JP2865998B2 - 膜屋根構築方法と膜屋根構築体 - Google Patents

膜屋根構築方法と膜屋根構築体

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JP2865998B2
JP2865998B2 JP427594A JP427594A JP2865998B2 JP 2865998 B2 JP2865998 B2 JP 2865998B2 JP 427594 A JP427594 A JP 427594A JP 427594 A JP427594 A JP 427594A JP 2865998 B2 JP2865998 B2 JP 2865998B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、膜屋根構築方法及び膜
屋根構築体に係り、特に、伸縮自在な筒状体とこれに一
体として取り付けられたシート材を利用することによ
り、容易に膜屋根を下部構造体の側壁上部に架設する膜
屋根構築方法と、かかる方法による構築と解体とが容易
な膜屋根構築体とに関する。
【0002】
【従来の技術】日本において膜構造による大規模施設の
屋根が作られるようになったのは、大阪の日本万国博覧
会以降のことであるとされている。そして、大阪の日本
万国博覧会では、例えば富士パピリオンとしてエアチュ
ーブ構造の屋根が構築されていた。
【0003】また、その他にも近年では、北部電力発電
所建屋工事用に仮設された空気膜仮設屋根のように、膜
材料を用いて形成された屋根の屋内側の空間に空気を送
込して、内部の空気圧力を高めて内部と外部との気圧差
により空気膜を構造的に維持する屋根や、秋田スカイド
ームのように、鉄骨造等の骨組に膜材を張り、屋根を形
成する骨組膜構造の屋根があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、エアチューブ
屋根の場合は、相当量の空気を使用するので大掛かりな
構築施設を必要とし、その構築及び解体が容易ではなか
った。一方、空気膜屋根の場合にも、構築に際して相当
量の空気を使用するのみならず、さらに屋内を加圧する
必要があるために屋内の気密性が必要とされ、その構築
及維持管理が容易ではなかった。その上、これらの屋根
の膜材は固定されており、これを自在に開閉したり、こ
れらに開口部を設けることは困難である。
【0005】そのため、例えば屋根の部分から資材の出
し入れができることが望ましいとされている地下躯体工
事の仮設屋根や、天候に合わせて屋根を開閉することが
望ましい運動施設等の屋根として適用するのは不適当で
ある等、その活用展開に限界があった。また、骨組膜構
造の場合は、骨組として重量が大きい鉄骨造等を使用す
るために、構築及び解体に当たり人手や大掛かりな工事
設備を必要とし、その構築及び解体がやはり容易ではな
かった。
【0006】そして、前記の従来の膜屋根の場合は、構
築する場合に精密さが要求されるので構築する度に改め
て設計を行い、その設計に合わせてそれぞれの部材を用
意する等する必要があり、その規模を変更するのは容易
ではなく、特に長大スパンの膜屋根の構築は困難であ
る。また、ある下部構造体の側壁上部に一度屋根として
設置した後には、使用した部材の転用、活用等をするこ
とができなかった。
【0007】さらに、前記の従来の膜屋根の場合には、
その設置に時間を要するにもかかわらず、落下物による
危険性等により下部構造体での作業と平行して膜屋根を
構築することはできなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は前記課
題を解決するために、前記の従来の技術とは本質的に異
なる膜屋根構築方法及び膜屋根構築体を提供する。すな
わち、本発明は、請求項1に記載したように、下部構造
体の側壁上部に膜屋根を架設する膜屋根構築方法におい
て、流体充填と流体抜きにより軸方向に伸縮自在な筒状
体に可撓性の案内部材を摺動可能に組み合わせ、前記筒
状体を複数、所定の間隔で並列させて、横倒防止部材を
それらの筒状体に交差させて取り付けると共に、前記筒
状体の間をシート材で連結して、前記筒状体を収縮させ
た状態でそれらの各一端部をそれぞれ前記下部構造体の
側壁上部に固定すると共に、前記案内部材を前記下部構
造体の側壁上部に架設し、前記筒状体内に前記各一端部
から流体を送込んで前記筒状体を伸延させることによ
り、前記筒状体を前記案内部材に沿わせて前記下部構造
体の側壁上部に張架して、前記筒状体の各自由端部を前
記側壁に対向する側壁上部に固定すると共に、前記横倒
防止部材を前記下部構造体の側壁上部に緊張させて固定
する、ことを特徴とする膜屋根構築方法に係る。
【0009】ここで、下部構造体の側壁上部とは、下部
構造体の側壁の上端面に屋根を架設するのみならず、下
部構造体が地下躯体である時には地下躯体の側壁上端面
付近の地面上に屋根を架設する場合等も含む意味であ
る。なお、筒状体としては、可撓性、気密性、耐久性等
に富む合成ゴムのチューブ等が適当であり、可撓性の案
内部材としては、比較的柔軟性に富み、強度に優れる鋼
線を撚り合わせたワイヤロープ等が適当である。
【0010】そして、シート材としては、ポリビニルア
セテート系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊
維及びガラス繊維、場合によってはステンレス鋼繊維の
ような金属繊維による織布をコーティング材料である塩
化ビニル樹脂、合成ゴム、フッ素樹脂等でコーティング
加工したもの等、種々あるが、膜屋根の構築目的、用途
に合わせて適宜選択する。
【0011】例えば、本発明による膜屋根を、テニス等
の球技施設、プール、イベント施設等の恒久建築物の屋
根として構築する場合には、四フッ素エチレン樹脂コー
ティングガラス繊維織布のように不燃性で恒久性のある
膜材料が好適であり、一方仮設建築物の屋根として構築
する場合には、例えば合成繊維織布を塩化ビニル樹脂で
コーティング加工した膜材料のように安価なものを使用
すれば良い。
【0012】また、筒状体に送込む流体には、空気等の
気体のみならず、例えばポリスチレン粒等の粒状の高分
子のように流動する固体も含まれる。仮設屋根として膜
屋根を構築する場合は、流体として気体を使用すると流
体充填と流体抜きが容易となる。一方、恒久建築物の屋
根として構築する場合には、例えば粒状の高分子を充填
して筒状体を伸延させ、その筒状体内の高分子を一旦溶
融して伸延後の筒状体と同様の形状となるように再固化
させ、より強度に優れた梁とすることも可能となる。あ
るいは、溶解した状態の熱硬化性樹脂を充填して、ヒー
タのような手段で加熱硬化させることもあり得る。
【0013】ここで、筒状体に流体を充填するのに当た
り、請求項2に記載したように、前記筒状体に送込む流
体に空気を用い、コンプレッサに接続され、且つ前記筒
状体の並列数に対応した長さの空気供給パイプと、前記
筒状体の並列間隔に対応した間隔で前記空気供給パイプ
に設けられた複数の空気供給口とを、収縮状態の前記筒
状体の各一端部が前記下部構造体の側壁上部に固定され
る位置に合わせて設置し、前記空気供給口と前記筒状体
とをそれぞれ連結して、前記コンプレッサにより前記筒
状体内に空気を充填すると好適である。
【0014】また、構築する膜屋根の規模を目的物に合
わせて自由に変えるには、請求項3に記載したように、
前記筒状体と前記案内部材とを、所定の長さに設定し、
前記シート材を、前記筒状体と前記案内部材との長さに
対応させて設定すると好適である。そして、請求項4に
記載したように、前記シート材に、開閉自在な開口部を
設けると、より実用的である。
【0015】前記の膜屋根構築方法により屋根を構築す
ることにより、請求項5に記載したように、下部構造体
の側壁上部に架設された梁とその梁に張られた膜材とで
なる膜屋根構築体において、前記梁は、流体充填と流体
抜きにより軸方向に伸縮自在であり、且つ複数の可撓性
の案内部材に案内されて、前記下部構造体の側壁上部に
所定の間隔で並列して張架された伸延状態の筒状体と、
前記筒状体と交差して前記下部構造体の側壁上部に張架
された横倒防止部材とでなり、前記膜材は、前記筒状体
の間を連結したシート材でなる、ことを特徴とする膜屋
根構築体を得ることができる。
【0016】ここで、屋根の開閉を容易に行うには、請
求項6に記載したように、前記筒状体は、空気充填によ
り伸延されており、その空気充填と空気抜き手段とし
て、コンプレッサと、そのコンプレッサに接続され、且
つ前記筒状体の並列数に対応した長さの空気供給パイプ
と、前記筒状体の並列間隔に対応した間隔で前記空気供
給パイプに設けられ、前記筒状体の各一端部にそれぞれ
連結された複数の空気供給口とを備えた前記膜屋根構築
体とすると好適である。
【0017】また、解体後に他の下部構造体に転用する
には、請求項7に記載したように、前記筒状体と前記案
内材とは、所定の長さに設定され、前記シート材は、前
記筒状体と前記案内材との長さに対応して設定された前
記膜屋根構築体とすると好適である。そして、地下躯体
工事に適用するには、請求項8に記載したように、前記
シートに、開閉自在な開口部を設けた前記膜屋根構築体
とすると好適である。
【0018】
【作用】本発明では、流体充填と流体抜きにより軸方向
に伸縮自在な筒状体に可撓性の案内部材を摺動可能に組
み合わせ、かかる筒状体を複数、所定の間隔で並列させ
て、横倒防止部材をそれらの筒状体に交差させて取り付
けることにより、膜屋根の梁となる各部材を予め構成し
ておく。そして、筒状体の間をシート材で連結すること
により、膜屋根の膜材も予め梁を構成する筒状体に一体
として構成しておく。
【0019】そして、これらの各部材を、以下に説明す
るように下部構造体の側壁上部に固定して膜屋根を構築
する。まず、筒状体内の流体を抜いて筒状体を収縮状態
にしておく。ここで、シート材は、折り畳み状としてお
くとその取り扱いが容易となる。そして、各筒状体の一
方の端部をそれぞれ下部構造体の側壁上部に固定すると
共に案内部材を下部構造体の側壁上部に架け渡して固定
する。ここで、案内部材を下向きのアーチを形成するよ
うに懸架させた場合には、筒状体を伸延状態として張架
することにより上向きのアーチ屋根となる。また、案内
部材を下部構造体の側壁上部に張架させた場合には、平
面屋根となる。従って、案内部材は、その目的、用途に
合わせてその架け渡し方を調節して用いる。
【0020】そして、筒状体内に各一端部から流体を送
込んで筒状体を伸延させることにより、筒状体を案内部
材に沿わせて下部構造体の側壁上部に張架して、各筒状
体の自由な端部をその伸延方向となる側壁上部に固定す
る。これと共に、横倒防止部材を下部構造体の側壁上部
に緊張させて固定することによりアーチ状の膜屋根又は
平面状の膜屋根を一括建築する。
【0021】ここで、横倒防止材を下部構造体の側壁上
部に緊張させて固定するので、筒状体の並列方向に対し
て方向性を持った固定手段となり、膜屋根の横倒れを防
止する。本発明では、膜屋根の構築に際して使用する流
体は、梁を形成する筒状体の充填用のみであり、さらに
膜屋根は、鉄骨等に比べてその重量が小さい筒状体と横
倒防止部材とにより支えられている。従って、屋内の加
圧は不要であり、人手や大掛かりな工事設備を用いない
でその構築及び解体が行われる。
【0022】また、筒状体を収縮状態とし、さらに予め
筒状体に取り付けておいたシート材も折り畳み状態とし
て、可撓性の案内部材を下部構造体の側壁上部に架け渡
すことにより、従来の膜屋根のように構築する際の精密
さが要求されず、かかる膜屋根を地下躯体工事に適用す
るに当たり、地下躯体内は落下物による危険性等もな
い。そして、筒状体内に流体を充填することにより、短
時間に膜屋根が構築される。
【0023】そして、構築後の膜屋根は、筒状体内に流
体を充填又はその流体を抜くことにより開閉する。ま
た、かかる膜屋根を構成する各部材は、筒状体内の流体
を抜いた後に、下部構造体の側壁上部に固定された各部
材を解除することにより、何ら損傷を受けることなく、
容易に回収される。ここで、筒状体に送込む流体に空気
を用いれば、空気充填及び空気抜きは容易になされる。
そして、コンプレッサに接続され、且つ筒状体の並列数
に対応した長さの空気供給パイプと、筒状体の並列間隔
に対応した間隔で空気供給パイプに設けられた複数の空
気供給口とを、収縮状態の筒状体の各一端部が下部構造
体の側壁上部に固定される位置に合わせて設置し、空気
供給口と筒状体とをそれぞれ連結して、コンプレッサに
より筒状体内に空気を充填することにより、各円筒体に
一括して空気が送り込まれて各円筒体が均等に伸延す
る。
【0024】また、コンプレッサにより空気を供給する
ことにより構築時間も短縮される。その上、構築後に筒
状体内の空気を抜いて膜屋根を開けた後に、再度円筒体
に空気を充填して屋根を閉じることも容易となる。そし
て、筒状体と案内部材とを所定の長さに設定し、シート
材を筒状体と案内部材との長さに対応させて設定すれ
ば、膜屋根の構成部材は規格化されて、その使用する数
を増減することにより、種々の大きさの膜屋根が構築さ
れる。
【0025】さらに、シート材に設けられた開閉自在な
開口部により、構築後の膜屋根の膜材の一部が開閉され
る。
【0026】
【実施例】次に、本発明を図面に示した実施例に基づい
て説明する。図1は、本実施例の膜屋根構築方法の手順
を説明する斜視図であり、(a)は各部材の設置状態を
示し、(b)は完成した膜屋根構築体を示している。ま
た、図2、図3及び図4は図1の一部拡大図である。
【0027】以下に、膜屋根Aの梁とその膜材となる各
部材の構成を説明する。図中Bは、膜屋根Aをその側壁
上部に架設する下部構造体(例えば山留壁)であり、本
実施例では、地下躯体である。この地下躯体Bは、地面
下に構築された箱型の構造体であり、その側壁上端面は
地面の上に出ている。また、図中Cは、装置等を据え付
ける基礎である。
【0028】図中1は案内部材となるガイドワイヤであ
る。このガイドワイヤ1は、可撓性であり、鋼線を撚り
合わせたワイヤロープを前記地下躯体Bの上方でアーチ
状の屋根を形成するような長さとしたものである。図中
2は筒状体として用意されたエアチューブである。エア
チューブ2は合成ゴムのチューブで成り、このチューブ
は、可撓性、気密性及び耐久性に富みその一端を封止し
て他端より空気を送込んでその内部に空気を充填すると
軸方向に伸延して伸延状態となり、その空気を抜くと収
縮状態となるものである。そして、エアチューブ2は、
かかるチューブを前記ガイドワイヤ1の長さに合わせた
ものである。エアチューブ2の外周には、小リング3a
を備えた補強布バンド3が適宜間を開けて巻かれてい
る。そして、前記ガイドワイヤ1は、エアチューブ2の
外周に沿うようにして前記小リング3aに挿通されてい
る。
【0029】また、エアチューブ2の両端の外周には、
エアチューブ固定具4、5が各々取り付けられている。
前記エアチューブ固定具4は、特に図2に示すようにそ
の先端にエアチューブ2より小径の厚手ゴム製の円筒チ
ューブ4aを備えている。一方、前記エアチューブ固定
具5の端面は、特に図3に示すようにエアチューブ2の
端部を封止しており、エアチューブ固定具5の端面には
面を貫通しないように雌ねじに切られた穴が設けられて
いる。
【0030】図中6はシート材である。このシート材6
は、ポリビニルアセテート系の合成繊維による織布を塩
化ビニル樹脂でコーティング加工したものである。な
お、シート材6の長さは前記エアチューブ2と同じであ
り、その幅は所定幅に設定されている。そして、特に図
4に示すようにエアチューブ2はシート材6の幅に対応
した間隔で複数、並列しており、シート材6はエアチュ
ーブ2の並列に合わせて複数、展開して配設されてい
る。これらの各エアチューブ2と各シート材6とは、前
記補強布バンド3が巻き付けられたエアチューブ2の上
にその長さ方向に沿って載置された可撓性の塩化ビニル
シートで成る連結シート7を補強布バンド3に固定し、
この連結シート7が上側となるように連結シート7の側
辺部とシート材6の側辺部とを合わせてボルト締めする
ことにより、固定されている。なお、マジックテープ
等、他の接続手段を用いても良いのは勿論である。
【0031】すなわち、各エアチューブ2の間は、シー
ト材6により連結されており、またシート材6は、その
継ぎ目より雨水等が入り込まないようにエアチューブ2
に設置されている。また、一のシート材6には、その一
部を開閉自在な開口部8とするファスナ8aが備えられ
ている。なお、シート材6とエアチューブ2とが一体と
なり、シート材6の継ぎ目より雨水等が入り込まない限
り、シート材6によるエアチューブ2の連結には他の構
成を採用しても良いのは勿論である。例えば、シート材
6を、各エアチューブ2の上面で二枚のシート材6の各
側辺部が上下となって重なり合い、各シート材6が張ら
れた状態となる時にはその重なり合う部分に隙間が生じ
ないようエアチューブ2の並列に合わせて配設して、各
シート材6の重なり合う部分と補強布バンド3とをボル
ト締めしても良い。
【0032】また、雨水等が入り込むのを防ぐために、
ゴムパッキング等を利用することも可能である。図中9
a及び9bとは、横倒防止部材を構成するジョイントワ
イヤ及びトラワイヤである。二本のジョイントワイヤ9
aは、前記エアチューブ2の長さをそれら二本でほぼ三
等分するような位置で各エアチューブ2の長さ方向に直
交するようにそれぞれ固定されており、前記シート材6
と合わせて各エアチューブ2の間を連結している。な
お、ジョイントワイヤ9aの固定方法は、前記連結シー
ト7の一部上面にリングを設けて、そのリングにジョイ
ントワイヤ9aを挿通させることにより前記エアチュー
ブ2に固定する方法である。そして、四本のトラワイヤ
9bは、各ジョイントワイヤ9aの両端部にそれぞれ締
結されている。
【0033】図中10は、空気供給パイプである。この
空気供給パイプ10の一端は閉塞しており、他端は肉厚
のゴム管11aによりコンプレッサ11に接続してい
る。そして、空気供給パイプ10には、前記エアチュー
ブの並列間隔に合わせた供給管10aが備えられてい
る。この供給管10aは、図2に示すように、エアチュ
ーブ2が空気充填によりアーチ状となった際に、そのエ
アチューブ2の軸方向と供給管10aに締結した前記円
筒チューブ4aの軸方向とが一致するように湾曲してい
る。また、空気供給パイプ10も、供給管10aにその
角度を維持させるように、設置台12aに載置されてい
る。
【0034】なお、前記地下躯体Bの一の側壁上端面に
は、図2及び図3に示すように、空気供給パイプ10が
固定金具12bにより固定されており、さらにガイドワ
イヤ1とエアチューブ2とを固定する固定金具12c
が、適宜固定されている。また、図1(a)に示すよう
に、前記エアチューブ2は空気を抜いて収縮状態にして
おく。ここで、シート材6は折り畳むようにして束ねて
おく。
【0035】次に、これらの各部材を地下躯体Bの側壁
上端面に固定して仮設の膜屋根Aを構築する方法につい
て説明する。まず、収縮状態の前記エアチューブ2を地
下躯体Bの側壁上端面の空気供給パイプ10が固定され
ている所に設置する。次に、図2に示すように、エアチ
ューブ固定具4を固定金具12cで固定することによ
り、エアチューブ2の一端を地下躯体Bの側壁上端面に
固定する。それと共にガイドワイヤ1の一端も固定金具
12cで固定する。その後に、各円筒チューブ4aにそ
れぞれ供給管10aを差し込んで締着する。なお、図2
において、シート材6は省略してある。
【0036】そして、ガイドワイヤ1を収縮状態のエア
チューブ2が設置されている地下躯体Bの側壁上端面か
らこれに対向する側壁上端面へと架け渡し、地下躯体B
の側壁上端面でガイドワイヤ1が懸架されるように固定
金具12cでその先端を固定する。次に、コンプレッサ
11を駆動して、その圧縮空気を空気供給パイプ10と
供給管10aとを経由させてエアチューブ2内に送込す
ることにより、エアチューブ2は、ガイドワイヤ1に沿
って伸延し、それに従って折り畳み状のシート材6も展
開されていく。そして、エアチューブ2内に空気が十分
に充填されて延びきった状態となると、図1(b)に示
すように、地下躯体Bの側壁上端面にシート材6によっ
てアーチ状の膜が形成される。なお、空気充填後は、単
にコンプレッサ11を停止するのみでも良いが、各円筒
チューブ4aをピンチコック等で閉塞したり、コンプレ
ッサ11に接続しているゴム管11aを閉塞することに
より、エアチューブ2内の気密性を維持する。
【0037】ここで、図3に示すように、エアチューブ
固定具5の端面と固定金具12cとをボルトで締結する
ことにより、各エアチューブ2の自由な端部を地下躯体
Bの側壁上端面に固定し、トラワイヤ9bの先端を地下
躯体Bの側壁上端面に取り付けてアーチ状の膜屋根Aを
構築する。ここで、各ガイドワイヤ1の張度が均一にな
るように端部で調節し、次にトラワイヤ9bの張度を調
節する。これにより、エアチューブ2は、縦及び横方向
に均一な張力が付与される。従って、膜屋根Aは、その
横倒れも防止され、その作業空間を維持するができる。
そして、この膜屋根Aは、一のシート材6に設けられた
ファスナ8aによる開閉自在な開口部8を有し、これを
利用して資材等の搬出及び搬入を行う。また、大きな資
材等を搬出又は搬入する時には、一旦エアチューブ2内
の空気を抜いて膜屋根Aが開いた状態にすることもでき
る。
【0038】そして、地下躯体Bの工事が終了した時に
は、かかる膜屋根Aは、次のように撤去すれば良い。ま
ず、エアチューブ2内の空気を抜き、エアチューブ固定
具5の端面と固定金具12cとの締結を解除する。そし
て、トラワイヤ9bの先端を地下躯体Bの側壁上端面よ
り取り外し、地下躯体Bの側壁上端面に懸架されている
ガイドワイヤ1を利用して、各エアチューブ2とこれら
を連結したシート材6とを、空気供給パイプ10固定側
の地下躯体Bの側壁上端面付近に回収する。そして、ガ
イドワイヤ1の両端とエアチューブ2の固定されている
方の先端を地下躯体Bの側壁上端面より取り外す。
【0039】そして、一旦撤去した後の各部材はそのま
ま保存しておき、次の下部構造体に利用する時には、再
度前記の手順で架設する。この時、連結する各部材の数
量を変えることにより、その下部構造体の大きさに合わ
せた膜屋根を構築することができる。本実施例の膜屋根
を構築する方法によれば、大掛かりな構築工事は必要と
せず短時間且つ容易に一括して地下躯体Bの側壁上端面
にアーチ状の仮設の膜屋根Aを構築することができる。
この膜屋根Aは、その膜材の開閉が自在であるので、地
下躯体B内に工事に必要な資材を容易に搬入したり、そ
こから搬出することができる。さらに、構築された膜屋
根Aの解体も容易であり、解体後に他の下部構造体に再
利用することもできる。また、各部材の連結数を変える
ことにより種々の大きさの下部構造体に対応することが
できる。
【0040】なお、本実施例は、膜屋根を構成する各部
材を容易に架設することができるように、地下躯体の屋
根として構築しているが、地上躯体や運動施設の屋根と
して構築する時には、足場や先行鉄骨、躯体等を利用す
れば良い。また、本発明は、前記の実施例にとらわれる
ことなく、種々の態様で実施できるのは勿論である。
【0041】
【発明の効果】本発明の膜屋根構築方法によれば、大掛
かりな構築工事は必要とせず短時間且つ容易にアーチ型
又は平面型の膜屋根構築体を得ることができた。その
上、膜屋根構築作業と下部構造体での他作業とを並行す
ることができるので、仮設屋根として利用すれば、工事
全体の施行時間を短縮することができる。また、構築に
際し、流体として空気を使用すれば、流体の価格は低廉
化される。そして、空気を使用した場合は、従来の膜屋
根に比べて使用する空気の量が少ないので、膜屋根の構
築に要する費用を低廉化することができた。
【0042】本発明による膜屋根構築体は、その解体も
容易であり、解体後は膜屋根を構成する各部材を転用す
ることも可能である。そして、かかる膜屋根構築体は、
空気膜屋根のように空間内の気密性を維持する必要がな
いので、その維持管理が容易となった。そして、かかる
膜屋根構築体は、屋根の開閉が自由なので、地下躯体工
事又は地上躯体工事における仮設屋根としたり、天候に
より屋根を開閉する運動施設屋根とする等、目的に応じ
た活用展開が可能となった。
【0043】また、流体として空気を使用し、コンプレ
ッサに接続された空気供給パイプに設けられた空気供給
口と筒状体とを連結したことにより、膜屋根の構築がよ
り容易になり、膜屋根構築体の開閉も容易となった。さ
らに、筒状体と案内材とシート材とを規格化したことに
より、目的に応じて構築する膜屋根の規模を自由に変え
ることが容易となり、さらに、長大スパンの膜屋根も容
易に構築することができるようになった。
【0044】そして、シート材に、開閉自在な開口部を
設けたので、所要の空間を維持したままで膜材の任意の
場所を開閉することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る膜屋根構築方法の手順を説明す
る斜視図である。
【図2】各部材の固定方法を説明する図1の一部拡大断
面図である。
【図3】各部材の固定方法を説明する図1の一部拡大断
面図である。
【図4】各部材間の取り付け方法を説明する図1の一部
拡大断面図である。
【符号の説明】
A 膜屋根(構築体) B 地下躯体(下部構造体) 1 ガイドワイヤ(案内部材) 2 エアチューブ(円筒体) 6 シート材 8 開口部 9a ジョイントワイヤ(横倒防止部材) 9b トラワイヤ(横倒防止部材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E04B 7/08 E04H 15/20

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部構造体の側壁上部に膜屋根を架設す
    る膜屋根構築方法において、流体充填と流体抜きにより
    軸方向に伸縮自在な筒状体に可撓性の案内部材を摺動可
    能に組み合わせ、前記筒状体を複数、所定の間隔で並列
    させて、横倒防止部材をそれらの筒状体に交差させて取
    り付けると共に、前記筒状体の間をシート材で連結し
    て、前記筒状体を収縮させた状態でそれらの各一端部を
    それぞれ前記下部構造体の側壁上部に固定すると共に、
    前記案内部材を前記側壁上部に架設し、前記筒状体内に
    前記各一端部から流体を送込んで前記筒状体を伸延させ
    ることにより、前記筒状体を前記案内部材に沿わせて前
    記側壁上部に張架して、前記筒状体の各自由端部を前記
    側壁に対向する側壁上部に固定すると共に、前記横倒防
    止部材を前記下部構造体の側壁上部に緊張させて固定す
    る、ことを特徴とする膜屋根構築方法。
  2. 【請求項2】 前記筒状体に送込む流体に空気を用い、
    コンプレッサに接続され、且つ前記筒状体の並列数に対
    応した長さの空気供給パイプと、前記筒状体の並列間隔
    に対応した間隔で前記空気供給パイプに設けられた複数
    の空気供給口とを、収縮状態の前記筒状体の各一端部が
    前記下部構造体の側壁上部に固定される位置に合わせて
    設置し、前記空気供給口と前記筒状体とをそれぞれ連結
    して、前記コンプレッサにより前記筒状体内に空気を充
    填する、ことを特徴とする請求項1に記載の膜屋根構築
    方法。
  3. 【請求項3】 前記筒状体と前記案内部材とを、所定の
    長さに設定し、前記シート材を、前記筒状体と前記案内
    部材との長さに対応させて設定する、ことを特徴とする
    請求項1又は請求項2に記載の膜屋根構築方法。
  4. 【請求項4】 前記シート材に、開閉自在な開口部を設
    ける、ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項
    3に記載の膜屋根構築方法。
  5. 【請求項5】 下部構造体の側壁上部に架設された梁と
    その梁に張られた膜材とでなる膜屋根構築体において、
    前記梁は、流体充填と流体抜きにより軸方向に伸縮自在
    であり、且つ複数の可撓性の案内部材に案内されて、前
    記下部構造体の側壁上部に所定の間隔で並列して張架さ
    れた伸延状態の筒状体と、前記筒状体と交差して前記下
    部構造体の側壁上部に張架された横倒防止部材とでな
    り、前記膜材は、前記筒状体の間を連結したシート材で
    なる、ことを特徴とする膜屋根構築体。
  6. 【請求項6】 前記筒状体は、空気充填により伸延され
    ており、その空気充填と空気抜き手段として、コンプレ
    ッサと、そのコンプレッサに接続され、且つ前記筒状体
    の並列数に対応した長さの空気供給パイプと、前記筒状
    体の並列間隔に対応した間隔で前記空気供給パイプに設
    けられ、前記筒状体の各一端部にそれぞれ連結された複
    数の空気供給口とを備えた、ことを特徴とする請求項5
    に記載の膜屋根構築体。
  7. 【請求項7】 前記筒状体と前記案内材とは、所定の長
    さに設定され、前記シート材は、前記筒状体と前記案内
    材との長さに対応して設定された、ことを特徴とする請
    求項5又は請求項6に記載の膜屋根構築体。
  8. 【請求項8】 前記シートに、開閉自在な開口部を設け
    た、ことを特徴とする請求項5、請求項6又は請求項7
    に記載の膜屋根構築体。
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