JP2863086B2 - 浮桟橋係留装置 - Google Patents

浮桟橋係留装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、とくに産業用の大型
の浮桟橋等を、係留杭に係留する際に使用される浮桟橋
係留装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、図4に示すように、浮桟橋Bの側
面に取付けた複数個の浮桟橋係留装置Aによって、浮桟
橋Bを係留杭Pに係留することが行われている。上記浮
桟橋係留装置Aとしては、たとえば図5(a)(b)、図6に
示す構造のものが一般的に用いられる(たとえば実開平
2−106998号公報参照)。
【0003】この浮桟橋係留装置Aは、浮桟橋Bの側面
B1に、所定の厚みを有する緩衝体91を介して取り付
けられる支持部材92と、この支持部材92に回転自在
に支持された回転体93とを備えている。緩衝体91
は、ともに板状に形成され、互いに平行に配置された、
浮桟橋Bへの取付け部91aおよび支持部材2の取付け
部91bと、両取付け部91a,91b間に配置された
圧縮変形部91cとを、天然ゴム、合成ゴム等の弾性材
料により一体成形することで構成されている。また圧縮
変形部91cには、当該圧縮変形部91cの圧縮変形を
助けるための円形の孔91dが3個形成されている。
【0004】上記浮桟橋係留装置によれば、回転体93
を、水位の上下に伴う浮桟橋Bの上下動に対応しつつ係
留杭Pに当接させながら、緩衝体91によって、回転体
93の係留杭Pへの衝突による衝撃、ひいては浮桟橋B
の係留杭Pへの衝突による衝撃を緩和することができ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】浮桟橋には、鋼製、コ
ンクリート製、繊維強化プラスチック(FRP)製など
の種々の構造のものがあり、浮桟橋係留装置は、いずれ
の構造のものにも使用可能である。ところが、とくに産
業用の大型の浮桟橋、中でもコンクリート製で重量およ
び吃水の大きい浮桟橋を使用する場合に、従来の浮桟橋
係留装置では、その衝突による衝撃のエネルギーを十分
に吸収できずに装置自体が破損したり、あるいは浮桟橋
の動揺を抑えることができずに、却って動揺を大きくし
てしまったりするという問題があった。
【0006】とくに近時、たとえば港湾内等の、海象条
件が比較的穏やかな海域での使用が普通であった浮桟橋
を、外洋等の海象条件の厳しい海域で使用する機会が増
加する傾向にあり、そのような条件下で従来の浮桟橋係
留装置を使用した場合には、浮桟橋の動揺を抑えること
が困難であった。この発明の目的は、とくに産業用の大
型の浮桟橋を海象条件の厳しい海域で使用した際に、浮
桟橋の係留杭への衝突による衝撃のエネルギーを十分に
吸収できるとともに、浮桟橋の動揺を確実に抑えること
ができ、浮桟橋の安全性を十分に確保できる浮桟橋係留
装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用】上記課題を解
決するため、発明者らは、従来の浮桟橋係留装置の構造
について検討を行った。その結果、従来の浮桟橋係留装
置は緩衝体に問題があることを見出した。すなわち、従
来の浮桟橋係留装置で使用している緩衝体は、浮桟橋の
係留杭への衝突時の圧縮力により厚み方向に圧縮変形す
るタイプのものであり、その圧縮時の、厚み方向の変形
量と反力とは、図3に二点鎖線L1 で示すような関係に
ある。またこの際の、緩衝体が吸収可能なエネルギー量
は、上記二点鎖線L1 より下の部分の面積(面積S1
する)に相当する。
【0008】上記圧縮変形タイプの緩衝体を用いて、浮
桟橋の動揺を確実に抑えるには、吸収可能なエネルギー
量を一定にしつつ、その変形量を小さくしなければなら
ない。そのためには、緩衝体の硬度を高くして、図3に
短い破線L2 で示すように、圧縮時の反力を高める必要
がある〔この際の、緩衝体が吸収可能なエネルギー量
は、上記短い破線L2 より下で、かつグラフ中央の一点
鎖線状の縦軸Jより左側の部分の面積(面積S2 とす
る)に相当し、図の場合は前記面積S1 と等しくなる
(S1 =S2 )〕。このため、圧縮時の反力が高くなる
分、その反力を受ける係留杭の強度を大きくしなけれ
ば、係留杭が破損してしまうおそれが生じる。
【0009】そこで係留杭の強度を大きくしなくてもよ
いように、圧縮変形タイプの緩衝体の、圧縮時の変形量
と反力を、図3に長い破線L3 で示すようにともに小さ
くすると、緩衝体が吸収可能なエネルギー量〔上記長い
破線L3 より下で、かつ前記縦軸Jより左側の部分の面
積(面積S3 とする)に相当する〕が小さくなる(S 1
=S2 >S3 )。このため、浮桟橋の係留杭への衝突に
よる衝撃のエネルギーを十分に吸収できなくなってしま
う。
【0010】つまり圧縮変形タイプの緩衝体では、浮桟
橋の係留杭への衝突による衝撃のエネルギーを十分に吸
収可能な状態を維持しつつ、浮桟橋の動揺を確実に抑え
るべく、圧縮時の変形量を小さくし、しかも、係留杭の
強度を大きくしなくてもよいように、圧縮時の反力を小
さくすることは不可能である。そこで発明者らは、上記
従来の緩衝体に代わる新たな緩衝体について種々検討を
行った結果、浮桟橋の係留杭への衝突時の圧縮力によ
り、厚み方向に座屈変形可能な緩衝体を使用すると、上
記の問題点を全て解決できることを見出し、本発明を完
成するに至った。
【0011】すなわちこの発明の浮桟橋係留装置は、浮
桟橋を係留杭に係留すべく、当該浮桟橋の側面に、所定
の厚みを有する緩衝体を介して取り付けられる支持部材
と、この支持部材に回転自在に支持された、水位の上下
に伴う浮桟橋の上下動に対応しつつ係留杭に当接する回
転体とを備え、上記緩衝体の、厚み方向に50%圧縮変
形させた際の反力R 50 と、25%圧縮変形させた際の反
力R 25 との比R 50 /R 25 が、 0.40≦R 50 /R 25 ≦1.50 の範囲内とされて、当該緩衝体 が、回転体の係留杭への
衝突時の圧縮力により、厚み方向に座屈変形可能に構成
されていることを特徴とする。
【0012】上記座屈変形タイプの緩衝体は、その圧縮
時の、厚み方向の変形量と反力とが、図3に実線L4
示すような関係にあり、圧縮時の変形量と反力を小さく
しても、緩衝体が吸収可能なエネルギー量〔上記実線L
4 より下で、かつ前記縦軸Jより左側の部分の面積(面
積S4 とする)に相当する〕を、図中に長い破線L3
示した、同じ変形量と反力を有する圧縮変形タイプの緩
衝体が吸収可能なエネルギー量S3 より大きく、かつ短
い破線L2 で示した、同じ変形量とより大きな反力とを
有する圧縮変形タイプの緩衝体が吸収可能なエネルギー
量S2 や、あるいは二点鎖線L1 で示した、同じ反力と
より大きな変形量とを有する圧縮変形タイプの緩衝体が
吸収可能なエネルギー量S1 と同じ値にすることができ
る(S4=S1 =S2 >S3 )。
【0013】よって、上記座屈変形タイプの緩衝体を使
用したこの発明の浮桟橋係留装置は、とくに産業用の大
型の浮桟橋を海象条件の厳しい海域で使用した際に、浮
桟橋の係留杭への衝突による衝撃のエネルギーを十分に
吸収できるとともに、浮桟橋の動揺を確実に抑えること
ができ、浮桟橋の安全性を十分に確保できる、という特
有の作用効果を奏する。
【0014】なおここでいう座屈変形タイプの緩衝体と
は、一般に、厚み方向に50%圧縮変形させた際の反力
50と、25%圧縮変形させた際の反力R25との比R50
/R25が1.70以下のものを指すが、本発明では、か
かる比R 50 /R 25 が、その中でもとくに前記のように、
0.40〜1.50の範囲内に限定される。 50/R
25が0.40未満では、エネルギー吸収が十分でなく、
また比R50/R25が1.50を超え、かつ1.70以下
のものは、座屈変形は可能であるものの、反力が高くな
りすぎてしまう。また比R 50 /R 25 が1.70を超える
ものは、従来の圧縮変形タイプのものに相当する。
【0015】
【実施例】以下にこの発明の浮桟橋係留装置を、その一
実施例を示す図1(a)(b)および図2を参照しつつ説明す
る。これらの図にみるように、この実施例の浮桟橋係留
装置Aは、浮桟橋Bの側面B1に、所定の厚みを有する
緩衝体1を介して取り付けられる支持部材2と、この支
持部材2に回転自在に支持された2組の回転体3とを備
えている。
【0016】緩衝体1は、ともに板状に形成され、互い
に平行に配置された、浮桟橋Bへの取付け部11および
支持部材2の取付け部12と、両取付け部11,12間
に、当該両取付け部11,12と直交しかつ互いに平行
に配置された、複数枚(図では4枚)の板状の座屈変形
部13a,13bとを、天然ゴム、合成ゴム等の弾性材
料により一体成形することで構成されている。
【0017】上記緩衝体1の反力、変形量、両者の関係
(前述した図3の実線L4)によって決まる、緩衝体1
が吸収可能なエネルギー量を所定の値に設定し、かつ
記比R50/R25、前記のように0.40〜1.50の
範囲内に設定するには、当該緩衝体1を構成する弾性材
料の種類や配合量、カーボンブラック等の配合量等を調
整して、その硬度を変化させるか、あるいは座屈変形部
13a,13bの寸法(とくに厚みt1〜t3)や数を変
化させればよい。
【0018】上記緩衝体1は、取付け部11および浮桟
橋Bに形成した孔(いずれも図示せず)を貫通したボル
ト41と、このボルト41に螺着されたナット42とを
締めつけることによって、浮桟橋Bの側面B1に固定さ
れる。また上記緩衝体1の取付け部12および支持部材
2の板状基部21に形成した孔(いずれも図示せず)を
貫通したボルト43と、このボルト43に螺着されたナ
ット44とを締めつけることによって、支持部材2が緩
衝体1に固定される。なお図において符号45,46
は、それぞれボルト41とナット42、ボルト43とナ
ット44を締めつけた際に、取付け部11,12が潰れ
るのを防ぐ座金である。
【0019】また緩衝体1には、浮桟橋Bの側面B1か
ら突設され、取付け部11,12および支持部材2の板
状基部21に形成した孔(いずれも図示せず)を貫通し
た与圧ボルトB2にナットB3を螺着して締めつけるこ
とで、浮桟橋Bの側面B1への固定時に、一定の圧力が
与圧されるようになっている。そして、この与圧状態を
維持しつつ、浮桟橋Bを係留位置に設置し、回転体3を
係留杭Pに当接させた後、ナットB3を緩めて、緩衝体
1を与圧状態から開放すると、浮桟橋Bが、係留杭Pに
対して一種の緊張係留状態となり、低外力時の浮桟橋B
の動揺を低減させることができる。また、浮桟橋Bを設
置する際の寸法誤差を相殺することもできる。
【0020】上記緩衝体1に取付けられた支持部材2
は、前記板状基部21と、この板状基部21の表面に、
当該板状基部21と直交しかつ互いに平行に配置された
2枚の支持板部22とを備えている。また支持板部22
は、その横倒れ等を防止すべく、複数の補強体23〜2
6によって補強されている。これらの部材はいずれも、
鋼板等により形成される。
【0021】回転体3は、支持部材2の支持板部22に
設けた軸支部31と、2枚の支持板部22の相対向する
軸支部31間に回転自在に軸支された円筒状の回転軸3
2と、この回転軸32の周囲に形成された円筒状の回転
体本体33とからなる。回転体本体33は、ゴム等の弾
性材料と基布とを積層することで構成されている。上記
各部からなる、この実施例の浮桟橋係留装置Aは、前記
のように、緩衝体1が座屈変形可能に構成されているた
め、同じ変形量と反力を有する圧縮変形タイプの緩衝体
を備えた従来の装置に比べて、緩衝体が吸収可能なエネ
ルギー量を大きくできる。このため、浮桟橋Bの係留杭
Pへの衝突による衝撃のエネルギーを十分に吸収できる
とともに、浮桟橋Bの動揺を確実に抑えることができ、
浮桟橋Bの安全性を十分に確保することができる。
【0022】なお、図の実施例の浮桟橋係留装置Aは、
2個の回転体3を備えていたが、回転体の数は従来どお
り1個でもよい。その他、この発明の要旨を変更しない
範囲で、種々の設計変更を施すことができる。実施例1 天然ゴム50重量部、スチレンブタジエンゴム50重量
部およびカーボンブラック35重量部を混練した生ゴム
組成物を用いて、常法により、図1(a)(b)および図2に
示す形状を有する緩衝体1を作製した。緩衝体1の表面
硬度は、JISA 硬度で75であった。また、緩衝体
1の各部の寸法は以下のとおりである。 ・取付け部11,12 厚み20mm×縦500mm×横500mm ・座屈変形部13a 厚みt1 =50mm、高さh1 =160mm ・座屈変形部13b 最大厚みt2 =40mm、最小厚みt3 =30mm、高
さh1 =160mm ・全体の厚みT=200mm比較例1 天然ゴム50重量部、スチレンブタジエンゴム50重量
部およびカーボンブラック25重量部を混練した生ゴム
組成物を用いて、常法により、図5(a)(b)および図6に
示す形状を有する緩衝体91を作製した。緩衝体91の
表面硬度は、JIS A 硬度で50であった。また、
緩衝体91の各部の寸法は以下のとおりである。 ・取付け部91a,91b 厚み15mm×縦450mm×横450mm ・圧縮変形部91c 幅w=310mm、厚みt=100mm ・孔91d 内径65mm ・全体の厚み130mm比較例2 天然ゴム50重量部、スチレンブタジエンゴム50重量
部およびカーボンブラック30重量部を混練した生ゴム
組成物を用いて、常法により、図5(a)(b)および図6に
示す形状を有する緩衝体91を作製した。緩衝体91の
表面硬度は、JIS A 硬度で70であった。また、
緩衝体91の各部の寸法は、孔91dの内径を80mm
とした他は、比較例1と同じにした。 〈圧縮試験〉上記実施例1、比較例1,2の緩衝体を、
厚み方向に圧縮し、その際の変形量と反力との関係を測
定した。結果を図3に示す。なお図3において、実施例
1の測定結果は実線L4 、比較例1の測定結果は二点鎖
線L1 、比較例2の測定結果は短い破線L2 で、それぞ
れ示した。また、上記図3の結果から、緩衝体が吸収可
能なエネルギー量を求めるとともに、厚み方向に50%
圧縮変形させた際の反力R50と、25%圧縮変形させた
際の反力R25とから、比R50/R25を求めた。結果を表
1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】上記図3および表1の結果より、実施例1
の緩衝体は、比較例1の緩衝体に比べて変形量が小さ
く、かつ比較例2の緩衝体に比べて反力が小さいにも拘
らず、吸収可能なエネルギー量は、上記比較例1,2の
緩衝体とほぼ同じであることがわかった。
【0025】
【発明の効果】以上のように、この発明の浮桟橋係留装
置は、緩衝体が、回転体の係留杭への衝突時の圧縮力に
より、厚み方向に座屈変形可能に構成されているため、
同じ変形量と反力を有する圧縮変形タイプの緩衝体を備
えた従来の装置に比べて、吸収可能なエネルギー量を大
きくできる。このため、浮桟橋の係留杭への衝突による
衝撃のエネルギーを十分に吸収できるとともに、浮桟橋
の動揺を確実に抑えることができ、浮桟橋の安全性を十
分に確保できるという特有の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】同図(a) は、この発明の浮桟橋係留装置の一実
施例を示す側面図、同図(b) は、部分切裁平面図であ
る。
【図2】上記実施例の正面図である。
【図3】浮桟橋係留装置に使用する緩衝体を厚み方向へ
圧縮変形させた際の変形量と反力との関係を、緩衝体の
タイプ別に示したグラフである。
【図4】浮桟橋係留装置の使用状況を示す平面図であ
る。
【図5】同図(a) は、従来の浮桟橋係留装置の一例を示
す側面図、同図(b) は、部分切裁平面図である。
【図6】上記従来例の正面図である。
【符号の説明】 A 浮桟橋係留装置 1 緩衝体 2 支持部材 3 回転体

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】浮桟橋を係留杭に係留すべく、当該浮桟橋
    の側面に、所定の厚みを有する緩衝体を介して取り付け
    られる支持部材と、この支持部材に回転自在に支持され
    た、水位の上下に伴う浮桟橋の上下動に対応しつつ係留
    杭に当接する回転体とを備えた浮桟橋係留装置におい
    て、上記緩衝体の、厚み方向に50%圧縮変形させた際
    の反力R 50 と、25%圧縮変形させた際の反力R 25 との
    比R 50 /R 25 が、 0.40≦R 50 /R 25 ≦1.50 の範囲内とされて、当該緩衝体 が、回転体の係留杭への
    衝突時の圧縮力により、厚み方向に座屈変形可能に構成
    されていることを特徴とする浮桟橋係留装置。
  2. 【請求項2】緩衝体が、ともに板状に形成され、互いに
    平行に配置された、浮桟橋への取付け部および支持部材
    の取付け部と、両取付け部間に、当該両取付け部と直交
    しかつ互いに平行に配置された、複数の板状の座屈変形
    部とを備えるとともに、これらの部材を弾性材料により
    一体成形することで、厚み方向に座屈変形可能に構成さ
    れている請求項1記載の浮桟橋係留装置。
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JP2526544Y2 (ja) * 1989-02-10 1997-02-19 シバタ工業 株式会社 浮体式構造物と固定用杭間の緩衝装置

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