JP2866967B2 - 外装の仕上げ方法 - Google Patents

外装の仕上げ方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、建築物の仕上げのうち、ALC板,石綿セ
メント板,無機質サイディング板,コンクリートブロッ
ク等の目地を定量的に多数発生させる下地への仕上げ方
法を提供するものである。従って、利用分野は建築業界
といえる。
(従来の技術) 従来、ALC板,無機質サイディング板等の目地を必然
的に多数発生させる下地に対して、この目地を消して大
壁に見せようとした場合、目地部をセメントモルタル等
で埋め、塗料を塗ることが行われていた。しかし、この
方法では建物のムーブメントによる目地部の動きによっ
て、ひび割れが発生し、美観上および防水上問題となっ
た。尚、ムーブメントの意味は、地震,風圧,温度変化
などが原因で、建築物を構成する部材の接合部に生ずる
各種の動きの総称である。
また、磁器質タイルを貼りつけることにより、目地を
消す方法も行われているが、ムーブメントを吸収するエ
キスパンション目地を多数入れる必要があり、完全な目
地無し工法とは言えない上、コンクリートに比べ低強度
なALC板等への重量物の貼り付けは剥離の危険があっ
た。
(発明が解決しようとする問題点) ALC板,石綿スレート板,無機質サイディング板等の
目地を定量的に多数発生させる下地に対する従来の仕上
げ方法では、目地を消して大壁にすることは困難であっ
た。これが、本発明が解決しようとする問題点である。
また、単に目地を消すのみでなく、外壁防水上、長期に
安定した性能を保持する外装仕上げ方法を提供すること
である。
(問題を解決するための手段) この発明では、屋外にも適用できる可撓性および伸び
のあるシートを外壁面に貼り詰めることにより、大壁状
の壁面を形成させることができる。
この発明が対象とする下地とは、ALC板,石綿セメン
ト板,無機質サイディング,コンクリートブロック板等
の定尺の寸法を有し、目地を定量的に発生させるものを
言う。
また、外壁面に貼り付けるシートを建築物のムーブメ
ントに伴う目地の動きに対して追従させるための方法と
しては、外装用シートに伸長性を持たせる方法、外
装用シートの接着材が硬化後に変形能を有し下地目地の
動きを緩和する方法がある。
実験結果によれば、外装用シートの伸び率が2%未満
であると、建物のムーブメントにより、破断やよれが発
生し、それ以上であれば、異常がなかった。
また、外装用シートが伸長性を有していない場合、接
着材の硬化後の伸びが5%以上あれば、ムーブメントに
対して、有効であった。すなわち、外装用シートの伸び
率が2%以上であること、又は、接着材の硬化後の伸び
率が5%以上であることのどちらかの条件を満たせば、
建物のムーブメントに追従できる。
シートの伸びの測定は、次のように行った。まず、実
施例あるいは比較例のシートを巾50mm、長さ150mmに切
断し、万能引張り試験機においてチャック間距離100mm
(A)として固定し、100mm/分の速度で引張った場合
に、シート表面に形成されたタイル貼りあるいは石貼り
模様の塗膜あるいは成形物等にクラック等の異常が発生
した時のチャック間距離(B)をもとに、BをAで除し
た値から1を減じ、百分率で表した時の数値である。試
験体、即ちシートの作成後、1週間の養生を行った後、
常温の温度条件下にて測定を行った。
接着材の伸びについては、顔料濃度を適宜調整した接
着材を厚さ1mmのフィルム状に成形したものを、シート
の伸びを測定した方法と同じ方法、即ち50mm×150mm伸
びを大きさに切断し、チャック間距離100mmに固定した
後、万能引張り試験機により引張り、フィルム状の接着
材片に破断が生じた時のチャック間距離により伸びを算
出するものである。試験体である接着材フィルムは成形
後、1週間の養生後、常温の温度条件下にて測定を行っ
た。
次に、外装用シートについて言えば、構成では、例え
ば不織布にアクリル系合成樹脂エマルションをバインダ
ーとし、それに充填材,着色顔料,各種添加剤を加え
て、塗料化した水系塗料をコーティングしてなる基材上
に、吹付塗装,成形,押圧,印刷等によりタイル貼りあ
るいは石貼りの模様をつけたものを用いる。
この模様は、外装用シートを並べて貼り付けた時に、
見掛け上継ぎ目を持たないので、下地の目地を隠した大
壁に見せることができる。
また、外装用シートの基材としては、上記の例以外に
も、耐水性,耐候性,寸法安定性,接着性,被接着性を
有する可撓性シート状物であれば良い。
なお、外装用シートを外壁に貼り付ける場合には、防
水性を考慮して、5mm以上の重ね部分を設けることが有
効であり、重ね部分が5mm以下の場合には、建物のムー
ブメントにより、重ね部分が接着不良となる可能性があ
る。また、シート自体も防水性を考慮して、その透水量
(JIS A6910による)が0.5ml以下になるようにした方
がよい。
このような構成による外装用シートを下地に貼り付け
るための接着材としては、例えばアクリル樹脂系,酢ビ
系,ポリウレタン系等の合成樹脂を用いたもの,ポリマ
ーセメントモルタルなどがある。尚、下地の目地部につ
いては予め、シーリング材,パテ材,樹脂入りモルタル
等により充填しておいてもよいが、本発明の方法を用い
れば外装用シートにより、目地部を完全に覆うため、必
ずしも充填しておく必要はない。
(作 用) この発明の方法によれば、ALC板等の下地において、
見掛上目地を消して壁面を大壁にすることが容易にで
き、同時に最終仕上げともなる。
これにより、目地により外観上の制限を受けていたAL
C板,石綿スレート板,無機質サイディング板,コンク
リートブロック等からなる外壁面に様々な意匠をほどこ
すことができる。
その上、この発明による方法は、従来の吹付塗装やタ
イル貼り工事に比べて、著しく工期を短縮することもで
きる。
(実施例) この発明の実施は、下地として珪酸カルシウム板を相
じゃくりにより貼り付けてある妻壁に対して行った。目
地の巾は10mm、深さは5mmであったが、目地部の充填は
行わなかった。
外装用シートとしては、ポリエステル製の不織布にア
クリル樹脂系塗料(黒色)をロールコーターによりコー
ティングし、その上に小口タイル貼り模様となるよう
に、白色の弾性塗料を塗り付けたものを作製して用い
た。
そして、壁面にアクリル樹脂系の接着材により貼り詰
めた。仕上がった壁面は、施工前と比べ、サイディング
の目地を感じさせることなく、大壁と見せることができ
た。
次に、建築物のムーブメントに伴う目地部の動きに対
する、外装用シートの適応性を評価した。ここではALC
板を壁材として用いる鉄骨造の壁面サンプルを用意し、
ここに60cm×3m×10cmのALC板が縦長となるように、横
方向に5枚、縦方向に2枚並べて鉄骨に取り付ける。AL
C板の鉄骨への取り付けは、挿入筋構法を採用した。ALC
板を鉄骨に取り付けた後、例えば比較例1の場合は、外
装用シートの伸びが0.5%あるものを使用し、外装用シ
ートをALC板に、硬化後の伸びが1.3%ある接着材を使用
して貼り詰めた。接着材により貼り付け後、1週間の養
生期間をとった後、鉄骨造の壁面サンプルに対し、静的
面内方向層間変位を加えた。静的面内方向層間変位のう
ち、静的変位とは、動的変位に対になる言葉であり、繰
り返し同じ大きさの変位量を加える動的変位でなく、あ
る特定の個所に試験体が変形する力を加え、所定の変形
量に対する試験体の変化を確認する変位量を言う。面内
方向とは、壁として存在する際の二次元の平面方向を言
う。層間変位とは、例えば一階と二階との間に生ずる水
平方向におけるずれのことを言う。改めて静的面内方向
層間変位とは、ここでは、ALC板を5枚×2枚取り付け
てある鉄骨構造の壁面サンプルの上段にあるALC板の上
隅の一端から壁面と同じ方向の水平力を加えた時の静止
位置からの変位量のことである。第1表の結果となる試
験は、二百分の一の層間変位角を与えた時のものであ
る。実施例,比較例では、60cm×3mのALC板を縦に2枚
並べているので、6mの二百分の一である30mmの変位を与
えた。変位の与え方あるいは試験方法についての説明は
JIS A−1414における組み立てられた非耐力用パネル
の面内せん断曲げによる変形能試験に基づくものであ
る。そして、層間変位に伴う外装用シート及びALC板の
状況を観察した。外装用シートの状況は、表面の観察で
あり、ALC板の状況は、外装用シートを強制的に剥して
見た時のものである。なお、ALC板の取り付けは、挿入
筋構法とし、静的面内方向層間変位を加えた。試験を行
った外装用シート及び接着材と試験の結果は第1表によ
る。
外装用シートは、不織布にアクリル樹脂系塗料をコー
ティングして作成したが、塗料の伸び及び引張強さを変
えることにより、シート自体の伸びを調整した。また、
接着材にはアクリル樹脂系を用いたが、樹脂のガラス転
位点及び顔料体積濃度(PVC)を変化させることによ
り、伸びを調整した。
これらの試験結果によると、シートの伸びが2%以上
あるものを外壁の仕上げに用いた時、下地のALC板にク
ラックが発生しても外観上は異常はない。加えて、接着
材の伸びが5%以上ある場合は、接着材の浮きの危険性
も解消され、防水性能上より安全なものとなる。
(効果) この発明によれば、従来ALC板,石綿セメント板,無
機質サイディング板,コンクリートブロック等の目地を
生かした壁面しか考えられなかった下地に対して、簡単
に大壁の仕上げ面を形成することができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−176066(JP,A) 実開 平1−73234(JP,U) 実開 昭58−53700(JP,U) 実開 昭62−186777(JP,U)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外壁の構成部材がALC板,石綿セメント
    板,無機質サイディング板,コンクリートブロック等の
    目地を定量的に発生させる部材であって、これらの下地
    に対して、下地の目地を跨ぐように、タイル貼り模様,
    石貼り模様を形成する、可撓性があり伸びを2%以上有
    する外装用シートを、接着材を利用して貼り付けること
    を特徴とする外装の仕上げ方法。
  2. 【請求項2】外装用シートは、5mm以上の重ね代を有し
    て貼り付けることを特徴とする特許請求の範囲第1項に
    記載の外装の仕上げ方法。
  3. 【請求項3】外装用シートの透水量が0.5ml/24hr以下で
    あることを特徴とする特許請求の範囲、第1項又は第2
    項に記載の外装の仕上げ方法。
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