JP2860266B2 - エネルギー可変型高周波四重極加速器およびイオン打込み装置 - Google Patents

エネルギー可変型高周波四重極加速器およびイオン打込み装置

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JP2860266B2
JP2860266B2 JP7131477A JP13147795A JP2860266B2 JP 2860266 B2 JP2860266 B2 JP 2860266B2 JP 7131477 A JP7131477 A JP 7131477A JP 13147795 A JP13147795 A JP 13147795A JP 2860266 B2 JP2860266 B2 JP 2860266B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、MeV領域の高エネル
ギーイオン打込み装置に利用する高周波四重極加速器(R
adio Frequency Quadrupole Accelerator;RFQ加速
器)に係り、特にミリアンペアオーダの大電流イオンビ
ームを効率よく発生させることに好適な四重極粒子加速
器及びそれを使用したイオン打込み装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のエネルギー可変型RFQ加速器と
しては、例えば、特開平5−21199号に記載されて
いるものがある。
【0003】この従来例では、例えば図10に示すよう
に、四重極電極2a、2b、2c、2dに電圧を発生さ
せるため共通導体4、8がそれぞれ四重極電極2b、2
cに接続されている。また、共通導体4、8にはそれぞ
れ平行導体5a〜5h、7a〜7hが接続される。平行
導体5a〜5hおよび7a〜7hは、短絡導体6で一括
して接続されている。短絡導体6は、四重極電極へ近づ
く方向9或いは遠ざかる方向10へ移動できる構成とな
っている。
【0004】エネルギー可変型RFQ加速器では、四重
極電極の電気容量と、平行導体及び短絡導体で形成する
ワンターンコイルのインダクタンスで高周波共振をと
り、四重極電極間に高周波高電圧を発生させる。この短
絡導体6と平行導体5a〜5hおよび7a〜7hとの間
の接続は、各々ソケットを介して摺動可能に接続されて
いる。このようなソケットは平行導体1本に付き1個の
割合で使用するもので、図10の従来例の場合、合計で
16個のソケットが必要となる。
【0005】一方、上記の摺動接触部品であるソケット
の代りに、短絡導体を移動するときに接触部を切り離す
ことが可能な接触部構造を有する従来例が、特開平6−
76994号に記載されている。この接触部構造の一例
である伸縮操作機構の詳細図を図11に示す。
【0006】この伸縮操作機構は、平行導体29と接触
子15とで高周波(RF)コンタクトを実現する。平行
導体29と接触子15とを切離す動作は、接触子15に
固定したロット20とトグル部材21、22、操作棒1
7を介して行う。この伸縮操作機構では、操作棒17を
図中矢印Aの方向へ押すと、接触子15が平行導体29
に接触する。逆に、操作棒17を矢印Aと反対の方向へ
押すと、接触子15が平行導体29から切り離される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記図10の従来技術
は、短絡導体6と平行導体(5a〜5hおよび7a〜7
h)との間のRFコンタクトを確実に行うという点では
優れているが、短絡導体6を無理なく移動させるという
点について考慮がなされていない。
【0008】すなわち、短絡導体6を移動させるとき
に、個々の平行導体(5a〜5hおよび7a〜7h)の
軸と、短絡導体6にはめこんだ各ソケットの軸との間の
同軸度がずれていると接触部分に過大な力が発生し、短
絡導体6の移動が困難となる。これはセッティング当初
はあまり現れないが、何度か回路に電力を供給すると熱
歪等で初期の位置精度が保てなくなる。
【0009】さらに、平行導体とソケットの間にはRF
コンタクトを確実にするために、ほとんど隙間(遊び)
がないため、同軸度が少しずれただけで急に摺動抵抗が
増大する。特に、図10の場合には、ソケットが16箇
所あるので、全体では移動に相当な力が必要となる。
【0010】さらに、平行導体及び短絡導体を含むRF
Q加速器全体は、真空中に配置される必要がある。した
がって、真空中のため、平行導体及び短絡導体の接触部
分には潤滑剤が使用できず、摺動抵抗を低減させること
が難しく、数回の電力投入で短絡導体6の移動が不可能
となってしまう場合があるという問題点があった。
【0011】一方、上記図11の従来技術は、短絡導体
を移動させるときに接触部分に全く力を加えないという
点では優れているが、RFコンタクトを確実に行うとい
う点、さらには高周波損失を極力小さくするという点に
ついては十分な考慮がなされていない。
【0012】すなわち、RFコンタクトに関しては、平
行導体29と接触子15の接触部分が線状(或いは面
状)であり、再現性のある確実なコンタクトができな
い。熱歪等で各部品間にずれが生じた場合には接触部が
大きく移動して、回路特性が変化してしまうという問題
点があった。
【0013】さらに、線状(或いは面状)のRFコンタ
クトでは、どうしても接触圧力の弱い箇所が生じ、そこ
で生じる溶着現象により、平行導体29と接触子15が
接合されてしまい、最後には短絡導体の移動が不可能と
なってしまうという別の問題点もあった。
【0014】さらに、高周波損失を極力小さくするとい
う点に関しては、図11の伸縮操作機構はその構造が複
雑であり、特にバネ部では閉ループを形成しているた
め、該機構の追加により、新たに大きな高周波損失が生
じてしまうという別の問題点もあった。
【0015】本発明の目的は、エネルギー可変型RFQ
加速器において、RFコンタクトを確実にとり長時間の
安定使用に耐えうるエネルギー可変型RFQ加速器を提
供することにある。
【0016】さらに、本発明のエネルギー可変型RFQ
加速器を利用することにより、大電流の高スループット
用MeVイオン打込み装置を提供することを目的とす
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的は、向き合った
面が波打っている形状を形成する2対の電極から構成さ
れる高周波四重極電極部と、前記各対の電極に電気的に
接続される複数の平行導体と、前記複数の平行導体間を
電気的に接続し、かつ、その接続位置が移動可能な構造
を備えた短絡導体とを有するエネルギー可変型高周波四
重極加速器において、前記短絡導体は、前記複数の平行
導体のそれぞれと接触する導電性部材からなる複数の接
触部と、前記複数の接触部のそれぞれが装着され、当該
装着された接触部をそれが接触すべき平行導体へ押し付
ける方向へ付勢する複数の付勢部と、前記複数の付勢部
が固定されている本体部とを有し、前記各付勢部は、内
部に中空部分が形成され、当該中空部分に冷却用の流動
体を流入させ、その流入圧力に応じて前記付勢方向へ伸
縮すると共に、前記接触部と電気的に接続して当該短絡
導体が形成する導電路の一部を構成する導電性を備えた
ベローズ部材を有し、前記各接触部の接触する部分は略
球面を形成し、前記各平行導体は冷却水を流す2本の導
電性部材からなるパイプを互いに平行に接合して構成す
るものであり、前記各付勢部は前記接触部の略球面部分
が前記2本のパイプの各表面と接触するように、前記両
パイプの接合部分の方向へ付勢することを特徴とするエ
ネルギー可変型高周波四重極加速器により達成される。
【0018】また、上記目的は、イオンビームを発生さ
せるためのイオン源と、当該イオン源から引き出された
イオンビームを加速する四重極粒子加速器と、イオン打
ち込み処理の対象となる材料を保持し、当該四重極粒子
加速器からのイオンビームを当該材料へ導くイオン打込
み室とを備えたイオン打込み装置において、前記四重極
粒子加速器として、請求項1に記載のエネルギー可変型
高周波四重極加速器を使用したことにより達成される。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【作用】本発明においては、伸縮部材内部の中空部分に
例えば冷却水などの流動体を流入させ、その流入圧力に
より、前記接触部を平行導体へ押し付けることで、短絡
導体と各平行導体とのRFコンタクトをより確実に形成
する。
【0024】また、接触部に先端が略球形をした金属接
触部品を使用することにより、RFコンタクト部分に同
軸度を要求する必要がなくなり、熱歪等で初期の位置精
度が保てなくなった場合にも短絡導体を無理なく移動さ
せることが可能となる。さらに、RFコンタクト部に線
状或いは面状同士の接触部分がなくなるため、再現性の
ある確実なコンタクトが可能となると共に、接触圧力の
弱い箇所における溶着現象も生じなくなる。
【0025】また、伸縮部材としてベローズ部材のよう
な形状が比較的単純な部品を使用することで、図11の
従来例で示したような複雑な伸縮操作機構を不必要とす
る。よって、RFコンタクト部では新たな閉ループを形
成することがなく、余分な高周波損失は生じないので、
長時間の安定使用に耐えうるエネルギー可変型RFQ加
速器を提供できる。
【0026】また、先端が略球形をした接触部を、2本
の水冷パイプを接合して形成した平行導体の溝上で移動
させてRFコンタクトを形成することにより、RFコン
タクト部の接触が確実に2点とれると共に、再現性のあ
る接触が可能となる。よって、長時間使用に耐えうる連
続エネルギー可変型RFQ加速器を提供できる。
【0027】
【0028】
【0029】また、RFQ加速器を備えたイオン打込み
装置において、RFQ加速器として、上記のうちの何れ
かによりRFコンタクトを形成したエネルギー可変型高
周波四重極加速器を使用することにより、長時間の安定
使用に耐えうるエネルギー可変型RFQ加速器が実現で
きるため、大電流の高スループット用MeVイオン打込
み装置を提供できる。
【0030】
【実施例】本発明の第1実施例を図1〜図3を用いて説
明する。
【0031】本実施例は、本発明を適用した高周波接触
部を有するエネルギー可変型RFQ加速器であり、図1
及び図2に示されているような要部構成を有している。
ここで、図1は加速器を上から見た上面図、図2は加速
器をイオンビームの出射方向から見た正面図である。な
お、図2中の破線で示したものは、短絡導体6が移動し
た場合の構成を示している。また、両図において、1は
真空容器であり、図中にはその容器壁面の一部だけが示
されているものとする。また、両図において、紙面に向
かって左側が真空側、右側が大気側である。
【0032】本実施例のエネルギー可変型RFQ加速器
は、真空容器1内部に配置されるものであり、イオンビ
ームを加速する加速電圧を発生する四重極電極2a、2
b、2c、2dと、四重極電極2a、2cを1組として
保持固定する電極ホルダ3a、3c、3e、3g、3i
と、四重極電極2b、2dを1組として保持固定する電
極ホルダ3b、3d、3f、3hと、四重極電極2a、
2b、2c、2dを前述の電極ホルダ3a〜3iを介し
て真空容器1と絶縁した状態で支持する絶縁支持体4と
を有する。
【0033】本実施例は、さらに、四重極電極と電気的
に接続された複数組の平行導体と、前記複数組の平行導
体を一括して短絡する短絡導体6と、外部から入力され
る高周波(RF)を前記複数の平行導体及び短絡導体6
が形成するコイルへ給電する、一次結合コイル31及び
導波管30とを有する。
【0034】短絡導体6は、前記複数組の平行導体の各
々との接触を実現する高周波接触部400を複数有し、
該接触(RFコンタクト)の位置の移動が可能な構成を
有している。なお、短絡導体6内部には、冷却水の配管
が配設されており、当該導体表面を高周波による励起電
流が流れた場合に生じる過熱を防ぐ構成を有している。
高周波接触部400は、本実施例の特徴であり、その詳
細構造については図3を用いて後述する。
【0035】短絡導体6は、真空容器1の外部からの移
動操作に応じて、図中矢印9及び10の方向に移動され
るものである。本実施例のRFQ加速器は、RFコンタ
クトの位置を移動させることで、前記複数組の平行導体
と短絡導体6とが形成するコイルのインダクタンスを調
整し、当該コイルのインダクタンス(L)と四重極電極
の電極容量(C)とにより、高周波共振をとる。
【0036】前記複数組の平行導体は、四重極電極2b
に接続された上部導体5a〜5j(以下では上部導体5
と総称する)と、四重極電極2cに接続された中部導体
7a〜7j(以下では中部導体7と総称する)と、四重
極電極2dに接続された下部導体11a〜11j(以下
では下部導体11と総称する)とから構成される。
【0037】本実施例では、四重極電極2a、2b、2
c、2dに高周波電圧を発生させるために、上部導体
5、短絡導体6、中部導体7で上段の1回巻コイル(1
0列)を形成すると共に、中部導体7、短絡導体6、下
部導体11で下段の1回巻コイル(10列)を形成す
る。この構成により、上記の両一回巻きコイルを通る磁
束の戻りを利用して効率良く電圧を発生することができ
る。なお、図2中で示されるベクトル方向32、33
は、磁束の向き示す。
【0038】本実施例の平行導体は、上部導体5、中部
導体7、下部導体11にわかれており、各10個、合計
で30個ある。各平行導体は、冷却用の冷却水を流す2
本の無酸素銅パイプを互いに銅ろう付けし、30μm程
度の銀メッキを表面に施して構成される。各平行導体を
構成する2本のパイプは一端で連通しており、他端は大
気側に設置されている冷却水循環装置(図示せず)に接
続され、冷却水の循環水路を形成する構成となってい
る。
【0039】四重極電極に高周波電圧を発生させるため
の高周波(RF)は、図示されていない高周波電源によ
り発生され、真空容器1の外にあるマッチングボックス
34及び導波管30を通り、真空内に導入される。導入
されたRFは、中部導体7、短絡導体6、下部導体11
で形成される上記の下段二次コイルと電磁的に結合して
いる3回巻の一次結合コイル31により供給される。
【0040】なお、導波管30の長さをあまり長くする
と、インピーダンスが増加し、電力損失につながるの
で、マッチングボックス34をRFQ加速器本体の下部
に配置して、導波管30を短くする構成としても良い。
【0041】次に、高周波接触部400の一例につい
て、図3を用いて説明する。
【0042】高周波接触部400は、短絡導体6と、各
平行導体5、7、11との高周波接触を実現するもので
あり、上部導体5、中部導体7あるいは下部導体11と
電気的に接触する金属接触部品40と、金属接触部品4
0が一端に取付けられている、短絡導体6の移動方向と
ほぼ垂直な方向(図3中の上下方向)へ伸縮可能な伸縮
部41と、伸縮部41を保持すると共に短絡導体6に固
定されている接触部支持部42とを有する。
【0043】本実施例において使用される高周波により
励起され各導体を流れる電流は、表皮効果により、各導
体の表面付近のみを流れる。よって、金属接触部品4
0、伸縮部41、及び接触部支持部42は、この表皮効
果により流れる電流に対する電気的抵抗を低減するよう
に、少なくともその表面付近は電気的導電性の高い部材
で形成され、互いに電気的に接続されている。
【0044】本実施例で考慮するRFQ加速器で使用さ
れる典型的な周波数は10〜30MHz程度であり、こ
の場合の表皮の厚さは30ミクロン程度である。よっ
て、本実施例の各導体での、導電性を高くするべき表面
構造においては、その厚さが、前記表皮の厚さよりも厚
くなるように構成する。
【0045】接触部支持部42は、例えば銅製で、その
内部に短絡導体6を流れる冷却水を伸縮部41の内部へ
流すための冷却水路が形成されている。このように短絡
導体6からの冷却水を流すことで、RFコンタクトを実
現する部分全体、すなわち、接触支持部42、伸縮部4
1、及び、伸縮部41の先端に取付けられている金属接
触部40を、効果的に冷却することができる。
【0046】伸縮部41は、伸縮可能なベローズ411
と、その先端に取付けられた先端部412とを有する。
【0047】ベローズ411は、接触部支持部材42か
らの冷却水が流れる空間を内部に形成するように、一端
の開口部分が接触部支持部材42の冷却水路と連通して
接続され、もう一方の開口部分が先端部412により塞
がれている。
【0048】ベローズ411の内部構造は、例えば2重
管構造となっており、中心管へ注水された冷却水が、該
中心管の他方から噴出して先端部412に衝突し、該中
心管の外側と該ベローズ壁面との間の空間を通って戻っ
てくる、冷却水を効率的に循環させることができる水路
を形成している。
【0049】伸縮部41の構成によれば、短絡導体6か
ら接触部支持部42を通して伸縮部41へ供給する冷却
水の圧力を変化させるだけで、ベローズ411が伸び縮
みする。本実施例では、このベローズ411の伸縮動作
を利用することで、機械的な構造を用いずに、先端部4
12に取付けられている金属接触部品40と各平行導体
5、7、11との接触圧力を調整する。
【0050】ベローズ411は、例えばステンレス製
で、その表面にニッケルメッキを施し、さらにその上に
銅メッキを施したものを用いる。ここで、銅メッキは、
表皮効果により流れる電流に対する導電状態を良くする
ために、ベローズ411の表面に導電膜を形成するため
に行なわれるもので、通常のRFQ加速器に用いる周波
数(10〜30MHz程度)では、その厚さは30ミク
ロン程度でよい。
【0051】ベローズ411へ流す冷却水としては、純
水を用い、その圧力としては2〜6kg/cm2程度とする。
ベローズへの加圧方法として本方式のような水圧方式の
ほか、油圧、圧縮気体等による加圧方法でも良く、この
場合にも本実施例と同等の効果が期待される。また、冷
却水のかわりに、他の液体やガス等の冷却用媒体(流動
体)を用いる構成としても良い。
【0052】先端部412は、例えば銅製の円板状の部
材から構成されるもので、ベローズ411とは真空ろう
付けにより接続する。また、ベローズ411と接触部支
持部42との接続も、真空ろう付けによる。接触部支持
部42、ベローズ411、先端部412の接続は、冷却
水の漏れの心配がなく、電気的及び熱的導通状態を確保
できるものであれば、その他の接続方法を用いても良
い。
【0053】金属接触部品40は、各平行導体5、7、
11を構成する2本のパイプ300の表面と接触する部
分が、例えばリン青銅あるいはベリリウム銅で構成され
た、略球形状を形成した、半球部材である。この半球部
材は、伸縮部41の先端部412に例えばねじ止めさ
れ、伸縮部41と熱的及び電気的に接続される。
【0054】金属接触部品40の略球形形状の接触部に
よれば、長時間の運転により各平行導体5、7、11あ
るいは短絡導体6に生じる熱歪などにより、各平行導体
5、7、11を構成する2本のパイプと金属接触部品4
0との相対的な位置関係がずれた場合でも、常に、略球
形の部分の表面の2点が各パイプと接触することが可能
となり、RFコンタクトをより確実なものとすることが
できる。
【0055】また、各平行導体の接触部分の形状が変化
した場合には、その形状に対応して、より確実な接触を
実現できるよう、金属接触部品40の形状を変えても良
い。
【0056】また、本実施例では、RFコンタクトをよ
り確実にするために、金属接触部品40にリン青銅もし
くはベリリウム銅を用いるとしたが、その代わりに、金
属接触部品40と接触する各平行導体5、7、11の表
面の該金属接触部品40と接触する部分を、上記2つの
部材のいずれかで構成するものとしても良い。あるい
は、金属接触部品40、および、各平行導体5、7、1
1の接触する部分の両者を、上記2つの部材のいずれか
で構成するようにしても良い。
【0057】次に、高周波接触部400の他の例につい
て、図4、図5を用いて説明する。本例の高周波接触部
400の基本的構成は、図3の例と同じであり、同じ構
成要素については同じ符号を付し、その詳細説明を省略
する。
【0058】本例の高周波接触部400は、上記図3の
例と同じ金属接触部品40と、金属接触部品40が一端
に取付けられている伸縮可能な伸縮部41’と、伸縮部
41’を保持すると共に短絡導体6に固定されている接
触部支持部42’とを有する。
【0059】伸縮部41’は、上記図3の例のベローズ
411と同様な表面構造を有する伸縮可能なベローズ4
21a、421bと、一方の面に両ベローズが、他方の
面に金属接触部品40が取り付けられる、上記図3の例
の先端部412と同じ部材で構成された先端部422と
を有する。
【0060】接触部支持部42’、先端部422の内部
には、それぞれ冷却水を流す水路が図5に示すように形
成されている。本例のベローズ421a、421bは、
上記図3の例のように2重管構造になっておらず、前記
両部の水路の注水側と排水側とにそれぞれ連通するよう
に接続され、短絡導体6等の外部から供給される冷却水
が、図5中の矢印200が示す方向に流れるような水路
を形成している。
【0061】本例の高周波接触部400において冷却水
は、例えば、接触部支持部42’の注水側水路42’a
と、ベローズ421aの内部空間とを通り、先端部42
2の注水口422aへ入る。先端部422に入った冷却
水は、排出口422bから排出され、ベローズ421b
の内部空間と、接触部支持部42’の排水側水路42’
bとを通り、短絡導体6の水路へ戻る。
【0062】本例の構成によれば、循環させる冷却水の
流量が多く取れ、金属接触部品40の冷却効率は向上す
る。なお、本例における各構成要素の接続方法は、上記
図3の例と同様な方法を用いるものとする。
【0063】さらに、本例の構成によれば、ベローズ4
21a、421bの弾性力と、流れる冷却水の水圧と
で、金属接触部品40を各平行導体5、7、11に押し
付ける方向へ付勢することにより、RFコンタクトを確
実に取ることができる。
【0064】さらに、本例において、供給する冷却水を
止めて水圧をなくすと、ベローズがそれ自身の弾性力に
より縮み、その後、水圧(2〜6kg/cm2程度)をかける
と、縮んだ状態から2mm程度伸びることが観測され
た。すなわち、冷却水の水圧を調整することで、金属接
触部品40を各平行導体5、7、11から離脱、あるい
は、押し付け圧力を低減することができる。よって、高
周波接触部400への冷却水の供給を停止することで、
短絡導体6と各平行導体との摺動抵抗を無くすかあるい
は低減させ、短絡導体6を容易に移動させることができ
る。
【0065】本例及び上記図3の例では、平行導体5、
7、11と短絡導体6との各接触点毎に、1つの高周波
接触部400を用いていたが、図6に示すように、各平
行導体の上下にそれぞれ高周波接触部400を設け、接
触抵抗をより低減させる構成としても良い。
【0066】さらに、平行導体5、7、11を4本の冷
却水用パイプで構成し、図7に示すように、該平行導体
の上下左右に、4つの高周波接触部400を設け、より
接触抵抗を低減させる構成としても良い。
【0067】以上説明したように、本実施例によれば、
RFコンタクトをより確実にとり、長時間の安定使用に
耐えうるエネルギー可変型RFQ加速器を提供すること
ができる。
【0068】本実施例では、上部導体、中部導体、及び
下部導体が2本の冷却水パイプから構成されるものとし
ているが、本発明では、各平行導体の構成はこれに限定
されるものではない。各平行導体の構造は、高周波接触
部400とのRFコンタクトが確実に実現できるもので
あれば良い。例えば高周波接触部400と接触する部分
と、この接触する部分を冷却する冷却機構とをそれぞれ
設ける構成としても良い。
【0069】ここで、接触する部分の構成としては、例
えば接触する部分が短絡導体6の移動方向に伸びている
平面である板状構造や、あるいは、接触する部分に高周
波接触部400の金属接触部40を短絡導体6の移動方
向に安定してガイドする溝あるいはレール等の案内部が
形成されている構造を有するものとする。
【0070】また、本実施例では、冷却水を循環させて
上部導体5、中部導体7、下部導体11、及び短絡導体
6を冷却する構成としているが、本発明で使用する冷却
手段はこれに限定されるものではなく、各導体を充分に
冷却することができるのであれば、他の冷却機構を用い
ても構わない。
【0071】本発明の第2実施例を、図8を用いて説明
する。
【0072】本実施例は、本発明を適用した高周波接触
部を有するエネルギー可変型RFQ加速器であり、図8
に示されているような要部構成を有している。ここで、
図8は加速器をイオンビームの出射方向から見た正面図
であり、図8中の破線で示したものは、短絡導体6が移
動した場合の構成を示している。
【0073】本実施例のRFQ加速器を上から見た構成
は図1と同一であり、上記第1実施例のRFQ加速器と
同じ構成要素については、同じ符号を付し、その詳細説
明を省略する。
【0074】本実施例の構成で、上記第1実施例と異な
る点は、1回巻コイル(10列)が1セットだけである
点と、マッチングボックス34から導波管30を直線的
に真空容器1内に導入している点である。
【0075】すなわち、本実施例のエネルギー可変型R
FQ加速器は、イオンビームを加速する加速電場を発生
する四重極電極2a、2b、2c、2dと、四重極電極
2a、及び2cと四重極電極2b及び2dをそれぞれ1
組として保持固定する電極ホルダと、四重極電極2a、
2b、2c、2dを電極ホルダを介して真空容器1と絶
縁した状態で支持する絶縁支持体4と、四重極電極2b
に接続された複数の上部導体5と、四重極電極2cに接
続された複数の下部導体11と、上部導体5及び下部導
体11とを一括して短絡する短絡導体6と、外部から入
力される高周波(RF)を上部導体5、下部導体11及
び短絡導体6が形成する1回巻きコイルへ給電する、一
次結合コイル31及び導波管30とを有する。
【0076】上部導体5、下部導体11、及び短絡導体
6の構成は、上記第1実施例のものと同じであり、ま
た、短絡導体に備えられる高周波接触部400として
は、上述した図3〜図7に示された例のいずれかを利用
することができる。
【0077】本実施例によれば、上記第1の実施例より
も少ない平行導体によりRFQ加速器の四重極電極に電
圧を発生するためのコイルを形成することができるた
め、より少ない個数の高周波接触部400により、RF
コンタクトを実現することができる。
【0078】本発明の第3実施例を、図9を用いて説明
する。
【0079】本実施例は、本発明を適用した高周波接触
部を備えた短絡導体を有する、エネルギー可変型RFQ
加速器を備えた、イオン打ち込み装置である。
【0080】本実施例のイオン打込み装置は、図10に
示すように、イオン源101、質量分離器102、磁気
四重極レンズ103、エネルギー可変型RFQ加速器1
04、ビーム偏向器108、及び、打込み室105を有
する。
【0081】本実施例は、さらに、高周波を発生する高
周波電源106と、発生した高周波をRFQ加速器10
4へ供給する導波管30及びマッチングボックス34と
を有する。
【0082】本実施例のRFQ加速器104としては、
上記第1実施例及び第2実施例に記載されているRFQ
加速器を使用することができる。
【0083】イオン源101は、マイクロ波放電型、フ
ィラメント型等の通常の正イオン源で、引出し電極に2
0〜60kV程度の電圧を印加してイオンビームを引出
す。イオン源101から出射したイオンビームは、質量
分離器102で偏向される。質量分離器102は扇型電
磁石で、大電流を通過させるために磁極間のギャップ長
(ビームの通過領域)は60mm以上に広くとってあ
る。
【0084】質量分離されたイオンビームは、例えば三
段型の磁気四重極レンズ103で収束された後、RFQ
加速器104に入射する。RFQ加速器104は、最大
出力100kWの高周波電源(10〜30MHz)10
6から供給される高周波により、四重極電極間に加速電
圧を発生させ、イオンビームを加速して出射する。
【0085】加速されたイオンビームは、偏向器108
を通過して、打込み室105に導かれ、打込み室105
に設置してあるシリコン半導体ウエハ、或はチタン等の
ターゲット試料へ打込まれる。
【0086】本実施例によれば、ミリアンペアオーダの
大電流イオンを、数百keVから数MeVまでの間の任
意のエネルギーで、例えば1時間以上安定にターゲット
へ打込めるようになる。
【0087】特に、従来問題であったRFQ加速器10
4内の高周波接触部近傍における過熱が低減される。こ
のため、真空度の劣化もなく、ビーム電流を増大できる
効果が達成され、長時間安定性能を持つ大電流・高エネ
ルギーイオン打込み装置を提供できる。
【0088】さらに、本実施例によれば、装置寸法制約
の厳しい半導体製造工場の大量生産工程にも、大電流M
eVイオンビ−ムが利用できるようになるばかりではな
く、金属、セラミックス等の材料表層改質を短時間で行
える大量生産用イオン処理装置が実現できる。
【0089】さらに、本実施例のイオン打込み装置及び
上記実施例で説明したエネルギー可変型RFQ加速器
は、シンクロトロン等の円形加速器用の前段加速器とし
ても利用可能である。
【0090】上記各実施例では、四重極電極を有するR
FQ加速器に付いて説明したが、RFQ加速器の四重極
電極の代わりに、六極以上の偶数極を持つ多重極電極を
有する加速器に本発明を適用した場合にも、上記各実施
例で得られたものと同等の効果を達成することができ
る。
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、1ミリアンペア以上の
桁の大電流領域で長時間安定な、数百keVから数Me
Vまでの、任意のエネルギーのイオンビームを発生でき
る、高エネルギーRFQ加速器、および、それを利用し
たイオン打込み装置を提供することができる。
【0092】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のエネルギー可変型RFQ
加速器の上面図である。
【図2】本発明の第1実施例のエネルギー可変型RFQ
加速器の正面図である。
【図3】図3(A):本発明による高周波接触部の一例
を示す正面図である。 図3(B):本発明による高周波接触部の一例を示す側
面図である。
【図4】図4(A):本発明による高周波接触部の他の
例を示す正面図である。 図4(B):本発明による高周波接触部の他の例を示す
側面図である。
【図5】図5(A):図4の高周波接触部の例を示す正
面断面図である。 図5(B):図4の高周波接触部の例を示す側面断面図
である。
【図6】本発明の高周波接触部の他の例を示す側面図で
ある。
【図7】本発明の高周波接触部の他の例を示す側面図で
ある。
【図8】本発明の第2実施例のエネルギー可変型RFQ
加速器の正面図である。
【図9】本発明の第3実施例のイオン打込み装置の構成
を示すブロック図である。
【図10】従来のエネルギー可変型RFQ加速器の構成
を示す斜視図である。
【図11】従来のエネルギー可変型RFQ加速器の高周
波接触部を示す側面図である。
【符号の説明】
1 ・・・・・・真空容器、 2a〜2d ・・四重極電極、 5a〜5j ・・上部導体、 6 ・・・・・・短絡導体、 7a〜7j ・・中部導体、 11a〜11b 下部導体、 31 ・・・・・一次結合コイル、 34 ・・・・・マッチングボックス、 40 ・・・・・金属接触部品、 41 ・・・・・ベローズ、 101 ・・・・イオン源、 102 ・・・・質量分離器、 103 ・・・・磁気四重極レンズ、 104 ・・・・RFQ加速器、 105 ・・・・打込み室。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−76994(JP,A) 特開 平6−163199(JP,A) 特開 平5−82298(JP,A) 実開 昭48−108100(JP,U) 実公 昭55−3681(JP,Y2) 実公 昭53−8878(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05H 5/00 - 15/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】向き合った面が波打っている形状を形成す
    る2対の電極から構成される高周波四重極電極部と、前
    記各対の電極に電気的に接続される複数の平行導体と、
    前記複数の平行導体間を電気的に接続し、かつ、その接
    続位置が移動可能な構造を備えた短絡導体とを有するエ
    ネルギー可変型高周波四重極加速器において、 前記短絡導体は、前記複数の平行導体のそれぞれと接触
    する導電性部材からなる複数の接触部と、前記複数の接
    触部のそれぞれが装着され、当該装着された接触部をそ
    れが接触すべき平行導体へ押し付ける方向へ付勢する複
    数の付勢部と、前記複数の付勢部が固定されている本体
    部とを有し、 前記各付勢部は、内部に中空部分が形成され、当該中空
    部分に冷却用の流動体を流入させ、その流入圧力に応じ
    て前記付勢方向へ伸縮すると共に、前記接触部と電気的
    に接続して当該短絡導体が形成する導電路の一部を構成
    する、導電性を備えたベローズ部材を有し、前記各接触部の接触する部分は、略球面を形成し、 前記各平行導体は、冷却水を流す2本の導電性部材から
    なるパイプを互いに平行に接合して構成するものであ
    り、 前記各付勢部は、前記接触部の略球面部分が前記2本の
    パイプの各表面と接触するように、前記両パイプの接合
    部分の方向へ付勢する ことを特徴とするエネルギー可変
    型高周波四重極加速器。
  2. 【請求項2】イオンビームを発生させるためのイオン源
    と、当該イオン源から引き出されたイオンビームを加速
    する四重極粒子加速器と、イオン打ち込み処理の対象と
    なる材料を保持し、当該四重極粒子加速器からのイオン
    ビームを当該材料へ導くイオン打込み室とを備えたイオ
    ン打込み装置において、 前記四重極粒子加速器として、請求項1に記載のエネル
    ギー可変型高周波四重極加速器を使用したことを特徴と
    するイオン打込み装置。
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