JP2860593B2 - 植物病害防除方法 - Google Patents

植物病害防除方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はフザリウム オキシスポラムに起因する植物
病害を防除する方法に関し、さらに詳しくはペニシリウ
ム属に属する微生物の存在下にアゼチジノン類化合物を
作用させることを特徴とする病害防除方法に関する。
(従来の技術) 従来、植物病害防除剤として銅剤、水銀剤、砒素剤等
の重金属化合物、有機塩素系薬剤、有機リン系薬剤等が
使用されてきた。しかし、これらの薬剤はいずれも動物
や人体に有害であり、土壌に対する汚染を形成し自然界
に長期間残留して動・植物に有害作用を示すという問題
があり、環境保全の観点からその使用が禁止ないしは制
限されているのが現状である。
一方、稲の主要病害をはじめとする各種の植物病害
は、薬剤耐性菌の出現に伴って増加の傾向を示してお
り、その対策として、対象病害に著効を示し、かつ安全
性の高い農薬の開発が切望されてきた。
なかでもキュウリつる割病の原因菌であるフザリウム
オキシスポラム エフ エスピー キューカナリナル
Fusarium oxysporum f. sp.cucumerinum)の属するフ
ザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)種に
対しては、既存の薬剤では防除が充分とは言えず、さら
に有効な薬剤の開発が望まれていた。
(発明が解決しようとする課題) 従って、本発明はフザリウム オキシスポラムに対し
て有効な植物病害防除方法を提供することを目的とする
ものである。
(課題を解決するための手段) 本発明者は上記の目的を達成すべく鋭意検討した結
果、4−ビニル−2−アゼチジノン及び/又は4−アリ
ル−2−アゼチジノンをベニシリウム属に属する微生物
の存在下に植物に作用させると、フザリウム オキシス
ポラムに起因する病害を防除することができることを見
出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、フザリウム オキシスポラムに起
因する植物病害を防除する方法であって、ペニシリウム
属に属する微生物の存在下に4−ビニル−2−アゼチジ
ノン及び/又は4−アリル−2−アゼチジノンを作用さ
せることを特徴とする方法を提供するものである。
本発明の方法の対象となる植物病害はフザリウム オ
キシスポラム(Fusarium oxysporum)種に起因する植物
病害であり、防除対象となる植物としてはキュウリ、キ
ャベツ、トマト等を挙げることができる。特に、フザリ
ウム オキシスポラムエフ エスピー キューカメリナ
ム(Fusarium oxysporum f.sp.cucumerinum)により引
き起こされるキュウリつる割病の防除に使用することが
好ましい。本発明で使用される微生物はペニシリウム
(Penicilliu)属に属する微生物であればいかなる微生
物も使用することができるが、例えば工業技術院微生物
工業技術研究所に平成2年3月6日付で微工研菌寄第11
347号(FERMP−11347)として寄託されたペニシリウム
属No.8菌(Penicillium sp.No.8)が好適に使用され
る。
ペニシリウム属No.8菌は以下の様な形態的特徴を有す
る。
分生子柄の先端が膨大しないで直接分岐して、梗子を
形成する。菌叢の分生子頭着生部分は初期には白色であ
るが、後には青緑の色調を示す。菌糸は無色透明で隔壁
を有する。分生子柄は独立するか、又はある程度収束し
て結束糸を形成する。分生子柄は横壁を有し、頂端に輪
生分岐が毛筆状に着生し、この先がくびれて分裂を繰り
返し、分生子の連鎖を形成する。分生胞子は無色単胞で
ある。以上の形態的特徴から、No.8菌をペニシリウム属
に属するものと結論した。
これらの微生物は単独、若しくは2種以上を組み合わ
せて使用してもよい。また、これらの微生物は例えばキ
ュウリ等の植物の成育に全く影響を及ぼさないものであ
る。
上記微生物を使用するにあたっては、該微生物を直接
土壌に接触してもよいが、例えば該微生物を成育させた
土壌を防除すべき植物を成育させた土壌と混合する方
法、さらには予め該微生物を成育させた土壌に防除の対
象となる植物を成育させる方法等、種々の適用方法を選
択することができる。
本発明で微生物の存在下に使用する化合物は、4−ビ
ニル−2−アゼチジノン若しくは4−アリル−2−アゼ
チジノンである。これらの化合物の混合物を使用するこ
ともできる。該化合物はそれぞれシンセシス(Synthesi
s)、324頁、1986年、及びジャーナル オブ ケミカル
ソサイエテイ(J.Chem.Soc.,Chem.Commun)、134頁、
1982年に記載された化合物であり、上記文献に記載され
た方法により製造することができる。該化合物は低毒性
であり、防除に使用しても人体、動物に対して有害作用
を示さない。さらに、該物質は植物には薬害を示さず、
残留生も殆どない。
該化合物は油状物質としてそのまま土壌に適用しても
よいが、好ましくは防除の対象となる植物の成育に影響
を及ぼさない溶媒、例えばグリコール類等や水に溶融若
しくは懸濁して散布等の手段により土壌に対して適用す
ればよい。また、水性の有機溶媒を使用することもでき
る。さらに、該化合物を含浸させた粒剤を土壌表面若し
くは土壌中に配置して徐々に該化合物を放出させてもよ
い。
上記の微生物、若しくは上記の化合物は単独ではフザ
リウム オキシスポラム種に属する微生物に対して防除
効果を示さないが、ペニシリウム属に属する微生物の存
在下に上記の化合物を作用させることにより、フザリウ
ム オキシスポラム種に属する微生物に対して優れた防
除効果を示す。
本発明の方法を実施するにあたっては、ペニシリウム
属に属するを微生物を含む土壌に適用植物を成育させた
後に、好ましくは苗の状態の該植物に、例えば50〜100p
pmの上記化合物を含む水溶液を土壌120cc当たり40ml程
度となる様に接種1日前および3日後には灌注すればよ
い。ペニシリウム属に属する微生物の菌量は、土壌10cc
当たり2×107〜3×107個の範囲とすればよく、好まし
くは土壌10cc当たり3×107個である。また、上記化合
物はペニシリウム属に属する微生物の菌量に対して50〜
100ppmとなるように投与すればよい。上記の範囲は対象
植物、病害の進行程度に応じて適宜増減することができ
る。
(発明の効果) 本発明により、従来は充分な防除手段がなかったフザ
リウム オキシスポラム種に属する微生物に起因する病
害に対して有効な防除方法が提供された。特に、フザリ
ウム オキシスポラム エフエスピー キューカメリナ
ムに起因するキュウリつる割病の防除に特に有用であ
る。
(実施例) 以下に本発明を参考例及び実施例によりさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらに限定されることはな
い。
参考例1 4−ビニル−2−アゼチジノン(化合物1)の合成 シールドチューブ中−78℃でブタジエン(約10ml;120
mmol)をジエチルエーテル15mlに溶解して、同温下、Cl
SO2NCO(3.5ml;40mmol)を滴下して密閉した後、室温に
あげた。室温にて7日間撹拌した後、Na2SO3(7.68g;61
mM)、H2O22.5ml、10%KOH25mlを入れた別の容器に氷水
冷下、激しく撹拌しながらゆっくりと滴下した。滴下終
了後、更に30分間激しく撹拌した。2層を分離した後、
水層を酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和重ソー
水、飽和食塩水にて洗浄し、洗浄した水層を逆抽出し、
併せて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し
た後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジ
エチルエーテル)に付すことにより2.66g(68%)の淡
黄色油状物質を得た。得られた油状物質の物理化学的性
状は文献記載のものと完全に一致した。
参考例2 4−アリル−2−アゼチジノン(化合物2)の合成 4−アセトキシ−2−アゼチジノン(アルドリッチ社
製、2.0g;15.5mmol)をジクロルエタン54mlに溶解し、
アリルトリメチルシラン(5.0ml;31.5mmol)を加えた。
BF3エーテルコンプレックス(25ml;20.3mmol)を加え、
25時間撹拌した。反応液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫
酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィーに付して(酢酸エチル/
ヘキサン:3/2)、1.626g(95%)の黄色油状物質を得
た。得られた油状物質の物理化学的性は文献記載のもの
と完全に一致した。
実施例1 ペニシリウム属No.8菌を含むクレハ園芸培土(クレハ
化学工業株式会社製)に播種後3日間育成したキュウリ
(品種:四葉)を植えた塩ビ製ポット(直径:6cm)を、
紙コップ(200cc)に入れ所定濃度の薬剤を土壌灌注し
た後に、キュウリの根元にキュウリつる割病菌(フザリ
ウム オキシスポラム エフ エスピー キューカメリ
ナム)の胞子を灌注接種とする方法と、あらかじめ病原
菌を接種した該土壌に薬液灌注した後、キュウリを播種
する方法の2方法で試験を行った。
接種源は、キュウリつる割病菌の胞子液を用い、胞子
は、PDA(ポテト・デキストロース・アガー)プレート
培地で28℃、4〜5日間生育した菌糸片をPD液体培地に
接種し、28℃、3日間振とう培養した培養物をガーゼで
濾過した後、低速遠心分離器を用いて5分間、1〜2回
蒸留水で洗浄し、1×106個/mlの胞子懸濁液になるよう
蒸留水で希釈した。この胞子懸濁液をキュウリの根元
に、1ポット当たり2.5ccずつピペットマンで灌注接種
した。
接種したキュウリの幼苗は、28℃の人工光室(5Klu
x)の照明下において2〜3週間育成し、発病の有無を
調査した。評価は、有効ポット株数/試験ポット株数で
あらわした。
(ペニシリウム属No.8菌を用いたキュウリつる割病のポ
ット試験法) PDAプレート培地で28℃、7日間培養したペニシリウ
ム属No.8菌に適量の1%のグルコース溶液を入れ、筆で
胞子をかきとり、滅菌クレハ園芸培土に接種し、胞子液
を培土とよく混ぜ合わせた。最終的には、滅菌クレハ園
芸培土2.4kg当たり、ペニシリウム属No.8菌の胞子懸濁
液配1%グルコース溶液300ccを入れ、28℃、4〜5日
間培養した後、直径6cmの塩ビ製ポットに培養土壌をつ
めてキュウリを播種した。以後は、キュウリつる割病試
験法に従った。
その結果、化合物1及び2のフザリウム オキシスポ
ラムに対する直接の抗菌活性は認められなかったが、ポ
ットテストでは化合物濃度が50、100ppmでキュウリつる
割病の発病抑制効果が認められた(表1、2)。しか
し、通常の沖積土および洪積土を用いると同化合物の効
果は認められず、また、滅菌クレハ園芸培土では同化合
物の効果が失われた(表3)。
滅菌クレハ園芸培土を使用し、接種1日後に薬液を灌
注し、2日後にキュウリを播種した。
実施例2 1%−glucose溶液で湿らせた滅菌クレハソイル(ク
レハ化学工業株式会社製)にペニシリウム属No.8菌の胞
子を混和し、28℃で5日間培養した後、キュウリを播種
して3日後に化合物2(100ppm)を40cc灌注し、その後
フザリウム菌を接種した。得られた結果を表4に示す。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−62509(JP,A) 特開 昭52−3821(JP,A) 特開 平3−80072(JP,A) 特開 昭51−32732(JP,A) 特開 昭55−7251(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01N 63/00 A01N 43/34 CA(STN) REGISTRY(STN) WPIDS(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フザリウム オキシスポラムに起因する植
    物病害を防除する方法であって、ペニシリウム属に属す
    る微生物の存在下に4−ビニル−2−アゼチジノン及び
    /又は4−アリル−2−アゼチジノンを作用させること
    を特徴とする方法。
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