JP2881608B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

自動変速機の制御装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動変速機の変速段を
選択されたレンジに応じて固定するホールドモードを備
え、かつ、油温上昇による耐久性の低下を防ぐための高
油温パターンを有する自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動変速機の変速パターンにホールドモ
ードを加え、選択されたレンジに応じて変速段を固定可
能としたものは従来から知られている。上記ホールドモ
ードへの移行はドライバーのボタン操作によって行わ
れ、それにより、ドライバーの意図に応じた手動変速機
並の変速操作が可能となる。この場合、例えば、ドライ
バーが高速走行中の3速と4速の間の変速を嫌えば、D
(ドライブ)レンジのホールドモードを選択することに
より変速段を3速に固定することができる。
【0003】また、自動変速機のトルクコンバータ作動
油は高速域で高温となる傾向がある。そこで、このよう
な油温の上昇による耐久性等の低下を防ぐために、油温
が一定以上に上昇した場合には主たる熱発生源であるト
ルクコンバータのスリップを少なくするよう、低速段領
域およびロックアップ領域を拡大した高油温パターンに
自動的に移行させるような制御を行うことがある。例え
ば特公昭48−217号公報に記載された車両用自動変
速機の自動変速制御装置では、高油温のときには低速段
領域を拡げる変速パターンに切り換えるようにしてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ように高油温時に自動的に高油温パターンに移行するよ
うにした場合には、特にホールドモードを有する自動変
速機の制御装置において、例えばDレンジのホールドモ
ード(3速固定)で、車速が例えば120Km/hの状
態からアクセルを戻してエンジンブレーキを効かせてい
る状態で、油温が上がって高油温パターンに入ってしま
うと、ドライバーの意志とは無関係に4速ロックアップ
となって減速度が急に落ちてしまい、エンジンブレーキ
の効き感すなわちエンブレ感が損なわれるといった不都
合が発生する。
【0005】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
であって、自動変速機付車両においてエンジンブレーキ
状態で走行中に高油温パターンに移行することによりエ
ンブレ感が損なわれるのを防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る自動変速機
の制御装置の構成は、図1に示すように、各種入力情報
に基づきホールドモードを含む予め定められた変速パタ
ーンに従って自動変速機の変速制御回路に変速制御信号
を出力する変速制御手段と、当該自動変速機の油温が所
定の高温となったときに前記変速パターンを通常よりも
低速段領域が拡大された所定の高油温パターンに変更す
る変速パターン変更手段を有する自動変速機の制御装置
において、ホールドモード走行時でエンジン負荷が所定
以下の状態では前記変速パターン変更手段による高油温
パターンへの変更を制限する高油温パターン制限手段を
備えたことを特徴とする。
【0007】前記高油温パターンは、ロックアップ領域
についても通常変速パターンよりも拡大されたものとす
ることができる。
【0008】また、上記高油温パターン制限手段は、ホ
ールドモード走行時でエンジン負荷が所定以下の状態で
あることに加え、さらに車速が所定以上であることを条
件として高油温パターンへの変更を制限するものとする
ことができる。
【0009】また、前記構成に加え、高油温パターンへ
の変更点となる温度よりも高温側の所定温度に達したと
きに前記変速パターン変更手段による制限を解除する制
限解除手段を設けることができる。
【0010】
【作用】変速制御手段は車速,エンジン負荷といった各
種入力情報に基づき予め定められた変速パターンに従っ
て自動変速機の変速制御回路に変速制御信号を出力し、
それによって自動変速機の変速制御が行われる。また、
当該自動変速機の油温が所定の高温となったときには、
変速パターン変更手段によって変速パターンが自動的に
高油温パターンに変更され、通常よりも低速段領域が拡
大されたパターンによって変速制御が行われる。しか
し、ホールドモード走行時であってエンジン負荷が所定
以下の状態では、高油温パターン制限手段によって高油
温パターンへの変更が制限され、それにより、シフトア
ップによるエンブレ感の急変が防止される。
【0011】上記作用は、低速段領域とともにロックア
ップ領域が拡大された高油温パターンを有する場合につ
いても同様である。
【0012】また、高油温パターン制限手段の作動条件
として、所定車速以上であることが追加されることによ
り、特に要求の大きい領域におけるホールドモード走行
時のエンブレ感の維持を効率的に行うことができる。
【0013】また、高油温パターンへの変更点となる温
度よりも高温側の所定温度に達したときに変速パターン
制限手段による制限を解除することにより、限界温度以
上では無条件に高油温パターンへ切り換えるようにでき
る。
【0014】
【実施例】以下、実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】図2は本発明の一実施例の全体システム図
である。この実施例において、エンジン1に連結された
自動変速機2は、トルクコンバータと補助変速装置とよ
りなる流体式自動変速機であって、その変速制御のため
の油圧制御回路3は、ロックアップ用電磁ソレノイド4
および1速−2速,2速−3速,3速−4速の各シフト
用電磁ソレノイド5,6,7を備えている。そして、こ
れら電磁ソレノイド4〜7を制御するコントロールユニ
ット8が設けられ、このコントロールユニット8には、
エンジン1のスロットルバルブ9に付設されたスロット
ルセンサ10からのスロットルバルブ開度信号と、自動
変速機2のトルクコンバータの出力軸に付設されたター
ビン回転数センサ11からのタービン回転数信号が入力
され、また、ドライバーの意志によってD(ドライ
ブ),S(スポーティー)およびL(ロー)のいずれか
のレンジとエコノミー,パワーおよびホールドのいずれ
かのモードを選択するパターンセレクトスイッチ12か
らのパターンセレクト信号が入力され、さらに、自動変
速機2の油温等が入力される。コントロールユニット8
は、これら入力信号に基づき、所定の変速パターンに従
って各シフト用電磁ソレノイド5〜7にシフト信号を出
力し、また、ロックアップ用電磁ソレノイド4にロック
アップ信号を出力する。
【0016】この実施例の変速パターンは、D,Sおよ
びLの3レンジで構成され、Dレンジについてはパワー
モード,エコノミーモードおよびホールドモードが、ま
た、SレンジとLレンジについてはパワー,エコノミー
共通の変速モードとホールドモードが変速マップとして
それぞれ設定されている。ここで、エコノミーモード
は、燃費を重視して高速段を比較的低車速側に設定した
ものであり、パワーモードは、出力を重視して高速段を
高車速側に設定したものである。また、ホールドモード
は、Dレンジでは3速、Sレンジでは2速、そしてLレ
ンジでは1速を基本として変速段を固定するものであ
る。また、この実施例では、自動変速機2の油温が高温
となったときの変速パターンとして高油温パターン(H
Tモード)がそれぞれのレンジについて設定されてい
る。
【0017】コントロールユニット8では、ドライバー
が選択した変速モードによって、それぞれの変速マップ
に基づいて車速(タービン回転数から演算)およびスロ
ットル開度(エンジン負荷に相当)に応じた変速段が決
定される。
【0018】図3は上記Dレンジにおけるエコノミーモ
ードの変速マップを、図4は同じくDレンジのホールド
モードの変速マップを、また、図5はDレンジのHTモ
ードの変速マップをそれぞれ示している。各変速マップ
は、横軸に車速を、また、縦軸にスロットルバルブ開度
をとって、シフトアップおよびシフトダウンの各変速ラ
インと、ロックアップ作動ラインおよびロックアップ解
除ラインをそれぞれ設定したものである。図3のエコノ
ミーモードの変速マップにおいて、右向矢印で例えば3
→4と記した実線はシフトアップライン(3→4の場合
は3速から4速へのシフトアップライン)を、また、左
向矢印を付して例えば3←4と記した破線はシフトダウ
ンライン(3←4の場合は4速から3速へのシフトダウ
ンライン)をそれぞれ示し、また、→3L/Uおよび→
4L/Uと記した一点鎖線は3速と4速のロックアップ
作動ラインをそれぞれ示し、3L/U←および4L/U
←と記した二点鎖線は3速と4速のロックアップ解除ラ
インをそれぞれ示す。また、図4のホールドモードの変
速マップでは、基本的には変速段が3速に固定される
が、発進性の確保やオーバーラン防止といった観点か
ら、低車速側には2速へシフトする領域が、また、高車
速側には4速にシフトする領域がそれぞれ設定されてい
る。また、図5のHTモードの変速マップは、図3のエ
コノミーモードに対し低速段領域が拡大され、かつ、各
段のロックアップ領域が低車速側にそれぞれ拡大された
ものが基本となっている。
【0019】ホールドモードへの切り換えは上記のよう
にドライバーの意志によって行われ、例えば、高速走行
中にDレンジのホールドモードが選択されると、例えば
車速120Km/hでは3速固定となる。
【0020】また、HTモードへの切り換えは、基本的
には油温(TATF)が所定の切換設定温度(TH2)を越
えた時に行われる。しかしながら、ホールドモードであ
って、車速(VSP)が設定車速(VHT)以上で、かつ、
スロットルバルブ開度がゼロ(アイドルスイッチ信号が
オン)であれば、切換設定温度(TH2)を越えてもHT
モードへの切り換えを行わない。なお、スロットルバル
ブ開度がゼロでなくなった時には、その時点から一定時
間後(5秒以内)にHTモードへの切り換えが行われ
る。また、油温(TATF)がさらに上昇して限界温度
(TH1、但し、TH1>TH2)を越えたときには、無条件
にHTモードへの切り換えを行う。
【0021】以上、Dレンジについて説明したが、この
実施例では同様の制御がSレンジおよびLレンジについ
ても行われる。
【0022】次に、この実施例の上記制御を図6のフロ
ーチャートで説明する。なお、S1〜S8は各ステップ
を示す。
【0023】スタートすると、まず、S1でホールドモ
ードかどうかを見る。
【0024】そして、S1でNO(ホールドモードでな
い)であれば、S2でTATF>TH2かどうかを見て、T
ATF>TH2であればS3でHTモードをオンとする。
【0025】また、S1でYES(ホールドモードであ
る)であれば、S4でTATF>TH1かどうかを判定す
る。そして、TATF>TH1であれば、やはりS3へ行っ
てHTモードをオンとする。
【0026】S4でNO(TATF≦TH1)であれば、S
5へ行ってTATF>TH2かどうかを判定する。そして、
ATF>TH2であれば、S6,S7でVSP≧VHTかどう
か、アイドルスイッチ信号がオンかどうかを順次判定
し、VSP≧VHTで、かつ、アイドルスイッチ信号がオン
であれば、S8へ行ってHTモードをオフとする。
【0027】また、S6,S7のいずれかでNO(VSP
<VHTあるいはアイドルスイッチ信号がオフ)のとき
は、S3へ行ってHTモードをオンとする。
【0028】S2でNO(TATF≦TH2)のとき、およ
びS5でNO(TATF≦TH2)のときは、S8でHTモ
ードをオフとする。
【0029】なお、上記実施例においてはスロットルバ
ルブ開度がゼロ(アイドルスイッチ信号がオン)の状態
でのみ高油温パターンへの切り換えを禁止するようにし
たが、高油温モードへの切り換え禁止をスロットルバル
ブ開度が所定開度以下の低負荷領域において実施するよ
うにすることもできる。
【0030】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されているの
で、自動変速機付車両においてエンジンブレーキ状態で
の走行時に高油温パターンへ移行することによってエン
ブレ感が損なわれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の全体構成図
【図2】本発明の一実施例の全体システム図
【図3】同実施例のDレンジにおけるエコノミーモード
の変速マップ
【図4】同実施例のDレンジにおけるホールドモードの
変速マップ
【図5】同実施例のDレンジにおけるHTモード(高油
温パターン)の変速マップ
【図6】同実施例の制御を実行するフローチャート
【符号の説明】
1 エンジン 2 自動変速機 3 油圧制御回路 4 ロックアップ用電磁ソレノイド 5 1速−2速シフト用電磁ソレノイド 6 2速−3速シフト用電磁ソレノイド 7 3速−4速シフト用電磁ソレノイド 8 コントロールユニット 9 スロットルバルブ 10 スロットルセンサ 11 タービン回転数センサ 12 パターンセレクトスイッチ

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 各種入力情報に基づきホールドモードを
    含む予め定められた変速パターンに従って自動変速機の
    変速制御回路に変速制御信号を出力する変速制御手段
    と、当該自動変速機の油温が所定の高温となったときに
    前記変速パターンを通常よりも低速段領域が拡大された
    所定の高油温パターンに変更する変速パターン変更手段
    を有する自動変速機の制御装置において、ホールドモー
    ド走行時でエンジン負荷が所定以下の状態では前記変速
    パターン変更手段による高油温パターンへの変更を制限
    する高油温パターン制限手段を備えたことを特徴とする
    自動変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 前記高油温パターンは、ロックアップ領
    域についても通常変速パターンよりも拡大されたものと
    された請求項1記載の自動変速機の制御装置。
  3. 【請求項3】 前記高油温パターン制限手段は、ホール
    ドモード走行時でエンジン負荷が所定以下の状態である
    ことに加え、さらに車速が所定以上であることを条件と
    して高油温パターンへの変更を制限するものとされた請
    求項1または2記載の自動変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 前記高油温パターンへの変更点となる温
    度よりも高温側の所定温度に達したときに前記変速パタ
    ーン制限手段による制限を解除する制限解除手段を設け
    た請求項1,2または3記載の自動変速機の制御装置。
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