JP2878585B2 - 筆記具の乾燥防止方法 - Google Patents

筆記具の乾燥防止方法

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JP2878585B2 JP6033655A JP3365594A JP2878585B2 JP 2878585 B2 JP2878585 B2 JP 2878585B2 JP 6033655 A JP6033655 A JP 6033655A JP 3365594 A JP3365594 A JP 3365594A JP 2878585 B2 JP2878585 B2 JP 2878585B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インキを含浸させた筆
記芯によって筆記するものでその筆記部の乾燥防止を図
った筆記具の乾燥防止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、マーカー、サインペン等のよ
うに多孔芯材による筆記芯にインキを浸透させて筆記す
るようにした筆記具が一般に販売使用されている。
【0003】上記筆記具は、油性インキの場合には、染
料を有機溶媒で溶解したインキをインキ吸蔵体に吸蔵
し、このインキ吸蔵体に筆記芯の一端部を挿入し、筆記
芯の他端部の筆記部にインキを浸透させて筆記できるよ
うにしたものである。
【0004】上記油性インキは、例えば、溶媒としてエ
タノール、ノルマル−プロピルアルコール、イソ−プロ
ピルアルコール、プロピレングリコール・モノメチルエ
ーテル、ベンジルアルコール等を筆記性能と筆記後のイ
ンキの乾きを配慮して組成を決め、これに所望の着色染
料を溶解するとともに、溶媒揮発後に被筆記体に染料を
固着するためのケトン樹脂を溶解することにより構成さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかして、上記筆記具
が長時間放置された場合には、未使用の筆記具であって
も筆記部が乾燥して筆記不良が発生する問題を有してい
る。
【0006】すなわち、上記のような筆記芯にインキを
浸透させる筆記具では、キャップの装着、密閉機構等の
採用によって筆記部からのインキ溶媒の揮発を抑制し、
筆記部の乾燥固化を防止するようにしているが、長時間
放置により密閉部分の僅かな隙間を通気して溶媒が揮発
し、前記筆記芯における先端筆記部の表面はインキ残分
が固化し、筆記かすれ等の筆記不良、あるいは筆記不能
となるものである。特に、前述のような油性インキの溶
媒は、揮発性の高い成分を含む混合有機溶媒であり、筆
記不良が早期に発生することになる。
【0007】また、キャップが緩んで密閉が完全でない
場合には、未使用での放置期間すなわち製造後から販売
されて実際に使用者によって使用されるまでの時間がそ
れほど経過していなくても、販売前の保管状態で筆記不
良が発生することになり、商品の信頼性を損なう問題を
有している。
【0008】一方、前記のような筆記具を、筆記芯の先
端筆記部を開放状態で放置した場合のように、筆記され
ずに揮発状態が持続されると、前述のように芯先端の露
出部表面よりインキ溶媒が揮発し、インキが乾燥固化す
る際に、インキの溶質染料が結晶質の染料である場合に
は、その結晶が析出し成長する恐れがある。具体的に
は、溶媒の揮発条件あるいは放置される環境条件にもよ
るが、溶媒の揮発とともに染料は結晶状態で筆記芯の筆
記部表面に析出し、芯の内部よりインキが表面に順次供
給されると、その表面に析出した結晶は成長し、結晶で
筆記部表面が覆われて筆記不可能な状態となる。また、
油性インキ中の染料が非晶質の場合は、結晶析出は見ら
れないが、前述のように筆記芯の先端表面は溶媒揮発と
とともに乾燥固化し、筆記不良が発生するものである。
【0009】そして、上記のような筆記部からのインキ
の揮発を抑制するために、密閉性の高いキャップを装着
したり、筆記芯が出没作動するノック式のものでは出没
孔を閉塞する起伏自在な蓋部材を配設するなどの乾燥防
止機能を高めても、完全な密閉状態を得ることは困難
で、また、キャップを構成する樹脂の種類によってはイ
ンキ溶媒中の成分が透過する場合もあり、長期間の乾燥
防止を行うにはコストの上昇を招くものである。
【0010】そこで本発明は上記事情に鑑み、筆記具を
製造後、最初に筆記されるまでの期間における筆記部か
らのインキ溶媒の揮発を効果的に抑制して未使用状態で
の筆記不良が発生するのを長期間にわたって防止し得る
ようにした筆記具の乾燥防止方法を提供することを目的
とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の筆記具の乾燥防止方法は、多孔芯材による筆記
芯の一端部を、溶媒に染料を溶解してなるインキを吸蔵
したインキ吸蔵体に挿入し、他端部を筆記部に形成し、
この筆記芯の筆記部に高沸点溶媒を予め塗布または含浸
させておくことを特徴とするものである。
【0012】また、前記高沸点溶媒は、インキ中の複数
成分の溶媒のうち沸点の高いものを1種または複数種混
合して使用するのが好適であり、例えば、ベンジルアル
コールを使用するものである。
【0013】そして、上記高沸点溶媒は多孔芯材による
筆記芯の先端筆記部に含浸させるか、または、筆記部表
面に塗布した筆記芯を用意し、この筆記芯を用いて筆記
具に組み立てインキを浸透させるか、無処理の筆記芯を
用いて筆記具を組み立ててインキが浸透している状態で
前記と同様に、筆記芯の筆記部に前記高沸点溶媒を含浸
もしくは塗布して、その筆記部の露出面の表面部分を覆
うように高沸点溶媒の含有比率を高めるものである。
【0014】一方、前記インキの染料は、非晶質染料を
主成分として構成するのが好適である。この染料が非晶
質か結晶質かは、X線回折スペクトル等によって容易に
判定可能である。
【0015】
【作用】上記のような筆記具の乾燥防止方法では、筆記
芯の先端筆記部に高沸点溶媒を塗布または含浸したこと
により、筆記芯の内部にインキ吸蔵体からのインキが浸
透しても、その筆記部の表面には高沸点溶媒が高い濃度
で介在しているものであり、この高沸点溶媒は揮発速度
が遅く、内部に浸透しているインキの溶媒の筆記部表面
に滲出するのを阻止し、インキ成分の揮発による乾燥固
化を遅延することで、溶媒揮発に伴う筆記不良の発生を
長期間にわたって防止する。特に、完全な密閉状態が得
られていなくても未使用状態での乾燥による筆記不良の
発生を未然に回避して信頼性を高めることができ、高精
度の密閉構造を不要としてコストの低減化が得られる。
【0016】また、筆記開始時には、上記高沸点溶媒が
最初に導出されて筆記されるものであるが、それが終了
するのに続いて油性インキによる筆記が開始されること
になり、実際の筆記における商品性が低下することはな
い。
【0017】一方、非晶質の染料を溶解したインキを使
用した場合には、前記高沸点溶媒が揮発もしくは筆記に
よって消失した後においても、インキ溶媒の揮発に伴っ
て染料の結晶が筆記部に析出成長することがなく、筆記
不良が発生しにくくなっている。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。図1は本
発明方法の一実施例を適用する筆記具としてノック式で
キャップレスの油性マーカーペンの格納状態における全
体構成を示す断面図、図2はその筆記可能状態の先端部
の要部断面図、図2の先端部分のバレル軸の断面は図1
の断面に対して90°切断位置が回転している。
【0019】ノック式筆記具1は、筒状のバレル軸2の
内部にインキタンク3が摺動自在に嵌挿されている。こ
のインキタンク3の先端部にはパイプ部4が一体に連接
され、このパイプ部4にアクリル繊維、ポリエステル繊
維等の多孔芯材による筆記芯6が挿入され、その先端部
が所定のペン先端部形状に成形されて筆記部6aに設けら
れている。
【0020】上記インキタンク3は後端が開放した筒状
に形成され、その後端部分には筒状のバックプラグ5が
嵌合されて閉塞される。該バックプラグ5の後端部分は
前記バレル軸2の後端開口から突出しており、全体とし
てバレル軸2内を軸方向に移動可能である。なお、上記
インキタンク3とバックプラグ5との間には、後述のク
リップ8のリング部8aが回転可能に介装されている。
【0021】また、上記インキタンク3からバックプラ
グ5の内部には、繊維部材で棒状に形成されたインキ吸
蔵体7(中綿)が挿入され、このインキ吸蔵体7に後述
の油性インキが吸蔵保持される。
【0022】一方、前記パイプ部4の内部に嵌挿された
筆記芯6は、その基端部がパイプ部4からインキタンク
3内に突出して前記インキ吸蔵体7に接して吸蔵インキ
が供給される。また、筆記芯6のパイプ部4の開口先端
から所定量突出した先端の筆記部6aは、バレル軸2の先
端開口部2aから突出可能に設けられている。
【0023】前記インキタンク3に回動自在に設けられ
たクリップ8は、バレル軸2のスリット状の縦溝11に挿
入され、この縦溝11の形状によって突出位置に係合可能
で、クリップ8を回転方向に押して係合を外して格納状
態に移動可能である。
【0024】また、前記インキタンク3の先端部には、
パイプ部4の外周にスライドリング13が配設され、さら
に前方のバレル軸2内にはシリンダ状のシールキャップ
14が配設されている。このシールキャップ14の貫通内孔
14a には、前記パイプ部4と筆記芯6の先端筆記部6aが
摺動自在に挿入され、外周部分はバレル軸2の内周面に
固定されている。
【0025】上記シールキャップ14には蓋部材15が起伏
可能に一体成形され、該蓋部材15によって前記内孔14a
の先端開口部が開閉される。この蓋部材15にはプルスレ
ッド16の中間部が係合され、該プルスレッド16の両端は
前記スライドリング13に連結されている。そして、上記
スライドリング13とシールキャップ14との間には、シー
ルスプリング17が縮装され、インキタンク3を後退方向
に付勢している。
【0026】上記構造の筆記具1は、図1の格納状態で
は、インキタンク3はシールスプリング17によって後退
し、筆記部6aはシールキャップ14内部に没入している。
この状態ではスライドリング13はインキタンク3と一体
に後退し、プルスレッド16を引っ張ってシールキャップ
14の蓋部材15を閉じて筆記部6aを密閉している。
【0027】上記格納状態からバックプラグ5の端部を
バレル軸2内に押し込むようにノック操作すると、イン
キタンク3が前方に移動してプルスレッド16は弛まり、
蓋部材15を開いて筆記部6aは前方に移動し、先端開口部
2aより突出して筆記可能状態となる。
【0028】次に、前記インキ吸蔵体7に吸蔵させる油
性インキとしては、染料を溶解する溶媒が、エタノー
ル、ノルマル−プロピルアルコール、イソ−プロピルア
ルコール、プロピレングリコール・モノメチルエーテ
ル、ベンジルアルコール等を選択的に配合した混合溶媒
で構成される。その配合組成は、筆記性能と筆記後のイ
ンキの乾きを配慮して決定される。また、上記混合溶媒
に、所望の着色染料を溶解するとともに、溶媒揮発後に
筆記面に染料を固着するためのケトン樹脂が溶解されて
いる。油性インキの2種類の配合例を次に示す。
【0029】配合例1 エタノール…39.1%、メチルセロソルブ…43.9%、n−
プロパノール…6.0 %、ベンジルアルコール…3.5 %、
シクロヘキサン…0.6 %、染料…7.1 % 配合例2 エタノール…39.3%、メチルセロソルブ…43.9%、n−
プロパノール…6.1 %、ベンジルアルコール…3.5 %、
染料…7.2 % また、前記筆記芯6の筆記部6aに、高沸点溶媒を予め塗
布または含浸させておくものである。この高沸点溶媒
は、油性インキに用いられる前記混合溶媒のうち沸点の
高いもの単体あるいは複数種を混合したものを使用す
る。
【0030】ここに、前記各種溶媒の沸点を、表1に示
す。
【0031】
【表1】
【0032】そして、最も沸点の高いベンジルアルコー
ルもしくはこれとプロピレングリコール・モノメチルエ
ーテルを混合させた高沸点溶媒を、予め前記筆記芯6の
先端筆記部6aに含浸させるか、または、筆記部6aの表面
に塗布し、その筆記部6aの露出面の表面部分を覆うよう
に高沸点溶媒の含有比率を高めるものである。上記筆記
芯6への高沸点溶媒の塗布または含浸は、該筆記心6を
インキタンク3に組み込みインキ吸蔵前の状態で行う。
【0033】上記処理の後、インキ吸蔵体7に前記油性
インキを吸蔵させ、筆記芯6の先端の筆記部6aにインキ
が浸透した状態では、その表面部分には前記油性インキ
が滲み出すが、沸点が高く揮発性の低い前記高沸点溶媒
(ベンジルアルコール)の濃度が高く存在している。
【0034】なお、前記筆記芯6に高沸点溶媒を塗布も
しくは含浸させる時期は、筆記芯6をインキタンク3に
組み込む前、組み込んでインキを吸蔵する前、筆記具1
を組み立てインキを吸蔵した後のいずれの時期において
行ってもよく、製品として出荷する時点でその筆記部6a
の少なくとも表面部分を覆うように高沸点溶媒が高濃度
に存在していればよいものである。
【0035】また、筆記部6aに塗布もしくは含浸させる
高沸点溶媒としては、前述のようなインキ吸蔵体7に吸
蔵させる油性インキに含有されている混合溶媒のうち、
沸点の高い溶媒を1つもしくは複数種を混合して使用す
るようにしているが、使用するインキに含有されていな
くても、油性インキ中の溶媒と同様の特性を有する高沸
点の溶媒が乾燥防止用にのみ使用可能である。
【0036】一方、前記筆記芯6に含浸される油性イン
キの染料は、非結晶質染料で構成されている。マーカ
ー、サインペン等の筆記具に使用するインキ用染料に
は、非結晶状態の染料のほか、結晶状態の染料がある。
【0037】上記結晶状染料を溶媒に溶解してインキと
した場合、このインキは溶媒が揮発すると、その溶媒の
揮発条件と放置される環境条件にもよるが、染料が結晶
状態となって筆記部6aの表面に析出し、その表面への内
部からのインクの滲み出しを阻害して筆記不能となる。
上記点において、非結晶質染料を使用すると溶媒の揮発
によっても筆記部6aの表面での結晶の析出を生じること
なく、筆記可能状態が維持されることになるが、インキ
染料が非晶質か結晶質かの判定は、X線回折スペクトル
等によって行う。
【0038】すなわち、実際に使用される染料は各色で
材料が種々異なり、複雑な分子構造をとるものが多く内
容を推定するのが実質的に困難であるが、例えば、その
染料をX線回折によってスペクトル図を測定すると、結
晶質のものでは大きなピーク点が多数発生するので、結
晶質か非晶質かの判定は容易である。
【0039】図3にX線回折スペクトル図の例を示し、
同図(A) 〜(D) の染料赤−1と染料赤−2および染料黄
−1と染料黄−2の測定において、図3(A) および(C)
の染料赤−1と染料黄−1はいずれもそのスペクトル図
に結晶構造を示すピークが多数見られた。一方、図3
(B) および(D) の染料赤−2および染料黄−2のスペク
トル図では、結晶構造を示すピークは見られず、非晶質
状態を示しているものであり、このような特性を有する
染料を使用するものである。
【0040】また、上記X線回折の他の方法によっても
結晶質の判定が行える。上記結晶状態の判別に基づき、
非晶質の染料の中から必要とする染料を選定使用して、
所望の色の油性インキを構成して前記インキ吸蔵体7に
吸蔵させるものである。
【0041】次に、上記実施例のような本発明筆記具の
乾燥防止方法について、乾燥防止効果すなわち放置後の
筆記可能性(乾燥固化状態)を測定した結果を比較例と
共に図4に示す。その比較例は、同一構造、同一油性イ
ンキによる筆記具であって、その筆記部6aに高沸点溶媒
を含浸させていない無処理のものである。
【0042】その測定は、筆記芯6の筆記部6aを気中に
露出して開放状態としたまま放置し、筆記性能、すなわ
ち、かすれが発生するか筆記不能となる時期を求めたも
のである。使用した油性インキの染料は、後述のインキ
No.6で、前記非晶質染料の赤−2と非晶質染料の黄−
2を混合してなる油性インキを用いた筆記具で試験を行
っている。環境条件は、室温で、相対湿度が25%RHであ
る。
【0043】無処理のものでは、油性インキの溶媒の揮
発に伴って短時間で筆記部が乾燥固化して、1時間以内
で筆記がかすれ出し、6時間程度で筆記不能となった。
これに対して、筆記部6aに高沸点溶媒(ベンジルアルコ
ール)の含浸処理を行ったものでは、24時間の開放放置
後においても乾燥固化が発生することなく筆記可能な状
態が維持され、かすれ、筆記不能状態の発生を防止して
良好な筆記性能が得られた。また、環境条件の相対湿度
を80%RHに高めても略同様の結果が得られた。
【0044】また、前記結晶質の染料と非晶質の染料と
を用いて油性インキを作成し、前記実施例構造の油性マ
ーカーペンに吸蔵させ、筆記部を露出状態として開放
し、環境条件を変えて気中に放置すると、それぞれの条
件により結晶析出あるいは乾燥固化の状態が変わってく
る。この試験結果を図5ないし図7に示す。なお、この
図5ないし図7の試験には、前記のような高沸点溶媒に
よる乾燥防止処理は施していないものである。
【0045】温度条件は室温と50℃に変え、湿度条件は
室温では常湿と飽和湿度とに変え、50℃では相対湿度が
25%RHと80%RHとに変化させたものであり、一般的に
は、温度が高くなると表面固化、結晶析出が発生しやす
く、また、湿度が高いほうが結晶析出、成長が発生しや
すい傾向を有するものである。
【0046】図5および図6でインキNo.1とNo.3と
は、前記結晶質染料の赤−1と黄−1を用いて作成した
インキを用いた結果であり、この結晶質インキによる筆
記具では、染料の結晶析出と成長が見られる。特に、赤
−1は50℃80%RHの条件で極短期間で結晶が析出し成長
し、また、黄−1は室温・飽和湿度で短期間で結晶析出
が発生し成長している。
【0047】これに比べて、インキNo.2とNo.4と
は、前記非晶質染料の赤−2と黄−2を用いて作成した
インキによる結果であり、筆記芯の筆記部を開放状態に
放置しても、表面固化が発生するだけで、結晶析出は見
られない。
【0048】さらに、図7におけるインキNo.5は非晶
質染料の赤−2と結晶質染料の黄−1を混合した油性イ
ンキによる結果であり、この場合には前記インキNo.3
の黄−1単独のときと同様に、室温・飽和湿度で短期間
で結晶析出が発生し成長している。また、インキNo.6
は非晶質染料の赤−2と非晶質染料の黄−2を混合して
なる油性インキの場合であり、この場合には結晶析出は
発生していない。
【0049】上記結果から、前記X線回折スペクトルの
測定とも対応して、染料に結晶質のものを添加すると結
晶析出が生起することになり、非晶質の染料を主体とし
て油性インキを作成することによって、前記高沸点溶媒
が筆記によって消失した後においても、筆記部6aに結晶
が析出成長するのが防止できるものである。非晶質染料
に少量の結晶質染料を添加したものでは、結晶析出も微
量で実用上問題とならない場合がある。
【0050】なお、上記実施例ではノック式の筆記具に
ついてのみ示しているが、筆記芯の先端筆記部を覆うよ
うに密閉キャップを着脱する方式の筆記具についても同
様に、筆記部に高沸点溶媒を塗布または含浸させればよ
いものである。
【0051】
【発明の効果】上記のような本発明筆記具の乾燥防止方
法によれば、一端部を染料を溶媒に溶解してなるインキ
を吸蔵したインキ吸蔵体に挿入した筆記芯の筆記部に高
沸点溶媒を予め塗布または含浸させておくことにより、
筆記部の表面には揮発速度が遅い高沸点溶媒が濃度高く
介在することで、内部に浸透しているインキ溶媒の筆記
部表面からの揮発を防止して乾燥を遅延することがで
き、筆記不良の発生を長期間にわたって防止し、信頼性
を高めることができる。
【0052】さらに、非晶質染料によるインキを使用し
た場合には、前記高沸点溶媒が揮発もしくは筆記によっ
て筆記部から消失した後においても、この筆記部に染料
の結晶が析出成長することがなく、さらに筆記不良の発
生を防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一実施例を適用する筆記具の全体
構成を示す断面図
【図2】筆記可能状態にある筆記具の先端部分の要部断
面図
【図3】各種染料のX線回折スペクトル図
【図4】乾燥防止効果の測定結果を示す図
【図5〜図7】各種染料を使用したインキの乾燥テスト
の結果を示す図
【符号の説明】
1 筆記具 2 バレル軸 3 インキタンク 6 筆記芯 6a 筆記部 7 インキ吸蔵体

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔芯材による筆記芯の一端部が、溶媒
    に染料を溶解してなるインキを吸蔵したインキ吸蔵体に
    挿入され、他端部が筆記部に形成された筆記具におい
    て、 前記筆記芯の筆記部に高沸点溶媒を予め塗布または含浸
    させておくことを特徴とする筆記具の乾燥防止方法。
  2. 【請求項2】 前記高沸点溶媒が、インキ中の複数成分
    の溶媒のうち沸点の高いものであることを特徴とする請
    求項1記載の筆記具の乾燥防止方法。
  3. 【請求項3】 前記高沸点溶媒が、ベンジルアルコール
    であることを特徴とする請求項1記載の筆記具の乾燥防
    止方法。
  4. 【請求項4】 前記インキの染料が、非晶質染料を主成
    分としていることを特徴とする請求項1記載の筆記具の
    乾燥防止方法。
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