JP2881183B2 - 導波路型電気光学素子およびその製造方法 - Google Patents

導波路型電気光学素子およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (発明の属する技術分野) 本発明は導波路型電気光学素子およびその製造方法、
さらに詳細には電気光学効果を有する光位相/強度変調
素子等の電気光学素子およびその製造方法に関する。
(従来技術および問題点) 電気光学効果は、光学媒体に電界を印加した場合に、
この媒体の屈折率が変化する現象であり、二次の光非線
形性に起因する線形電気光学効果(ポッケルス効果)
と、三次の光非線形性に起因する二次電気光学効果(カ
ー効果)とがある。実用的には、二次の非線形定数の方
が三次の非線形定数に比べて数桁も大きいため、二次の
非線形性を利用した電気光学効果が多く用いられてい
る。この効果を利用した電気光学素子は光集積回路に組
み入れられ、半導体レーザ等の高速外部変調に応用でき
るため、低電圧で駆動できる電気光学素子が強く求めら
れている状況にある。
従来より公知の無機材料系(リン酸二水素カリウム
(KH2PO4)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等)に比べ、
著しく高い電気光学(ポッケルス)定数と速い応答速度
を示す可能性のある有機結晶材料が見いだされてきてい
る。代表的な材料として、4−N,Nジエチルアミノ−4
−ニトロスチルベンや2−メチル−4−ニトロアニリン
(MNA)が最も良く知られている。電気光学効果の大き
さを評価する物理量としてf定数なるものが定義されて
いる(A.F.Garito and K.D.Singer:Las er Focus,2月
号、59頁、1982年)。MNAのf定数はニオブ酸リチウム
の約20倍も大きい。しかしながら、これらの有機結晶材
料は無機結晶のように電気光学素子を作製しようとして
も実用に供し得るような大きさの単結晶が得られにくい
上、脆く、加工性に劣るという欠点を有している。
これに対し、成形加工性に優れた高分子材料を活用し
ようという試みが行われている。これらは高分子材料中
に二次光非線形材料を溶解したもの、または二次光非線
形材料を直接またはスペーサー原子団を介して高分子主
鎖に結合したものである。これらの高分子材料は中心対
称構造を有するため二次光非線形性の発現はない。従っ
て、直流電圧印加等の手法で分極処理を行い、中心対称
性を解消することが必要である。よく知られた例として
はポリメチルメタクリレートにアゾ色素をドープしたも
の(K.D.Singerら、Journal of Optical Society of Am
erica,B4巻、968頁、1987年)がある。
高効率な光変調を行うためには、電気光学素子の駆動
電圧の低減化が必要不可欠である。公知の無機結晶で
は、適当な方位で結晶を切りだし、Tiイオン等を内部拡
散させ導波路とした上で、電極対を結晶表面に配置して
駆動しているが、ポッケルス定数が小さいために十分低
い電圧での素子の駆動には成功していない。
一方、前記高分子材料はスピンコート法等の手法で容
易に薄膜導波路化ができ、分極処理用に作製した電極対
を用いて光変調を行うことも可能である。しかしなが
ら、直流高電圧を用いた分極処理では放電を避けるため
に電極間隔を十分広くとるのが通例であり、このため分
極用電極を用いて素子動作を行わせようとすると、駆動
電圧が大きくなるという欠点があった。また、前記高分
子材料を加工してチャネル型導波路を作製するには、半
導体集積回路の作製プロセスと同様に、反応性イオンエ
ッチングを行うことが検討されているが、装置が高価で
ある点と、レジスト塗布や現像・剥離過程で高分子を溶
解する溶剤を使用する場合が多いために、レジストの選
択が難しいという欠点があった。
(発明の目的) 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、そ
の目的は大きな二次光非線形感受率を有する有機化合物
が溶解した、もしくは結合した高分子を分極処理した材
料において、導波路構造で低電圧駆動ができなかった点
を解決し、成形加工性に優れ、かつ大きな電気光学定数
を有する導波路型電気光学素子およびその製造方法を提
供することにある。
(問題点を解決するための手段) 上記問題点を解決するため、本発明による導波路型電
気光学素子では、多成分ガラス層を表面に持つシリコン
基板上に、金属もしくは金属酸化物からなる電極対を配
し、この電極対の中央の電極端を覆うように、βμ値が
500×10-48esu以上である二次光非線形感受率を有する
物質が溶解しているか、もしくは結合している高分子を
コロナ帯電により分極処理した材料からなるチャネル型
導波路、およびこの導波路の両側に、導波路よりも低屈
折率なクラッド層を配したことを特徴とする。
また本発明による導波路型電気光学素子の製造方法
は、シリコン基板上に多成分ガラス層を作製する工程、
多成分ガラス層上に電極対を作製する工程、電極対を有
する多成分ガラス上に、βμ値が500×10-48esu以上で
ある二次光非線形感受率を有する物質が溶解してるか、
もしくは結合している高分子を塗布して高分子薄膜を形
成する工程、該高分子薄膜に紫外光あるいは電子ビーム
あるいはイオンビームを照射することによりパターニン
グを行い、チャネル型導波路を作製する工程、チャネル
型導波路をコロナ帯電法によって分極処理する工程から
なることを特徴とする。
本発明をさらに詳しく説明する。
本発明による導波路型電気光学素子は、電極を有する
ガラス層の上に、ポッケルス効果を示す二次光非線形材
料の性能の指標であるβμ(β:分子二次非線形感受
率、μ:双極子モーメント)の値が、500×10-48esuよ
り大きな物質が溶解している、もしくは結合している高
分子材料からなる薄膜を作製する。
βμ値が500×10-48esuより小さい場合、本発明によ
る電気光学素子は有効に機能しない。この薄膜にマスク
を密着、もしくはレジストによりマスクを直接薄膜上に
形成させた後、重水素ランプ等の紫外光源あるいはより
高いエネルギの電子ビームやイオンビームで照射するこ
とで該高分子材料の化学構造変化を行い、チャネル型導
波路を作製する。その後、化学構造変化により導波路層
とクラッド層に分けられた該高分子薄膜にコロナ帯電法
により分極処理を施して、大きな二次光非線形性を化学
構造変化されていないチャネル型導波路層に付与するこ
とを特徴としている。この際に、電極を構成する金属の
種類によっては、この導波路の下に該高分子材料よりも
低屈折率な樹脂を塗布、もしくは酸化シリコン層をマグ
ネトロンスパッタ等で付けることが損失の低減という意
味で必要となる。
本発明はまた、上記導波路型電気光学素子の製造方法
を提供するものであり、シリコン基板上に多成分ガラス
層を作製する工程、多成分ガラス層を表面に持つシリコ
ン基板上に電極を作製する工程、電極を有する多成分ガ
ラス上にβμ値が、500×10-48esuより大きな二次光非
線形感受率を有する物質が溶解しているか、もしくは結
合している高分子を塗布して薄膜とする工程、該薄膜に
紫外光あるいは電子ビームあるいはイオンビームを照射
することによりパターニングを行い、チャネル型導波路
を作製する工程とパターニング後の該薄膜をコロナ帯電
法によって分極処理する工程からなることを特徴として
いる。
第1図(e)に示すように、本発明による導波路型電
気光学素子は、多成分ガラス2を表面に有するシリコン
基板1の上に、電極3を設けると共に、βμ値が500×1
0-48esuより大きな二次光非線形感受率を有する物質が
溶解しているか、もしくは結合している高分子材料から
なるチャネル型導波路6と、その両側にクラッド層7を
形成した構造になっている。そしてこの高分子チャネル
型導波路6はコロナ帯電法により分極処理される。
このような光導波路型電気光学素子を製造するには、
シリコン基板1に、マグネトロンスパッタ法でコーニン
グ7059ガラスのような多成分ガラス2を2から4μmの
厚さで付けた後(第1図(a)、この上に金属もしくは
金属酸化物で電極対3を付ける(第1図(b))。電極
対3を構成する金属もしくは金属酸化物は、特に種類を
限定しないが、蒸着法で作製される金、クロム、アルミ
ニウム等の金属や、透明電極として知られるITO(酸化
インジウム・錫)膜が一般に用いられる。金以外の金属
を電極に使用する場合には、金属による光吸収を最小限
にするため、工程2で示すように電極対3とチャネル型
導波路6とクラッド層7からなる導波路層の間に導波路
層よりも低屈折率な樹脂(例えばポリメチルメタクリレ
ート等)、もしくは酸化シリコンからなるバッファ層4
が必要である。前者はスピンコート法で、後者はマグネ
トロンスパッタ法で付けることができる(第1図
(c))。次に、電極対3もしくはバッファ層4の上
に、βμ値が500×10-48esuより大きな二次光非線形感
受率を有する物質が溶解しているか、もしくは結合して
いる高分子材料からなる1〜2μmの厚さの薄膜5をス
ピンコート法により形成する(第1図(d))。
この高分子薄膜5の上にマスクを密着させて重水素ラ
ンプ等の紫外光源で光照射することで該高分子材料の化
学構造変化を行い、構造変化を受けないチャネル型導波
路6と構造変化を受けて屈折率の低下したクラッド層7
とを作製する(第1図(e))。その後、化学構造変化
により導波路層6とクラッド層7に分けられた該高分子
薄膜に、コロナ帯電法により分極処理を施して、大きな
二次光非線形性を構造変化を受けていないチャネル型導
波路に付与する(第1図(f))。なお、電極対と上部
の導波路との位置関係については、詳細な静電場解析を
行った結果、電極対の中央端部の真下付近で電極面に垂
直方向の電界強度が特に大きくなる現象を見いだし、こ
の大きな電界強度を示す領域にチャネル型導波路6を配
することで、駆動電圧の低減が可能になる。
また、第1図(e)では該高分子薄膜の化学構造変化
は紫外光を用いて行われているが、この工程は電子ビー
ムやイオンビームを用いても行うことができる。この場
合にはマスク基板(石英ガラス等)が電子ビームやイオ
ンビームによる該高分子薄膜の直接照射を妨げるため、
該高分子薄膜上に電子線レジスト等でマスクを直接形成
する過程が、第1図(e)の前に必要である。
チャネル型導波路の分極処理にはコロナ帯電を利用し
た。コロナ帯電法自体は、自動車バンパーの表面改質や
乾式複写機に用いられている公知の技術であり、本発明
ではこれをチャネル型導波路薄膜の分極処理に応用し
た。
高効率な光変調を行うには、単一モード導波路とする
ことが望ましい。単一モード化により光パワーを狭い空
間に閉じ込めて大きな光非線形性を引き出し、低電圧駆
動が可能となる。この単一モード化には、基板上に薄膜
化した高分子材料層をエッチングしてパターニングを行
った後、適切な屈折率差を与える低屈折率材料をクラッ
ド層として付ける方法と、本発明のように、基板上の高
分子薄膜に紫外光あるいは電子ビームあるいはイオンビ
ームを照射して化学構造変化を行わせ、単一モード条件
を満たす屈折率を得る方法とがある。特に後者は、導波
路の境界面の乱れが前者に比べて小さいために低伝搬損
失を実現できる利点がある。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
(実施例1) コーニング7059ガラスをスパッタ法で付けたシリコン
基板上に、金電極対3を蒸着で付けた後、ポリメタクリ
レートにβμ値が約6000×10-48esuである4−N,Nジエ
チルアミノ−4−ニトロスチルベンを2.0%溶解した高
分子材料を、スピンコート法で塗布した。これにマスク
を重ねて重水素ランプで露光し、第2図に示したような
マッハツェンダー型干渉計のパターンを有したチャネル
型導波路6とクラッド層7を作製した。この導波路にコ
ロナ帯電による分極処理を施した後、波長1.3μmのレ
ーザ光を入射しながら電極間に変調信号を入力したとこ
ろ約30Vの駆動電圧で光変調ができることがわかった。
(実施例2) 次に示すような化合物(式I)を合成した。この化合
物は特願平1−2613号により既知の材料である。この化
合物のβμ値は約13000×10-48esuであった。これを第
2図に示す金電極3を付けたコーニング7059ガラス2上
に塗布した後、マスクを重ねて重水素ランプで光照射を
行い、マッハツェンダー型干渉計のパターンを有したチ
ャネル型導波路6とクラッド層7を作製した。この導波
路にコロナ帯電による分極処理を施した後、波長1.3μ
mのレーザ光を入射しながら電極間に変調信号を入力し
たところ約5Vの駆動電圧で光変調ができることがわかっ
た。
(実施例3) 実施例2と同様な条件により、ガラス上に式Iの高分
子を塗布した後、電子線レジストを用いて該高分子膜上
の所望の部分(本実施例では第2図に示すマッハツェン
ダー型干渉計のパターン部分)のみをマスクした。その
後、この高分子膜を真空チャンバ内に配置し、10-7Torr
程度の真空下手1kVの電子ビームをこの高分子膜に均一
に照射した。この結果、レジストのパターンがない部分
のみ該高分子膜は化学構造変化を起こし、実施例2と同
様なパターンを有したチャネル型導波路とクラッド層を
作製できた。この導波路にコロナ帯電による分極処理を
施した後、波長1.3μmのレーザ光を入射しながら電極
間に変調信号を入力したところ約5Vの駆動電圧で光変調
ができることがわかった。
(実施例4) アルミ電極を付けたコーニング7059ガラス上にPMMAか
らなるバッファ層を厚さ1μmになるように塗布した
後、実施例2と同様な条件により、式Iの化合物を該バ
ッファ層上に塗布した。その後、マスクを重ねて重水素
ランプで光照射を行い、マッハツェンダー型干渉計のパ
ターンを有したチャネル型導波路とクラッド層を作製し
た。この導波路にコロナ帯電による分極処理を施した
後、波長1.3μmのレーザ光を入射しながら電極間に変
調信号を入力したところ約7Vの駆動電圧で光変調ができ
ることがわかった。
(比較例1) 実施例1において4−N,Nジエチルアミノ−4−ニト
ロスチルベンに代わり、アミノビフェニルを2.0%溶解
した高分子材料を用いた他は、実施例1と同様な方法で
導波路作製と変調実験を行った。この高分子のβμは約
300×10-48esuであり、駆動電圧は100V以上と極めて大
きく、実用性に欠けていた。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明の導波路型電気光学素子
は成形加工が容易でコロナ帯電により容易に分極できる
高分子材料を用いているために、低い駆動電圧において
高効率に光変調ができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による光導波路型電気光学素子の具体例
の構成および製造工程を示す図、第2図は実施例の斜視
図である。 1……シリコン基板、2……多成分ガラス、3……電極
対、4……バッファ層、5……二次光非線形感受率を有
する物質が溶解もしくは結合している高分子材料、6…
…化学構造変化を受けない高分子からなるチャネル導波
路、7……化学構造変化を受けた高分子からなるクラッ
ド層。
フロントページの続き (72)発明者 戒能 俊邦 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G02F 1/01 G02F 1/313

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】多成分ガラス層を表面に持つシリコン基板
    上に、金属もしくは金属酸化物からなる電極対を配し、
    この電極対の中央の電極端を覆うように、βμ値が500
    ×10-48esu以上である二次光非線形感受率を有する物質
    が溶解しているか、もしくは結合している高分子をコロ
    ナ帯電により分極処理した材料からなるチャネル型導波
    路、およびこの導波路の両側に、導波路よりも低屈折率
    なクラッド層を配したことを特徴とする導波路型電気光
    学素子。
  2. 【請求項2】多成分ガラス層を表面に持つシリコン基板
    と、チャネル型導波路とクラッド層からなる導波路層の
    間に、該導波路層よりも低屈折率な樹脂層もしくは酸化
    シリコン層をバッファ層として配したことを特徴とする
    特許請求の範囲第1項記載の導波路型電気光学素子。
  3. 【請求項3】シリコン基板上に多成分ガラス層を作製す
    る工程、多成分ガラス層上に電極対を作製する工程、電
    極対を有する多成分ガラス上に、βμ値が500×10-48es
    u以上である二次光非線形感受率を有する物質が溶解し
    ているか、もしくは結合している高分子を塗布して高分
    子薄膜を形成する工程、該高分子薄膜に紫外光あるいは
    電子ビームあるいはイオンビームを照射することにより
    パターニングを行い、チャネル型導波路を作製する工
    程、チャネル型導波路をコロナ帯電法によって分極処理
    する工程からなることを特徴とする導波路型電気光学素
    子の製造方法。
  4. 【請求項4】前記多成分ガラス層上に電極対を作製する
    工程と、電極対を有する多成分ガラス上に高分子薄膜を
    形成する工程の間に高分子薄膜よりも低屈折率な樹脂も
    しくは酸化シリコンの薄膜を配する工程を含むことを特
    徴とする特許請求の範囲第3項記載の導波路型電気光学
    素子の製造方法。
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