JP2851295B2 - 義歯を製造するためのパラジウム・銀合金 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、固定および可撤性の、歯牙セラミツクで前
装可能な義歯を製造するために使用されるパラジウム・
銀合金に関する。

〔従来の技術〕

固定および可撤性義歯は、主として耐蝕性、生物相溶
性の貴金属合金からロウ型鋳造法で製造され、この場合
鋳造された物体は、天然歯に一致する外観を得るため
に、しばしば歯牙セラミツクで前装される。このために
は、熱膨脹係数、融点範囲または付着のような歯牙セラ
ミツクに定められた特殊な性質を有しなければならな
い。

たとえば西ドイツ国特許第1183247号および同第15332
33号明細書に記載されているような金高含有合金はこの
目的にとくに好適である。しかし、金は価格が高くかつ
著しく変動するため、最近では金高含有合金に代わる低
廉な代替物を求める傾向が増加した。貴金属の範囲内の
代替物としては、パラジウムがその比較的妥当な価格、
その金に比して明らかに小さい密度追および金に匹敵す
る耐蝕性ないしは口腔安定性のために提供される。

歯牙領域での従来公知のパラジウム基合金では、銀不
含合金と銀含有合金とを区別することができる。

銀不含パラジウム基合金は、主合金元素として銅、ス
ズ、インジウム、コバルトおよびガリウムを含有する。
代表的な銀不含パラジウム基合金は、たとえば西ドイツ
国特許第3316595号、同第3304183号、同第3364657号ま
たは同第3522523号明細書に記載されている。金高含有
合金に比して、加工誤謬に対して敏感に反応し、ロウ接
困難である。このものは融液状態で著量の炭素を収容す
るので、セラミツクルツボ中で溶融しうるにすぎない。
歯牙セラミツクを約980℃で焼付ける間に形成する暗色
の酸化物は、前装物の縁範囲に暗色の縁が形成すること
により義歯の美的外観を損なう。

銀含有パラジウム基合金は、その加工特性に関して、
金高含有合金と銀不含パラジウム基合金との間にある。
このものは、銀含量により、良好に溶融および鋳造可能
であり、明色酸化物を有し、良好なロウ接性を示す。さ
らに、銀含有パラジウム基合金は、銀不含パラジウム基
合金に比してなお低廉である。

かかる合金の代表的組成は、“ドイツ連邦共和国にお
ける歯牙貴金属合金および歯牙卑金属合金に関する展
望”〔歯科医療研究所（FZV）から1986年７月１日発
行〕の第31頁〜第32頁に見出される。これらの合金は、
パラジウムおよび銀のほかに、主としてスズ、インジウ
ムおよび亜鉛を、稀には銅またはガリウムをも他の合金
元素として含有している。

これらの合金の欠点は、前装セラミツクが焼付工程の
間黄色ないしは黄緑色に変色することである。これらの
原因は、銀が拡散によるかないしは蒸気相を経てセラミ
ツクに入ることである。

西ドイツ国特許第2523971号明細書には、セラミツク
の変色を抑圧するためにチタン0.1〜0.5％を含有するパ
ラジウム・銀合金が記載されている。チタンと空気中酸
素ないしはるつぼ材料との反応性に基づき、融成物は比
較的急速にチタンが乏しくなり、その結果古材料（押湯
路、鋳込み口）を使用する場合および不利な溶融条件を
選択した場合に、変色傾向に対する減少作用が失なわれ
てしまう。さらに、このチタンは鋳造された物体の表面
に埋没材が強く付着する原因となり、これが脱落および
研磨を困難かつ時間のかかるものにする。

米国特許第4350526号には、珪素0.1〜1.0％の添加に
基づき歯牙セラミツクに対する変色作用を有しないパラ
ジウム・銀合金が記載されている。珪素は、パラジウム
にも銀にも不溶である。さらに、パラジウムおよび銀は
金属間相を形成するので、合金の強い脆化および鋳物脆
性が生じうる。

珪素は、チタンと同様、セラミツク材料との反応を促
進するので、これらの合金においても鋳物表面に埋没材
の強い付着が起きる。

〔発明が解決しようとする課題〕

従つて、本発明の課題は、変色に敏感な歯牙セラミツ
クに認めうる変色なしに焼付け、常用の埋没材から容易
に取り出すことができ、その際公知パラジウム・銀合金
の他の性質が著しく変化することのない、固定および可
撤性の、歯牙セラミツクで前装可能な義歯を製造するた
めのパラジウム・銀合金を開発することであつた。

〔課題を解決するための手段〕

この課題は本発明によれば、パラジウム45〜80重量
％、銀７〜45重量％、金０〜５重量％、白金０〜２重量
％、スズ０〜５重量％、インジウム０〜５重量％、亜鉛
０〜３重量％、銅０〜２重量％、タングステン、モリブ
デンおよび／またはタンタル０〜１重量％、ルテニウ
ム、イリジウムおよび／またはレニウム０〜１重量％、
ガリウム０〜７重量％、コバルト０〜５重量％およびゲ
ルマニウム０〜３重量％からなるパラジウム・銀合金の
使用によつて解決され、この場合元素ガリウム、コバル
トおよびゲルマニウムのうちゲルマニウムとガリウム、
ゲルマニウムとコバルトまたはゲルマニウム、ガリウム
およびコバルトは合計3.5〜９重量％の含量で合金中に
存在しなければならない。

望ましくは、パラジウム55〜75重量％および銅20〜40
重量％を他の成分とともに含有する合金が使用される。
さらに、合金中にガリウム0.5〜４重量％、コバルト１
〜４重量％およびゲルマニウム0.1〜1.5重量％が存在す
るのが有利であることが立証されており、この場合これ
らの含量の和は４〜７重量％の間でなければならない。

とくに有利な合金は、パラジウム60〜68重量％、銀28
〜32重量％、ルテニウム、インジウムおよび／またはレ
ニウム0.1〜0.5重量％、ガリウム1.5〜2.5重量％、コバ
ルト1.5〜2.5重量％およびゲルマニウム１〜1.5重量％
を含有する。

パラジウム・銀合金は、約25〜30％のパラジウム含量
から口腔安定である。50重量％よりも大きい銀含量を有
する合金は、非常に高い熱膨脹係数（＞16.0・10^-6/K）
を有するので、市販の前装セラミツクとはもはや相溶性
でない。銀含量が少なすぎる場合、パラジウム・銀合金
は銀不含パラジウム基合金と同様の挙動を示す。従つ
て、パラジウム45〜80％および銀７〜50％の範囲内のパ
ラジウム・銀合金が選択され、該合金はすぐれた口腔安
定性を示しかつ歯牙セラミツクでの合金のひび割れのな
い前装のための前提条件を提供する。

元素スズ、インジウム、亜鉛、銅および金は、たとえ
ば強度、硬度、可鋳性、熱膨脹係数および溶融温度差の
ような合金の機械的性質の決定に役立つ。ルテニウム、
レニウムおよび／またはインジウムは、0.1〜１％の濃
度で、粒精錬添加剤として合金される。

しかし、これまでに挙げた合金元素のみを含有するパ
ラジウム・銀合金は、焼付工程の間前装セラミツクを明
らかに対黄緑色に変色する。

ところで意外にも、ガリウム、コバルトおよびゲルマ
ニウムを本発明による濃度範囲内で添加することによ
り、上記合金の前装セラミツクに対する変色作用は明ら
かに減少ないしは除去されることが判明した。しかし、
変色傾向のこの減少ないしは除去は、これら３つの元素
の少なくとも２つが合金中に存在するときだけ認められ
る。３つの元素ガリウム、ゲルマニウムおよびコバルト
の少なくとも２つの含量の合計が２％よりも小さい場
合、セラミツクに対する変色作用はまだ比較的強い。

この合計が９％を上廻ると、合金のその他の性質が不
利な影響を受けるので、２〜９％の濃度範囲を維持しな
ければならない。

表１は、本発明による幾つかの合金の組成および性質
を示す。これらの合金は、すぐれた可鋳性、淡色酸化物
および公知歯牙セラミツクでの問題のない前装可能性に
よつてすぐれている。大きい破断時の伸びと結合せる高
い耐力強度により、模型用鋳物に対してこれら合金を使
用することも可能である。

焼付けた後の合金に対する前装セラミツクの色の決定
は、色彩計（Light colour system GabH社のdatacolo
r、光源D65、測定角度10゜）を用いおよび視覚的に数人
により“標準試料”と比較して行なわれた。標準合金と
しては、組成金52.0重量％、パラジウム37.6重量％、イ
ンジウム８重量％、カリウム2.0重量％およびイリジウ
ム0.4重量％の金減少の銀不含合金が使用され、セラミ
ツクとしては市販の前装セラミツクのセツトの最淡色品
が使用された。

表２には、公知の比較合金および表１による本発明に
よる幾つかの合金での色測定結果がまとめられている
（CIELab−Systemによる三刺激値、DIN6174）。Ｌ値
は、明暗軸上の位置（Ｌ＝０黒、Ｌ＝100白）を示す。
ａ値は緑／赤軸上の位置（マイナス＝緑、プラス赤）、
ｂ値は青／黄軸上の位置（青マイナス、黄プラス）を表
わす。

表２には、絶対三刺激値ではなく、標準試料からの、
種々の合金に対するセラミツク前装の三刺激値の偏奇
（Δ値）が含まれている。本発明による合金の三刺激値
は、公知の銀不含合金ないしは金高含有合金の範囲内に
ある。前装冠および前装ブリツジを視覚により考察した
場合でも、本発明による合金は標準試料からの色の相違
を認めることができなかつた。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 マンフレート・シユテユムケ ドイツ連邦共和国プフオルツハイム・ア ム・ヴアルトヴエーク 21 (56)参考文献 特開 昭61−44140（ＪＰ，Ａ) 特開 昭54−132426（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) C22C 5/04 C22C 30/00 - 30/06

Claims (12)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】パラジウム45〜80重量％、銀７〜45重量
   ％、ルテニウム１重量％まで、ガリウム７重量％まで、
   コバルト５重量％までおよびゲルマニウム３重量％まで
   からなり、この場合元素ガリウム、コバルトおよびゲル
   マニウムの含量の合計は3.5〜９重量％でなければなら
   ない、固定および可撤性の、歯牙セラミックで前装可能
   の義歯を製造するためのパラジウム・銀合金。
2. 【請求項２】パラジウム55〜75重量％および銀20〜40重
   量％を含有する、請求項１記載のパラジウム・銀合金。
3. 【請求項３】ガリウム0.5〜４重量％、コバルト１〜４
   重量％およびゲルマニウム0.1〜1.5重量％を含有し、そ
   の際これら含量の合計は４〜７重量％の間でなければな
   らない、請求項１または２記載のパラジウム・銀合金。
4. 【請求項４】パラジウム60〜68重量％、銀28〜32重量
   ％、ルテニウム0.1〜0.5重量％、ガリウム1.5〜2.5重量
   ％、コバルト1.5〜2.5重量％およびゲルマニウム１〜1.
   5重量％からなる請求項１から３までのいずれか１項記
   載のパラジウム・銀合金。
5. 【請求項５】パラジウム45〜80重量％、銀７〜45重量
   ％、ルテニウム１重量％まで、Au5重量％まで、Sn5重量
   ％まで、インジウム５重量％まで、銅２重量％まで、亜
   鉛３重量％まで、ガリウム７重量％まで、コバルト５重
   量％までおよびゲルマニウム３重量％までからなり、こ
   の場合元素ガリウム、コバルトおよびゲルマニウムの含
   量の合計は3.5〜９重量％でなければならない、固定お
   よび可撤性の、歯牙セラミックで前装可能の義歯を製造
   するためのパラジウム・銀合金。
6. 【請求項６】パラジウム55〜75重量％および銀20〜40重
   量％を含有する、請求項５記載のパラジウム・銀合金。
7. 【請求項７】ガリウム0.5〜４重量％、コバルト１〜４
   重量％およびゲルマニウム0.1〜1.5重量％を含有し、そ
   の際これら含量の合計は４〜７重量％の間でなければな
   らない、請求項５または６記載のパラジウム・銀合金。
8. 【請求項８】パラジウム60〜68重量％、銀28〜32重量
   ％、ルテニウム0.1〜0.5重量％、ガリウム1.5〜2.5重量
   ％、コバルト1.5〜2.5重量％およびゲルマニウム１〜1.
   5重量％からなる請求項５から７までのいずれか１項記
   載のパラジウム・銀合金。
9. 【請求項９】パラジウム45〜80重量％、銀７〜45重量
   ％、ルテニウム１重量％まで、Au5重量％まで、Sn5重量
   ％まで、インジウム５重量％まで、亜鉛３重量％まで、
   銅２重量％まで、タングステン１重量％まで、ガリウム
   ７重量％まで、コバルト５重量％までおよびゲルマニウ
   ム３重量％までからなり、この場合元素ガリウム、コバ
   ルトおよびゲルマニウムの含量の合計は3.5〜９重量％
   でなければならない、固定および可撤性の、歯牙セラミ
   ックで前装可能の義歯を製造するためのパラジウム・銀
   合金。
10. 【請求項１０】パラジウム55〜75重量％および銀20〜40
    重量％を含有する、請求項９記載のパラジウム・銀合
    金。
11. 【請求項１１】ガリウム0.5〜４重量％、コバルト１〜
    ４重量％およびゲルマニウム0.1〜1.5重量％を含有し、
    その際これら含量の合計は４〜７重量％の間でなければ
    ならない、請求項９または10記載のパラジウム・銀合
    金。
12. 【請求項１２】パラジウム60〜68重量％、銀28〜32重量
    ％、ルテニウム0.1〜0.5重量％、ガリウム1.5〜2.5重量
    ％、コバルト1.5〜2.5重量％およびゲルマニウム１〜1.
    5重量％からなる請求項９から11までのいずれか１項記
    載のパラジウム・銀合金。