JP2863583B2 - Cr―Ni系耐熱鋼 - Google Patents

Cr―Ni系耐熱鋼

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JP2863583B2
JP2863583B2 JP1243690A JP1243690A JP2863583B2 JP 2863583 B2 JP2863583 B2 JP 2863583B2 JP 1243690 A JP1243690 A JP 1243690A JP 1243690 A JP1243690 A JP 1243690A JP 2863583 B2 JP2863583 B2 JP 2863583B2
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【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 (産業上の利用分野) 本発明は、高温化でのクリープ破断強度(高温強度)
が高くかつ耐酸化性に優れたCr−Ni系耐熱鋼、および高
温強度が高くかつ経済性に優れたCr−Ni系耐熱鋼に関す
る。
(従来の技術) 石油化学プラントにおいて石油精製用水素、アンモニ
ア、メタノール、エチレンなどの製造に用いる改質器反
応管や分解炉用反応管、また燃料電池プラントにおいて
燃料電池用水素の製造に用いる改質器反応管等において
は、ASTM規格HK40(JIS:SCH22に相当)の25Cr−20Ni鋼
やASTM規格HP(JIS:SCH24に相当)の25Cr−35Ni鋼等の
耐熱鋼が広く用いられている。これらの耐熱鋼は、特に
優れた耐熱性を有するという特長がある。
(発明が解決しようとする課題) ところで、上述の反応管類は遠心鋳造によって製造さ
れるが、耐熱鋼はクリープ破断強度が低いため、通常厚
肉構造とせざるを得ない。しかし、そうすると温度変化
時の熱応力が増大して、上述の反応管の使用開始・停止
時の熱疲労損傷が大きくなる。このため、上述の反応管
は操業温度を高くすれば収率が向上するにも拘わず、温
度を収率改善のできる程度まで上昇させることができな
かった。また厚肉構造は熱効率の改善、すなわち操業温
度の上昇に係る燃料消費量の節減という経済性の点でも
好ましくない。
そこで、上述の欠点をある程度解消できる鋼として、
0.3C−24Cr−24Ni−1.5Nb−残部Feという組成や0.4C−2
5Cr−35Ni−1.5Nb−残部Feという組成を有する耐熱鋼が
開発された。これらの耐熱鋼は、高温下での高いクリー
プ強度という要求をある程度満たして薄肉構造にでき
る。
しかし、操業時の高温化、燃料消費量の節減という要
求は、近年さらに高くなっている。このため、前述のニ
オブを含む耐熱鋼に、さらにチタン、アルミニウム、窒
素、ホウ素の元素を1種類または数種類含有させてクリ
ープ破断強度の強化を図った耐熱鋼も提案されている。
ところが、操業が高温下で行われるようになると、反応
管等の鋳造品の表面にはスケールを生じさせる酸化が促
進される。そして、この酸化スケールは、剥離すると鋳
造品が損失し、さらにその剥離した箇所に酸化スケール
が形成されるという悪循環を招くが、上述の耐熱鋼は、
いずれもこの酸化に対する耐性は十分とはいえなかっ
た。
またニッケルは、耐熱元素であるだけでなく、鋼に靭
性を与える効果も有するが、反面、高価であるという難
点がある。このため、鋼について同程度のクリープ破断
強度を達成できるならば、ニッケルの含有量は少ないほ
うが低コストで鋳造できる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高温化で
高いクリープ破断強度を達成しながらかつ耐酸化性に優
れたCr−Ni系耐熱鋼、および高温強度と経済性の両方を
兼ね備えたCr−Ni系耐熱鋼を提供することを目的とす
る。
〔発明の構成〕
(課題を解決するための手段) 本発明は上記課題を解決するために、まず高温での高
いクリープ破断強度と耐酸化性を有する耐熱鋼として、
炭素を0.2を超えて0.6重量%以下、ケイ素を2.0重量%
以下、マンガンを2.0重量%以下、クロムを20〜35重量
%、ニッケルを20〜40重量%、ジルコニウムを0.05〜0.
50重量%、チタンを0.05〜0.30重量%、ニオブを0.2〜
2.0重量%およびモリブデンを0.5〜10.0重量%含み、か
つ残部に鉄を含むCr−Ni系耐熱鋼を提供する。
また本発明は、この目的達成のため、上述の組成にさ
らに0.5〜10.0重量%のタングステン、0.05〜1.00重量
%のバナジウム、0.03〜0.20重量%の窒素、0.0005〜0.
1000重量%のアルミニウムおよび0.0005〜0.1000重量%
のホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を
含有するCr−Ni系耐熱鋼も提供する。
この他、本発明は、高温下での高いクリープ破断強度
と低コストという経済性を達成するCr−Ni系耐熱鋼とし
て炭素を0.2〜0.6重量%、ケイ素を2.0重量%以下、マ
ンガンを5〜20重量%、クロムを20〜35重量%、ニッケ
ルを5〜15重量%、バナジウムを0.1〜2.0重量%および
窒素を0.03〜0.30重量%含んでマンガンとニッケルの合
計が15〜35重量%であり、かつ残部に鉄を含むCr−Ni系
耐熱鋼を提供する。
また本発明は、同じ目的達成のため、上述の組成にさ
らに0.05〜0.50重量%のジルコニウム、0.05〜0.30重量
%のチタン、0.2〜2.0重量%のニオブ、0.5〜10.0重量
%のモリブデン、0.5〜10.0重量%のタングステン、0.0
005〜0.1000重量%のアルミニウムおよび0.0005〜0.100
0重量%のホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1
種以上を含有するCr−Ni系耐熱鋼を提供する。
(作用) 第一、第二の発明に係るCr−Ni系耐熱鋼は、いずれも
鉄に炭素の他、ニッケル、クロムおよびマンガンが固溶
するため、常温でもオーステナイト組織となり、耐熱性
元素であるニッケル、ケイ素、クロム、マンガンのため
良好な耐熱性を発揮する。そして、第一の発明に係る耐
熱鋼においては、ジルコニウム、チタン、ニオブおよび
モリブデンが炭化物を形成してマトリックスに微細均一
に析出し、耐熱鋼の高温下でのクリープ破断強度を高め
る。またモリブデンは析出しきれなかった分がマトリッ
クスに固溶し、ジルコニウムは粒界の強度を強化し延性
を向上させることによって、それぞれ耐熱鋼のクリープ
強度増進に寄与する。
さらに、ジルコニウムは、酸化スケールの剥離を防止
する有効を有することが分った。したがって、酸化スケ
ールの剥離による鋼材の損失も抑えられる。
この他、上述の元素の外、タングステン、バナジウ
ム、窒素、アルミニウムおよびホウ素を有する第二の発
明に係る耐熱鋼は、タングステンとバナジウムが上述の
ジルコニウム、チタン、ニオブおよびモリブデンととも
に炭化物を形成してマトリックスに微細均一に析出す
る。このため、前述と同様の作用によって高温下での耐
熱鋼のクリープ破断強度が高まる。また、窒素は、上述
の金属の炭化物において一部炭素と置換し、炭化物を同
じく微細な炭窒化物とすることによって一層クリープ破
断強度を高める。
さらに、タングステンと窒素は析出しきれなかった分
がマトリックスに固溶し、ホウ素は粒界の強度を強化し
延性を向上させることによって、それぞれ耐熱鋼のクリ
ープ強度増進に寄与する。またホウ素は前述のジルコニ
ウムと同様に、粒界の強度を強化し延性を向上させる
が、アルミニウムは、窒素などのガス成分と粒界で化合
物を生成し、粒界でガス成分を固定(脱ガス)すること
によって、ガスに起因するもろさを抑え、ホウ素とジル
コニウムの粒界強度作用を助ける。
また第三の発明は、高価なニッケルを5〜15重量%以
下しか含まず、他に炭素、ケイ素、マンガン、クロム、
バナジウムおよび窒素を含む耐熱鋼を提供する。この耐
熱鋼においては、マンガンがニッケルの機能を一部代替
してオーステナイト組織を形成し、さらにニッケルの減
少によって生ずる可能性のある金属炭化物の粗大な凝縮
は、バナジウムと窒素によって抑制する。よって、この
耐熱鋼によれば、高温強度と低コストの2つを同時に達
成できる。
さらに、第四の発明は、上述の高温強度と低コストと
いう共通の目的を達成する耐熱鋼として、上述の成分の
外に、ジルコニウム、チタン、ニオブ、モリブデン、タ
ングステン、アルミニウムおよびホウ素の少なくとも1
種を含む耐熱鋼を提供する。これらの元素は、いずれも
クリープ強度の強化に寄与することによって、低コスト
ながら高温強度の高い耐熱鋼を実現する。
以下に本発明の各耐熱鋼の性質と構成元素の関係を詳
しく説明する。
本発明の各Cr−Ni系耐熱鋼は、オーステナイト組織で
あるが、高温強度と耐酸化性を実現する第一と第二の発
明に係る耐熱鋼の場合、まず第一の発明に係る耐熱鋼
は、少なくとも炭素を0.2を超えて0.6重量%以下、ケイ
素を2.0重量%以下、マンガンを2.0重量%以下、クロム
を20〜35重量%、ニッケルを20〜40重量%、ジルコニウ
ムを0.05〜0.50重量%、チタンを0.05〜0.30重量%、ニ
オブを0.2〜2.0重量%およびモリブデンを0.5〜10.0重
量%含む。また第二の発明に係る耐熱鋼は、さらに0.5
〜10.0重量%のタングステン、0.05〜1.00重量%のバナ
ジウム、0.03〜0.20重量%の窒素、0.0005〜0.1000重量
%のアルミニウムおよび0.0005〜0.1000重量%のホウ素
からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する
ことができる。そこで、以下に上述の元素を含ませる理
由と数値範囲の意義を説明する。なお、以下において
は、%はすべて重量%を示す。
炭素は、クロムおよびニッケルとともにオーステナイ
ト組織を安定させる成分である。そして、他の金属元素
とともに炭化物を形成してマトリックスに微細析出し、
高温下でのクリープ破断強度を高める。また鋳造時には
湯流性を良好にする作用もある。この作用を発揮させる
ためには0.2%を起こ超える必要がある。しかし、0.6%
を越えるとこの効果は飽和し、靭性の低下も起こるた
め、含有量は0.2を超えて0.6%以下にする。
ケイ素は、酸化鉄FeOから還元して鉄を得る場合、そ
の中に残存する酸素を除いたり、湯流性の改善や浸炭の
防止(靭性を低下させる)の防止のために添加するが、
過剰に添加すると溶接性を悪化させたり、高温での使用
時に有害なσ相(FeCrを主体とした脆い非磁性の金属間
化合物の固溶体)を生じさせやすくするため、2.0%以
下にとどめる。
マンガンは、溶製時の脱酸剤として、および製鋼時に
用いられる調合剤に含有されるイオウを固定して、それ
ぞれのガス成分によるもろさの悪影響を除去するために
用いられるが、過剰に加えると耐酸化性(酸化は仕上面
を荒らす)が悪化する。そこで、添加量は2.0%以下に
とどめる。
クロムは、炭化物を析出して高温強度を増すととも
に、耐浸炭性と高温における耐酸化性を高めるために必
要であるが、1000℃を超える温度で使用される部材につ
いては、20%以上ないとその作用は発揮されない。しか
し大量に加えると、高温長時間の使用下においてはσ相
を生成して強度や靭性の低下を来すため、その添加量は
20〜35%にする。
ニッケルはオーステナイト組織を安定させる成分であ
るとともに、耐酸化性、耐浸炭性を高め、さらに結晶粒
の成長を防いで高温強度を増す性質がある。この効果は
15%以上の場合に顕著に発揮されるが、大量に加えると
その効果は飽和し、経済性の点からも好ましくないの
で、20〜40%にする。
以下は、本発明の特徴となるニオブ、ジルコニウム、
チタンおよびモリブデンについて説明する。
まずニオブは、微細な炭化物を形成し、マトリックス
中に均一に分散・析出して、耐熱鋼のクリープ強度を高
める。また耐浸炭性の向上にも寄与する。このような効
果を発揮させるためには、0.2%以上必要であるが、多
量に添加すると溶接性が悪化し、かつ靭性も低下する。
よって、その添加量は0.2〜2.0%にする。
チタンは、微細な炭化物をマトリックス中に均一に分
散・析出して、耐熱鋼のクリープ強度を高める。この効
果を発揮させるためには、チタンは0.05%以上を必要と
するが、多量に添加すると酸化物系や硫化物系の非金属
介在物を増加させて強度を低下させる。よって、その添
加量は0.05〜0.30%にする。
ジルコニウムは、粒界を強化、延性を向上し、また微
細な炭化物をマトリックス中に均一に分散・析出して、
耐熱鋼のクリープ強度を高めるとともに、酸化スケール
の剥離を防止して、剥離−鋼材滅失−酸化の悪循環を断
ち切る。この効果を発揮させるためには、ジルコニウム
は0.05%以上を必要とするが、多量に添加すると酸化物
系や硫化物系の非金属介在物を増加させる一方で、ニオ
ブやチタンの微細炭化物の析出料を減少させるため、靭
性やクリープ破断強度の低下を招く。よって、その添加
量は0.05〜0.50%にする。
モリブデンは、上記3つの元素とともに微細な炭化物
をマトリックス中に均一に分散・析出するとともに、析
出できなかった残部もマトリックスに固溶して高温強度
を向上させる。この効果を発揮させるためには、モリブ
デンは少くとも0.5%以上必要であるが、多量に添加す
るとδ−フェライトを生成させて強度を低下させる。よ
って、添加量は0.5〜10.0%とする。
ところで、第二の発明は、上述の組成に加えて、さら
にタングステン、バナジウム、ホウ素、窒素およびアル
ミニウムを含むことのできるCr−Ni系耐熱鋼を提供する
が、以下ではこれらの追加的に含まれる元素の添加理由
とその添加量の意義を説明する。
まずタングステンは、モリブデンと同様に、微細な炭
化物をマトリックス中に均一に分散・析出させ、かつ残
部もマトリックスに固溶して高温強度を向上させる。こ
のためには、タングステンは少なくとも0.5%以上必要
であるが、多量に添加するとδ−フェライトを生成させ
て靭性を低下させる。よって、タングステの添加量は0.
5〜10.0%とする。
バナジウムも、微細な炭化物をマトリックス中に均一
に分散・析出させ、高温強度を向上させる元素である。
このためには、バナジウムは少なくとも0.05%以上必要
であるが、多量に添加するとδ−フェライトを生成させ
て靭性を低下させる。よって、添加量は0.05〜1.00%と
する。
ホウ素は前述のジルコニウムと同様に、粒界を強化し
延性を向上してクリープ強度を高める。この効果を発揮
させるためには0.0005%以上必要であるが、0.1000%を
超えるとその効果は飽和する。そこで、添加量は0.0005
〜0.1000%とする。
窒素は上述の金属元素の炭化物において炭素を一部置
換して炭窒化物を形成し、高温強度の改善に寄与する。
また窒素はオーステナイト化促進元素であり、δ−フェ
ライトの生成を防止する役割も果たす。この効果は0.03
%以上含有させることによって得られるが、多量に含有
させると靭性の著しい低下がみられる。したがって含有
量は0.03〜0.20%とする。
アルミニウムは粒界ガス成分を固定して、上述のホウ
素やジルコニウムによる粒界強化作用を有効に発揮させ
る。このためには0.0005%以上の含有が必要であるが、
多量になると粒界偏析による強度の低下が生じる。した
がって、アルミニウム含有量は0.0005〜0.1000%にす
る。
また第三および第四の発明はクリープ強度とNi含有量
を減らすことによる低コストを同時に達成する耐熱鋼を
提供する。すなわち第三の発明に係る耐熱鋼は、少なく
とも炭素を0.2〜0.6重量%、ケイ素を2.0重量%以下、
マンガンを5〜20重量%、クロムを20〜35重量%、ニッ
ケルを5〜15重量%、バナジウムを0.1〜2.0重量%およ
び窒素を0.03〜0.30重量%含む。また第四の発明に係る
耐熱鋼は、さらに0.05〜0.50重量%のジルコニウム、0.
05〜0.30重量%のチタン、0.2〜2.0重量%のニオブ、0.
5〜10.0重量%のモリブデン0.0005〜0.1000重量%のア
ルミニウムおよび0.0005〜0.1000重量%のホウ素からな
る群より選ばれる少なくとも1種以上を含有することが
できる。そこで、以下に上述の元素を含ませる理由と数
値範囲の意義について、先の記述と重複しない点を説明
する。
ニッケルは、上述のようにオーステナイト組織を安定
させる成分であるとともに、耐酸化性、耐浸炭性を高
め、さらに結晶粒の成長を防いで高温強度を増す性質が
ある。そしてこの効果は、以下に述べるバナジウムと窒
素が所定量ある場合は15%以下でも発揮させることがで
きる。ニッケルは非常に効果で製造コストを押し上げる
原因となるので、この耐熱鋼においては、ニッケルの含
有量は5〜15%にとどめた。
マンガンは、第三、第四の発明においてはニッケルが
果しているオーステナイト組織の安定化機能を代替する
ため5%以上必要である。しかし20%を超えると高温使
用時に析出炭化物の凝集が粗大化して強度が低下する。
しがって含有量は5〜20%にする。
ところで、ニッケルとマンガンは、それぞれの含有量
の限定に加えて、オーステナイト組織安定化の観点から
合計の含有量を15%以上とする。ただし、この含有量が
あまり高くなると、ニッケルによる高温強度・耐酸化性
・耐浸炭性の改善効果が飽和するだけでなく、経済性の
向上という主旨にも反する。そこで合計含有量は15〜35
%にする。
バナジウムは、上述のように微細な炭化物をマトリッ
クス中に均一に分散・析出させ、高温強度を向上させる
元素であるが、M(主にFe)23C6型の金属炭化物が凝集
して粗大化するのを抑制するため、ニッケルの減少分を
補ってクリープ強度を強化する。このためには0.1%以
上添加する必要があるが、あまり多すぎるとδ−フェラ
イトを生成させて靭性を低下させる。よって、添加量は
0.1〜2.0%とする。
窒素は、前に述べた通り、金属元素の炭化物において
炭素を一部置換して炭窒化物を形成するが、この際バナ
ジウムと同様にM23C6型の金属炭化物が凝集して粗大化
するのを抑制する。したがって、この窒素もニッケルの
減少分を補って、高温強度の改善に寄与する。この効果
は0.03%以上含有させることによって得られるが、多量
に含有させると靭性の著しい低下がみられる。したがっ
て含有量は0.03〜0.30%とする。
(実施例) まず、以下に第一、第二の発明に係る高温強度と耐酸
化性の両方を兼ね備える耐熱鋼について、そのクリープ
強度と耐酸化性を試験した結果を示す。
まず第1表に試料とした耐熱鋼の組成を示す。
ここでは第一、第二の発明の実施例に係る耐熱鋼を19
種用いた。また実施例に係る耐熱鋼と比較対照するた
め、比較例1と2には本発明の特徴となるニオブ、ジル
コニウム、チタンおよびモリブデン、ならびにタングス
テン、バナジウム、窒素、アルミニウムおよびホウ素を
何ら含まない耐熱鋼を採用し(比較例1はHK40、比較例
2はHPに相当)、比較例3には、HPにさらにニオブを含
む耐熱鋼、また比較例4ないし7には、それぞれジルコ
ニウム、チタン、ニオブおよびモリブデンが本発明の数
量範囲から外れて含有される耐熱鋼をそれぞれ用いた。
これらの耐熱鋼は通常の溶製後、200mm×300mm×20mm
の板材に鋳造し、各板材からJIS Z−2272に準拠して平
行部直径6mmφ、標点間距離30mmの試験片を採取した。
そして各試験片について、温度1050℃下で3kgf/mm2
応力および温度900℃下で7kgf/mm2の応力の2つの条件
下でクリープ破断試験を行い、破断時間と破断伸びを計
測した。
一方、耐酸化性試験においては、上述の板材から10mm
×20mm×2mmの試験板を切り出し、この試験板を1100℃
の温度下で1時間保持した後大気中に放置・冷却する操
作を30回行った。その後はこの試験板の重量を計測し、
酸化スケールの剥離による単位面積当りの重量の減少量
(酸化減量)を求めた。結果を第2表に示す。
第2表から分るように、第一、第二の発明の実施例に
係る耐熱鋼は、両条件下において、いずれも比較例に係
る耐熱鋼に比べ、破断伸びはほぼ同程度だが、破断時間
はいずれも格段に長い(2〜9倍)。そして、本実施例
に係る耐熱鋼のうち、Zr、Ti、NbおよびMoに加えてさら
にW、V、N、AlおよびBのいずれか1種を含むもの
(実施例5〜14)は、これらを何も含まないもの(実施
例1〜4)に比べ、クリープ破断時間が長い。W、V、
N、AlおよびBの5元素の高温強度強化の効果は、2種
類を含むもの(実施例15〜17)および5種類すべてを含
むもの(実施例18〜19)の順で高くなっている。
また耐酸化性についても、第一、第二の発明の実施例
に係る耐熱鋼は、両条件下において、特にジルコニウム
を含まない比較例(比較例1〜4)に比べ、酸化減量が
少くなっている。この傾向は、900℃・7kgf/mm2の条件
下において顕著である。
次に、第三、第四の発明に係る高温強度と低コストを
実現する耐熱鋼について、第2表で説明したものと同一
の手順で試験片を採取し、同一の条件でクリープ破断試
験を行った。試料の組成を第3表に、またクリープ破断
試験結果を第4表に示す。
比較例1〜3は第1表および第2表と同一のものであ
る。本実施例に係る試料は、1050℃・3kgf/mm2および90
0℃・7kgf/mm2という両条件下において、いずれも比較
例に比べ2〜7倍という長い破断時間を示した。また第
三の発明の特徴となるVとNに加え、Zr、Ti、Nb、Mo、
W、AlおよびBのいずれか1種を含むもの(実施例21〜
27)、2種以上を含むもの(実施例28〜31)および6種
すべてを含むもの(実施例32)は(第四の発明に相
当)、この順でZr、Ti、Nb、Mo、W、AlおよびBのいず
れをも含まないもの(実施例20)に比べ、クリープ破断
時間が長くなっている。
さらに本実施例の耐熱鋼は、Niの含有量が11%以下と
少ないため、比較例の耐熱鋼に比べ大幅な製造コストの
削減を図ることができた。
〔発明の効果〕
以上説明したように、第一の発明に係るCr−Ni系耐熱
鋼は、ジルコニウム、チタン、ニオブおよびモリブデン
が炭化物を形成してマトリックスに微細均一に析出し、
耐熱鋼の高温下でのクリープ破断強度を高める。またモ
リブデンは析出しきれなかった分がマトリックスに固溶
し、ジルコニウムは粒界の強度を強化し延性を向上させ
ることによって、それぞれ耐熱鋼のクリープ強度増進に
寄与する。
さらに、ジルコニウムは、酸化スケールの剥離を防止
する効能を有することが分った。したがって、酸化スケ
ールの剥離による鋼材の損失も抑えられる。
この他、上述の元素の外、タングステン、バナジウ
ム、窒素、アルミニウムおよびホウ素を有する第二の発
明に係る耐熱鋼は、タングステンとバナジウムが上述の
ジルコニウム、チタン、ニオブおよびモリブデンととも
に炭化物または炭窒化物を形成して微細均一に析出し、
高温強度を高める。
また第三の発明は、高価なニッケルを5〜15重量%し
か含まず、他に炭素、ケイ素、マンガン、クロム、バナ
ジウムおよび窒素を含む耐熱鋼を提供する。この耐熱鋼
においては、マンガンがニッケルの機能を一部代替して
オーステナイト組織を形成し、さらにニッケルの減少に
よって生ずる可能性のある金属炭化物の粗大な凝縮は、
バナジウムと窒素によって抑制する。よって、この耐熱
鋼によれば、高温強度と低コストの2つを同時に達成で
きる。
さらに、第四の発明は、上述の高温強度と低コストと
いう共通の目的を達成する耐熱鋼として、上述の成分の
外に、ジルコニウム、チタン、ニオブ、モリブデン、タ
ングステン、アルミニウムおよびホウ素の少なくとも1
種を含む耐熱鋼を提供する。これらの元素は、いずれも
クリープ強度の強化に寄与することによって、低コスト
ながら高温強度の鋼い耐熱鋼を実現する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素を0.2を超えて0.6重量%以下、ケイ素
    を2.0重量%以下、マンガンを2.0重量%以下、クロムを
    20〜35重量%、ニッケルを20〜40重量%、ジルコニウム
    を0.05〜0.50重量%、チタンを0.05〜0.30重量%、ニオ
    ブを0.2〜2.0重量%およびモリブデンを0.5〜10.0重量
    %含み、かつ残部に鉄を含むCr−Ni系耐熱鋼。
  2. 【請求項2】炭素を0.2を超えて0.6重量%以下、ケイ素
    を2.0重量%以下、マンガンを2.0重量%以下、クロムを
    20〜35重量%、ニッケルが20〜40重量%、ジルコニウム
    を0.05〜0.50重量%、チタンを0.05〜0.30重量%、ニオ
    ブを0.2〜2.0重量%およびモリブデンを0.5〜10.0重量
    %、ならびに0.5〜10.0重量%のタングステン、0.05〜
    1.00重量%のバナジウム、0.03〜0.20重量%の窒素、0.
    0005〜0.1000重量%のアルミニウムおよび0.0005〜0.10
    00重量%のホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1
    種以上を含有し、かつ残部に鉄を含むCr−Ni系耐熱鋼。
  3. 【請求項3】炭素を0.2〜0.6重量%、ケイ素を2.0重量
    %以下、マンガンを5〜20重量%、クロムを20〜35重量
    %、ニッケルを5〜15重量%、バナジウムを0.1〜2.0重
    量%および窒素を0.03〜0.30重量%含んでマンガンとニ
    ッケルの合計が15〜35重量%であり、かつ残部に鉄を含
    むCr−Ni系耐熱鋼。
  4. 【請求項4】炭素を0.2〜0.6重量%、ケイ素を2.0重量
    %以下、マンガンを5〜20重量%、クロムを20〜35重量
    %、ニッケルを5〜15重量%、バナジウムを0.1〜2.0重
    量%および窒素を0.03〜0.30重量%を含んでマンガンと
    ニッケルの合計が15〜35重量%であり、ならびに0.05〜
    0.50重量%のジルコニウム、0.05〜0.30重量%のチタ
    ン、0.2〜2.0重量%のニオブ、0.5〜10.0重量%のモリ
    ブデン、0.5〜10.0重量%のタングステン、0.0005〜0.1
    000重量%のアルミニウムおよび0.0005〜0.1000重量%
    のホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を
    含有し、かつ残部に鉄を含むCr−Ni系耐熱鋼。
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