JP2826807B2 - 海藻レクチン及びその製造方法 - Google Patents
海藻レクチン及びその製造方法Info
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Description
ら抽出するレクチン及びその製造方法に関する。本発明
に係るレクチンは、臨床診断試薬、生化学試薬等として
用いられる。
れ、特定の構造を持った糖又は糖鎖に結合し、動植物細
胞又は複合糖質を凝集又は沈降させる免疫学的産物以外
の糖蛋白質又は蛋白質である。
々の細胞間相互作用や分化、癌化等において糖鎖の構造
が重要な役割を担っていることが明らかとなるに連れ、
レクチンが持つそれぞれ特有の糖構造を認識するという
生物学的性質が注目され、広く研究されている。
メ科植物を中心にその存在が認められて多種のレクチン
が市販され、医療分野や生化学分野において極めて重要
な物質となっている。一方、海洋生物由来のレクチン
は、陸上生物由来のものに比べると研究例が少ないが、
海藻にも広く分布し、326種の海藻から205種の存
在が明らかとなってきている。しかしながら、海藻レク
チンの殆どが単糖やオリゴ糖でその活性が阻止されない
ため、陸上植物レクチンのように阻害単糖をリガンドや
溶出剤とするアフィニティークロマトグラフィーでの精
製が困難であり、これまでに緑藻10種と紅藻13種か
らレクチンが単離され、紅藻5種のものが部分精製され
ているが、これらは何れも通常の蛋白質精製法が用いら
れている[化学と生物 第35巻、9号586頁(19
94)]。しかしながら、このような精製方法は工程が
長く、しかも長時間を要するために大量生産に適してい
ない。この事が多くの海藻レクチンの存在を認めながら
単離、精製に至ったものが少ない原因となっている。
モジネートを用いて4℃で24時間から48時間の攪拌
抽出が行なわれている。しかしながら、海藻を粉末化又
はホモジナイズして抽出した場合、色素蛋白質等の大量
の夾雑蛋白質が同時に抽出され、レクチンの単離及び精
製を困難なものとしている。また4℃での抽出について
は、レクチンが糖蛋白質又は蛋白質であるためより安全
な温度条件で抽出するための手段である。しかしなが
ら、このような抽出条件は実生産を考えると設備的にも
不利な手法と言わざるを得ず、海藻を粉末化又はホモジ
ナイズしない無処理の原藻を用いて室温での短時間抽出
が望ましい。
ゴノリ種から得られたものが幾つか報告されている。以
下にそれらを列記する。
p.)からウサギ赤血球に対して強い活性を示すが、他
の動物赤血球に対しては実質上活性を示さない分子量5
2,000のレクチン。(特開平3−279396号公
報)
rrucosa)からウマ赤血球に対して強い活性を示
すレクチン。このレクチンは、40℃以下では安定であ
るが60℃以上で失活する。[日本食品衛生学会46回
学会講演要旨集、2頁(1983)]
rrucosa)から分子量300,000〜400,
000、100,000及び45,000のウマ赤血球
に対して活性を持つ3種のレクチン。[Nippon
Suisan Gakkaishi.53巻、2133
頁(1987)]
rrucosa)からウマ赤血球に対して最も強い活性
を示すが、ウサギ、モルモット及びヒツジ赤血球に対し
てもかなり強い活性を持つ分子41,000のレクチ
ン。[Bulletin ofthe Japanes
e Society of Scientific F
isheries.47巻、1079頁(1981)]
rrucosa)から分子量26,000のレクチン。
(平成4年日本水産学会春季大会講演要旨集、314
頁)
sa−pastoris)から加熱に対して40℃まで
安定、pHは8で安定であるが、それより酸性及びアル
カリ性で活性が低下するレクチン。[Bulletin
of the Japanese Society
of Scientific Fisheries.5
2巻、323頁、(1986)]
sa−pastoris)から分子量15,500、中
性糖含量20%のレクチン。[Experienti
a. 46巻、975頁(1990)]
ikvahiae)から分子量150,000のレクチ
ン。[Carbohydrate Research.
207巻、319頁(1990)]
療、生化学分野において利用されているが、今までにな
い新しいタイプの糖結合特異性を持ったレクチンの検索
及び開発が望まれている。陸上植物レクチンの多くは、
簡単な単糖やオリゴ糖でその活性が阻止されるが、海藻
レクチンは単糖やオリゴ糖で活性が阻止されるものが少
なく、両者は明らかに糖結合特異性が異なることが知ら
れている。
資源的に豊富なテングサ属(Gelidium s
p.)を対象として、既知の海藻レクチンとは異なる糖
結合特異性を持った新規なレクチン及びその製造方法を
提供することを目的としてなされたものである。
の新規なレクチンを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、
上記した既報のものと明らかに異なる新規なレクチンを
見い出した。更に、このレクチンを工業生産を行なう場
合を想定した効率の良い抽出法と単離、精製法を発明
し、本発明を完成するに至ったものである。
クチンは、紅藻テングサ属(Gelidium s
p.)藻類からの抽出物質であって、ヒトO型、ウサギ
及びラット赤血球に対して強い凝集活性を示し、ヒトA
型、B型及びヒツジ赤血球に対して凝集活性を示さず、
N−アセチルキトテトラオース、フェツイン、アシアロ
フェツイン、BSM(ウシ顎下腺ムチン)、チログロブ
リン及びラクトフェリンを強く認識する糖結合特異性を
持ち、分子量26,000の単量体であることを特徴と
するものである。
の製造方法は、請求項1に記載した海藻レクチンの製造
方法であって、粉末化又はホモジナイズ処理を行なわな
い原藻から水系媒体を用いて室温で12〜24時間抽出
し、抽出液からキチンカラムによるアフィニティークロ
マトグラフィー及びゲル濾過により単離、精製すること
を特徴とするものである。
チンは、紅藻のテングサ属(Gelidium s
p.)藻類より得られる。
以下のような糖結合特異性を有する。 (1)ヒトO型、ウサギ及びラット赤血球に対して強い
凝集活性を示すが、赤血球のプロナーゼ処理によってヒ
トO型赤血球の凝集が消失し、ウサギ及びラット赤血球
の凝集が減弱する。またヒトA型、B型及びヒツジ赤血
球に対しては無処理及びプロナーゼ処理赤血球とも凝集
活性を示さない。 (2)各種単糖、オリゴ糖及び糖蛋白質を用いた赤血球
凝集阻害試験からN−アセチルキトテトラオース、フェ
ツイン、アシアロフェツイン、BSM(ウシ顎下腺ムチ
ン)、チログロブリン及びラクトフェリンを強く認識す
る。また、テングサ属藻類より得られるレクチンは、以
下のような物理化学的性質を有する。 (1)分子量約26,000の中性糖67.6%を含む
糖蛋白質である。 (2)溶液の安定性は、30分間の加熱で90℃まで、
またpH4.0から10.5の間に3時間の保持で、何
れも赤血球凝集活性は変化せず安定である。 以上のような糖結合特異性ならびに分子量及び安定性か
らみてテングサ属藻類由来のレクチンは、既知の海藻レ
クチンとは異なる新規なレクチンである。
ることができる。従来、海藻からのレクチンの抽出は、
乾燥粉末又はホモジネートを用いて4℃で24〜28時
間の撹拌抽出で行なわれている。また単離、精製法は、
アフィニティークロマトグラフィーが困難なため通常の
蛋白質精製法が用いられており、精製の工程が長く、長
時間を要するため実生産を考えると設備的にも不利な手
法である。
単離、精製方法は、この問題を解決するために本願発明
者によって開発されたものであり、海藻からのレクチン
の製造方法として画期的なものである。
り、粉末化又はホモジナイズした時に同時に抽出される
大量の色素蛋白質が抽出されず、次工程のクロマトグラ
フィーによる単離、精製を非常に容易なものとした。ま
た、このようにして得られた精製レクチンは、30分間
の加熱で70℃においても赤血球凝集活性は変化せず、
非常に安定であるため以下のような室温での抽出、単離
及び精製が可能となった。
体で抽出する。水系媒体としては、生理食塩水にリン酸
緩衝液やトリス−塩酸緩衝液のような緩衝液を加えたも
のが好ましい。抽出は、好ましくは、4〜25℃の室温
で12〜24時間浸漬又は撹拌によって行なわれる。
ラム)を用意する。キチンは、市販の粉末キチンや多孔
質粒状キチン(例えばマリンカイト:富士紡績製)を用
いることができる。キチンカラムは、キチンを適当なク
ロマトグラフィー用カラムに充填し100mMの濃度の
NH4OHで洗浄した後、上記の抽出に用いる溶液で洗
浄、平衡化することによって調製する。
カラムを用いてアフィニティークロマトグラフィーを行
い、吸着画分を例えば50mM〜100mMの濃度のN
H4OHで溶離することによって単離し、次に、ゲル濾
過クロマトグラフィーで精製することによって単離、精
製することができる。
ものであって、ヒトO型、ウサギ及びラット赤血球に対
して強い凝集活性を示し、ヒトA型、B型及びヒツジ赤
血球に対しては活性を示さない。またプロナーゼ処理に
よりヒトO型、ウサギ及びラット赤血球に対しては、そ
の凝集活性が消失又は減弱するという糖特異性を有し、
熱及び広いpH範囲で安定である。したがって、この特
性を利用して医療分野や生化学分野において広く利用し
得る用途を持っている。また本発明の製造方法は、既報
の方法と比べて工程が大幅に短縮され、かつ室温で製造
できるために設備的にも多大な利点をもたらすものであ
る。
dium amansii)を用いて行なった実施例及
び試験例により、本発明を更に詳細に説明するが、これ
らは本発明の範囲を何ら制限するものではない。また以
下には、本発明と併せて研究した紅藻類オゴノリ属のオ
ゴノリ(Gracilaria verrucosa)
を用いた試験例を併記する。
ン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4(以下、PBSと称
する)2Lを加え、20〜25℃の室温で24時間撹拌
抽出した。次いで藻体を除去し、抽出液を濾過した。
ー、キチンカラムは、キチンをPBSで平衡化後、クロ
マトグラフィー用カラムに充填し、100mM NH4
OHで溶出洗浄した後、PBSで溶出洗浄することによ
って調製した。このキチンカラムに上記抽出液を通し、
蛋白質成分の溶出がみられなくなるまでPBSで溶出洗
浄した。キチンカラムへの吸着画分は、100mM N
H4OH溶離し、純水に対して透析後、凍結乾燥した。
凍結乾燥物をPBSに溶解し、予めPBSで平衡化した
トヨパールHW65Fによって精製した。活性画分を純
水に対して透析し、凍結乾燥によってレクチンを得た。
アクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)は、Laem
mliの方法で行なった。またゲル濾過法による分子量
の測定は、トヨパールHW55Fを用いて行なった。マ
クサ由来のレクチンは、還元及び非還元条件下でのSD
S−PAGEで何れも分子量26,000の単一バンド
が検出されたことから、分子量26,000の単量体で
あることを示している。オゴノリ由来のレクチンは、還
元及び非還元条件下でのSDS−PAGEで何れも分子
量29,000及び16,000の二つのバンドが検出
され、ゲル濾過方法で分子量45,000と算定された
ことから、オゴノリ由来のレクチンは、分子量29,0
00及び16,000のジスルフィド結合を持たない二
つのサブユニットからなる分子量45,000の二量体
であることを示している。
オルシノール−硫酸法で行なった。マクサ及びオゴノリ
由来のレクチンの中性糖含量は、それぞれ67.6%及
び43.8%であった。
性ならびに各種単糖、オリゴ糖及び糖蛋白質を用いた赤
血球凝集阻害試験により調べた。
特異性を表1に示した。
いてはO型赤血球のみに強い凝集活性を示し、この活性
は赤血球のプロナーゼ処理により消失した。動物赤血球
に対しては、ウサギ及びラット赤血球に対して強い、ウ
マ赤血球に対しては弱い凝集活性を示し、この活性は赤
血球のプロナーゼ処理によりウサギ及びラット赤血球は
減弱され、ウマ赤血球は増強された。またヒツジ赤血球
に対しては凝集活性を示さなかった。
のみに強い凝集活性を示し、ヒトA型、B型、O型、ウ
マ、ヒツジ及びラット赤血球に対しては実質上凝集活性
を示さなかった。しかし本レクチンは、プロナーゼ処理
した赤血球に対しては、何れも凝集活性を示した。
球凝集阻害試験の結果を表2に示した。
は、単糖及びオリゴ糖のうちD−グルコース、D−ガラ
クトース、D−マンノース及びD−フコース等の中性
糖、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−
D−ガラクトサミン及びN−アセチル−D−マンノサミ
ン等のN−アセチルアミノ糖、N−アセチルノイラミン
酸、N−アセチルラクトサミン、N−アセチルキトビオ
ース及びN−アセチルキトトリオースによって阻害され
ず、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン及びD−マ
ンノサミン等のアミノ糖ならびにN−アセチルキトテト
ラオースによって阻害された。また糖蛋白質では、フェ
ツイン、アシアロフェツイン、BSM(ウシ顎下腺ムチ
ン)、チログロブリン及びラクトフェリンによって阻害
された。これらの結果から、本発明のマクサ由来のレク
チンはD−フコースとは結合しないが、N−アセチルキ
トテトラオースと結合すること、また上記したようにヒ
トO型赤血球を特異的に凝集させることから、シチサス
型抗Hレクチンであることが伺われる。
は、検査した全ての単糖及びオリゴ糖によって阻害され
なかった。糖蛋白質では、フェツイン、アシアロフェツ
イン、BSM(ウシ顎下腺ムチン)、アシアロBSM、
チログロブリン、ラクトフェリンによって強く阻害さ
れ、α1−酸性糖蛋白質、グリコフォリン及びアシアロ
グリコフォリンによって弱く阻害された。
のレクチンの溶液での安定性は、30℃〜90℃までの
加温及びpH4.0〜10.5での保持で行なった。
クチンとも100mMリン酸緩衝化生理食塩水に溶解
し、それぞれ30℃、40℃、50℃、60℃、70
℃、80℃及び90℃で30分間加温し、冷却後、赤血
球凝集活性を測定した。
安定性試験結果を図1に示した。
ノリ由来のレクチンは70℃まで赤血球を凝集活性に変
化はなく、安定であった。
レクチンとも、0.15MNaC1に溶解し、pH4.
0から10.5まで7種類の緩衝液(pH4.0及び
5.0;20mM酢酸緩衝液、pH6.0及び7.0;
20mMリン酸緩衝液、pH8.0;トリス−塩酸緩衝
液、pH9.0及び10.5;グリシン−NaOH緩衝
液)の等量と混合し、3時間静置した後、赤血球凝集活
性を測定した。
安定性試験結果を図2に示した。
H4.0から10.5の広い範囲で赤血球凝集活性に変
化はなく、安定であった。
リ由来のレクチンとともに、熱及び広いpH範囲でその
赤血球凝集活性が変化せず、非常に安定なものであっ
た。
性試験結果を示すグラフ図
性試験結果を示すグラフ図
Claims (2)
- 【請求項1】 紅藻テングサ属(Gelidium s
p.)藻類からの抽出物質であって、ヒトO型、ウサギ
及びラット赤血球に対して強い凝集活性を示し、ヒトA
型、B型及びヒツジ赤血球に対して凝集活性を示さず、
N−アセチルキトテトラオース、フェツイン、アシアロ
フェツイン、BSM(ウシ顎下腺ムチン)、チログロブ
リン及びラクトフェリンを強く認識する糖結合特異性を
持ち、分子量26,000の単量体である海藻レクチ
ン。 - 【請求項2】 請求項1に記載した海藻レクチンの製造
方法であって、粉末化又はホモジナイズ処理を行なわな
い原藻から水系媒体を用いて室温で12〜24時間抽出
し、抽出液からキチンカラムによるアフィニティークロ
マトグラフィー及びゲル濾過により単離、精製すること
を特徴とする海藻レクチンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7146902A JP2826807B2 (ja) | 1995-05-23 | 1995-05-23 | 海藻レクチン及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7146902A JP2826807B2 (ja) | 1995-05-23 | 1995-05-23 | 海藻レクチン及びその製造方法 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10123012A Division JP3041598B2 (ja) | 1998-05-06 | 1998-05-06 | 海藻レクチン及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08313531A JPH08313531A (ja) | 1996-11-29 |
JP2826807B2 true JP2826807B2 (ja) | 1998-11-18 |
Family
ID=15418159
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7146902A Expired - Lifetime JP2826807B2 (ja) | 1995-05-23 | 1995-05-23 | 海藻レクチン及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2826807B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100397531B1 (ko) * | 2000-07-26 | 2003-09-13 | 주식회사 선진애드 | 한국산 갈조류 유래의 면역증강용 추출물 및 그 제조방법 |
-
1995
- 1995-05-23 JP JP7146902A patent/JP2826807B2/ja not_active Expired - Lifetime
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
Dalton,Shana R et al,"Hemagglutinins and immunomitogens from marine algae.",J.Mar.Biotechnol.(1995),Vol.2(3),p149−155 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08313531A (ja) | 1996-11-29 |
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