JP2871930B2 - 超電導コイル用着脱式パワーリード - Google Patents

超電導コイル用着脱式パワーリード

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、超電導コイルに通電
するために使用する着脱式のパワーリードに関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】図2は例えば、第37回低温工学研究発
表会予稿集(1987年)、第136頁に掲載された従
来の着脱式パワーリードの接続部を示す構成図である。
図において、11はリードケーブル、12は着脱用の可
動側マルチピンコネクタ、13は着脱用の固定側マルチ
ピンコネクタ、14は可動側マルチピンコネクタ12の
可動ストロークを確保するためのベロー、15はマルチ
ピンコネクタ12、13を支える構造体、16は着脱部
全体を支持するための支持棒、17はベロー14に伸縮
動作をさせるためのヘリウムガスを供給する駆動用ヘリ
ウムガス配管、18は駆動用ヘリウムガスを送排気する
ためのガス制御系で、圧縮・真空ポンプ、バッファ、バ
ルブ類などから構成されている。
【0003】図2のように構成された着脱式パワーリー
ドの動作について説明する。そもそもパワーリードに着
脱方式を適用するのは、熱侵入の小さい超電導マグネッ
トを実現するためである。通常、パワーリードに用いら
れる材料は銅などの熱良導体であるため直結式パワーリ
ードでは熱伝導による熱侵入量が極めて大きくなる。こ
れを極力抑えるため、通電時にのみパワーリードを装着
し、定格電流まで通電した後には超電導コイルを永久電
流モードで運転してパワーリードを取り去り、熱伝導に
よる侵入熱の低減化を図るのである。パワーリードを取
り去るといっても完全に取り外す必要はなく、単に熱的
な侵入経路をしゃ断しさえすれば良い。このことが着脱
式パワーリードが必要とされる理由である。
【0004】図2に示した着脱式パワーリードでは、熱
的回路をしゃ断するために、ピンコネクタ12、13を
使用し、上部のマルチピンコネクタ12を可動部とし、
これをベロー14の伸縮を利用して可動させ着脱させる
構成である。ベロー14は駆動用ヘリウムガス配管17
を介して常温部に置かれたヘリウムガス制御系18によ
って送排気されるヘリウムガスにより動かされる。例え
ば、固定側マルチピンコネクタ13に可動側マルチピン
コネクタ12を装着する場合には、ガス制御系18から
圧縮ガスを送りベロー14を伸長させることによって行
う。外す場合には、ヘリウムガスを排気することにより
ベロー14を収縮させて行うのである。このように動作
させることにより、通電時には可動側マルチピンコネク
タ12と固定側マルチピンコネクタ13とは接続され、
パワーリードとしての動作が可能となる。また、非通電
時には可動側マルチピンコネクタ12と固定側マルチピ
ンコネクタ13とは離されて、熱的に絶縁されることに
なる。
【0005】以上のように、ベロー14を利用してマル
チピンコネクタ12、13を装着及び脱離させるわけで
あるが、この時に問題となるのが可動側マルチピンコネ
クタ12と固定側マルチピンコネクタ13との装着時の
位置合わせである。従来例では、この問題を解決するた
め支持構造体15にマルチピンコネクタ12、13を位
置的に合わせた状態で固定することにより行っている。
この装着を上手にしないと、接触抵抗が大きくなり、通
電時の着脱部での発熱が大きくなるという問題が生じ
る。これを解消するために、従来例ではマルチピンコネ
クタ12、13を採用して接触抵抗を抑えると共に、リ
ード1本あたりの通電電流を小さくして接触抵抗による
発熱を抑えるように構成している。
【0006】即ち、マルチピンコネクタ12、13を採
用してピン1本あたりの通電電流値を小さくし、着脱部
における通電時の発熱を抑えている。しかし、ピン数が
あまり多いと装着時の位置合わせが難しくなって、ピン
を壊す確率も大きくなる。また、マルチピンであるため
ピンは比較的細く、この点でも装着時に巧く位置合わせ
ができていないと壊れ易くなる。さらに、1つの低温容
器内に複数の超電導コイルが設置されているような場合
には、益々ピン数が増えるためより一層の位置合わせが
問題となる。もしコイル1つごとに着脱パワーリードを
設置すれば、多くのスペースが必要となり構成も複雑と
なる。しかも数が増えただけ熱侵入量も増えることにな
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
超電導コイル用着脱式パワーリードでは、ピン数を多く
して大容量化を図ると、装着時の位置合わせが難しくな
り、ピンが壊れやすくなるという問題点があった。
【0008】この発明はかかる問題点を解消するために
なされたもので、リード用接触ピンの大容量化を可能に
し、かつパワーリード脱離時には極めて小さい熱侵入量
であることを維持し、さらに、パワーリード装着時には
複数のピン同士を確実に均一の力で装着させることによ
りピン間の接触抵抗を小さくでき、接触ピン1本あたり
の通電電流値を大きくできる超電導コイル用着脱式パワ
ーリードを得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明に係る超電導コ
イル用着脱式パワーリードは、凸部(あるいは凹部)を
有する複数の可動部接触ピン、この可動部接触ピンと嵌
合可能な凹部(あるいは凸部)を有する複数の固定部接
触ピン、先端にテーパ部を有する案内ピン、この案内ピ
ンを嵌挿可能な案内孔、案内ピンと案内孔のどちらか一
方と可動部接触ピンを支持する可動コネクタ、案内ピン
と案内孔の他方と固定部接触ピンを支持する固定コネク
タ、及び接触ピンの少なくともどちらか一方とこれを支
持するコネクタとの間に介在させた伸縮性反力構造体を
え、接触ピンに、軸方向に冷媒ガスを通風する貫通孔
を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
【0011】
【作用】この発明における超電導コイル用着脱式パワー
リードは、片側の接触ピンが伸縮性反力構造体を介して
コネクタに取り付けてあることから、可動部接触ピンと
固定部接触ピンとの装着が複数本の同時装着であって
も、確実にしかも1本1本均一な力で装着できることに
なる。このため、接触抵抗を小さく抑えることができ、
ピン1本あたりの通電電流値を大きくできる。さらに、
案内ピンと案内孔によって、装着時に接触ピンを案内し
て容易に位置合わせができる。また、冷媒ガスを貫通孔
をに通風すれば、接触ピンを効率良く冷却できる。
【0012】
【実施例】実施例1. 以下、この発明の一実施例による超電導コイル用着脱式
パワーリードを図について説明する。図1はこの発明の
一実施例による超電導コイル用着脱式パワーリードを示
す構成図である。この実施例は固定側に伸縮性反力構造
体を用いたものである。図1において、1は可動部接触
ピン、例えば可動メスピンであり、株式会社ソルトンの
ソケットタイプBXN接続子(Xはピンの寸法に応じた
数字)を用いている。2は可動メスピン1と嵌合可能な
固定部接触ピン、例えば固定オスピンであり、可動メス
ピン1と同様に株式会社ソルトンのプラグタイプSXN
接続子(Xはピンの寸法に応じた数字)を用いている。
3は先端にテーパ部を設けた案内ピン、4は案内ピン3
を嵌挿するため入口部に面取り加工がなされた案内孔、
5は可動メスピン1と案内ピン3とを一体化するため、
電気絶縁物で構成された可動コネクタ、6は固定オスピ
ン2と案内孔4を一体化するために、電気絶縁物で構成
された固定コネクタである。7は伸縮性反力構造体で、
例えば圧縮バネであり、固定オスピン2と固定コネクタ
6との間に介在する用に構成されている。8は圧縮バネ
7の押さえ座、9a、9b、9cはそれぞれ可動メスピ
ン1、固定オスピン2、案内ピン3をコネクタ5、6に
取り付けるナットである。圧縮バネ7は取り付け状態に
おいて、例えば既にある長さだけ縮められた状態でナッ
ト9bにより取り付けられている。10a、10bはそ
れぞれ可動メスピン1及び固定オスピン2に開けられた
冷媒ガスを通風する貫通孔で、例えば冷媒の蒸発ガス用
通風孔である。
【0013】さらに図示されてはいないが、可動メスピ
ン1は矢印Aで例えば銅管などにより常温部まで連結さ
れ電流リードを形成しており、やはり図示されていない
駆動機構(モータあるいはガス圧)と連結されている。
また、実際の使用形態下では固定オスピン2も矢印Bで
図示されていない超電導コイルにつながっている。な
お、図1には可動オスピン1および固定メスピン2を1
本づつしか明示していないが、実際には偶数(行き、戻
り)の多数本が設置されている。
【0014】また、案内ピン3の先端に形成されている
テーパ部の角度は、例えば軸方向:径方向が4:1や
5:1程度に傾斜している。また、可動コネクタ5と固
定コネクタ6とは、例えば10cm程度の隔たりがあ
り、案内ピン3のテーパ部の根元から案内孔4までは3
cm程度離している。可動オスピン1と固定メスピン2
の両先端の間隔は、例えば案内ピン3のテーパ部の根元
から案内孔4までよりも大きく構成している。
【0015】このように構成された超電導コイル用着脱
式パワーリードの動作について、装着動作時に主眼を置
いて説明する。可動コネクタ5は図示されていない駆動
機構により動かされ固定コネクタ6に徐々に近づき、先
ずはじめに案内ピン3が案内孔4に入り始める。この動
作及びこの後の動作をゆっくり行うことにより案内ピン
3のテーパ部を介して互いのコネクタ5、6の位置合わ
せが行われれる。またテーパ部の長さを適切に取ること
で、テーパ部が全て案内孔4に挿入された段階では可動
コネクタ5と固定コネクタ6とはほぼ位置が一致するこ
とになる。さらに可動させると、複数本の固定メスピン
1と同数の可動オスピン2とが接触し始めるが、既に位
置合わせが概ね済んでいるため良好な接触状態を保ちな
がら挿入することができる。
【0016】しかし、一般にピン数が多くなるにしたが
い、全ての接触ピンを力、傾き、位置ずれ、ゆがみなど
において同一条件で装着することが難しくなる。そこで
複数本の接触ピンを同一条件で装着するための保障機構
が伸縮性反力構造体、即ちここでは圧縮バネ8である。
既にある長さだけ縮められた状態で設置されていること
から、固定メスピン1にはある反力が可動オスピン2方
向に働いている。この力が複数本からなる接触ピンの均
一装着の保障力となる。つまりこの保障力以上の押しつ
け力で可動オスピン2を固定メスピン1に装着すれば、
各々の固定メスピン1は可動オスピン2に対して保障力
の押しつけ力が働く。このため、コネクタ5、6に対す
るピン1、2の取り付けに多少のズレやゆがみがあって
も、ほぼ均一な装着状態が実現できることになる。また
押しつけ力についても多少のバラツキはあるものの、可
動オスピン2の押しつけ力以上の力が確実に働く状態と
なる。
【0017】装着時の動作は以上のようであるが、B1
0N、S10Nを6本づつ装備した試験装置における液
体ヘリウム温度(1気圧下で約−269℃)下の測定に
よれば、500A通電時の着脱部の抵抗は1箇所あたり
〜100μΩであった。この値はモータ駆動による数十
回の脱着動作後も変わらなかった。
【0018】このように、複数本の固定部接触ピン2を
圧縮バネ7を介して固定コネクタ6に取り付けたため、
リード用接触ピンを大容量化しかつ本数が多くなっても
各々均一な状態で装着できるため、接触抵抗の小さい確
実な接続が可能となる。上記実施例では圧縮バネ8は既
にある長さだけ縮められた状態で設置されているが、あ
らかじめ弾性力が蓄勢されていなくても、可動オスピン
2を固定メスピン1に装着した時に、圧縮バネ8によっ
て各々の固定メスピン1は可動オスピン2に対して保障
力の押しつけ力が働くように構成されていればよい。
【0019】次に、可動メスピン1及び固定オスピン2
にそれぞれ設けられた冷媒の蒸発ガス用通風孔10a、
10bの効果について説明する。通常の直結式パワーリ
ードでは通電時に導体部に発熱があり、この熱が、例え
ば液体ヘリウムなどの冷媒に伝わり冷媒液が蒸発する。
蒸発ガスは十分冷たいため、この顕熱を利用してリード
部を冷却している。即ち、リードを銅管などで構成し、
その内部を通じて蒸発ガスを放出するのである。一方、
着脱式パワーリードでは、リード以外に着脱部において
も発熱することになる。従って着脱部の冷却も重要とな
り、これを効果的に実施する必要が生じる。そのために
通風孔10a、10bを設けている。着脱部の発熱は接
続部の抵抗により生じることから、接触ピン1、2を冷
却すれば効果が大きい。従って接触ピン1、2に貫通通
風孔10a、10bを開け、ここに蒸発ガスを通すこと
により接触ピン1、2を効率良く冷却できる。
【0020】このように、接触ピンを内部から直接的に
通風冷却するため、効率の良い着脱部の冷却が可能とな
ったことから、ピン1本あたり大きな電流を流せる効果
がある。さらに、複数の超電導コイルに対して1セット
の着脱パワーリードで対応できるという大きな効果があ
る。
【0021】この実施例では、可動側に凹部を有する接
触ピンを用いて圧縮バネを取り付けたが、可動側に凸部
を有する接触ピンを用いてもよい。また、伸縮性反力構
造体を可動側の接触ピンとコネクタ間に設けているが、
固定側の接触ピンとコネクタ間に設けて、固定側に保障
力を働かせるように構成してもよい。伸縮性反力構造体
についても、圧縮バネに限らず、例えば皿バネやベロー
などの他の構造物であってもよい。また、上記実施例で
は押さえ座を用いているが無くてもよく、接触ピンのコ
ネクタへの固定方法についても、市販品(ネジ部付き)
を利用してナットで止める方法を採用したが、他の方法
であってももちろんよい。さらに、上記実施例の接触ピ
ン1、2間の接触は固定メスピン1内に装着されている
例えばベリリウム銅製のバネによって維持しているが、
これに限らず例えばインジウムなどの電気良導体を利用
した押しつけ接触方式であってもよく、この場合には上
記実施例よりもその効果はより顕著となる。通風孔10
a、10bについても接触ピン1、2を効率良く冷却で
きれば、ストレート状の孔でなくても良い。
【0022】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、凸部
(あるいは凹部)を有する複数の可動部接触ピン、この
可動部接触ピンと嵌合可能な凹部(あるいは凸部)を有
する複数の固定部接触ピン、先端にテーパ部を有する案
内ピン、この案内ピンを嵌挿可能な案内孔、案内ピンと
案内孔のどちらか一方と可動部接触ピンを支持する可動
コネクタ、案内ピンと案内孔の他方と固定部接触ピンを
支持する固定コネクタ、及び接触ピンの少なくともどち
らか一方とこれを支持するコネクタとの間に介在させた
伸縮性反力構造体を備え、接触ピンに、軸方向に冷媒ガ
スを通風する貫通孔を設けたことにより、接触抵抗の小
さい確実な接続ができ、さらに、リード接触ピンを内部
から直接的に通風冷却するため、効率の良い着脱部の冷
却が可能となったことから、ピン1本あたり大きな電流
を流せる超電導コイル用着脱式パワーリードが得られる
効果がある。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1による超電導コイル用着脱
式パワーリードの構成図である。
【図2】従来の超電導コイル用着脱式パワーリードの構
成図である。
【符号の説明】
1 可動部接触ピン 2 固定部接触ピン 3 案内ピン 4 案内孔 5 可動コネクタ 6 固定コネクタ 7 伸縮性反力構造体 10a 貫通孔 10b 貫通孔

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 凸部(あるいは凹部)を有する複数の可
    動部接触ピン、この可動部接触ピンと嵌合可能な凹部
    (あるいは凸部)を有する複数の固定部接触ピン、先端
    にテーパ部を有する案内ピン、この案内ピンを嵌挿可能
    な案内孔、上記案内ピンと案内孔のどちらか一方と上記
    可動部接触ピンを支持する可動コネクタ、上記案内ピン
    と案内孔の他方と上記固定部接触ピンを支持する固定コ
    ネクタ、及び上記接触ピンの少なくともどちらか一方と
    これを支持するコネクタとの間に介在させた伸縮性反力
    構造体を備え、上記接触ピンに、軸方向に冷媒ガスを通
    風する貫通孔を設けたことを特徴とする超電導コイル用
    着脱式パワーリード。
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