気ガスは,このシール部で混
合したガスにより希釈されるか、若しくは雰囲気ガス濃
度が上昇することを回避できない。
【0011】また、単純に内向き対向に吐出されるシー
ルガスの流動エネルギーによってのみ区画される雰囲気
をシールする本非接触式シール装置にあっては、両雰囲
気間のリークを防止するために各板面に対向する吐出ノ
ズルの間隔を或る程度広く設定しなければならず(近す
ぎるとシールガス同士が衝突して乱流が生じ,シールガ
ス及びその近傍に流入した雰囲気ガスが他方の雰囲気中
に漏洩する)、このように広間隔の吐出ノズルから吐出
されるシールガスで板面との間に静圧を生じせしめるた
めには、当該シールガスの吐出量(供給投入量)を多く
しなければならず,無駄が多いばかりでなく、流量を多
くすると他方の雰囲気に漏洩するシールガス量が増加す
る。また、シール性向上のために吐出ノズルを金属帯板
面に近接して配設する必要がある。ところが、通板され
る金属帯は蛇行等に伴って板面が揺らぐことがあり、こ
のように揺らぎが発生すると前記板面に近接して配設さ
れた吐出ノズルに板面が当接して疵が発生するという問
題もある。
【0012】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、高いシール性を確保し、これにより吐出
ノズルを金属帯の板面から離間して揺らぎによる疵の発
生を回避することのできる雰囲気炉の非接触式シール装
置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本件発明者等は前記諸問
題を解決するために鋭意検討を重ねた結果,以下の知見
を得て本発明を開発した。即ち、このようなシールガス
による非接触式シール装置における気流を調査するうち
に,金属帯幅方向側方において循環する循環流が発生し
易いことが明らかとなった。従って、この循環流の発生
し易い当該金属帯の幅方向側方に設けられた側方排気口
から排気を行うことで、循環流の発生を防止し、当該循
環流に伴うリークを抑制することが可能となる。一方、
吐出ノズルから吐出されるシールガスやその近傍の気体
を排気ノズルから積極的に排気することで、区画された
雰囲気のリークを抑制することもできる。そこで、前記
側方排気口を設け且つこれらのノズルを組合わせたもの
をユニット化し、このユニットを板面に沿って積層し、
シールガスの吐出及び排気を適切に組み合わせるころで
より高いシール性を実現することができることを見出し
た。また、前記シール装置中に生じる循環流を積極的に
防止するために,前記側方排気口は吐出ノズルに近接さ
せるほうがよい。なお、各ユニットにおけるシールガス
の吐出及び排気の量(流量),方向,組成及び濃度等は
条件に応じて適宜に選定する。
【0014】而して本発明のうち,請求項1に係る雰囲
気炉の非接触式シール装置は、通板される金属帯回りの
雰囲気を制御する雰囲気炉にあって,当該雰囲気を区画
し、区画された各雰囲気を個別に制御するために,少な
くとも当該金属帯に向けてシールガスを吐出して隣合う
雰囲気間をシールする雰囲気炉の非接触式シール装置に
おいて、前記シールガスを前記金属帯の板面と垂直な成
分を有する方向に向けて吐出するか,若しくは前記シー
ルガス又はその近傍の気体を前記金属帯の板面と垂直な
成分を有する方向に向けて排出するために金属帯板面に
対向する複数のノズルを備え、且つ前記金属帯の幅方向
側方で,当該金属帯の板面と水平な成分を有する方向に
前記シールガス若しくはその近傍の気体を排出する側方
排気口を備えたシールユニットから構成されることを特
徴とするものである。
【0015】本発明のうち,請求項2に係る雰囲気炉の
非接触式シール装置は、前記シールユニットを,金属帯
の板面に沿って一層以上積層し、ノズルからのシールガ
スの吐出と、ノズルからのシールガス若しくはその近傍
の気体の排出とが同時に行われるようにこれらのシール
ユニットを配設したことを特徴とするものである。本発
明のうち,請求項3に係る雰囲気炉の非接触式シール装
置は、前記側方排気口を,前記シールガスを吐出するノ
ズルの近傍に配設したことを特徴とするものである。
【0016】
【作用】本発明の雰囲気炉の非接触式シール装置では、
前記シールガスを前記金属帯の板面と垂直な成分を有す
る方向に向けて吐出するか若しくは前記シールガス又は
その近傍の気体を板面と垂直な成分を有する方向に向け
て排出するために金属帯板面に対向する複数のノズルを
備え、且つ前記金属帯の幅方向側方で,当該金属帯の板
面と水平な成分を有する方向に前記シールガス若しくは
その近傍の気体を排出する側方排気口を備えたシールユ
ニットを一層以上積層し、各ノズルからのシールガスの
吐出と,各ノズルからのシールガス若しくはその近傍の
気体の排出とを同時に行うこととしたため、例えば隣合
うノズルから吐出されるシールガスの流れを互いに向き
合うように金属帯の通板方向斜めとし、このうち,何れ
か一方のノズルからのシールガスの流量を他方のそれよ
りも相対的に大きくすることで板の移動に随伴するガス
の流れを止め(流れの向きを変え)ると共に,シールガ
スの流れの方向を確保し、一方、この流れの先方のノズ
ルから排気を行って当該シールガスの流れ,若しくはそ
の近傍に流入した雰囲気気体を排出すれば、区画された
雰囲気間のリークを抑制することができ、またこれと同
時に前記側方排気口から排気を行うことで,金属帯幅方
向側方でシールガスの循環流の発生を防止し、これに伴
って雰囲気間のリークを抑制してシール性を向上するこ
とができる。また、前記側方排気口を吐出ノズルの近傍
に配設することにより、前記シールガスの循環流を積極
的に防止することができ、より一層シール性を向上する
ことができる。
【0017】
【実施例】図2は本発明の雰囲気炉の非接触式シール装
置を用いた,極低炭素鋼からなるストリップの連続焼鈍
浸炭設備の一例を示すものである。同図において所望さ
れる仕様諸元の異なる鋼板をも含む各極低炭素鋼板は、
コイル巻戻し機,溶接機,洗浄機等を有する図示しない
入側設備によって一連のストリップとなされ、このスト
リップSは、前記入側設備から予熱帯1、加熱帯2、均
熱帯3、浸炭帯4、第1冷却帯5、第2冷却帯6、剪断
機,巻取り機等の図示しない出側設備の順に通板され
る。
【0018】前記加熱帯2は、入側設備から連続的に送
給されて予熱帯1で予熱されたストリップSを再結晶温
度以上まで加熱するものであり、具体的には炉内温度が
850〜1000℃でストリップSの温度が700〜9
50℃になるように当該ストリップを加熱する。この加
熱帯2及び均熱帯3内を,ハースロールを介して上下に
昇降しながら通板されるストリップの通板路近傍には,
図示されない多数のラジアントチューブが配設されてお
り、このラジアントチューブに送給される燃料ガスを燃
焼させて炉内温度(炉温)を制御する。
【0019】前記浸炭帯4は、該浸炭帯4内の浸炭炉を
図示されないホストコンピュータにより700〜950
℃の炉内温度(炉温)に制御して,ストリップ温度(板
温)が700℃以上,好ましくは再結晶温度以下となる
ようにし、またストリップが浸炭炉内を10〜120秒
で通過するように通板速度が制御される。ちなみに前記
炉温制御は、浸炭量(浸炭反応速度)をストリップの通
板方向に対して一定とし、材質上のバラツキを抑止する
ために行う。
【0020】この浸炭帯4に使用される連続ガス浸炭炉
の詳細を図3に示す。同図に示すように均熱帯3から送
給されたストリップSは一旦,炉内を上昇し、更に下降
し、再び上昇し,再び下降してから前記第1冷却帯5に
向けて送出される。従って、本実施例の連続ガス浸炭炉
は4つのパスを有することになり、夫々,通板される順
に第1パス〜第4パスと記す。各パス間のストリップS
の通板方向の変換は、ハースロール10によって行わ
れ、故に浸炭炉の上方には2つ,下方には3つのハース
ロール10が,夫々,その軸線をストリップSの通板方
向と直交するように配設されている。
【0021】これらのハースロール10は、その高温下
での強度及び耐磨耗性向上のために,クロムCr合金が
使用されており、また,その回転性及びロールクラウン
を所定状態に保持するために,例えば軸受近傍等が冷却
されているが、それ故に,耐用寿命が低下する問題が発
生しており、それは凡そ以下のような原因による。例え
ば、前記浸炭雰囲気ガスがハースロール近傍まで及ぶと
冷却されてスーティングが進行するため、ハースロール
にCが付着した後、ハースロール内部にCが拡散する。
このようになると前記CrとCが結合してCr炭化物が
析出し、これによりハースロールに用いられている耐熱
合金の結晶粒が破壊され或いは膨張し、一方で固溶Cr
が減少するため、ハースロールが脆化,酸化されること
により孔状の腐食が進行する。このようにハースロール
を浸炭雰囲気ガス中に曝すと、本件発明者等の実験によ
れば1年以内でハースロールを交換しなければならない
ことが判明している。
【0022】そこで本実施例では、ハースロール室12
を非接触のシール装置11によって浸炭雰囲気から分離
してハースロール10の劣化を防止するようにし、また
該ハースロール室12内を前記ハースロール10の劣化
が進行しない程度の弱浸炭状態とすることによって、分
離されたハースロール室12内をストリップSが通過す
る間に浸炭された表層部からCが放散する,所謂脱炭を
防止することに成功した。なお、ストリップSがハース
ロール室12を通過する時間が極めて短く,当該時間に
係る鋼板表層部からの脱炭が問題とならない場合には、
前記ハースロール室12内を非浸炭雰囲気としてもよ
い。
【0023】前記非接触式シール装置11は、例えばハ
ースロール室12と浸炭雰囲気室(熱処理室)13との
間に介装されたシール層をユニット化されたシールユニ
ット14a〜14cの3層構造とし、このうちハースロ
ール室12側のシールユニット14aには前記弱浸炭雰
囲気ガスをシールガスとして噴出し、浸炭雰囲気室側の
シールユニット14cには前記浸炭雰囲気ガスをシール
ガスとして噴出し、中間のシールユニット14bからは
排気を行うようにし、更に各シールガスの噴射方向及び
噴射流量を制御して各シールガスの流れが前記中間のシ
ール層側に向かうようにすると共に、ストリップの通板
に伴う板層流によって発生する循環流をシール層のうち
ストリップの幅方向端面に形成された側方排出口17か
ら排気する構成とした。これらの具体的構成要件は本発
明の骨子となるから、後段に詳述する。
【0024】また、各パスを通板されるストリップSの
近傍には多数のラジアントチューブ15が配設されてい
る。このラジアントチューブ15は、内部に送給される
燃焼ガスを燃焼させることにより,当該チューブ表面か
らの輻射熱によって浸炭炉内の温度を制御(主に加熱及
び均熱制御)するものであり、その制御量は,前記加熱
帯2や均熱帯3と同様に燃焼ガスの送給量によってコン
トロールされ、これも前記図示されないホストコンピュ
ータにより制御ロジックに従って重要に管理されてい
る。また、工業的連続浸炭操業では,限られた有効浸炭
長(浸炭時間)で所望する金属帯仕様諸元を安定して達
成するために、浸炭炉内,特に前記熱処理室内における
浸炭雰囲気ガス組成,ガス組成濃度,浸炭温度等の雰囲
気の均一化が不可欠である。
【0025】この浸炭帯4から送出されたストリップS
は前記第1冷却帯5に送給される。この第1冷却帯5で
はストリップの表層部のうち表面の極薄い範囲にのみ固
溶Cを固定するため、浸炭後のストリップを、鋼板温度
が600℃以下,好ましくは500〜400℃程度にな
るまで20℃/sec.以上の冷却速度で急冷する。この第
1冷却帯5内ではこの冷却条件が達成できるように,前
記ホストコンピュータにより冷却帯内を搬送されるスト
リップに対して冷却ガスジェットから吹付けられる吹付
けられる冷却ガス流量,流速及び冷却ロールの温度,巻
付け角等が制御される。
【0026】前記第1冷却帯5から送出されたストリッ
プSは次いで第2冷却帯6に送給される。この第2冷却
帯6では鋼板温度が250〜200℃程度までガス冷却
が行われる。このようにして最終的には表層部にのみ固
溶Cが存在する極低炭素のプレス成形用冷延鋼板を得る
ことができる。次に前記した非接触式シール装置に要求
される各構成要件について,実際に行われた実験に基づ
いて説明する。
【0027】まず、本実施例の非接触式シール装置は,
そのシール性を高めることは勿論、以下のような目的を
達成すべく開発された。前述のように前記熱処理室内の
浸炭雰囲気ガスがハースロール室内にリークすると,ハ
ースロールの損傷が発生する。一方、ハースロール室内
の弱浸炭雰囲気ガス或いは非浸炭雰囲気ガスが熱処理室
内にリークすると,浸炭雰囲気に濃度分布が発生して、
浸炭量が板幅方向又は通板方向にバラついてしまう。こ
の現象は、前記のような工業的連続浸炭操業を行う場合
には一層顕著となる。従って、この非接触式シール装置
は,区画される両雰囲気間で相互の雰囲気ガスのリーク
を可及的に抑制する必要がある。また、ストリップは蛇
行等に伴ってその板面が揺らぐことがあり、この板面の
揺らぎによって当該板面がシールガスの吐出ノズルや排
気ノズルに接触すると,疵が発生する虞れがある。この
ため、少なくとも各ノズルはストリップ板面からできる
だけ離間する必要がある。更に、浸炭帯の有効浸炭炉長
をできるだけ長くするために,各シール長は所定の範囲
内に集約する必要がある。
【0028】そこで本実施例では図4に示すように,各
板面に対向するノズル16a,16bを複数備え,且つ
ストリップSの幅方向側方に側方排気口17を設けてシ
ールユニット14a〜14cを構成し、このシールユニ
ット14a〜14cをストリップSの板面に沿って一以
上積層して,各ノズル16a,16bからのシールガス
の吐出と,各ノズル16a,16bのよるシールガス及
びその近傍の気体の排出が同時に行われるようにし、以
下のパラメータを変更して,図に示すA室とB室内の雰
囲気間のシール性について検討を行った。
【0029】具体的には各シールユニット14a〜14
cには、ストリップSを挟んで対向し且つストリップS
の幅方向に延びるスリット状のノズル16a,16b
を,ストリップSの板面に沿って二つずつ並設する。便
宜上、夫々のシールユニット14a〜14cにおけるA
室側のノズルをノズル16aと記し,B室側のノズルを
ノズル16bと記す。また、これらのノズル16a,1
6bは、夫々個別に,適宜選定されたシールガスを投入
して吐出したり、シールガスや近傍の気体を吸引して排
気したりできるようにした。更に吐出ノズルのシールガ
ス吐出角度は,夫々,ユニット内で隣合うノズルが対向
する方向に変化させることができるようにした。また、
各ユニットの側方排気口17は,必要に応じて排気と遮
断と吐出とを切替え可能とした。また、A室内をハース
ロール室に見立ててその雰囲気を空気と同等とし、B室
内を熱処理室に見立てて窒素N2 とヘリウムHeの混合
気体を投入した。なお、シール性の評価方法は,各雰囲
気ガスの流動状態,各室内の酸素O2 濃度,シールガス
吐出流量(少ないほど良好とする),各室からの排気流
量(多いほど良好とする)を用い、各雰囲気ガスの流動
状態はストリップの通板をも加味して評価することとし
た。
【0030】次に、前記各パラメータのうち,各ノズル
毎のシールガス吐出/排気パターンについて説明する。
例えば,前記図3〜図4に示すようにシールユニットを
3層の積層構造とした場合、このシールガス吐出/排気
パターンは,図4においてストリップSを挟んで対向す
るノズル16a,16bからは吐出又は排気の何れかを
行うこととしても, 2Π6 =64通り、シールユニット
2層の場合16通り、シールユニット1層(単層)の場
合4通り考えられる。更に、側方排気口からの排気を行
うか否かもこれに加えられる。なお、各ノズル及び側方
排気口からのシールガスの吐出/排気状態については図
4を凡例として参照されたい。
【0031】前述したように図5に示す如くストリップ
Sの幅方向側方ではシールガスの循環流が発生するため
に、この循環流がシールガス若しくは雰囲気ガスのリー
クを誘発する虞れがある。そこで、前記各シールユニッ
ト14a〜14cに設けられた側方排気口17から排気
を行うが、この側方排気口からの排気量と排気ノズルか
らの排気量との比を変化させてシールガスのリークの低
減効果を実験した。
【0032】以上の実験結果から、前記シールガスの吐
出/排気パターンでは,次の二つのパターンにおいて良
好なシール性の効果を得た。 パターン1:A室側及びB室側のシールユニット14
a,14cの全てのノズル16a,16bからシールガ
スの吐出を行い、中央のシールユニット14bの全ての
ノズル16a,16bから排気を行い、A室側及びB室
側のシールユニット14a,14cの側方排気口17か
らのみ排気を行うもの。
【0033】パターン2:A室側のシールユニット14
aのうち,B室側のノズル16bからシールガスの吐出
を行い,A室側のノズル16aから排気を行い、B室側
のシールユニット14cのうち,A室側のノズル16a
からシールガスの吐出を行い,B室側のノズル16bか
ら排気を行い、中央のシールユニット14bの全てのノ
ズル16a,16bからシールガスの吐出を行い、中央
のシールユニット14bの側方排気口17からのみ排気
を行うもの。
【0034】これらのパターンのうち,前記パターン2
において図6のようなシールガスの吐出排気パターンを
構成し、吐出ノズルの近傍の側方排気口からの側方排気
がシール性に及ぼす影響を調査した結果を図7に示す。
この実験では,全ての排気をノズルのみから行った場合
(図中に○で表す)、全ての排気をシールユニット14
a,14b,14cの側方排気口のみから側方排気で行
った場合(図中に□で表す)、シールユニット14a,
14b,14cの側方排気口からの総排気量がノズルか
らの総排気量と等しくなるように排気を行った場合(図
中に△で表す)の3ケースについて各室内のO2 濃度を
検出した。なお、シールガスには全てN 2 ガスを用い、
シールガスの総投入量はaNl/min 一定で,シール部
からの総排気量(=ノズルからの排気量+側方排気口か
らの排気量)を変化させた。また、排気量は各ノズル間
で一定とし、各側方排気口間でも一定とした。
【0035】同図から明らかなように,各シールユニッ
トの側方排気口から側方排気を行った場合にシール性が
大幅に向上することが分かる。以上より、吐出ノズルと
排気ノズルとを組み合わせ且つ側方排気口を設けたシー
ルユニットを,一以上積層してシール装置を構成し、こ
のうち,吐出ノズル近傍の側方排気口から側方排気を行
うことによって高いシール性を確保することができる。
また、各シールユニットにおいて隣合うノズルから吐出
を行う場合には、互いのシールガスの吐出角度を対向す
るように斜めにし、更に区画される雰囲気側の吐出流量
を相対的に大きくすることでシールガスの気流を生じせ
しめ、この気流の先に排気ノズルを配設することで,シ
ール性が向上する。また、シール装置における総排気量
がシールガスの総投入量以上でなければ,この種の非接
触式シール装置は十分に機能しない。また、雰囲気に最
も近いノズルから当該雰囲気ガスをシールガスとして吐
出することによりシールと雰囲気間の循環流を抑え、そ
の雰囲気の変化を抑制することができる。
【0036】なお、本実施例では特に極低炭素鋼からな
るストリップを連続焼鈍・浸炭する場合についてのみ詳
述したが、本発明の雰囲気炉の非接触式シール装置は浸
炭炉に限らず、浸窒や浸硫を行う場合等の,あらゆる区
画された雰囲気間のシールに適用可能であることは言う
までもない。また、本発明のシール装置は竪型炉を例と
して説明したが、水平炉にも適用可能である。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明の雰囲気炉の
非接触式シール装置によれば、金属帯各板面に対向する
複数のノズルを備えたシールユニットを一層以上積層
し、ノズルからのシールガスの吐出と,ノズルからのシ
ールガス若しくはその近傍の気体の排出とを同時に行う
こととしたため、区画された雰囲気間のリークを抑制す
ることができ、またこれと同時に各シールユニットに設
けられた側方排気口のうち,適切な側方排気口から排気
を行うことで,金属帯幅方向側方でシールガスの循環流
の発生を防止してシール性を向上することができる。ま
た、前記側方排気口を吐出ノズルの近傍に配設すること
により、前記シールガスの循環流を積極的に防止してよ
り一層シール性を向上することができる。従って、この
ように高いシール性を確保することのできる本発明の雰
囲気炉の非接触式シール装置では、例えば通板される金
属帯の板面とそれに対向するノズルとの間隔を広げて,
板面の揺らぎによる疵の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続焼鈍浸炭設備で行われる熱処理工程の概念
説明図である。
【図2】本発明の雰囲気炉の非接触式シール装置を用い
た連続焼鈍浸炭設備の一例を示す概略構成図である。
【図3】図2の連続焼鈍浸炭設備で使用される連続ガス
浸炭炉を示すものであり、(a)は縦断面正面図,
(b)は縦断面側面図である。
【図4】図3の浸炭炉に用いられた非接触式シール装置
の一例を示す概略構成図である。
【図5】図4の非接触式シール装置におけるストリップ
幅方向側方に発生する循環流と側方排気の説明図であ
る。
【図6】図4の非接触式シール装置において実験を行っ
たシールガス吐出/排気パターンの説明図である。
【図7】図4の非接触式シール装置において側方排気口
とノズルからのシールガスの排気流量比を変更してシー
ル性の実験を行った結果の説明図である。
【符号の説明】
1は予熱帯 2は加熱帯 3は均熱帯 4は浸炭帯 5は第1冷却帯 6は第2冷却帯 10はハースロール 11はシール装置 12はハースロール室 13は熱処理室 14a〜14cはシールユニット 15はラジアントチューブ 16a,16bはノズル 17は側方排気口 Sはストリップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 花園 宣昭 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (56)参考文献 特開 平5−125451(JP,A) 特開 平6−93342(JP,A) 特開 平3−68720(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 1/00,1/74,9/56 F27D 7/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 通板される金属帯回りの雰囲気を制御す
    る雰囲気炉にあって,当該雰囲気を区画し、区画された
    各雰囲気を個別に制御するために,少なくとも当該金属
    帯に向けてシールガスを吐出して隣合う雰囲気間をシー
    ルする雰囲気炉の非接触式シール装置において、前記シ
    ールガスを前記金属帯の板面と垂直な成分を有する方向
    に向けて吐出するか,若しくは前記シールガス又はその
    近傍の気体を前記金属帯の板面と垂直な成分を有する方
    向に向けて排出するために金属帯板面に対向する複数の
    ノズルを備え、且つ前記金属帯の幅方向側方で,当該金
    属帯の板面と水平な成分を有する方向に前記シールガス
    若しくはその近傍の気体を排出する側方排気口を備えた
    シールユニットから構成されることを特徴とする雰囲気
    炉の非接触式シール装置。
  2. 【請求項2】 前記シールユニットを,金属帯の板面に
    沿って一層以上積層し、ノズルからのシールガスの吐出
    と、ノズルからのシールガス若しくはその近傍の気体の
    排出とが同時に行われるようにこれらのシールユニット
    を配設したことを特徴とする請求項1に記載の雰囲気炉
    の非接触式シール装置。
  3. 【請求項3】 前記側方排気口を,前記シールガスを吐
    出するノズルの近傍に配設したことを特徴とする請求項
    1又は2に記載の雰囲気炉の非接触式シール装置。
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