JP2825798B2 - 歯車の鍛造・圧造成形方法及びダイセット - Google Patents

歯車の鍛造・圧造成形方法及びダイセット

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は歯車を圧造成形する方法
及びそれに用いるダイセットに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】出願人
は以前、型穴が段階的に完成歯車に近づく様に順に大き
く形成された一組のダイに、パンチによって順にブラン
クを打ち込み、該ブランクを段階的に完成歯車に近づく
様に成形する歯車製造方法を提案した(特公平6−20
572号)。上記圧造による歯車の成形は、図5に示す
如く、歯車の基準ピッチ円P.D付近の歯幅Xよりも、
歯元の歯幅Yの方が小さい歯車については、基準ピッチ
円付近から歯元側にかけて材料が型穴に十分に回り込ま
ず、ヒケが生じることが判った。
【0003】これは次の理由による。歯車圧造用ダイセ
ットの最初に歯を形成するダイの型穴から最終製品に対
応するダイの型穴までの型穴の拡がりの従来の考え方
は、図6に最も内側の鎖線で示す小さい型穴(130)か
ら、二点鎖線で示す次の型穴(140)、一点鎖線で示すそ
の次の型穴(150)、実線で示す最終製品に対応する型穴
(160)まで、ほぼ相似形に拡大させるものであった。
【0004】即ち、最初に歯を形成する型穴(130)も、
歯元の幅寸法a0よりも基準ピッチ円P.D近傍の歯の幅
0の方が大きい。すると、円柱形ブランクから最初に
歯を形成するとき、ブランクの材料肉は、最初に歯を形
成する型穴(130)の歯元の幅寸法a0で半径方向に押し出
されるため、図6に斜線で示す部分は材料肉の流れの死
角となり、材料肉が回り切らない(充満しきれない)。こ
の材料肉が回りきらないことが最後まで影響して、最終
製品において、基準ピッチ円付近から歯元側にかけてヒ
ケが生じ、歯面は正しいインボリュート曲線とはなら
ず、例えばJIS等級で表される高精度な歯車の成形を
妨げる。本発明は、歯車圧造用ダイセットの型穴の拡が
り及び最終の絞り工程に工夫を施すことにより、上記問
題を解決して高精度な歯車の成形が可能な鍛造・圧造方
法及びそれに使用するダイセットを明らかにするもので
ある。
【0005】
【課題を解決する手段】本発明の歯車製造方法は、順に
並んだ圧造ステーションに配備された型穴形状の異なる
一組のダイに対して、各型穴に対応するパンチによって
ブランクを順に打込み、基準ピッチ円近傍の歯幅Xより
も歯元の歯幅Yの方が小さい歯を具えた歯車の鍛造・圧
造成形方法であって、予備成形工程でブランクに基準ピ
ッチ円近傍の歯幅寸法X1と歯元の幅寸法Y1が同じ或い
は前者が後者よりも小さい歯を形成し、歯の完成工程
で、基準ピッチ円近傍の穴幅寸法よりも歯元の穴幅寸法
が小さい型穴にブランクを打込んでブランクの歯元を絞
り、基準ピッチ円近傍の歯幅Xよりも歯元の歯幅Yの方
が小さい歯を具えた歯車を成形する。
【0006】予備成形工程と歯の完成工程の間に、予備
成形したブランクを全体的に大きくする歯の拡大工程を
設けてもよい。又、歯の完成工程において、歯元を絞る
と同時に歯先側を拡大させてもよい。更に、歯の完成工
程は、歯元の絞り工程を2工程に分けて行なってもよ
い。
【0007】本発明のダイセットは、基準ピッチ円近傍
の歯幅Xよりも歯元の歯幅Yの方が小さい歯を具えた歯
車を鍛造・圧造成形するためのダイセットであって、予
備成形工程のダイ(13)の型穴(13a)は、歯元の穴幅寸法
1と歯の基準ピッチ円近傍の穴幅寸法b1が同じ或いは
前者の穴幅寸法a1が後者の穴幅寸法b1よりも大であ
り、歯の完成工程のダイは、歯の基準ピッチ円近傍の穴
幅寸法よりも歯元の穴幅寸法が小さい。
【0008】
【作用及び効果】予備成形工程のダイの型穴(13a)は、
歯元の穴幅寸法a1と基準ピッチ円近傍に対応する穴幅
寸法b1が同じ或いは前者の穴幅寸法a1が後者の穴幅寸
法b1よりも大であるから、ブランクは該型穴(13a)の隅
々まで材料肉が充満し、従来の様にこの段階で型穴と材
料との間に隙間が生じることはない。
【0009】歯の完成工程のダイの型穴は、歯の基準ピ
ッチ円近傍の穴幅寸法bよりも歯元の穴幅寸法aが小さ
いため、ブランクは歯元が括れる様に絞られて、基準ピ
ッチ円近傍の歯幅Xよりも歯元の歯幅Yの方が小さい歯
が成形される。
【0010】上記の如く、予備成形工程で、ブランクに
基準ピッチ円近傍の歯幅寸法X1と歯元の幅寸法Y1が同
じ或いは後者が前者よりも大きい歯を形成するため、型
穴の歯成形部への材料の流れがスムーズとなり、歯面に
ヒケの生じていない正しい曲線の高精度の歯車を能率的
に製造できる。ブランクを段階的に圧造し、歯の完成工
程で歯元を絞るため、各型穴での加工度は小さく、金型
への負荷は軽減され、ダイの寿命を延ばすことができ
る。
【0011】予備成形工程と完成工程の間に歯の拡大工
程を実施した場合、該拡大工程では、予備成形されたブ
ランクは歯の輪郭が全体に大きくなる様に成形され、こ
の工程を終了しても、ブランクの歯車の歯元の幅寸法Y
2は基準ピッチ円近傍の幅寸法X2と同じ或いは前者の寸
法が後者の寸法よりも大である。
【0012】
【発明の実施の態様】図2は、本発明によって製造した
完成歯車(5)を示しており、両側面の中央部に円形の凸
段部(54)(54)が形成され、その外側は段差0.5mmの凹段
部(53)(57)となっており、凸段部(54)の径は歯底径より
も小さい。歯部には後記の如く、歯元の絞り加工によっ
て歯車側面にバリ(58)が生じることがあるが、該バリは
凸段部(54)と凹段部(53)(57)の段差よりも小さい高さに
納まり、バリ取り加工を省略しても使用に支障はない。
【0013】図1において、符号13a、14a、15a、16aは
歯車の歯部の塑性変形の過程(これは工程別の金型の型
穴形状の変化でもある)を示しており、鎖線13aで示すの
は歯の予備成形工程、2点鎖線14aで示すのは歯の拡大
工程、1点鎖線15aで示すのは歯の第1完成工程、太実
線16aで示すのは歯の第2完成工程での夫々の成形形状
である。歯先径及び歯底径は工程を経る毎に大きくなっ
ている。
【0014】X1、X2、X3、Xは、鍛造・圧造工程順
のブランクの歯部の基準ピッチ円P.D近傍の上記圧造
工程順の幅変化を示している。b1、b2、b3、bは上
記X1、X2、X3、Xで示す部分に対応する型穴の幅変
化を示している。Y1、Y2、Y3、Yは、鍛造・圧造工
程順の歯元の幅変化を示している。a1、a2、a3、a
は上記Y1、Y2、Y3、Yで示す部分に対応する型穴の
幅変化を示している。
【0015】第1完成工程では、基準ピッチ円P.D近
傍の歯幅X3よりも、歯元の歯幅Y3、の方が小さい。
又、第2完成工程でも基準ピッチ円P.D近傍の歯幅X
よりも歯元の歯幅Yの方が小さい。又、基準ピッチ円
P.D近傍の歯幅は、第1完成工程でのX3よりも第2完
成工程でのXの方が大きいが、歯元の歯幅は、第1完成
工程でのY3よりも第2完成工程でのYの方の方が小さ
い。即ち、第1完成工程での歯元に比べて第2完成工程
での歯元の括れの方が大きい。
【0016】第2完成工程を終えた完成歯車(5)の歯部
の歯面はインボリュート曲線である。実施例では、予備
成形工程と完成工程の間に歯を略相似形に大きくする拡
大工程を設けたが、拡大工程を省略して予備成形工程か
ら一挙に完成工程を実施することも可能である。又、実
施例では完成工程を第1完成工程と第2完成工程の2つ
に分けたが、これを1つの工程で行なうことができるの
は勿論である。歯の拡大工程を含むか省略するか、又、
完成工程を1工程で行なうか2工程で行なうかを問わ
ず、要は、予備成形工程によって形成された基準ピッチ
円近傍の歯幅寸法X1と歯元の幅寸法Y1が同じ或いは前
者が後者よりも小さい歯部を有するブランクに対して、
後の鍛造・圧造工程で歯部の形状を、基準ピッチ円P.
D近傍の歯幅Xよりも歯元の歯幅Yの方を小さくできれ
ば、何工程で行なおうとも工程数は問わない。
【0017】図3は、材料切断ステーションS1を含め
て6ステーションを有す横型トランスファープレスの、
材料切断ステーションS1、予備圧造ステーションS2
歯の第1圧造ステーションS3及び各ステーションによ
って加工されたブランクB1〜B3を示している。図4
は、同上のトランスファープレスの歯の第2〜第4圧造
ステーションS4、S5、S6及び各ステーションによっ
て加工されたブランクB4、B5、完成歯車(5)を示し
ている。
【0018】前記図1において、最も内側の鎖線(13a)
で示す予備成形工程は第1圧造ステーションS3で、2
点鎖線(14a)で示す拡大成形工程は第2圧造ステーショ
ンS4で、1点鎖線(15a)で示す第1完成工程は第3圧造
ステーションS5で、太実線(16a)で示す第2完成工程は
第4圧造ステーションS6で夫々行なわれる。第4圧造
ステーションS6では、ブランクの穴抜き加工も行なわ
れる。
【0019】トランスファープレスのダイブロック(1)
には前記各ステーションS1〜S6に対応して順に、切断
クイル(11)、予備圧造ダイ(12)、第1圧造ダイ(13)、第
2圧造ダイ(14)、第3圧造ダイ(15)、第4圧造ダイ(16)
が配備されている。又、各圧造ステーションS2〜S6
対応してダイブロック(1)内に突出しピン(2)(21)(22)
(23)及び孔抜きパンチ(24)がスライド可能に侵入する。
図3、図4では各ピン(2)(21)(22)(23)及びパンチ(24)
は、実際の待機定位置よりも後方にずらして示してい
る。
【0020】ダイブロック(1)に対向してラム(4)が往
復動可能に配備され、該ラムには上記各ダイに対向して
圧造パンチ(3)(31)(32)(33)(34)が取り付けられてい
る。切断クイル(11)の貫通孔(11a)を通って圧造側に送
り込まれた線材(6)は、該クイルの軸芯と直交して往復
する切断ナイフ(図示せず)によって剪断されると共に、
該切断ナイフによって予備圧造ステーションS2に移送
される。ダイブロック(1)上には、予備圧造ステーショ
ンS2、第1、第2、第3圧造ステーションS3、S4
5にて形成された各ブランクB2、B3、B4、B5
を次のステーションに反転移行させるトランスファー装
置(図示せず)が配備されている。
【0021】予備圧造ダイ(12)の型穴(12a)は断面円形
であって、底部外周は軸芯に対して30゜傾斜した斜面
(12b)に形成され、斜面と軸心に平行に壁面との境界は
丸く面取りが施されている。予備圧造ダイ(12)の底中央
に突出しピン挿通孔(12c)が開設され、突出しピン(2)
が摺動可能に嵌まっている。突出しピン(2)の先端は平
坦面(2a)に形成されている。予備圧造ダイ(12)の開口縁
はブランクに対する案内面となるテーパ面(12d)が形成
されている。
【0022】第1、第2、第3、第4圧造ダイ(13)(14)
(15)(16)の型穴(13a)(14a)(15a)(16a)は、夫々歯車の溝
形状に対応して等間隔に突条(13b)(14b)(15b)(16b)が突
設されている。各型穴は第1圧造ダイ(13)から第4圧造
ダイ(16)の順に歯先径及び歯底径が僅か大きくなってお
り、最終段の第4圧造ダイ(16)の型穴(16a)の断面形状
は完成歯車(5)の外周形状に対応している。
【0023】本発明のダイセットの特徴は、図1に示す
如く、最初にブランクに歯部を予備成形する第1圧造ダ
イ(13)の型穴(13a)は、歯元側の穴幅寸法a1と基準ピッ
チ円P.D近傍の穴幅寸法b1が同じ或いは前者の穴幅寸
法a1が後者の穴幅寸法b1よりも大である。又、ブラン
クの歯部を大きくする第2圧造ダイ(14)の型穴(14a)
は、第1圧造ステーションS3の型穴(13a)より略相似形
に大きくなっている。又、ブランクの歯部を括れさせる
第3圧造ダイ(15)の型穴(15a)は、歯の基準ピッチ円近
傍の穴幅寸法b3よりも歯元側の穴幅寸法a3が小さく且
つ該穴幅寸法a3は、第2圧造ダイ(14)における歯元側
の穴幅寸法a2よりも小さい。又、ブランクの歯部の括
れを大きくする第4圧造ダイ(16)の型穴(16a)は、歯の
基準ピッチ円近傍の穴幅寸法bよりも歯元側の穴幅寸法
aが小さく且つ該穴幅寸法aは、第3圧造ダイ(15)にお
ける歯元側の穴幅寸法a3よりも小さい。
【0024】実施例では、第2圧造ダイ(14)によって歯
部を略相似形に大きくしたが、該第2圧造ダイ(14)を省
略することもできる。又、実施例では、歯部の括れを第
3圧造ダイ(15)と第4圧造ダイ(16)によって2段階に分
けて括れを大きくしたが、第3圧造ダイ(15)又は第4圧
造ダイ(16)の何れか一方を省略して、圧造工程を1つの
ダイで行なうことも可能である。但しこの場合、ブラン
クを最後に打込むダイの穴形状が完成歯車の輪郭寸法に
対応しているのは勿論である。
【0025】第1、第2圧造ダイ(13)(14)の型穴(13a)
(14a)の深さは夫々が成形するブランクB3、B4の厚み
よりも2〜3mm大である。第3圧造ダイ(15)の型穴(15
a)及び第4圧造ダイ(16)の型穴(16a)は共に案内型部(15
a')(16a')に連続して案内型部(15a')(16a')の奥に設け
られている。案内型部(15a')(16a')のパンチ側開口は、
該案内型部にブランクを引っ掛かりなく且つガタ付きの
ない様に打込める形状をなし、夫々滑らかな曲線で型穴
(15a)(16a)に連続している。但し、第3圧造ダイ(15)の
案内型部(15a')と型穴(15a)の歯先径と歯底径は夫々一
致している。第4圧造ダイ(16)の案内型部(16a')と型穴
(16a)の歯先径と歯底径も夫々一致している。これによ
って、第3圧造ダイ(15)、第4圧造ダイ(16)に打込まれ
るブランクは、引っ掛かりなく且つダイ内で傾くことな
く安定して打込みできる。案内型部(15a')(16a')の深さ
1は、打ち込まれるブランクの厚みよりも4〜6mm大
きく、型穴(15a)(16a)の深さL2は該ブランクの厚みよ
りも2〜3mm大である。
【0026】第1〜第4圧造ダイ(13)〜(16)の型穴の底
面は外周部が環状に0.5mm程度高く隆起した環状隆起部
(13b)(14b)(15b)(16b)を形成しており、該環状隆起部(1
3b)〜(16b)の内径は、歯車の歯底径よりも小さい。
【0027】第1〜第3圧造ダイ(13)〜(15)の各型穴(1
3a)(14a)(15a)の中央には突出しピン挿入孔(13c)(14c)
(15c)が開設され、該孔に突出しピン(21)(22)(23)が摺
動可能に配備される。第1圧造ダイ(13)の突出しピン(2
1)の突出し側先端は軸心に直交する平坦面(21a)に形成
され、第2圧造ダイ(14)、第3圧造ダイ(15)の突出しピ
ン(22)(23)の突出し側先端はブランクB3、B4に打込
む打込み凸部(22a)(23a)が形成されている。第4圧造ダ
イ(16)は孔抜きダイを兼用しており、ダイの奥には突出
しスリーブ(25)が摺動可能に嵌まり、該スリーブの軸心
に孔抜きパンチ(24)がスリーブに対して摺動可能に配備
されている。各型孔(13a)(14a)(15a)(16a)のラム側開口
縁には面取り(13d)(14d)(15d)(16d)が施されている。
【0028】前記予備圧造ダイ(12)に対応する予備圧造
パンチ(3)は先端に軸心に直交する面に対して約3゜の
角度の円錐面(3a)を隆起形成している。第1、第2、第
3、第4圧造ダイ(13)(14)(15)(16)に対向配備された、
第1、第2、第3、第4圧造パンチ(31)(32)(33)(34)
は、共にダイの孔形状に対応して外周に歯面(31a)(32a)
(33a)(34a)を形成している。又、第1、第2、第3圧造
パンチ(31)(32)(33)の先端中央にはブランクB3、B
4、B5の端面に凹部(55)(56)を形成するための凸部(3
1b)(32b)(33b)が形成されている。
【0029】更に、第2、第3、第4圧造パンチ(32)(3
3)(34)の先端外周部は、環状の隆起部(32c)(33c)(34c)
が形成されている。該隆起部(32c)(33c)(34c)の隆起高
さは0.5mmであり、内径は各圧造ダイ(13)〜(16)の穴底
の環状隆起部(13b)〜(16b)の内径に一致している。第4
圧造パンチ(34)には、ブランクを孔抜きした際の孔抜き
カスを排出するための貫通孔(34b)が開設されている。
【0030】然して、切断ステーションS1から予備圧
造ステーションS2に移送され該ステーションで圧造さ
れたブランクB2は、該ステーションS2にて、ダイ(1
2)の底形状及びパンチの先端形状に対応してダイ側先端
外周部が30°のテーパ面に形成され、パンチ側端面は外
周から中心へ緩やかに凹んでいる。
【0031】予備圧造ステーションS2から第1圧造ス
テーションS3に移送された該ステーションで圧造され
たブランクB3は、該ステーションS3の型穴に対応し
て略歯車形状に予備成形され、パンチ側端面にパンチ(3
2)の先端凸部(31b)に対応して凹部(55)が形成される。
又、型穴(13a)の底部外周の環状隆起部(13b)によって、
ブランクB3の型穴底側の外周には環状の凹段部(53)が
形成される。
【0032】第1圧造ステーションS3の型穴(13a)は
歯元の穴幅寸法a1と基準ピッチ円近傍の穴幅寸法b1
同じ或いは前者の寸法a1が後者の寸法b1よりも大であ
るから、該型穴(13a)に歯元側から歯先側への材料肉
の流れに死角は生じず、従来の様にこの段階で型穴の歯
面に対応する部分と材料との間に隙間が生じることはな
い。型穴(13a)の最小内径は、予備圧造されたブランク
B2の径よりも少し大きいため、ブランクB2を型穴(1
3a)にスムーズに打込み出来る。上記第1圧造工程に於
て、ブランクB3の材料肉は、型穴の歯面に対応する部
分には隙間なく充満するが、型穴(13a)の溝奥まで完全
には流れ込まず、従ってブランクB3の歯形の先端は、
勿論完全なる歯型ではない。
【0033】第1圧造ステーションS3から第2圧造ス
テーションS4に反転移送された該ステーションで圧造
されたブランクB4は、該ステーションS4の型穴(14a)
に対応して全体的に拡大する。パンチ(32)側の端面に
は、該パンチ先端中央の凸部(32b)により、凹部(56)が
形成される。型穴底側の凹部(55)は突出しピン(22)が型
穴(14a)内に侵入して待機していることにより深くな
る。又、型穴(14a)の底部外周の環状隆起部(14b)によっ
て、ブランクB4の型穴底側の外周には環状の凹段部(5
7)が形成される。
【0034】第2圧造ステーションS4から第3圧造ス
テーションS5に反転移送された該ステーションで圧造
されたブランクB5は、パンチ(33)による第3圧造ダイ
(15)の型穴(15a)への打込みにより該型穴(15a)に対応し
て略歯車形状に形成される。第上記の型穴(15a)は、歯
の基準ピッチ円近傍の穴幅寸法b3よりも歯元側の穴幅
寸法a3が小さく且つ該穴幅寸法a3は、第2圧造ダイ(1
4)における歯元側の穴幅寸法a2よりも小さいため、図
1の1点鎖線(15a)で示す様に、歯部の歯元側が括れた
状態に形成される。
【0035】第3圧造ステーションS5から第4圧造ス
テーションS6に反対移送されたブランクは、パンチ(3
4)による該ステーションS6の型穴(16a)への打込みによ
り該型穴(16a)に対応して完成歯車の形状に形成され
る。第4圧造ステーションS6の第4圧造ダイ(16)は、
歯の基準ピッチ円近傍の穴幅寸法bよりも歯元側の穴幅
寸法aが小さく且つ該穴幅寸法aは、第3圧造ステーシ
ョンS5の歯元側の穴幅寸法a3よりも小さいため、歯部
の歯元の括れは一層大きくなる。第4圧造ダイ(16)の型
穴(16a)の基準ピッチ円近傍を含み歯先側は、第3圧造
ダイ(15)の型穴(15a)の歯先側よりも大きくなっている
が、これは説明を分かり易り易くするためであって、図
面の様なバランスで第4圧造ダイ(16)の型穴(16a)を大
きくすると、該型穴(16a)の先端側まで十分に材料肉が
回りこない。第4圧造ダイ(16)の型穴(16a)の基準ピッ
チ円近傍を含み歯先側は、第3圧造ダイ(15)の型穴(15
a)の歯先側と同形状でもよい。第4圧造ダイ(16)の型穴
(16a)内で孔抜きパンチ(24)によって孔抜きが行なわ
れ、このときブランクの材料肉は、パンチ側への移動は
妨げられているから外周方向に強く押し出され、型穴(1
6a)の溝の隅々にまで充満し、完成歯車に対応する形状
に圧造され、スリーブ(25)に打ち出されて完成歯車(5)
が排出される。
【0036】第3及び第4の圧造ステーションS5、S6
での歯部の歯元を括れる様に絞る際、図7に示す如く、
圧造成形した歯車(5)の側面にはバリ(58)(58)が生じ、
歯車の組込時にバリが邪魔になって取付け誤差を生じ
る。このためバリ取り加工が必要であり、手間とコスト
がかかったが、実施例の完成歯車(5)の様に両端面の中
央部にバリの突出高さより大きな段差の凸段部(54)を形
成すれば、バリ取り加工は不要となる。
【0037】上記の如く、本発明では、最初に歯を形成
する型穴(13a)は歯車の歯元の幅に対応する寸法と基
準ピッチ円近傍の幅に対応する寸法が同じ或いは前者の
寸法a1が後者の寸法b1よりも大であるから、該型穴(1
3a)の歯面に対応する隅々まで材料肉が充満し、従来の
様にこの段階で型穴の歯面に対応する部分と材料との間
に隙間が生じることはない。従って、次の工程からの型
穴の歯先側の拡がりと、歯元側の縮小によって、基準ピ
ッチ円近傍の歯幅Xよりも歯元の歯幅Yの方が小さい歯
を具え且つ歯部にヒケの生じていない高精度の歯車を能
率的に製造できる。実施例では、歯先径20.10mm、歯底
径15.40mm、幅10.0mm、孔径8.50、歯数18の歯車を60
個/分の割で生産した。
【0038】又、本発明ではブランクが徐々に完成歯車
に近づく様に段階的に圧造するから、各型穴での加工度
は小さく、金型への負担は軽減され、金型の寿命は延長
する。トランスファープレスによる圧造であるから、生
産能率が向上する。又、ブランクを徐々に完成歯車の形
状に近づけ、最終段の型穴にブランクを打込んだ状態で
孔抜きする際にもブランクの材料肉を半径方向に押出
し、型穴の溝奥の隅々に材料肉を行き渡らせて精度の高
い歯車を形成できる。本発明は上記実施例の構成に限定
されることはなく特許請求の範囲に記載の範囲で種々の
変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】歯部の成形工程順の変形状態の説明図である。
【図2】完成歯車の断面図である。
【図3】第1工程から第3工程までの説明図である。
【図4】第4工程から第6工程までの説明図である。
【図5】歯部の正面図である。
【図6】従来例の歯部の成形工程順の変形状態の説明図
である。
【図7】従来の圧造成形歯車の断面図である。
【符号の説明】
(12) ダイ (13) ダイ (14) ダイ (15) ダイ (16) ダイ (12a) 型穴 (13b) 型穴 (14c) 型穴 (15d) 型穴 (16e) 型穴

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 順に並んだ圧造ステーションに配備され
    た型穴形状の異なる一組のダイに対して、各型穴に対応
    するパンチによってブランクを順に打込み、基準ピッチ
    円近傍の歯幅Xよりも歯元の歯幅Yの方が小さい歯を具
    えた歯車の鍛造・圧造成形方法であって、予備成形工程
    でブランクに基準ピッチ円近傍の歯幅寸法X1と歯元の
    幅寸法Y1が同じ或いは前者が後者よりも小さい歯を形
    成し、歯の完成工程で、基準ピッチ円近傍の穴幅寸法よ
    りも歯元の穴幅寸法が小さい型穴にブランクを打込んで
    ブランクの歯元を絞り、基準ピッチ円近傍の歯幅Xより
    も歯元の歯幅Yの方が小さい歯を具えた歯車の鍛造・圧
    造成形方法。
  2. 【請求項2】 予備成形工程と歯の完成工程の間に、予
    備成形したブランクを全体的に大きくする歯の拡大工程
    を有する請求項1に記載の歯車の鍛造・圧造成形方法。
  3. 【請求項3】 歯の完成工程において、歯元側を絞ると
    同時に歯先側を拡大させている請求項1又は2に記載の
    歯車の鍛造・圧造成形方法。
  4. 【請求項4】 歯の完成工程は、歯元の絞り工程を2段
    階に分けて行なう請求項1乃至3の何れかに記載の歯車
    の鍛造・圧造成形方法。
  5. 【請求項5】 基準ピッチ円近傍の歯幅Xよりも歯元の
    歯幅Yの方が小さい歯を具えた歯車を鍛造・圧造成形す
    るためのダイセットであって、予備成形工程のダイ(13)
    の型穴(13a)は、歯元の穴幅寸法a1と歯の基準ピッチ円
    近傍の穴幅寸法b1が同じ或いは前者の穴幅寸法a1が後
    者の穴幅寸法b1よりも大であり、歯の完成工程のダイ
    は、歯の基準ピッチ円近傍の穴幅寸法よりも歯元の穴幅
    寸法が小さいことを特徴とする歯車の鍛造・圧造成形用
    ダイセット。
  6. 【請求項6】 予備成形工程のダイ(13)と完成工程のダ
    イとの間に歯の拡大工程のダイ(14)が存在し、該ダイ(1
    4)の型穴は、予備成形工程のダイの型穴の歯に対応する
    部分が全体的に大きく、歯の完成工程のダイは、歯の基
    準ピッチ円近傍の穴幅寸法よりも歯元の穴幅寸法が小さ
    く、且つ該穴幅寸法は、歯の拡大工程のダイ(14)の歯元
    の穴幅寸法よりも小さいことを特徴とする請求項5に記
    載の歯車の鍛造・圧造成形用ダイセット。
  7. 【請求項7】 完成工程のダイは、型穴に連続してブラ
    ンク打込み側に案内型部を有しており、案内型部のブラ
    ンク打込み側開口は、該案内型部にブランクを引っ掛か
    りなく且つガタ付きのない様に打込める形状をなし、滑
    らかな曲線で型穴に連続しており、且つ案内型部と型穴
    の歯先径と歯底径は夫々一致している請求項5又は6に
    記載の鍛造・圧造成形用ダイセット。
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