JP2874851B2 - 放電加工機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、加工槽内に充満し
た加工液中で主軸に保持した細穴加工用電極にＺ軸方向
の送りを与え、ワークに細穴を加工する放電加工機に関
する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、細穴放電加工に用いられる細穴
加工用電極は電極径が小さく、細穴放電加工により形成
された細穴も小さいため加工屑が加工間隙から排出され
にくい。加工される細穴の深さが深いほどこうした傾向
が大きい。そこで、細穴加工用電極の先端から加工液を
噴出させ、この加工液により加工屑が排出されるよう
に、細穴加工用電極は加工液噴出孔が形成された中空形
状となっている。加工液は、ポンプ等の加工液噴出手段
により予め所定圧力に加圧され、放電加工の開始直前か
ら細穴加工用電極とワークとの極間に噴出される。この
加工液により加工屑を除去しながら放電を安定化させ放
電加工を進行する。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】然しながら、放電加工
の開始直前から細穴加工用電極とワークとの極間に加工
液を噴出すると、細穴加工用電極がワークに食いつく際
に発生する加工屑を完全に除去してしまうので、かえっ
て放電状態が不安定になり加工が進行しなくなってしま
うという問題がある。本発明はこうした従来技術の問題
を解決することを課題としており、細穴放電加工開始時
に、所定深さの細穴が形成されるまで加工液の噴出を待
機させ、放電加工開始時における加工液の噴出による放
電状態の不安定化を避け、以て加工を進行させることが
可能な放電加工機を提供することを目的としている。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記問題は、細穴放電加
工が開始されワークに所定深さの細穴が形成された後、
電極とワークとの極間に加工液を噴出させることにより
解決される。すなわち本発明は、加工槽内に充満した加
工液中で、主軸に保持した細穴加工用電極にＺ軸方向の
送りを与えワークに細穴を加工する放電加工機におい
て、前記ワークと接近して配置され前記細穴加工用電極
を支承する細孔を有し、前記細穴加工用電極が前記ワー
クとの間でＺ軸方向の相対移動をする際、前記細穴加工
用電極を案内する電極ガイドと、先端部に前記電極ガイ
ドが支持されるとともに、前記主軸のＺ軸方向の移動と
平行な方向に位置の調節が可能な支持アームと、前記細
穴加工用電極の軸心に設けられた加工液噴出孔から前記
細穴加工用電極と前記ワークとの極間に加工液を噴出す
る加工液噴出手段と、前記細穴加工用電極による前記ワ
ークへの加工深さに対応した前記主軸のＺ軸方向への移
動量を予め記憶する移動量記憶手段と、前記細穴加工用
電極による前記ワークへの細穴加工時、前記主軸が前記
移動量記憶手段で記憶した移動量だけＺ軸方向へ移動し
たら、前記細穴加工用電極と前記ワークとの極間に加工
液を噴出するように前記加工液噴出手段を制御する制御
手段とを具備した放電加工機を要旨とする。

【０００５】

【作用】細穴加工用電極が移動量記憶手段で予め記憶し
た所定の移動量だけ移動するまでは細穴加工用電極とワ
ークとの極間に細穴加工用電極の軸心に設けられた加工
液噴出孔から加工液を噴出しないようにして、ワークの
表面を加工屑が除去されていない状態とし、放電を安定
化することにより放電加工の開始時における細穴加工用
電極のワークへの食いつきが良くなるため放電加工が進
行する。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下に、添付図面に示す本発明の
実施形態を説明する。図１は、本発明実施形態の放電加
工機の主軸周辺部を示す正面断面図および構成ブロック
図、図２は、本発明実施形態の放電加工機を示す正面
図、図３は、図２の矢視 IIIにおける側面図である。

【０００７】図１から図３を参照すると、本実施形態に
よる放電加工機を１０は、ベッド１２にテーブル４０が
取り付けられており、該テーブル４０の上面にワークＷ
が載置、固定される。テーブル４０およびワークＷは、
シール４０ａを介して上下に摺動、昇降する加工槽４２
により囲繞され、加工槽４２内に加工液を満たすことに
より加工液に浸漬される。また、ベッド１２の後方部に
はコラム１４が立設されており、該コラム１４の上面に
Ｘ軸モータ４８ａによりＸ軸方向に送られるサドル１６
が設けられ、サドル１６の上面にＹ軸モータ４８ｂによ
りＹ軸方向に送られるラム１８が設けられ、さらに、ラ
ム１８の前面に電極ヘッド２０が取り付けられている。
Ｚ軸モータ４８ｃにより電極ヘッド２０に対しＺ軸方向
に送られ、スピンドルモータ（図示せず）により回転駆
動される主軸２４が、Ｚ軸方向に上下動、かつＺ軸軸線
回りに回転自在に支持される。主軸２４の下端部には絶
縁プレート２６を介して電極チャック２８が取り付けら
れており、電極チャック２８は、ホルダ３０のプルスタ
ッド３０ａを上方に引き込み同心に把持する。

【０００８】ホルダ３０の先端には、長手方向に貫通す
る加工液噴出孔（図示せず）を有して中空状に形成され
た細穴放電加工用電極３４が、ブッシュ３２ａを介して
ナット３２により取り付けられている。一方、主軸２４
の後端部は、ロータリジョイント２４ａを介して加工液
噴出手段５０、例えば加工液ポンプに接続されており、
主軸２４、絶縁プレート２６、電極チャック２８、ホル
ダ３０を貫通して形成された加工液通路２４ｂを加工液
が流通し、細穴放電加工用電極３４の加工液噴出孔の先
端からテーブル４０に載置、固定されたワークＷへ向け
て噴出される。

【０００９】概ねＬ字状の支持アーム３６が、電極ヘッ
ド２０の側部からテーブル４０へ向けて延びており、該
支持アーム３６は、電極ヘッド２０の側面に取り付けら
れた案内装置３６ｂによりＺ軸と平行な方向に上下動自
在に支持されている。支持アーム３６の下端部にはガイ
ド取付台３６ａが配設されており、該ガイド取付台３６
ａの先端部に細穴加工用電極３４の先端部を支持、案内
する電極ガイド３８が取り付けられている。電極ガイド
３８は、中空の概ね円筒形状のガイドブッシュ３８ｃ
と、ガイドブッシュ３８ｃの中心穴の上下端部に配設さ
れた上下ガイド３８ａ、３８ｂとを具備している。上下
ガイド３８ａ、３８ｂは、細穴加工用電極３４との間で
電気的に絶縁するために、サファイア等から形成されて
おり、細穴加工用電極３４を挿入、案内するために中心
案内孔を有している。案内装置３６ｂは支持アーム３６
のＺ軸と平行な方向への移動を案内し、テーブル４０の
上面に載置、固定されたワークＷの厚さに応じて支持ア
ーム３６のＺ軸方向の位置を調節し、電極ガイド３８と
ワークＷとの間に所定の間隔を維持する。なお、図２、
３は細穴加工用電極３４をＺ軸方向へ下降させて電極ガ
イド３８に挿入させた状態を示している。

【００１０】コラム１４の中央の抜け部１４ａには電極
自動交換装置（図示せず）が配設されており、主軸２４
のＺ軸方向への移動の最上位置である電極自動交換位置
において、使用済みの細穴加工用電極３４を保持するホ
ルダ３０を主軸２４の下端部に設けられた電極チャック
２８から取り外し、電極マガジン４４にホルダ３０のプ
ルスタッド３０ａを介して収納して、新たな細穴加工用
電極３４を保持するホルダ３０を電極マガジン４４から
電極チャック２８へ移送し、プルスタッド３０ａを引き
込み装着して電極自動交換を行う。

【００１１】放電加工機１０によるワークＷの加工に用
いられるＮＣプログラムを格納する数値制御装置である
とともに、細穴加工用電極３４とワークＷとの極間にパ
ルス電圧を印加する電源装置であるＮＣ・電源装置４６
は、制御手段４６ａ、加工深さ演算手段４６ｂ、移動量
記憶手段４６ｃを具備している。制御手段４６ａは、Ｎ
Ｃプログラムの移動指令に基づいて、Ｘ軸モータ４８
ａ、Ｙ軸モータ４８ｂ、Ｚ軸モータ４８ｃ、スピンドル
モータにサーボ出力をそれぞれ送出し、電極ヘッド２０
および主軸２４の移動、回転を制御するとともに、エン
コーダ等の位置検出器（図示せず）で電極ヘッド２０の
Ｘ、Ｙ軸位置および主軸２４のＺ軸位置を検出する。移
動量記憶手段４６ｃは、細穴加工用電極３４によるワー
クＷへの加工深さに対応する主軸２４のＺ軸方向への移
動量を予め記憶しており、加工深さ演算手段４６ｂで
は、制御手段４６ａからのＺ軸位置信号と、移動量記憶
手段４６ｃに記憶された主軸２４のＺ軸方向への移動量
とワークＷに形成された細穴の深さとの関係に基づい
て、現在進捗している細穴放電加工プロセスによる細穴
の深さを演算する。

【００１２】細穴放電加工が開始された後、主軸２４が
所定の移動量を以て下動してワークＷに形成された細穴
の深さが所定深さになったとき、細穴加工用電極３４の
先端からの加工液の噴出を開始させるために、移動量記
憶手段４６ｃは、細穴加工用電極３４によるワークＷへ
の加工深さに対応する主軸２４のＺ軸方向への移動量に
加えて、上記の加工液の噴出を開始する所定の移動量、
またはＺ軸方向への加工液噴出位置を記憶している。な
お、ＮＣ・電源装置４６の制御手段４６ａ、加工深さ演
算手段４６ｂ、移動量記憶手段４６ｃは、ＲＡＭ、ＲＯ
Ｍ、ＣＰＵを含むマイクロコンピュータ等の電子装置に
より構成することができる。

【００１３】以下、本実施形態の作用を説明する。 （１）先ず、加工槽４２を下動させて、加工すべきワー
クＷをテーブル４０の上面に載置、固定する。 （２）電極ヘッド２０をＸ、Ｙ軸方向へ移動させ、主軸
２４をＺ軸方向へ上昇させて電極自動交換位置に位置決
めするとともに、電極自動交換装置の電極マガジン４４
により交換すべき細穴加工用電極３４を保持するホルダ
３０を割り出し、主軸２４の下端部に設けられた電極チ
ャック２８に移送、装着する。

【００１４】（３）電極ヘッド２０をＸ、Ｙ軸方向へ移
動するとともに、支持アーム３６を下動させて、ワーク
Ｗに形成すべき細穴の位置の上方に電極ガイド３８を位
置決めし、主軸２４をＺ軸軸線回りに回転させながらＺ
軸方向に下動させて細穴加工用電極３４を上下ガイド３
８ａ、３８ｂの中心穴に挿入して、その先端をワークＷ
から所定距離だけ上方の加工開始位置に位置決めする。 （４）ワークＷおよびテーブル４０を囲繞するように加
工槽４２を上動させ、加工槽４２内に加工液を満たして
ワークＷおよびテーブル４０を加工液に浸漬する。

【００１５】（５）ＮＣ・電源装置４６から細穴加工用
電極３４とワークＷとの極間にパルス電圧を印加して、
細穴加工用電極３４を主軸２４のＺ軸軸線回りに回転さ
せながらＺ軸方向の送りを与えてワークＷの細穴放電加
工を開始する。このとき、加工液噴出手段５０による細
穴加工用電極３４の先端からワークＷに向けての加工液
の噴出は行われていない。 （６）細穴放電加工が開始されると、加工深さ演算手段
４６ｂが進捗する細穴放電加工プロセスにより形成され
る細穴の深さを逐次演算する。主軸２４のＺ軸方向への
送り量が予め記憶され移動量記憶手段４６ｃが保持する
所定量、または加工液噴出位置となったとき、制御手段
４６ａから加工液噴出手段５０へ加工液噴出開始指令が
送出され、細穴加工用電極３４の先端から加工液が噴出
され、ワークＷに既に形成された細穴から加工屑が排出
される。

【００１６】細穴放電加工の開始時には加工液が噴出さ
れないので、細穴放電加工の開始時に細穴加工用電極が
ワークに食いつく際に発生する加工屑を完全に除去しな
いようにして、ワークＷの表面に付着している加工屑に
より、細穴放電加工の開始時に安定した放電が得られ、
加工が進行するのである。ここではワークＷに加工する
加工深さに応じた主軸２４のＺ軸方向への移動量を移動
量記憶手段４６ｃで予め記憶する場合を説明したが、放
電加工に使用する細穴加工用電極３４の電極径に応じた
主軸２４のＺ軸方向への移動量を移動量記憶手段４６ｃ
で予め記憶するようにしてもよい。さらに、放電加工に
使用する細穴加工用電極３４の電極径およびワークＷに
加工する加工深さをもとにして主軸２４の移動量を自動
計算することも可能である。

【００１７】

【発明の効果】細穴放電加工が開始されワークに所定深
さの細穴が形成された後に加工液を噴出させることによ
り、放電加工開始時における細穴加工用電極のワークへ
の食いつきを改善したので放電加工の安定化が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施形態の放電加工機の主軸周辺部を示
す正面断面図および構成ブロック図である。

【図２】本発明実施形態の放電加工機を示す正面図であ
る。

【図３】図２の矢視 IIIにおける側面図である。

【符号の説明】

１０…放電加工機 ２４…主軸 ３４…細穴加工用電極 ３６…支持アーム ３８…電極ガイド ４２…加工槽 ４６…ＮＣ・電源装置 ４６ａ…制御手段 ４６ｂ…加工深さ演算手段 ４６ｃ…移動量記憶手段 ５０…加工液噴出手段 Ｗ…ワーク

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加工槽内に充満した加工液中で、主軸に
   保持した細穴加工用電極にＺ軸方向の送りを与えワーク
   に細穴を加工する放電加工機において、 前記ワークと近接して配置され前記細穴加工用電極を支
   承する細孔を有し、前記細穴加工用電極が前記ワークと
   の間でＺ軸方向の相対移動をする際、前記細穴加工用電
   極を案内する電極ガイドと、 先端部に前記電極ガイドが支持されるとともに、前記主
   軸のＺ軸方向の移動と平行な方向に位置の調節が可能な
   支持アームと、 前記細穴加工用電極の軸心に設けられた加工液噴出孔か
   ら前記細穴加工用電極と前記ワークとの極間に加工液を
   噴出する加工液噴出手段と、 前記細穴加工用電極による前記ワークへの加工深さに対
   応した前記主軸のＺ軸方向への移動量を予め記憶する移
   動量記憶手段と、 前記細穴加工用電極による前記ワークへの細穴加工時、
   前記主軸が前記移動量記憶手段で記憶した移動量だけＺ
   軸方向へ移動したら、前記細穴加工用電極と前記ワーク
   との極間に加工液を噴出するように前記加工液噴出手段
   を制御する制御手段と、 を具備したことを特徴とする放電加工機。