JP2001060500A - 高周波空洞装置及び高周波加速器 - Google Patents

高周波空洞装置及び高周波加速器

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JP2001060500A
JP2001060500A JP11235506A JP23550699A JP2001060500A JP 2001060500 A JP2001060500 A JP 2001060500A JP 11235506 A JP11235506 A JP 11235506A JP 23550699 A JP23550699 A JP 23550699A JP 2001060500 A JP2001060500 A JP 2001060500A
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cavity
frequency
electric field
charged particles
frequency cavity
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Tomei Sugano
東明 菅野
Sadao Miura
禎雄 三浦
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高いQ値を維持したままで、外部供給高周波
電力に対する応答性かよく、エネルギ量の利用効率が高
い高周波空洞装置、高周波加速器を提供する。 【解決手段】 第1高周波空洞装置2に、外部高周波源
10から供給される高周波を第1結合ループ24により
伝送して第1高周波空洞4内に第1の電場を発生させ
る。この第1の電場により荷電粒子ビームを加速する
際、ビームが第1高周波空洞4内を通過することによっ
て生じる第2の電場の電気的エネルギを第2結合ループ
71により第1高周波空洞4外に伝送する。そして、こ
の第2結合ループ71により空洞4外に伝送された電気
的エネルギは、ダミーロード8に吸収させる構成を有す
る高周波加速器1。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷電粒子を加速す
る高周波加速器において、低エネルギ領域の粒子加速に
使用される高周波空洞装置及び高周波加速器に関する。
【0002】
【従来の技術】加速器とは、電磁気力を利用することに
より、電子、陽子や各種のイオン荷電粒子を加速して高
エネルギーの粒子を作る装置である。この加速器によっ
て作られた高速粒子のビームを原子核に衝突させ、核反
応を起こさせたり、素粒子を作ったりすることにより、
原子核や素粒子の性質を調べることができる。また、こ
の加速器を用いて得られる高速粒子は、前記原子核や素
粒子等の学術的実験に使用されるばかりでなく、例え
ば、医療分野における放射線治療への応用等様々な分野
に応用されている。
【0003】例えば電子加速器等に多く採用される物の
一つに定在波型線形加速器がある。図4は、定在波型線
形加速器の低エネルギ領域の加速において、バンチャー
として使用されている従来の高周波空洞装置40の一例
を示している。この高周波空洞装置40は、ビーム源5
0から発射される荷電粒子のビーム進行方向に設置さ
れ、入射した荷電粒子ビームの位相幅を狭い幅にまとめ
て(バンチして)安定させることで当該荷電粒子ビーム
の有効率を高める役割を果たす。なお、図4において、
ビームの流れを基準として上流側、下流側としていお
り、高周波空洞装置40のさらに下流側には、図示して
いないが荷電粒子ビームの加速を担う加速系統が設置さ
れている。
【0004】高周波空洞44は、円形チューブ状の空洞
管である。その内表面は凹凸の無いように高精度に加工
され、電気抵抗の少ない無酸素銅で製造されている。ま
た、高周波空洞44中には、ドリフトチューブ46が同
軸となるように組み込まれている。このドリフトチュー
ブ46は、円筒状の導体であり、電極の役割を果たす。
外部高周波源48は、高周波空洞装置40に備え付けら
れた導波管41に高周波電力を供給する。導波管41と
高周波空洞44とは、結合ループ451、RF窓45
2、同軸導波管部453から構成される結合器45によ
り電気的に結合されている。導波管41を伝播した高周
波は、結合器45の同軸導波管部453を介して結合ル
ープ451へと伝わり、当該ループ451により高周波
空洞44内に伝送される。RF窓452は、高周波空洞
44内の真空雰囲気と外界とを仕切る役割を果たす。
【0005】次に、定在波型線形加速器の低エネルギ領
域に使用される高周波空洞装置40の動作原理を簡単に
説明する。
【0006】まず、高周波空洞44内を真空にする。こ
れは、ビームの通過軌道に残留ガスがあると、これがビ
ームと衝突することによりビームが理想的な通過軌道よ
り外れてしまい、その結果、ビーム中の粒子数が減少し
てビームの寿命を短くしてしまうからである。そして、
外部高周波源48から高周波(マイクロ波)を所定のモ
ード(例えば、TE10モード等)で導波管41に供給
する。すると、高周波は、導波管41において伝播し、
この伝播した高周波は同軸導波管部453を介して結合
ループ451により高周波空洞44に伝送される。この
高周波によってドリフトチューブ46aとドリフトチュ
ーブ46bとのギャップに、所定の周期を持つ電場が生
じる。
【0007】このような設定のもとで、各ドリフトチュ
ーブ46の中心を通過するように、上流側からビーム源
50により荷電粒子のビームを発射したとする。する
と、ドリフトチューブ間のギャップを通過するときに、
前記周期を持つ電場によってビーム中の荷電粒子のある
ものは加速され、あるものは減速されことで、ビーム中
の荷電粒子を所定の位相幅に収まるようになる。
【0008】この高周波空洞装置40によってバンチさ
れた荷電粒子ビームは、その後高周波空洞装置40の下
流側に設けられた図示していない加速部へ入射してい
く。
【0009】なお、ここでは説明していないが、高周波
空洞装置40を使用した定在波型線形加速器のその他の
動作として、荷電粒子ビームの減速、偏向がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】一般に、高周波が加速
空洞の中を伝播することにより失われるエネルギの大小
は、計算値(供給高周波周波数)・(空洞蓄積エネル
ギ)/(単位時間の空洞損失エネルギ)に比例するパラ
メータQ(以下、Q値)で表される。Q値が高いほど効
率のよい加速空洞となり、高いQ値を得るために設計上
様々な工夫がなされている。
【0011】一方、ビーム源50から発せられたパルス
ビームが、導体である高周波空洞44内を通過すると、
このパルスビーム自身が電場を誘導し、誘導高周波を高
周波空洞44内に蓄積してしまう。この誘導電場の大き
さは、パルスビームの電流値及び加速空洞のQ値に依存
しており、外部からの供給電力には依存しない。従っ
て、特に、外部供給電力が小さくパルスビームの電流値
が大きい低エネルギ領域部に用いられる高周波空洞装置
においては、ビーム誘導電場が支配的となり、要求され
る加減速若しくは偏向電場を得られない。
【0012】この問題の一つの解決法として、Q値を下
げることでパルスビームが誘起する誘導電場を軽減させ
る方法がある。例えば、低エネルギ領域に使用される高
周波空洞44に電気抵抗の大きなステンレス鋼等を使用
することで、当該領域の高周波空洞44のQ値を下げる
ことができる。しかし、電気抵抗の大きな加速空洞を製
作してQ値を低くするため、電力喪失及びこれによる熱
発生も大きくなる。従って、冷却機能も大きなものが必
要となり、装置の大型化を招くことになる。さらに、Q
値が低いと、外部高周波源により高周波パルス電力が供
給されてから高周波空洞44に高周波が蓄積する定常状
態に至るまでの時間が長くなってしまう。その結果、線
形加速器としての立ち上がり、立ち下がりの応答、及び
パルスビームの加減速若しくは偏向に供する定常状態高
周波のエネルギ量の利用効率が悪いものとなってしま
う。
【0013】また、冷却性能と外部供給電力とのかねあ
いから適当なQ値となるよう部分的に構成材を変えて、
例えば電極のみ銅材とし他は部分的にニッケルメッキを
施工したステンレス鋼を採用する方法もある。しかし、
この場合には、材料の選定によりQ値を変更、微調整す
ることは極めて困難なものとなり、現実的には不可能に
近い。
【0014】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
で、高いQ値を維持したままで、外部供給高周波電力に
対する応答性かよく、パルスビームの加減速若しくは偏
向に供する定常状態高周波のエネルギ量の利用効率が高
い高周波空洞装置、当該高周波空洞装置を使用した高周
波加速器を実現することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、荷電粒子
を加速する方向に延び且つ前記荷電粒子を加速するため
の空間を包囲するチューブ状の空洞と、前記荷電粒子を
加速する第1の電場を発生させるように、高周波電力を
前記空洞内に伝送するための第1の伝送手段と、前記空
洞内に挿入される導電性の挿入部を有し、前記荷電粒子
が通過することによって前記空洞内に誘導される第2の
電場による電気的エネルギを前記空洞外に伝送するため
の第2の伝送手段と、前記第2の伝送手段により伝送さ
れる前記第2の電場による電気的エネルギを吸収するた
めの吸収体と、前記第2の伝送手段を覆い且つ前記吸収
体と前記空洞とを電気的に結合させるための結合手段と
を具備することを特徴とする荷電粒子を加速するための
高周波空洞装置である。
【0016】第2の発明は、第1の発明において、前記
第2の伝送手段の前記挿入部は、前記第2の電場の方向
に対する向き、前記第2の電場が横切る面積、若しくは
前記空洞に対する挿入量のうち少なくとも1つが調節可
能であることを特徴とする高周波空洞装置である。
【0017】第3の発明は、第1の発明において、前記
第1の伝送手段は、前記空洞内に挿入される導電性の挿
入部を有し、前記第1の伝送手段の前記挿入部は、前記
第2の電場の方向に対する向き、前記第2の電場が横切
る面積、若しくは前記空洞に対する挿入量のうち少なく
とも1つが調節可能であることを特徴とする高周波空洞
装置である。
【0018】第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの
発明ににおいて、前記第2の伝送手段の前記挿入部はル
ープ形状を有することを特徴とする高周波空洞装置であ
る。
【0019】第5の発明は、荷電粒子を加速する方向に
延び且つ前記荷電粒子を加速するための空間を包囲する
チューブ状の空洞と、前記荷電粒子を加速する第1の電
場を発生させるように、高周波電力を前記空洞内に伝送
するための第1の伝送手段と、前記空洞内に挿入される
導電性の挿入部を有し、前記荷電粒子が通過することに
よって前記空洞内に誘導される第2の電場による電気的
エネルギを前記空洞外に伝送するための第2の伝送手段
と、前記空洞に荷電粒子を入射するための入射手段と、
前記第2の電場に対する前記第2の伝送手段の前記挿入
部の相対的な位置を制御するための制御手段とを具備す
ることを特徴とする高周波加速器である。
【0020】第6の発明は、第5の発明において、前記
制御手段は、前記第2の電場に対する前記第2の伝送手
段の前記挿入部の相対的な位置を制御するため、前記第
2の伝送手段の前記挿入部の、前記第2の電場の方向に
対する向き、前記第2の電場が横切る面積、若しくは前
記空洞に対する挿入量のうち少なくとも1つを調節する
ことを特徴とする高周波加速器である。
【0021】第7の発明は、第5又は第6の発明におい
て、前記第2の伝送手段により伝送される前記第2の電
場による電気的エネルギを吸収するための吸収体と、前
記第2の伝送手段を覆い且つ前記吸収体と前記空洞とを
電気的に結合させるための結合手段とを更に具備するこ
とを特徴とする高周波加速器である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に従って説明する。
【0023】本発明に係る高周波空洞は、種々の高周波
加速器に適用可能であるが、以下の説明においては定在
波型の高周波型線形加速器を例として説明を行う。
【0024】図1は、本発明に係る第1高周波空洞装置
2、及びこの第1高周波空洞装置2を低エネルギ領域の
バンチャーとして使用した定在波型線形加速器1の概略
構成を示している。
【0025】図1において、第1高周波空洞装置2は、
ビーム源13から発射される荷電粒子のビーム進行方向
に設置され、入射した荷電粒子ビームの位相幅を狭い幅
にまとめて(バンチして)安定させることで当該荷電粒
子ビームの有効率を高める役割を果たす。この第1高周
波空洞装置2の下流側には、加速部としての第2高周波
空洞装置3が設置されており、第1高周波空洞装置2に
よってバンチされた荷電粒子ビームを入射して加速す
る。
【0026】なお、図1においては、荷電粒子ビームの
流れを基準として上流側、下流側としている。
【0027】まず、第1高周波空洞装置2の構成につい
て説明する。図1において、第1高周波空洞装置2中に
は、円筒状の導体であるドリフトチューブ5a、5bが
組み込んで並べられている。このドリフトチューブ5は
電極の役割を果たし、ドリフトチューブ5間のギャップ
に所定の周期を有する高周波を伝播させるためのもので
ある。第1高周波空洞4は円形チューブ状の空洞管であ
り、その内面は、電気抵抗を少なくするため銅メッキが
施工され、若しくは無酸素銅で構成され、高いQ値を有
している。
【0028】同軸導波管6は、外導体61と内導体62
とからなり、外部高周波源10から供給された高周波電
力をこの二導体間で伝播させる。同軸導波管6と高周波
空洞4とは、第1結合ループ24、RF窓26、同軸導
波管部25から構成される第1結合器20により電気的
に結合されている。また、第1結合器20は、高周波空
洞4からの高周波の反射を防止する機能も有している。
同軸導波管6を伝播した高周波は、第1結合器20の同
軸導波管部25を介して第1高周波空洞4内に設置され
た第1結合ループ24へと伝わり、高周波空洞4内に伝
送される。RF窓26は、高周波空洞4内の真空雰囲気
と外界とを仕切る役割を果たす。
【0029】第1高周波空洞4の側壁には、第2結合器
7が軸15に関しておよそ第1結合器20と対称になる
位置に設けられている。この第2結合器7は、第1高周
波空洞4とダミーロード8とを電気的に結合しており、
第2結合ループ71と同軸導波管部25とから構成され
ている。
【0030】第2結合ループ71は、第1結合ループ2
4と同様な形状、素材で形成されており、高周波電力を
ジュール熱として吸収するダミーロード8が接続されて
いる。後述するように、ビーム源13から入射されたパ
ルスビームにより第1高周波空洞4内に誘導され加速の
障害となる誘導高周波は、第2結合ループ71によって
ダミーロード8へ伝送され吸収される。
【0031】なお、第1結合ループ24及び第2結合ル
ープ71は、オーバーカップルタイプであるとする。
【0032】次に、第1高周波空洞装置2よりバンチさ
れた荷電粒子ビームを入射して加速する第2高周波空洞
装置3の構成について、簡単に説明する。
【0033】第2高周波空洞装置3は、電気抵抗を少な
くするため内面に銅メッキが施工され、若しくは無酸素
銅で構成され、高いQ値を有した第2高周波空洞30を
軸方向に複数接続した多連空洞になっている。最上流側
の第2高周波空洞30には、第1高周波空洞装置2のも
のと同様の構成を有する高周波系14が接続されてお
り、空洞内に粒子加速のための高周波を供給する。ま
た、第2高周波空洞装置3内には、ドリフトチューブが
同一軸中心に組み込んで並べられている。このドリフト
チューブ5は加速電極の役割を果たし、その大きさ及び
各ドリフトチューブ5間のギャップは、加速する荷電粒
子が進行する方向に従って大きくなっている。
【0034】次に、その他の構成要素の説明を行う。
【0035】外部高周波源10は、クライストロン等に
よる高周波電源であり、同軸導波管6に所定の位相で高
周波電力を供給する。
【0036】電子銃等のビーム源13は、パルス電源1
2より印加されたパルス電力に基づき、所定の位相で加
速粒子のビームを発射する。
【0037】制御部11は、外部高周波源10から第1
高周波空洞4等に供給される高周波電力の位相制御、ビ
ーム源13からの発射されるビームの位相、エネルギ制
御、加速実験における高周波型線形加速器のシーケンス
制御等を行う。また、制御部11は、図示していない
が、第1高周波空洞4や第2高周波空洞30内を真空に
する真空装置、第1高周波空洞4等を冷却する冷却装
置、荷電粒子ビームを集束させるビーム集束用磁石等の
制御を行う。さらに、制御部11は、後で詳しく説明す
るように、荷電粒子ビームが第1高周波空洞4内を通過
することで誘導された電場を外部に放出する際の第2結
合ループの駆動制御、外部高周波源10から供給された
高周波により第1高周波空洞4内に電場形成する際の第
1結合ループ24の駆動制御も行う。
【0038】次に、図1を参照して定在波型線形加速器
1の動作説明を行う。
【0039】まず、第1高周波空洞装置2及び第2高周
波空洞装置3内を真空にする。これは、ビームの通過軌
道に残留ガスがあると、これがビームと衝突することに
よりビームが理想的な通過軌道より外れてしまい、その
結果、ビーム中の粒子数が減少してビームの寿命を短く
してしまうからである。そして、外部高周波源から、真
空となった第1高周波空洞装置2及び第2高周波空洞装
置3の中にTM01モードを励起するような高周波(マ
イクロ波)を供給する。
【0040】このような設定において、例えば、荷電粒
子ビームをドリフトチューブ5aからドリフトチューブ
5bに向かって各ドリフトチューブ5の中心を通過する
ように発射したとする。すると、当該ビームは、ドリフ
トチューブ5aとドリフトチューブ5bとのギャップを
通過するときに、当該ギャップ間を伝播する高周波によ
って加速若しくは減速される。すなわち、ギャップ間を
伝播する高周波の位相よりも早い位相を有する荷電粒子
は減速されることになり、また、遅い位相を有する荷電
粒子は加速されることになる。この加速若しくは減速に
よりビーム位相幅が狭い幅にまとめられることで、安定
した荷電粒子ビームにすることができる。そして、この
荷電粒子ビームは、加速部としての第2高周波空洞装置
3に入射し、さらに加速される。
【0041】しかしながら、上記ビームの安定化におい
ては、荷電粒子ビームが導体である第1高周波空洞4内
を加速(若しくは減速)しながら通過することになる。
従って、第1高周波空洞装置2内に外部高周波源10に
よる電場以外に、電磁誘導による新たな電場が発生し、
当該誘導電場による誘導高周波が第1高周波空洞4内に
蓄積してしまう。(以下、外部高周波源10による電場
を第1の電場、電磁誘導による電場を第2の電場と呼ぶ
ことにする。)。第2の電場は、荷電粒子ビームの電流
値及び第1高周波空洞4のQ値に依存している。上述し
たように、第1高周波空洞4は高いQ値を有しているか
ら、特に低エネルギ領域の加速においては、第1高周波
空洞4内において第1の電場よりも支配的である。従っ
て、低エネルギ領域において、第1の電場により適切な
加速又は偏向を行うためには、この第2の電場による影
響を取り除かなくてはならない。
【0042】以下、第1高周波空洞装置2について、第
1高周波空洞4の高いQ値を維持したまま、第2の電場
による誘導高周波の影響をなくす機能を説明する。
【0043】外部高周波源10による第1の電場が形成
された状態で、上流側より第1高周波空洞装置2に荷電
粒子ビームが入射され、上述した動作により当該荷電粒
子ビームは加速若しくは減速される。このとき、第1高
周波空洞4内に第2の電場が誘導される。
【0044】この第1高周波空洞4内に発生した第2の
電場は、第2結合ループ71によって空洞3外部に伝送
することができる。すなわち、第2の電場が第2結合ル
ープ71内を通過するように第2結合ループ71の向き
若しくは空洞3内挿入量を調節する。すると、当該第2
結合ループ71に誘導電流が流れ、オーバーカップルタ
イプループである当該第2結合ループ71は、第2の電
場を誘導電流として空洞外に放出する。放出された誘導
電流はダミーロード8へ流入し、ジュール熱に変換され
る。こうして、第2結合ループ71の向き若しくは空洞
3内挿入量を、第2の電場を取り除くのに最適な位置に
調節することで、低エネルギ領域の加速において支配的
となる第2の電場を取り除くことができる。
【0045】現実の実験では、第2結合ループ71にお
いて、第2の電場成分のみならず第1の電場成分による
誘導電流も発生する場合がある。この場合、第1の電場
による誘導電流も空洞外に流出してしまい、第1高周波
空洞4内の第1の電場をある程度低下させてしまう。し
かし、第1高周波空洞装置2を低エネルギ領域に使用す
れば、外部高周波源10が印加する電力には余裕がある
ので、印加電力を調節することで高いQ値を維持したま
ま適切な加速を行うことができる。なお、第1結合ルー
プ24についても向き若しくは空洞3内挿入量を調節可
能とすれば、第2の電場除去により第1の電場が受けた
影響の修正が容易となる。
【0046】図2は、第1の電場と時間の関係につい
て、本発明に係る第1高周波空洞装置2と従来の高周波
空洞装置40とを比較するための図である。実線La
は、第1高周波空洞装置2についての第1の電場と時間
との関係を示している。
【0047】外部高周波源10による電力印加を開始し
てから、第1の電場が加速可能な値E0になるまでの状
態を立ち上がりと呼び、t=t1以後の第1の電場=E
1である状態を定常状態、t=t2以降電力供給を停止
して第1の電場が0になるまでの状態を立ち下がりと呼
ぶことにする。荷電粒子ビームの加速は、定常状態にお
いて実行される。
【0048】図2の一点鎖線Lbは、Q値を低下させる
ことにより第2の電場を軽減させる従来型高周波空洞装
置40についての第1の電場と時間の関係を示してお
り、実線Laの場合と同一条件下によるものである。
【0049】本発明に係る高周波空洞装置2の実線La
と一点鎖線Lbとを比較すると、本発明の場合には、立
ち上がり、立ち下がり時間が短縮された結果、定常状態
領域が長くなっている。これは、本発明に係る第1高周
波空洞装置2を構成する第1高周波空洞4が、高いQ値
を有し、立ち上がり及び立ち下がり時間の短縮を実現す
ることができることによる。この定常状態領域が長くな
ることにより、加速に利用できる領域が拡大され、電力
の使用効率の向上を図ることができる。また、Q値が高
いことにより、第1の電場の微調節を可能とし、当該微
調節における応答性も向上させることができる。
【0050】以上述べた構成によれば、以下の効果を得
ることができる。
【0051】(1)高周波加速器における低エネルギ領
域、例えばバンチャー部に高周波空洞装置2を使用する
ことで、適切な荷電粒子ビームの加速の妨げとなる第2
の誘導電場を取り除くことができる。その結果、外部高
周波源10による加速のための第1の電場の制御性が向
上し、実験の精度を上げることができる。
【0052】(2)この第2の誘導電場の除去は高いQ
値を維持したまま実現できるので、高周波加速器1の立
ち上がり、立ち下がりに要する時間が短くできる。その
結果、荷電粒子ビームの加速に使用できる定常状態領域
を従来以上に確保でき、電力の使用効率のよい高周波空
洞、高周波加速器を実現することができる。
【0053】(第2実施形態)第2の電場に誘導される
誘導電流の大きさは、第1高周波空洞4内への第2結合
ループ71の挿入量によっても左右される。従って、こ
の第2結合ループ71の空洞内挿入量が調節できる構成
が望ましい。また、外部高周波源10により形成される
第1の電場についても、第1結合ループの挿入量を調節
することで容易に制御できることが望ましい。
【0054】第2の実施形態では、第1及び第2結合器
の代わりに、結合ループの空洞内挿入量が調節可能であ
る第3結合器を有する高周波空洞装置2及び高周波加速
器1の実施形態を示す。
【0055】図3(a)は、第3結合ループ16の空洞
内挿入量が調節可能な第3結合器31を有した第1高周
波空洞装置2を示す図であり、図3(b)は、第3結合
器31を第1高周波空洞4内から見た図である。第3結
合器31は、第1の実施形態で示した第1高周波空洞装
置2の第1結合器20及び第2結合器7の代わりに装着
されるものである。なお、図1と同一の構成要素には、
同符号を付してその説明は省略する。
【0056】図3において、第3結合器31は、第3結
合ループ16、ベローズ17、同軸導波管部25から構
成されており、さらにRF窓63を有する場合もある。
【0057】第3結合ループ16は、内導体62をルー
プ状に外導体61と接続することで形成されている。こ
の第3結合ループ16は、内導体62と一体型である必
要はなく、当該ループ16を別体として銅等の伝導性の
良い導体で作成し、内導体62と外導体61と電気的に
接続する構成であってもよい。この第3結合ループの空
洞内挿入量は、ベローズ17を図示していない駆動系に
より伸縮させることで調節できる。
【0058】RFコンタクタ18は、伝導性に優れた銅
合金等を材質とした弾性部材である。ベローズ17の伸
縮により外導体61が上下移動した場合であっても、当
該外導体61と高周波空洞との電気的導通性は、弾性を
有するRFコンタクタ18によって維持される。
【0059】このような構成によれば、第3結合ループ
16の空洞3内挿入量が調節可能であるから、第1の電
場の形成、又は第2の電場の放出に関する調節を容易に
行うことができる。その結果、高周波加速器1の制御性
を向上せることができ、より精度が高い加速器実験を実
現できる。
【0060】以上、本発明を第1、第2の実施形態に基
いて説明したが、上記実施形態に限定されるものではな
く、例えば以下に示す(1)、(2)のように、その要
旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0061】(1)第1、第2の実施形態においては、
本発明に係る高周波空洞装置2をバンチャーとして適用
した例を説明した。これに加え、同じ低エネルギ領域に
おいて並列的に使用されるプリバンチャーや、荷電粒子
ビームの加速を担う多連空洞装置の低エネルギ領域部
分、更には円形加速器等に使用されるビーム源にも適用
可能である。また、加速に限らず、減速、偏向する場合
においても有効である。
【0062】(2)第1、第2の実施形態においては、
定在波型線形加速器1を例として説明したが、定在波型
高周波空洞を使用する加速器であれば、線形加速器に限
定されるものではない。すなわち、シンクロトロン、ス
トレージリング等においても適用可能である。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、高いQ値を維持したま
ま加速に必要ない高周波空洞内の電場を空洞外に放出で
きるので、装置の制御性、電力の利用効率を向上させる
ことができる。その結果、加速実験の際の精度を高くす
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る高周波空洞、及
びこの高周波空洞を使用した定在波型線形加速器の概略
構成を示す図。
【図2】図2は、本発明に係る高周波空洞と従来の高周
波空洞とについて、第1の電場と時間との関係を示す
図。
【図3】図3は、第2の実施形態に係る高周波空洞の一
ユニットの概略構成を示す図。
【図4】図4は、低エネルギ領域の粒子加速に利用され
ている従来の高周波空洞の一例を示す図。
【符号の説明】
1…定在波型線形加速器 2…第1高周波空洞装置 3…第2高周波空洞装置 4…第1高周波空洞 5…ドリフトチューブ 6…同軸導波管 7…第2結合器 8…ダミーロード 10…外部高周波源 11…制御部 12…パルス電源 13…ビーム源 14…高周波系 16…第3結合ループ 17…ベローズ 18…RFコンタクタ 20…第1結合器 24…第1結合ループ 25…同軸導波管部 26…RF窓 30…第3結合器 61…外導体 62…内導体 71…第2結合器

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 荷電粒子を加速する方向に延び且つ前記
    荷電粒子を加速するための空間を包囲するチューブ状の
    空洞と、 前記荷電粒子を加速する第1の電場を発生させるよう
    に、高周波電力を前記空洞内に伝送するための第1の伝
    送手段と、 前記空洞内に挿入される導電性の挿入部を有し、前記荷
    電粒子が通過することによって前記空洞内に誘導される
    第2の電場による電気的エネルギを前記空洞外に伝送す
    るための第2の伝送手段と、 前記第2の伝送手段により伝送される前記第2の電場に
    よる電気的エネルギを吸収するための吸収体と、 前記第2の伝送手段を覆い且つ前記吸収体と前記空洞と
    を電気的に結合させるための結合手段と、を具備するこ
    とを特徴とする荷電粒子を加速するための高周波空洞装
    置。
  2. 【請求項2】 前記第2の伝送手段の前記挿入部は、前
    記第2の電場の方向に対する向き、前記第2の電場が横
    切る面積、若しくは前記空洞に対する挿入量のうち少な
    くとも1つが調節可能であることを特徴とする請求項1
    に記載の高周波空洞装置。
  3. 【請求項3】 前記第1の伝送手段は、前記空洞内に挿
    入される導電性の挿入部を有し、前記第1の伝送手段の
    前記挿入部は、前記第2の電場の方向に対する向き、前
    記第2の電場が横切る面積、若しくは前記空洞に対する
    挿入量のうち少なくとも1つが調節可能であることを特
    徴とする請求項1に記載の高周波空洞装置。
  4. 【請求項4】 前記第2の伝送手段の前記挿入部はルー
    プ形状を有することを特徴とする請求項1乃至3のいず
    れかに記載の高周波空洞装置。
  5. 【請求項5】 荷電粒子を加速する方向に延び且つ前記
    荷電粒子を加速するための空間を包囲するチューブ状の
    空洞と、 前記荷電粒子を加速する第1の電場を発生させるよう
    に、高周波電力を前記空洞内に伝送するための第1の伝
    送手段と、 前記空洞内に挿入される導電性の挿入部を有し、前記荷
    電粒子が通過することによって前記空洞内に誘導される
    第2の電場による電気的エネルギを前記空洞外に伝送す
    るための第2の伝送手段と、 前記空洞に荷電粒子を入射するための入射手段と、 前記第2の電場に対する前記第2の伝送手段の前記挿入
    部の相対的な位置を制御するための制御手段と、を具備
    することを特徴とする高周波加速器。
  6. 【請求項6】前記制御手段は、前記第2の電場に対する
    前記第2の伝送手段の前記挿入部の相対的な位置を制御
    するため、前記第2の伝送手段の前記挿入部の、前記第
    2の電場の方向に対する向き、前記第2の電場が横切る
    面積、若しくは前記空洞に対する挿入量のうち少なくと
    も1つを調節することを特徴とする請求項5に記載の高
    周波加速器。
  7. 【請求項7】前記第2の伝送手段により伝送される前記
    第2の電場による電気的エネルギを吸収するための吸収
    体と、前記第2の伝送手段を覆い且つ前記吸収体と前記
    空洞とを電気的に結合させるための結合手段と、を更に
    具備することを特徴とする請求項5または6に記載の高
    周波加速器。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010027529A (ja) * 2008-07-24 2010-02-04 Mitsubishi Electric Corp 高周波加速器
US9651279B2 (en) 2008-02-01 2017-05-16 Gentherm Incorporated Condensation and humidity sensors for thermoelectric devices
CN112888141A (zh) * 2020-12-30 2021-06-01 兰州科近泰基新技术有限责任公司 一种高梯度返波型行波加速器及其快速能量调节方法

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