JP2858330B2 - 自動２輪車のギアシフト装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 （産業上の利用分野） この発明は、ミッションギア機構のギアシフトをロー
タリ式のシフトカムで制御する自動２輪車のギアシフト
装置に関する。

（従来の技術） 自動２輪車では、エンジンの動力伝導系に組み込まれ
たミッションギア機構を、ロータリ式のシフトカムによ
り制御するものが多い。

第４図、第５図は自動２輪車ギアシフト装置の一例を
示すもので、一連のクランクケースまたはミッションケ
ースａにクランクシャフトb,カウンタシャフトc,ドライ
ブシャフトｄが並列に軸架され、クランクシャフトｂと
カウンタシャフトｃとの間に開閉クラッチｅが介装さ
れ、カウンタシャフトｃとドライブシャフトｄとの間に
は、ミッションギア機構ｆが軸装される。

このミッションギア機構ｆはロータリ式のシフトカム
ｇが一定角度づつ正逆回動することによりシフトフォー
クを介してギアシフトされる。ｈはシフトカムｇを駆動
するチェンジアームで、チェンジペタルを固定したチェ
ンジシャフトｉ上に弾性的に結合している。

すなわち、チェンジアームｈはチェンジシャフトｉ上
に回動自在に軸支され、その一部に形成された突片ｊ
と、チェンジシャフトｉに固定された突片ｋとミッショ
ンケースａに植設されたストッパボルト１とが、チェン
ジシャフトｉ上に巻装されたフォーク型のスプリングｍ
で一緒に挟まれ、チェンジシャフトｉおよびチェンジア
ームｈ共に、一定位置に付勢されている。

シフトカムｇの側面には、一定ピッチ間隔にシフトピ
ンｎが配置され、チェンジアームｈの先端に軸支された
シフトポールｏがスプリングｐにより外側から弾接す
る。シフトポールｏには前後の送り爪ｑが対設されてい
て、その間にシフトピンｎが接する。

チェンジアームｈは、上記のように、スプリングｍに
より一定位置に付勢され、チェンジペタルの操作によ
り、一定ストローク前または後方へ往復揺動する。これ
により上記シフトポールｏが前または後方へ往復動して
送り爪ｑがシフトピンｎを押し、シフトカムｇが正また
は逆方向へ１ピッチづつ回動させられる。

このように、チェンジシャフトｉの正逆回動によって
ギアシフトが行われるのであるが、これをスムーズに動
作させるために、開閉クラッチｅを直前に開くレリーズ
装置が備えられる。

レリーズ装置は、チェンジシャフトｈの端部に固定さ
れた固定側レリーズボールガイドｒと、回動自在，スラ
イド自在に軸支された可動側レリーズボールガイドｓが
対設され、両ガイドr,sに形成された相対向する緩傾斜
の凹面ｔの底部にレリーズボールｕを挟持している。こ
の可動側レリーズボールガイドｓにフォーク部ｖが設け
られて、前ストッパボルト１をスライド自在に挟み、回
動しないように一定位置に拘束される。

チェンジシャフトｉが回動すると、固定側，可動側レ
リーズボールガイドr,sとの間に相対回転変位が生じ、
レリーズボールｕを挟んでいる凹面ｔの傾斜面によっ
て、固定側レリーズボールガイドｓが外方へ押し出さ
れ、レリーズレバーｗを介して開閉クラッチｅを開くも
のである。

上記の構造において、ストッパボルト１は、チェンジ
アームｈと可動側レリーズボールガイドｓを拘束する機
能が与えられている。従ってある程度の長さが必要にな
り、各種の機種ごとの制約を満足させるためには、それ
ぞれの専用部品を必要とし、コストアップを招く場合が
あった。

また、可動側レリーズボールガイドｓの荷重がストッ
パボルト１の先端部に作用するので、強度上不利であ
り、径が比較的に細い（例えば8mm）ので、接触部応力
が大きく、段付き磨耗が発生してチェンジ操作のフィー
リングが低下する、という問題があった。

（発明が解決しようとする課題） この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたも
ので、既設の機能部品を利用して、チェンジシャフトと
レリーズボール装置の位置制御用部材を分散することに
より、ストッパボルトを小型化し、かつチェンジ操作の
フィーリングを向上する自動２輪車のギアシフト装置を
得ることを目的とする。

〔発明の効果〕

（課題を解決するための手段） 上記の目的に沿って、この発明の自動２輪車のギアシ
フト装置は、クランクシャフトから開閉クラッチを介し
て回転を伝えられるカウンタシャフトと、出力用のドラ
イブシャフトとの間にミッションギヤ機構を介装し、ロ
ータリ式のシフトカムを一定角度づつ正または逆方向へ
回動させることによって、シフトフォークを介して上記
ミッションギア機構のギアシフトを制御するように備
え、かつキック始動装置を備えた自動２輪車において、
チェンジ操作用のチェンジペタルを固定し、上記シフト
カムの駆動用チェンジアームを軸着したチェンジシャフ
トと、始動操作用のキックレバーを固定したキックシャ
フトとを並列し、このチェンジシャフト端部に、レリー
ズボールを挟んだ固定側と可動側レリーズボールガイド
との相対回動変位に伴う可動側レリーズボールガイドの
軸方向変位によって上記開閉クラッチを開くようにした
レリーズボール装置を装備し、その固定側レリーズボー
ルガイドをチェンジシャフトに固定すると共に、可動側
レリーズボールガイドから延設したストッパレバーの先
端を、前記キックシャフトに軸方向スライド自在に係合
して、その可動側レリーズボールガイドを回動不能に拘
束した構成になるものである。

（作用） このように構成したもので、チェンジペタルを正逆操
作することにより、チェンジシャフトが正逆回動し、先
ずレリーズボール装置の作用により開閉クラッチが開い
てトルク伝達が解かれてから、ミッションギア機構が所
定の速度段階にギアシフトされ、ギアシフトが完了して
チェンジシャフトが定位置に戻るときには、開閉クラッ
チが閉じて直ちに動力伝導が継続される。

チェンジシャフトはストッパボルトにより位置規制さ
れ、レリーズボルト装置の回り止めはキックシャフトに
よるので、荷重が分散されてレリーズボルトの小型化が
でき、一方キックシャフトは剛性が高く、磨耗しにくい
ので、長期に亘ってチェンジ操作の好フィーリングを保
持する。

（実施例） 以下この発明の実施例になる自動２輪車のギアシフト
装置を示す図に就いて説明する。

第１図はレリーズボール装置の要部を示す側面図、第
２図はチェンジ機構の要部を示す側面図、第３図は第２
図Ａ−Ａ矢視による展開図である。

符号１はミッションケースを示し、カウンタシャフト
２とドライブシャフト３が並列して軸架される。カウン
タシャフト２の軸端には、プライマリドリブンギア４が
回転自在に軸装され、図示しないクランクシャフト上の
プライマリドライブギアと噛み合っている。プライマリ
ドリブンギア４とカウンタシャフト２との間には開閉ク
ラッチ５が装備される。

また、カウンタシャフト２にミッションドライブギア
群6aが軸装され、ドライブシャフト３に軸装されたミッ
ションドリブンギア6bとによりミッションギア機構６が
構成され、ギアシフトによって両シャフト間に複数段階
の減速比が選択される。このギアシフトは、自動２輪車
に慣用されるように、シフトカム７の回動により、シフ
トフォーク（図示しない）を介して制御される。８は、
ドライブシャフト３端部に固定されたドライブスプロケ
ットギアで、選択された減速比をもって後輪に動力を伝
える。

ミッションケース１には、ドライブシャフト３に並列
してキック始動用のキックシャフト９が軸装される。キ
ックシャフト９上にはキックドライブギア10が回転自在
に軸支される。このキックドライブギア10は、ミッショ
ンドライブ，ドリブンギア群6a,6bの常時噛み合ってい
る１組のドリブンギアに常時噛み合うように配置されて
いる。

このキックドライブギア10の隣には、ヘリカルスプラ
イン11を介してドットピース12が軸装され、そのドライ
ブドック13aと、キックドライブギア10側面のドリブン
ドック13bが対向する。ドックピース12には軽い制動力
が与えられている。

始動時、図示しないキックレバーの操作によりキック
シャフト９が回転すると、ドッグピース12が軸方向に移
動してドライブ，ドリブンドック13a,13bが結合してキ
ックドライブギア10が回転し、噛み合っているミッショ
ンドライブ，ドリブンギアを経てカウンタシャフト2,開
閉クラッチ5,プライマリドリブンギア４に回転を伝え、
プライマリドライブギアを介してクランクシャフトを駆
動する。

次に、前記シフトカム７とキックシャフト９との中間
部に、チェンジシャフト14がミッションケース１に軸架
されている。チェンジシャフト14は、ケース外に固定さ
れた図示しないチェンジペタルにより正逆回動される。

チェンジシャフト14上にはチェンジアーム15が軸支さ
れる。チェンジアーム15の一部には側方へ屈折する突片
16が形成され、チェンジシャフト14に固定された固定側
レリーズボールガイド17aの突片18と一緒に、ボス15aに
巻装されたフォーク状のスプリング19に挟持され、チェ
ンジアーム15とチェンジシャフト14とは弾性的に結合さ
れている。またチェンジアーム15の一部に係合ピン20が
突設される。

一方、前記キックシャフト９には、このチェンジアー
ム15とほぼ同一位相位置にシフトアーム21が回転自在に
軸支される。シフトアーム21には突片22が形成され、ボ
ス21aに巻装されたフォーク状のスプリング23により、
ミッションケース１に突設されたストッパボルト24と共
に挟持されて、常に一定位置に付勢される。

そして、シフトアーム21の一部に係合長孔25が配置さ
れて、上記係合ピン20がスライド自在に嵌挿される。こ
のリンク結合によって、チェンジアーム15の揺動がシフ
トアーム21に伝えられる。

シフトアーム21の先端には、シフトポール26が軸支さ
れて、シフトカム７の側面に延びている。シフトカム７
の側面には、一定ピッチ間隔にシフトピン27が配置さ
れ、シフトポール26がスプリング28によりその外側に弾
接する。シフトポール26には前後の送り爪29a,29bが対
設されていて、この間に上記シフトピン27が位置する。

チェンジ操作によりチェンジシャフト14が正または逆
方向へ回動すると、チェンジアーム15,シフトアーム21
が前または後方へ一定ストローク往復揺動し、これによ
り上記シフトポール26が前または後方へ往復動して、送
り爪29a,29bがシフトピン27を正または逆方向へ押し、
シフトカム７が正または逆方向へ１ピッチづつ回動し
て、前記のように、ミッションギア機構６が所定の速度
段階にギアシフトさせられる。

前記固定側レリーズボールガイド17aには、可動側レ
リーズボールガイド17bが回転自在，スライド自在に対
設され、両ガイド17a,17bに対向して形成された緩傾斜
の凹面30の底部にレリーズボール31が挟持されている。
この可動側レリーズボールガイド17bは、フォーク部32
が設けられて前記キックシャフト９をスライド自在に抱
持して、回動しないように一定位置に拘束される。

チェンジシャフト14が回動すると、固定側レリーズシ
ャフトボールガイド17aと可動側レリーズボールガイド1
7bとの間に相対回転変位が生じ、レリーズボール31を挟
んでいる凹面39の傾斜面によって、可動側レリーズボー
ルガイド17bが外方へ押し出され、レリーズピース33を
介してレリーズレバー34の外端34bを押す。

レリーズレバー34は、クラッチカバー35の内面に固定
された支軸36に中央部を軸支され、内端34aが前記開閉
クラッチ５のプッシュピース37に接する。プッシュピー
ス37が押されると、クラッチスプリング39により摩擦プ
レート40を押圧しているプレッシャプレート38が押し戻
され、開閉クラッチ５が開いて、カウンタシャフト２の
動力伝導が断たれる。

この開閉クラッチ５のレリーズ作用は、前記のように
ミッションギア機構６をギアシフトするチェンジペタル
の正または逆ストロークの初期に行われ、スムーズなギ
アシフトに備えたもので、ギアシフトが完了してチェン
ジペタルが戻れば、開閉クラッチ５は直ちに接続して動
力伝導を継続する。

こうして、ストッパボルト24はシフトアーム21の位置
規制にのみ使用され、小型化（短縮）できる。このため
他機種の部品を流用でき、コストダウンが可能である。
一方、キックシャフト９はストッパボルト24の径（例え
ば8mm）に比べ太い（14mm）ので、可動側レリーズボー
ルガイド17bのフォーク部32との接触部応力を大巾に低
下させることができ、磨耗を防止して、チェンジ機構の
耐久性を向上し、かつキックシャフト９の剛性は極めて
高く、チェンジ操作の良好なフィーリングを長期に亘っ
て確保できる。

〔発明の効果〕

以上の通り、この発明に係わる自動２輪車のギアシフ
ト装置は、クランクシャフトから開閉クラッチを介して
回転を伝えられるミッションギア機構を備え、チェンジ
ペタルの操作により上記ミッションギア機構のギアシフ
トを制御するようにし、かつキック始動装置を備えた自
動２輪車において、上記チェンジペタルを固定して正逆
回動するチェンジシャフトの一端に、上記ミッションギ
ア機構を開くレリーズボール装置を装備し、その固定側
レリーズボールガイドをチェンジシャフトに固定すると
共に、可動側レリーズボールガイドから延設したストッ
パレバーの先端を、前記キックシャフトに軸方向スライ
ド自在に係合して回動不能に拘束したもので、既設の機
能部品を利用して、チェンジシャフトとレリーズボール
装置の位置制御用部材を分散することにより、ストッパ
ボルトを小型化し、かつチェンジ操作のフィーリングを
向上することができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の実施例になる自動２輪車のギアシフ
ト装置におけるレリーズボール装置の要部を示す側面
図、第２図はチェンジ機構の要部を示す側面図、第３図
は第２図Ａ−Ａ矢視による展開図、第４図は従来の自動
２輪車のギアシフト装置を示す側面図、第５図は第４図
Ｂ−Ｂ矢視による展開図である。 １……ミッションケース、２……カウンタシャフト、３
……ドライブシャフト、６……ミッションギア機構、７
……シフトカム、９……キックシャフト、14……チェン
ジシャフト、15……チェンジアーム、17a……固定側レ
リーズボールガイド、17b……可動側レリーズボールガ
イド、21……シフトアーム、24……ストッパボルト、26
……シフトポール、27……シフトピン、29a,29b……送
り爪、31……レリーズボール、32……フォーク部、33…
…レリーズレバー、37……プッシュピース、38……プレ
ッシャプレート、39……クラッチスプリング、40……摩
擦プレート。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】クランクシャフトから開閉クラッチを介し
   て回転を伝えられるカウンタシャフトと、出力用のドラ
   イブシャフトとの間にミッションギヤ機構を介装し、ロ
   ータリ式のシフトカムを一定角度づつ正または逆方向へ
   回動させることによって、シフトフォークを介して上記
   ミッションギア機構のギアシフトを制御するように備
   え、かつキック始動装置を備えた自動２輪車において、
   チェンジ操作用のチェンジペタルを固定し、上記シフト
   カムの駆動用チェンジアームを軸着したチェンジシャフ
   トと、始動操作用のキックレバーを固定したキックシャ
   フトとを並列し、このチェンジシャフト端部に、レリー
   ズボールを挟んだ固定側と可動側レリーズボールガイド
   との相対回動変位に伴う可動側レリーズボールガイドの
   軸方向変位によって上記開閉クラッチを開くようにした
   レリーズボール装置を装備し、その固定側レリーズボー
   ルガイドをチェンジシャフトに固定すると共に、可動側
   レリーズボールガイドから延設したストッパレバーの先
   端を、前記キックシャフトに軸方向スライド自在に係合
   して、その可動側レリーズボールガイドを回動不能に拘
   束したことを特徴とする自動２輪車のギアシフト装置。