JP2852555B2 - 新規な水溶性ビタミンk類誘導体およびその製造法 - Google Patents

新規な水溶性ビタミンk類誘導体およびその製造法

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JP2852555B2 JP20008590A JP20008590A JP2852555B2 JP 2852555 B2 JP2852555 B2 JP 2852555B2 JP 20008590 A JP20008590 A JP 20008590A JP 20008590 A JP20008590 A JP 20008590A JP 2852555 B2 JP2852555 B2 JP 2852555B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、安定な水溶性の還元型ビタミンK類のプロ
ドラッグに関するものである。さらに詳しくは、式
(I): [式中、Xは−CH2−CH(CH3)−または−CH=C(C
H3)−を示す]で表わされる化合物またはその製薬上許
容される塩、およびそれらの製造法ならびにそれらの化
合物を有効成分として含有する医薬組成物に関するもの
である。
[従来技術] ビタミンK類(以下、単にVKという)は、現在までに
K1、K2、K3、K4、K5、K6、K7までが知られ、自然界から
単離または合成されている。中でもビタミンK1(以下、
VK1という)およびビタミンK2(以下、VK2という)は医
薬品として幅広く用いられている。ビタミンK3(以下、
VK3という)はかつて医薬品として幅広く用いられてい
たが、現在は利用されていない。
VK1は現在フィロキノン(phylloquinone)と呼ばれ、
日本薬局方名はフィトナジオン(phytonadione)であ
る。
VK2には多くの同族体が存在し、3位側鎖のプレニル
単位の数によって区別される。生物活性の大きいものは
プレニル単位4〜6個のものであり、これらをそれぞれ
メナキノン(menaquinone)−4〜−6と呼び、特にall
−trans体の生物活性が最も強い。現在医薬品として用
いられているVK2は、このうちメナキノン−4である。
これらVKはいずれも血液凝固を促進する止血剤として
極めて重要な化合物であるが、一般にVKは、周知のよう
に脂溶性ビタミンであり、そのままでは水に溶解する事
は困難である。
従来、これらのVKを水に可溶化するために界面活性剤
や溶解補助剤を加えるなどして、水溶性注射剤を調製し
ていた。例えば、特公昭52−50251、特公昭53−7489、
特開昭59−164728、特開昭62−281885の報告がある。し
かし、界面活性剤等の添加により水に可溶化された薬剤
も、高温高圧下での加熱滅菌操作や濃度の希釈などによ
り、相分離が生じるなどの問題点がある。
最近では界面活性剤がアナフィラキシ−ショックを引
き起こす事が問題となっている。VK2注射剤において
も、まれに血圧降下、呼吸困難などの重篤な副作用が起
こることが報告されており、これらは界面活性剤に起因
するものと考えられている。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、界面活性剤や溶解補助剤を使用せずに、VK
を水に可溶化する方法に関し、VK活性を有する新規な水
溶性VK誘導体を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 前記VKの多くは生体内で還元されて、対応するヒドロ
キノン体(以下、還元型VKまたはヒドロキノンVKとい
う)となって、活性を発揮することが知られている。
本発明者らは、還元型VKをフマル酸とのビス−酸性エ
ステルとし、その塩を形成させれば、前記課題を満足す
る水溶性VK誘導体が得られることを見出して、本発明を
完成した。さらに詳しくは下記式(I): [式中、Xは−CH2−CH(CH3)−または−CH=C(C
H3)−を示す]で表わされる本発明化合物およびその製
薬上許容しうる塩は下記式(II): [式中、Xは前記と同意義を有する]で表わされる化合
物を下記式(III): [式中、Rは水素または保護基を示す]で表わされる化
合物との縮合反応に付し、要すればさらに脱保護反応に
付して化合物(I)を得る。化合物(I)は公知の方法
で容易に所望の塩として得ることができる。
本発明化合物の塩は界面活性剤を用いずに水に容易に
溶解するので、便利かつ安全である。さらに、希釈溶液
中でも光安定性に優れ、他の薬物との相互作用が比較的
少ないので、静脈注射用製剤に好適である。
また以下に詳述する様に、本発明化合物は市販のVK1
製剤およびVK2製剤と、生体内で同等の血液凝固作用を
有すること、これらの水溶液が公知の対応するVK誘導体
と比較して極めて安定である事が確認された。以上よ
り、本発明化合物はVK欠乏に起因する疾患または症状の
予防または治療に極めて有用と考えられる。
本発明明細書においては、VK1としてフィロキノン、V
K2としてメナキノン−4を代表として詳述するが、本発
明はこれらに限定されるものではなく、VK1およびVK2
全てに及ぶものである。従って、本明細書においては、
フィロキノンまたはメナキノン−4のヒドロキノン型を
特に言う場合には、それぞれフィロヒドロキノンまたは
メナヒドロキノン−4と言う。
本発明化合物は製薬上許容しうる塩の形態で用いるの
が好適である。
本明細書において、製薬上許容し得る塩とは、カルボ
キシル基と適当な塩基との相互作用により形成される塩
であり、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモ
ニウム塩などが挙げられるが、好ましくはナトリウム塩
である。本発明化合物には、フィロヒドロキノンおよび
メナヒドロキノンのジヘミフマレート誘導体およびこれ
らのナトリウム塩などが含まれる。また式(I)の化合
物が溶媒和物、例えば水和物などとして存在する場合、
かかる形態もまた本発明の範囲内である。
本発明が提供する還元型VKのジヘミフマレート誘導体
は、生体内で容易に還元型VKとなるので、すぐれたVK活
性を発揮することが期待される。また水溶液中でも安定
であるので、製剤化しやすく各種担体とともに注射剤な
どとすることが可能である。投与量は、目標とする治療
効果、投与方法、年齢、体重等によって変わるので、一
概には規定できないが、通常、成人に対する一日投与量
は、約1〜約100mg、更に好ましくは約5〜約30mgであ
り、1〜数回に分割して投与する。
本発明化合物の製造方法を以下に詳述する。
(出発原料化合物(II)の調製) [式中、Xは前記と同意義を有する] 出発原料である還元型化合物(II)は、VKを公知の方
法で還元して容易に得られる。市販のフィロキノンまた
はメナキノン−4を還元するのが簡便かつ安価である。
(原料化合物(III)の調製) [式中、R′は保護基を示す] 出発原料である式(III)の化合物は、Rが水素の場
合は市販のフマル酸をそのまま使用すれば良い。Rが保
護基の場合はオーガニック・プレパレイションズ・アン
ド・プロシージャズ・インターナショナル(Org.Prep.P
roced.Int.,17(2),1211(1985)Michael Dimicky an
d Robert L.Buchanan)に記載の方法に準じて行なえば
良く、保護基としてはトリメチルシリルエチルまたはト
リクロロエチルがとりわけ好ましい。
保護基導入の反応は、まず無水マレイン酸(IV)と導
入すべき保護基に対応するアルコール(R′OH(V))
を溶媒中または無溶媒中、要すれば塩基存在下にて撹拌
することにより、マレイン酸誘導体(VI)を得る。好ま
しいアルコールとしては2−(トリメチルシリル)エタ
ノールまたは2,2,2−(トリクロロ)エタノールなどが
例示できる。
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミンなどの有
機塩基を使用する。溶媒としては反応に悪影響を及ぼさ
ないものを広く使用でき、具体的にはベンゼン、トルエ
ン、キシレン、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素
類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエー
テル類、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化
水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素な
どの脂肪族ハロゲン化炭化水素類等を例示できる。反応
時間は数分〜数十時間である。
次に、このマレイン酸誘導体(VI)をフマル酸誘導体
(III′)に異性化する。該反応はマレイン酸誘導体(V
I)と触媒(好ましくはフマリルクロライド)を、無溶
媒中にて温度約90〜130℃で数時間(好ましくは2時
間)加熱撹拌する。触媒の使用当量(モル比)は基質に
対して約0.01〜約0.1である。
(本発明化合物の調製) 第1工程 [式中、XおよびRは前記と同意義] 化合物(II)と化合物(III)を縮合反応に付し、上
記式(I′)で示される化合物を製造する工程である。
該縮合反応は、一般に良く知られている通常のエステル
化法によって行なわれるが、例えばオキザリルクロライ
ド等を用いて、式(III)の化合物の酸クロライドを形
成し、このものと式(II)の化合物を溶媒(例えばジク
ロロメタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類)中、適当
な塩基(例えば、トリエチルアミンなどの無機塩基また
はピリジンなどの有機塩基)存在下で反応させる。反応
は不活性ガス(例えばアルゴンなど)気流中で行なうの
が好ましく、氷冷下にて数分〜数時間撹拌して完結す
る。化合物(II)と化合物(III)の使用割合としては
特に限定されないが、通常前者に対して後者を少なくと
も1倍当量以上、好ましくは約2倍当量用いるのがよ
い。塩基の量は化合物(I′)に対して約1〜約3倍用
いればよい。
第2工程 化合物(I′)においてRが水素以外の場合に、該化
合物をさらに脱保護反応に付して化合物(I)を合成
し、さらに塩形成反応に付す工程である。
脱保護の方法は、保護基の種類によって異なるが、好
ましくは化合物(I′)のエステル構造以外の部分に対
して影響を与えにくい方法が望ましい。例えば、Rがト
リメチルシリルエチルの時は、ヘルベチカ・シミカ・ア
クタ(Helv.Chim.Acta.,60,2711(1977)Peter Siebe
r)に記載の方法に準じて行なえば良い。該反応は化合
物(I′)を触媒(好ましくはテトラ−n−ブチルアン
モニウムフロライド)存在下、溶媒中、室温で数時間
(好ましくは約1時間)撹拌すればよい。溶媒はジメチ
ルホルムアミド、テトラヒドロフランの混合液が使用さ
れる。触媒量は基質に対して約4倍当量で良い。
Rがトリクロロエチルの場合には、シンセシス(Syth
esis,457(1976)G.Just & K.Grozinger)に記載の方
法に準じて行なえば良い。該反応は化合物(I′)を触
媒(好ましくは活性化亜鉛)および酢酸アンモニウム存
在下、溶媒中、室温で数分から数時間撹拌すればよい。
溶媒はテトラヒドロフランなどが使用される。触媒量は
重量比で基質に対して約2倍量である。
式(I)で表わされるカルボン酸をナトリウム塩に変
換する方法は、通常の塩形成反応によるが、好ましくは
該カルボン酸を約0.1規定の水酸化ナトリウム溶液に溶
解させ凍結乾燥することによる。
以下に、諸実施例、諸実験例をあげて本発明をさらに
詳しく説明するが、これらは何等、本発明を限定するも
のではない。
参考例1 ヘミ−(2−トリメチルシリルエチル)フマレートの合
成 無水マレイン酸36.98g(377mmole)と2−(トリメチ
ルシリル)エタノール44.6g(377mmole)の混合物を40
℃にて10時間加熱撹拌する。トルエンを加えた後、反応
液を70gの炭酸水素ナトリウムと水400mlの混合液中に加
えて分液する。水層を酢酸エチルと合わし、2N−塩酸で
酸性にして抽出する。有機溶媒層を水洗、硫酸マグネシ
ウムで乾燥後、減圧濃縮すると81.40gの油状のマレイン
酸誘導体が得られる。[NMR] δ ppm(CDCl3):0.06〜0.08(m,9H),1.06〜1.14(m,2
H),4.35〜4.43(m,2H),6.35(d,J=12.8Hz,1H),6.47
(d,J=12.8Hz,1H). このマレイン酸誘導体20.0g(92.46mmole)とフマリ
ルクロライド1ml(0.1×92.46mmole)の混合物を90℃に
て3時間加熱撹拌する。約60℃に冷却後トルエンを加
え、不溶物を濾去する。トルエン層を5%炭酸水素ナト
リウム水溶液にて抽出する。水層を酢酸エチル存在下に
2N−塩酸にて酸性にする。有機溶媒層を水洗し、硫酸マ
グネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。得られた結晶性残
渣をエチルエーテル−n−ヘキサンより再結晶すると無
色結晶8.28g得る。収率41.4% 融点:86−86.5℃ [元素分析] C9H16O4Siとして 計算値:C;49.97,H;7.46 実測値:C;49.68,H;7.22 [IR] νmax cm-1(CHCl3):3510,3350−2420br,1706,1643,85
7,835 [NMR] δ ppm(CDCl3):0.05〜0.06(m,9H),1.02〜1.10(m,2
H),4.27〜4.36(m,2H),6.83(d,J=15.8Hz,1H),6.94
(d,J=15.8Hz,1H) 参考例2 ヘミ−(2,2,2−トリクロロエチル)フマレートの合成 無水マレイン酸40.0g(408mmole)と2,2,2−(トリク
ロロ)エタノール66.6g(1.1×408mmole)のテトラヒド
ロフラン100ml溶液に、トリエチルアミン68.0ml(1.2×
408mmole)のテトラヒドロフラン100ml溶液を氷冷、撹
拌下に15分間で加える。室温にて一夜放置した後、反応
液を氷水に注ぎ込む。酢酸エチルにて抽出した後、有機
溶媒層を2N−塩酸で洗浄し、次いで水で洗浄する。減圧
濃縮後、結晶性の残渣を酢酸エチル−n−ヘキサンから
再結晶すると無色結晶としてマレイン酸誘導体62.1gを
得る.収率61.5%. 融点:123−125℃ [元素分析] C6H5O4Cl3として 計算値:C;29.12,H;2.04,Cl;42.98 実測値:C;29.06,H;2.02,Cl;42.99 [IR] νmax cm-1(Nujol):2610,2525,1735sh,1732,1700,163
9,1190,1163,720 [NMR] δ ppm(CD3OD):4.87(s,2H),6.38(d,J=12.2Hz,1
H),6.50(d,J=12.2Hz,1H) このマレイン酸誘導体50.0g(202mmole)とフマリル
クロライド2.2ml(0.1×202mmole)の混合物を125℃に
て2時間加熱撹拌する。約60℃に冷却後トルエンを加え
不溶物を濾去する。トルエン層を5%炭酸水素ナトリウ
ム水溶液にて抽出する。水層を酢酸エチル存在下に2N−
塩酸にて酸性にする。有機溶媒層を水洗し、硫酸マグネ
シウムで乾燥後、減圧濃縮する。得られた結晶性残渣を
エチルエーテル−n−ヘキサンより再結晶すると無色結
晶として目的化合物25.49gを得る。収率51%。
融点:112.5〜113℃ [元素分析] C6H5O4Cl3として 計算値:C;29.12,H;2.04,Cl;42.98 実測値:C;28.88,H;1.95,Cl;42.78 [IR] νmax cm-1(Nujol):2700,2580br,1749,1739,1730,168
6,1626,1420,1372,1150 [NMR] δ ppm(CDCl3):4.00〜5.50(br,1H),4.88(s,2H),
6.98(d,J=15.8Hz,1H),7.70(d,J=15.8Hz,1H) 実施例1 フィロヒドロキノン−ジ−ヘミフマレートの合成 フィロキノン5.0g(11.09mmole)のエタノール100ml
溶液を氷冷し、アルゴン気流下でソジウムボロンハイド
ライド1.26(3×11.09mmole)を加え30分撹拌する。反
応液に酢酸エチル100ml、脱気水200mlを加え、2N−塩酸
にてpH5.2に調製する。さらに、脱気水200mlを加え分液
する。有機溶媒層を脱気水にて洗浄後、ソジウムハイド
ロサルファイトにて乾燥、減圧濃縮してフィロヒドロキ
ノンを得る。一方、参考例1記載の化合物5.3g(2.2×1
1.09mmole)の乾燥ベンゼン30ml懸濁液にオキザリルク
ロライド2ml(2.2×11.09mmole)、次いでジメチルホル
ムアミド0.1mlを加え室温で20分間、40℃で20分間撹拌
する。反応液を減圧濃縮後、得られた残渣を塩化メチレ
ン30mlに溶解して、ヘミ−(2−トリメチルシリルエチ
ル)フマリルクロライドの塩化メチレン溶液とする。フ
ィロヒドロキノンを塩化メチレン50mlに溶解し、アルゴ
ン気流中氷冷下でピリジン2.7ml(3×11.09mmole)、
次いで上記酸クロライドの塩化メチレン溶液を加え、同
温で20分間撹拌する。反応液を2N−塩酸、5%−炭酸水
素ナトリウム、水で順次洗浄した後、硫酸マグネシウム
で乾燥後減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィーにかけ、n−ヘキサン−酢酸エチルにて溶
出する部分を集め、ベンゼンを加えて減圧濃縮すると油
状残渣としてエステル8.83g得る。収率93.7%。
[元素分析] C49H76O8Si2・0.1C6H6として 計算値:C:69.50,H:9.01 実測値:C:69.77,H:9.15 [IR] νmax cm-(CHCl3):1748,1722,1647,1606,1294,1140,8
60,839 [NMR] δ ppm(CDCl3):0.05〜0.15(m,18H),0.81(s,3H),
0.84(s,6H),0.87(s,3H),0.94〜1.68(m,23H),1.74
s,3H),1.94(t,J=7.5Hz,2H),2.26(s,3H),3.34〜
3.48(m,2H),4.37(t−like,J=7.5Hz,4H),5.02(m,
1H),7.13(d,J=15.8Hz,1H),7.15(d,J=15.8Hz,1
H),7.25(d,J=15.8Hz,2H),7.45〜7.50(m,2H),7.60
〜7.68(m,2H) このエステル8.83g(10.4mmole)のジメチルホルムア
ミド80ml溶液に1M/Lテトラ−n−ブチルアンモニウムフ
ロライド−テトラヒドロフラン溶液42ml(4×10.4mmol
e)を加え、室温で1時間撹拌する。反応液を、希塩酸
−氷片に注ぎ込み、酢酸エチルにて抽出する。有機溶媒
層を水洗後、減圧濃縮する。残渣をトルエンに溶解さ
せ、5%炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出する。この
水層を酢酸エチル存在下に2N−塩酸にて酸性にする。有
機溶媒層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮
する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにか
け酢酸エチル−酢酸エチル/メタノール(9/1)にて溶
出する部分を集めると、粘性の結晶性残渣2.88gを得
る。この物を含水メタノールより再結晶すると、目的化
合物を得る。収率42.7%。
融点:204〜206℃ [元素分析] C39H52O8として 計算値:C:72.18,H:8.08 実測値:C:71.82,H:8.03 [IR] νmax cm-(KBr):3425,2680,2565,1744,1705,1643,129
5,1240,1219,1145 [NMR] δ ppm(CD3OD):0.80〜0.84(m,3H),0.85(s,6H),0.
88(s,3H),0.92〜1.68(m,19H),1.96(t,J=7.5Hz,2
H),2.28(s,3H),3.20〜3.34(m,2H),5.01(m,1H),
7.09(d,J=15.8Hz,1H),7.13(d,J=15.8Hz,1H),7.19
(d,J=15.8Hz,1H),7.22(d,J=15.8Hz,1H),7.48〜7.
56(m,2H),7.65〜7.76(m,2H) 実施例2 フィロヒドロキノン−ジ−ヘミフマレート−ジ−ナトリ
ウム塩の合成 実施例1記載の化合物500mgを0.1N水酸化ナトリウム
水溶液14.6mlに溶解させ凍結乾燥すると白色粉末の塩を
得る。
[元素分析] C39H50O8Na2・1.5H2Oとして 計算値:C;65.07,H;7.42,Na;6.39 実測値:C;65.20,H;7.43,Na;6.27 [IR] νmax cm-(KBr):3405,1735,1608,1590,1383,1289,124
3,1134,980 [NMR] δ ppm(D2O−DSS):0.40〜1.40(m,31H),1.57(s,3
H),1.63〜1.85(m,2H),2.07(s,3H),3.00〜3.40(m,
2H),4.84〜4.95(m,1H),6.84(d,J=15.6Hz,1H),6.8
7(d,J=15.6Hz,1H),7.20(d,J=15.6Hz,1H),7.22
(d,J=15.6Hz,1H),7.32〜7.57(m,2H),7.57〜7.78
(m,2H) 実施例3 メナヒドロキノン−ジ−ヘミフマレートの合成 メナキノン−4 10.0g(22.5mmole)のエタノール100m
l,テトラヒドロフラン30ml溶液に氷冷下ソジウムボロン
ハイドライド2.55g(3×22.5mmole)を加え、アルゴン
気流下30分間撹拌する。反応液に氷冷下酢酸エチル200m
l、脱気水200mlを加え、2N−塩酸にてpH3に調製する。
有機溶媒層をソジウムハイドロサルファイトにて乾燥し
た後、減圧濃縮してメナヒドロキノンを得る。一方、参
考例2記載の化合物12.25g(2.2×22.5mmole)の乾燥ベ
ンゼン100ml懸濁液にオキザリルクロライド4.2ml(2.2
×22.5mmole)、次いでジメチルホルムアミド0.2mlを加
える。室温で20分間、40℃で10分間撹拌する。反応液を
減圧濃縮し、得られた残渣を塩化メチレン30mlに溶解さ
せる。
先のメナヒドロキノンを塩化メチレン100mlに溶解さ
せ、氷冷下にピリジン5.5ml(3×22.5mmole)を加え、
次いで上の酸クロライドの塩化メチレン溶液を加え、同
温度で30分間撹拌する。反応液を順次2N−塩酸、5%炭
酸水素ナトリウム水溶液、水で洗い、硫酸マグネシウム
で乾燥後減圧濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィーにかけ、n−ヘキサン−酢酸エチル(9:
1)にて溶出する部分を集め、冷メタノールにて結晶化
させるとエステル15.7gを得る.収率78.5%。
融点:63〜65℃ [元素分析] C43H48O8Cl6として 計算値:C;57.03,H;5.34,Cl;23.49 実測値:C;57.03,H;5.35,Cl;23.57 [IR] νmax cm-(CHCl3):1743,1645,1604,1288,1139 [NMR] δ ppm(CDCl3):1.57(s,6H),1.60(s,3H),1.67(s,
3H),1.74(s,3H),1.85〜2.15(m,12H),3.35〜3.50
(m,2H),4.94(s,2H),5.00〜5.15(m,4H),7.25(d,J
=15.8Hz,1H),7.27(d,J=15.8Hz,1H),7.37(d,J=1
5.8Hz,1H),7.39(d,J=15.8Hz,1H),7.48〜7.54(m,2
H),7.60〜7.72(m,2H) このエステル300mgのテトラヒドロフラン3ml溶液に活
性化した亜鉛末600mg、次いで1M−酢酸アンモニウム0.5
mlを加え室温で1時間撹拌する。反応液より亜鉛末を濾
去し、濾液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えトル
エンにて洗浄する。水層を酢酸エチル存在下に2N−塩酸
で酸性にする。有機溶媒層を水洗、硫酸マグネシウム乾
燥後、減圧濃縮する。残渣を酢酸エチル−n−ヘキサン
で洗うと目的化合物98mgを得る。収率32.7%。このもの
をアセトニトリルより再結晶すると微細板状結晶を得
る。
融点:197〜198℃ [元素分析] C39H46O8として 計算値:C;72.87,H;7.21 実測値:C;72.82,H;7.19 [IR] νmax cm-(CHCl3):3680,3200〜2750br,1741,1710,160
1 [NMR] δ ppm(CD3OD):1.53(s,3H),1.57(s,6H),1.65(s,
3H),1.76(s,3H),1.85〜2.17(m,12H),2.27(s,3
H),3.38〜3.55(m,2H),4.98〜5.12(m,4H),7.10(d,
J=15.8Hz,1H),7.13(d,J=15.8Hz,1H),7.20(d,J=1
5.8Hz,1H),7.23(d,J=15.8Hz,1H),7.47〜7.60(m,2
H),7.62〜7.80(m,2H) 実施例4 メナヒドロキノン−ジ−ヘミフマレート−ジ−ナトリウ
ム塩の合成 実施例3記載の化合物を水酸化ナトリウム溶液5.9ml
に溶解させ凍結乾燥すると白色粉末の塩210mgを得る。
このものをメタノール−アセトニトリルより再結晶する
と、微細板状結晶が得られる。
分解点:220℃ [元素分析] C39H44O8Na2・H2Oとして 計算値:C;66.46,H;6.58,Na;6.52 実測値:C;66.54,H;6.70,Na;6.45 [IR] νmax cm-(KBr);3430,1738,1639,1588,1383,1242,113
2,982 [NMR] δ ppm(D2O−DSS);1.25(s,6H),1.30(s,3H),1,39
(s,3H),1.52(s,3H),1.57〜1.90(m,12H),2.02(s,
3H),3.00〜3.30(m,2H),4.70〜4.90(m,4H),6.82
(d,J=16.0Hz,1H),6.86(d,J=16.0Hz,1H),7.19(d,
J=16.0Hz,1H),7.22(d,J=16.0Hz,1H),7.34〜7.50
(m,2H),7.57〜7.70(m,2H) 試験例1 フィロヒドロキノン−ジ−ヘミフマレート−ジ−ナト
リウム塩(以下K1塩と表わす)およびメナヒドロキノン
−ジ−ヘミフマレート−ジ−ナトリウム塩(以下K2塩と
表わす)について以下に示す方法で薬理試験を行なっ
た。結果を表1に示す。
被検薬物 (1)実施例2化合物(K1塩:本発明) (2)実施例4化合物(K2塩:本発明) (3)注射用フィトナジオン製剤(VK1:市販品) (4)注射用メナテトレノン製剤(VK2:市販品) これらは使用時に生理食塩液で希釈した。
使用動物 7〜8週齢のJcl:SD系雄性ラットを1群4匹として使
用した。
使用飼料 正常群に対しては、通常飼料としてラット繁殖固型飼
料を使用した。対照群と処置群に対しては、VK欠乏飼料
として飼料1g当り約38ngのVK1を含む放射線(100KGy)
滅菌済ビタミン欠乏合成固型飼料を使用した。
試験方法 ラットはVK欠乏飼料で1週間飼育後に、麻酔下で採血
した。被検薬物は、それぞれ採血する24時間前に10μg/
Kgを静脈内投与した。対照群には、生理食塩液を2ml/Kg
静脈内投与した。
まず、再溶解したシンプラスチン溶液4mlを試験管に
入れ、37℃の恒温槽中に放置した。3.8%クエン酸ナト
リウム溶液1容に対し、採血した血液を9容の割合で加
え十分混合した後、遠心分離してとりだした検体血漿を
試験管に入れ、37℃の恒温槽中に最低3分間放置する。
プレインキュベートしたシンプラスチン溶液0.2mlを
検体血漿が0.1ml入っている試験管に加える。それと同
時に時間測定を開始し凝固が完成するまでの時間を記録
し、プロトロンビン時間とする。第1表中の(n)処置
群(n:1〜4)とは、番号(n)の被験薬物を投与した
群を表わす。
以上の結果より、K1塩およびK2塩で処置したものは、
対照群と比べてプロトロンビン時間の短縮がみられ、市
販のVK製剤と同等の作用を示すことが明らかとなった。
試験例2 メナヒドロキノン−ジ−ヘミフマレートの水溶液の安
定性を以下の方法により公知の還元型VK誘導体であるメ
ナヒドロキノン−ジ−ヘミサクシネートと比較をした。
結果を第2表に示す。
被験試料の調製 貯蔵溶液として、メナヒドロキノン−ジ−ヘミサクシ
ネート(特公昭46−2976に記載の方法により合成)のメ
タノール溶液(50.9ug/ml)およびメナヒドロキノン−
ジ−ヘミフマレート(実施例3化合物)のメタノール溶
液(1.0mg/ml)を調製した後、これらの溶液を下記の所
定濃度になるように1/15Mのリン酸緩衝液で希釈し、所
定温度で保存した。
(A)液:メナヒドロキノン−ジ−ヘミサクシネートの
水溶液(2.55μg/ml) (B)液:メナヒドロキノン−ジ−ヘミフマレートの水
溶液(25.1μg/ml) 試験方法 被験試料について所定時間経過後、HPLC法で含有物の
残存物を調べた。以下にHPLC条件を示す。
HPLC条件 使用カラム:ニュクレオシル(Nucleosil)5C8 4.6nmI.D.×15cm 流速 :1.0ml/分 検出波長 :(A)液;230nm (B)液;228nm 移動相: (A)液;アセトニトリル/メタノール/水/酢酸エチ
ル=420/340/230/1(V/V) (B)液;水/アセトニトリル/トリフロオロ酢酸=34
/66/0.1(V/V) 残存率が95%に到達するのに要する時間はメナヒドロ
キノン−ジ−ヘミサクシネートの場合、4〜5分と非常
に速いが、メナヒドロキノン−ジ−ヘミフマレートの方
は、十時間以上であり水溶液中での安定性が著しく向上
していることが分かる。
[発明の効果] 本発明化合物の塩は生体内で還元型VKのプロドラッグ
として働き、VKと同様の効果を発揮する。従って本発明
化合物は、VKの欠乏による疾患または症状の予防または
治療に有用である。また本発明化合物の水溶液は安定で
あるため、脂溶性であるVKを水へ可溶化した製剤として
利用できる。さらに希釈溶液中でも光安定性に優れ、他
の薬物との相互作用が比較的少ないので、静脈注射用製
剤に好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 69/60 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(I): [式中、Xは−CH2−CH(CH3)−または−CH=C(C
    H3)−を示す]で表わされる化合物またはその製薬上許
    容される塩。
  2. 【請求項2】Xが−CH2−CH(CH3)−である請求項1記
    載の化合物。
  3. 【請求項3】Xが−CH=C(CH3)−である請求項1記
    載の化合物。
  4. 【請求項4】ナトリウム塩である請求項1記載の化合
    物。
  5. 【請求項5】式(II): [式中、Xは−CH2−CH(CH3)−または−CH=C(C
    H3)−を示す]で表わされる化合物を式(III): [式中、Rは水素または保護基を示す]で表わされる化
    合物との縮合反応に付すか、または縮合反応の後、脱保
    護反応に付すことを特徴とする請求項1記載化合物の製
    造方法。
  6. 【請求項6】塩形成反応に付すことを特徴とする請求項
    5記載の製造方法。
  7. 【請求項7】該保護基が、トリメチルシリルエチルまた
    はトリクロロエチルである請求項5または6記載の製造
    方法。
  8. 【請求項8】請求項1〜4に記載の化合物の1種以上と
    製剤学的に許容し得る担体とからなる、ビタミンKの欠
    乏に起因する疾患または症状の予防または治療用の薬剤
    組成物。
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