JP2822155B2 - 切り花の保存方法及び保存装置 - Google Patents

切り花の保存方法及び保存装置

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JP2822155B2
JP2822155B2 JP6268320A JP26832094A JP2822155B2 JP 2822155 B2 JP2822155 B2 JP 2822155B2 JP 6268320 A JP6268320 A JP 6268320A JP 26832094 A JP26832094 A JP 26832094A JP 2822155 B2 JP2822155 B2 JP 2822155B2
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誠一 大下
謙治 中村
一春 是枝
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誠一 大下
タバイエスペック株式会社
株式会社第一園芸プランテック
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切り花の保存方法及び
保存装置に関し、特にその鮮度維持技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、花卉市場の広がりと共に切り花の
需要が伸びてきており、その鮮度保持技術に対する関心
も高まっている。収穫された切り花は、根や葉からの養
分補給を受けられないので、糖などの保有している養分
を呼吸基質として消費することにより生活作用(呼吸)
を営んでいる。ところが、この呼吸作用に伴って呼吸熱
が発生し、これが切り花の品温を上昇させ、更に呼吸作
用その他の生理反応を促進させる。特に高温時に出荷す
る切り花では、品温が上昇して“むれ”が発生し、それ
に伴って葉が黄化するなど、その品質が急速に低下す
る。又切り花では、呼吸時の生理的な水分放出や表皮な
どからの物理的な水分の散逸により、“しおれ”が発生
する。この“しおれ”は、水揚げによってある程度回復
可能であるが、“しおれ”が激しくなると吸水不良で商
品性が低下する。更に、呼吸作用によって含有している
成分が消耗したり、蒸散作用によって水分含有量が低下
すると、微生物に対する抵抗力が失われるため、切り花
が折れ等の物理的な損傷を受けると、その場所から腐敗
することにもなる。又、カーネーションなどの切り花の
多くは、“しおれ”る際に多量のエチレンを発生させ、
このエチレンが花の“しおれ”や落花、落蕾を一層促進
させることも知られている。このような切り花の性質か
ら、収穫後における、呼吸の抑制、蒸散作用の抑制、微
生物による汚染防止、及びエチレン発生の抑制をどのよ
うにして行うかが、切り花の鮮度保持上の重要な課題に
なっている。
【0003】このような課題の全てに共通して一定の効
果のある方法として、切り花を低温環境(0〜10°C
程度)に維持し、生理活性を抑えることにより鮮度を保
持する方法が、現在広く一般的に用いられている。この
場合、切り花を0〜5°Cの低温に保持すれば、特に呼
吸作用抑制の効果が大きい。
【0004】蒸散作用の抑制のためには、一定以上の湿
度を保つように切り花を包装した状態にしておく等の方
法が採られたり、又最近では、90%RHの高い湿度環
境と低温環境とを組み合わせることにより、呼吸及び蒸
散の両方を抑制する方法が採用され、その装置化も図ら
れている。微生物汚染の防止やエチレン発生の抑制方法
としては、切り花をSTS剤(Silver Thio Sulphate)
などのエチレン生成阻止剤で処理する化学処理、緑色擬
灰岩などのエチレン吸着機能を有する物質によるエチレ
ンの吸着、オゾンによるエチレンの分解などの各種処理
技術が一部実用化されている。そして従来では、以上の
ような低温保存・高湿保存・薬剤処理・エチレン除去等
の方法を単独又は組み合わせることにより、切り花の鮮
度保持を図っている。
【0005】しかしながら、以上のような従来の方法に
よれば、切り花の鮮度を保持できる日数は長くても10
日程度であり、長期間の鮮度保持を図ることができな
い。又、STS剤を使用する場合には、これが重金属で
ある銀を含有するため、環境上の問題を発生させるおそ
れがある。更に、従来技術は一部の花卉についてのみ適
用されている例が殆どである。
【0006】以上のような一般的な従来技術に加えて、
切り花の鮮度保持のための種々の技術が提案されてい
る。その中には、例えば、過マンガン酸カリウムを吸着
させた活性アルミナで発生するエチレンガスを分解する
方法(特開平2−312541号公報参照)、ガス選択
透過性フィルムを用いて酸素濃度と炭酸ガス濃度とを一
定範囲に維持して花(特にカーネーションに効果的)の
開花、腐敗及び褪色を抑制する方法(特開平2−275
801号公報参照)、イソチアン酸誘導体をガス状で花
弁類に接触させてエチレン生成反応を抑制する方法(特
開平5−268873号公報参照)、切り花を昇華性物
質である亜硝酸化合物の気体雰囲気中に保持してエチレ
ンガスの発生を抑制する方法(特開平5−271002
号公報参照)等がある。しかしながら、これらの方法に
おいても、過マンガン酸カリが毒性を有するため使用後
の廃棄に問題が生ずること、特定の花に対してのみ効果
的であること、十分長い鮮度保持期間が得られないこ
と、等の問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術に於
ける上記問題を解決し、種々の切り花に対して長期間の
鮮度保持が可能で、環境問題を発生させることがない切
り花の保存方法及び保存装置を提供することを課題とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、請求項1の発明は、切り花の保存方法が、
切り花を密閉可能な容器内に収納し、該容器内に活性が
低く水に溶け易い無極性ガスを分圧が所定の圧力であっ
て前記無極性ガスが前記切り花の細胞内の水に溶解して
該水を構造化する圧力になるように圧入し、前記容器を
密閉し、該容器を常温より低い温度に保持する、工程を
有することを特徴とし、請求項2の発明は、上記に加え
て、前記切り花を前記容器から取り出す前に前記無極性
ガスを回収することを特徴とし、請求項3の発明は、切
り花の保存装置が、活性が低く水に溶け易い無極性ガス
を出し入れするための少なくとも1つのノズル部及び切
り花を入れる収納部を備え所定の圧力であって前記無極
性ガスが前記切り花の細胞内の水に溶解して該水を構造
化する圧力まで耐えられる耐圧容器と、前記ノズル部に
接続される接続部、該接続部を介して前記容器内の前記
無極性ガスを吸引して昇圧する昇圧手段、及び吸引した
前記無極性ガスを吐出する吐出部を備えた無極性ガス回
収装置と、を有することを特徴とする。上記における活
性が低く水に溶け易い無極性ガスとは、キセノンガス及
びクリプトンガスを言う。
【0009】
【作用】請求項1の発明によれば、切り花を密閉可能な
容器内に収納し、この中に活性が低く水に溶け易い無極
性ガスとしてキセノンガス又はクリプトンガスを分圧が
所定の圧力であって前記無極性ガスが切り花の細胞内の
水に溶解してその水を構造化する圧力になるように圧入
して容器を密閉し、容器を常温より低い温度として例え
ば10°C程度又はそれ以下の温度に保持するので、こ
の保持期間内には、切り花の代謝が抑制されていわゆる
老化の進行が停止し、一方、生体機能は保持される。こ
の保持期間は長くてもよいので、切り花の長期保存とそ
の後の自然状態への復帰が可能になる。
【0010】キセノンガス又はクリプトンガスは、活性
が低く水に溶解し易く、不活性ガスのうち水に対する溶
解度が相対的に大きい。又、これらのガスは、無色・無
臭且つ無毒の気体で、大気中に放出されても何ら環境問
題を発生させない。
【0011】本発明の方法により代謝が抑制される点に
ついて更に説明すれば次のとおりである。無極性ガスが
切り花の細胞の主成分をなす水に溶解すると、水素結合
した水分子集団の数が増加する。即ち、水分子が無極性
ガス分子の周りに再配向して疎水性水和を生じ、いわゆ
る水の構造化が図られる。その結果、切り花の細胞内の
水の分子運動が遅くなって水の粘度が増大し、酵素反応
の速度が遅くなり、代謝が抑制される。そしてこの状態
が持続されることにより、長期間の鮮度保持が可能にな
る。この場合、切り花では、一般に花弁の厚みが薄いの
で、無極性ガスがその細胞内に溶け込み易いため、本発
明の方法が特に効果的になる。
【0012】一般に無極性ガスの水に対する溶解度は小
さいが、本発明によれば、その中でも比較的水に溶解し
易いものを選び、且つ、容器内で分圧が所定の圧力にな
るように切り花の収納された容器内における無極性ガス
の分圧を上昇させるので、切り花の細胞内の水に溶解す
る無極性ガス濃度を高くすることができる。この所定の
圧力が高ければ、それだけ水中における無極性ガスの濃
度が高くなって水の構造化が進み、代謝抑制の効果が大
きくなる。従って、この所定の圧力は、採用する無極性
ガスの溶解度の大小、保存の対象となる切り花の種類や
目的とする保存期間等を考慮して定められる。この場
合、容器内の圧力を高くすれば、圧力容器として重量が
増加したりコストが高くなり、又、保存のための取り扱
い面でも不利になるが、本発明のように無極性ガスのう
ちでも水に溶けやすいものを採用することにより、低い
圧力を選定してこのような不利益を解消することができ
る。従って、所定の圧力としては、本装置の実用性から
ゲージ圧力で5気圧程度までが適当であり、3気圧以下
の圧力が望ましい。
【0013】又本発明によれば、活性の低い無極性ガス
を用いるので、このガスが花の細胞内の水に溶解して
も、化学的に安定しているため細胞内における生化学反
応に関与しない。従って、このガスは花の生活作用を促
進させることがない。更に、以上のような無極性ガスを
圧入して切り花を収納した容器を10°C程度又はそれ
以下の低い温度に保持するので、低温環境による一般的
な鮮度保持効果と共に、水の粘度の温度依存にもとづく
細胞水の高粘度化も図られ、代謝抑制効果が一層大きく
なる。この場合、生産地の冷蔵倉庫のみならず、保冷ト
ラックやコールドボックス等を利用して生産から販売ま
で低温貯蔵状態を連続的に維持するようにすれば、生産
地における出荷調整期間のみならず、輸送や流通過程の
全体において切り花の鮮度を保持することができる。な
お、所定の温度は、切り花の鮮度保持の点からはできる
だけ低いことが望ましいが、低温環境の実現という点で
は常温に近い方が容易であるため、切り花の種類や使用
する無極性ガスの種類、圧力等により適当な温度が選定
される。
【0014】以上のような作用をなす無極性ガスのう
ち、キセノンガス及びクリプトンガスは、それぞれ融点
−111.8°C及び−156.6°C、沸点−10
7.1°C及び−152.9°Cを持つ無色・無臭且つ
無毒の気体で、0°Cにおける解離圧がそれぞれ0.1
5MPa及び1.47MPaで低い値である。従って、
比較的低い圧力で切り花の細胞内の水に溶解するので、
水の構造化を図るのに適している。又、これらのガス
は、溶解しても細胞内の化学反応に関与しない化学的に
安定したガスである。従って、本発明に使用する無極性
ガスとして最も適している。
【0015】請求項2の発明によれば、請求項1の発明
の作用に加えて、切り花を容器から取り出す前に無極性
ガスを回収するので、無極性ガスの繰り返し利用が可能
になる。例えば、無極性ガスでもある不活性ガスのうち
最も水に溶け易いキセノンガスは高価であるため、この
ようにガスの再利用を図ることにより、切り花の長期保
存のためのコスト低減が図られる。
【0016】請求項3の発明によれば、切り花の保存装
置が所定圧力まで耐えられる耐圧容器を有し、この容器
が切り花を入れる収納部と無極性ガスを出し入れするた
めの少なくとも1つのノズル部とを備えているので、収
納部に切り花を入れ、ボンベ等の無極性ガス貯蔵容器と
ノズル部とを結合することにより、所定圧力の範囲内で
耐圧容器内に無極性ガスを圧入することができる。その
結果、この容器を冷蔵室等の低温環境室に入れておくこ
とにより、切り花の細胞内の水に無極性ガスを溶解させ
て水を構造化し、鮮度を保持して切り花を長期間貯蔵す
ることができる。
【0017】又、切り花の保存装置は耐圧容器のノズル
部と接続される接続部とこれから無極性ガスを吸引して
昇圧する昇圧手段と吸引した無極性ガスを吐出する吐出
部とを備えているので、耐圧容器のノズル部と接続部と
を接続すると共に、吐出部を無極性ガスを貯蔵するボン
ベ等の容器に接続し、昇圧手段を作動させることによ
り、無極性ガスを回収して再利用することができる。こ
の場合、回収する無極性ガスの純度を向上させるため
に、このような昇圧手段に加えて、無極性ガスを液化す
る液化手段及び液化しない空気を吸引する真空手段を設
けるようにしてもよい。この場合には、無極性ガスは液
化するが空気を構成している窒素及び酸素は液化しない
ように、空気よりも液化温度の高い無極性ガスを使用す
る。このような切り花の保存装置によれば、容易に切り
花を保存状態にすることができると共に、無極性ガスの
繰り返し利用が可能になり、切り花の長期保存を実用的
及び経済的に実施することができる。
【0018】
【実施例】図1は実施例の切り花の保存装置を構成する
耐圧容器1の構造を示す。耐圧容器1は、活性が低く水
に溶け易い無極性ガスであるキセノンガス及びクリプト
ンガスのうちのキセノンガスを出し入れするためのノズ
ル部としての入口管11及び出口管12と、切り花2を
入れる収納部としての本体13とを備え、所定の圧力
あってキセノンガスが切り花の細胞内の水に溶解してそ
の水を構造化する圧力として5kg/cmGまで耐え
られる構造になっている。本体13は、切り花を立てた
状態で一定量収納できるサイズである。又、使用圧力に
もよるが、本体13を熱伝導率の低い材料で形成するよ
うにしてもよい。なお本実施例では、入口管11及び出
口管12を別個に設けているが、何れか1つにして共用
するようにしてもよい。
【0019】入口管11と出口管12には、それぞれ弁
14及び圧力計15と弁16とが取り付けられている。
切り花2は、周囲に多数の孔が開けられた切り花支持バ
ケット3に入れられている。符号17は、耐圧容器1を
密閉できるように耐圧容器1に固定できる蓋である。蓋
1には、中に入れた切り花の状態を目視できるように、
耐圧ガラス等でできた窓部17aを設けることが望まし
い。なお、蓋1及び本体13の底13aを曲面状に形成
してもよい。図において2点鎖線で示すように曲面状底
13a´にするときには、本体1を外筒4で支持するよ
うにしてもよい。入口管11及び出口管12は、キセノ
ンガスの注入及び回収時にそれぞれキセノンガスボンベ
5及びキセノンガス回収装置6と接続される。
【0020】図2は、上記の装置を用いて切り花を保存
する実施例の保存方法の各工程を示す。本例は、切り花
が薔薇であり無極性ガスとしてキセノンガスを用いる場
合を示す。この保存方法は、切り花2をバケット3に入
れて耐圧容器1の蓋17を開けて上部から本体13内に
収納する切り花収納工程(S−1)、耐圧容器1内にキ
セノンガスを分圧が所定の圧力として3 kg/cm2G程度に
なるように圧入するキセノンガス圧入工程(S−2)、
圧入後耐圧容器を密閉する工程(S−3)、この状態で
耐圧容器1を冷蔵倉庫等の中で常温より低い温度として
例えば5°Cに保持する低温貯蔵工程(S−4)、及び
耐圧容器1を冷蔵倉庫から取り出して内部のキセノンガ
スを抜き取るキセノンガス回収工程(S−5)を有す
る。なお、このような工程においては、内部の温度変化
を少なくするために、耐圧容器1を断熱ケースに入れて
使用することが望ましい。
【0021】圧入工程(S−2)では、まず図1に示す
弁14及び弁16を閉じ、キセノンガスボンベ5を入口
管11に接続し、弁14を適当な開度開いて本体13内
にキセノンガスを充填する。具体的には、圧力計15を
見ながらキセノンガスを充填し、本体13内の圧力従っ
てキセノンガスの分圧を3 kg/cm2Gまで上昇させる。こ
の圧力に到達すると、弁14を閉鎖して耐圧容器を密閉
し、ガスボンベ5の接続を解除する。
【0022】貯蔵工程(S−4)では、切り花の生産直
後に上記(S−3)までの工程を行った後、切り花とキ
セノンガスとを入れた耐圧容器1を産地近傍のプレハブ
冷蔵倉庫に貯蔵する。又流通過程では、耐圧容器1は、
冷蔵倉庫から低温状態を維持できる保冷トラックに直接
又はCRB(コールドロールボックス)で個別分けして
積載され、卸売市場を介して又は直接販売店まで運ば
れ、卸売市場や販売店の貯蔵庫や保冷ショウケース等に
入れられる。貯蔵工程(S−4)は、このような流通過
程における貯蔵を含む概念である。本発明の切り花の保
存方法によれば、このように流通の全過程における切り
花の鮮度保持が可能となる。但し、生産地と販売店とが
近いような場合には、貯蔵工程は生産地の冷蔵倉庫のみ
であってもよい。
【0023】ガス回収工程(S−5)では、図1に示す
ように切り花2を耐圧容器1内に保持した状態で出口管
12をキセノンガス回収装置6に接続し、後述するよう
に回収装置6を作動させて内部のキセノンガスを回収す
る。そして、ガスを回収した後に蓋17を開いて切り花
2を取り出す。回収したガスは再利用される。このよう
な回収作業は、流通の形態により、生産地、卸売市場、
販売店等の何れかにおいて貯蔵工程の終了後に行われ
る。但し、低コストの無極性ガスを用いる場合等には回
収工程を省略し、耐圧容器1内のガスを大気に放出させ
てもよい。この場合、活性の低い無極性ガスは無毒・無
臭であるから、周囲環境に対して悪影響を与えることが
ない。
【0024】以上のように切り花の一例である薔薇をキ
セノンガスの圧力環境下で低温貯蔵すれば、次のような
現象により薔薇の細胞の代謝が抑制される。耐圧容器1
内のキセノンガスの初期分圧を3 kg/cm2Gにすることに
より、キセノンガスが薔薇の細胞の主成分を成す水の中
に十分溶解し、水分子がキセノンガス分子の周りに再配
向して疎水性水和が生じ、水が構造化する。このように
薔薇の細胞内の水が構造化されることにより、水の粘度
が大きくなり、細胞内の代謝が抑制され、薔薇の鮮度が
長期間保持される。発明者等の実験によれば、この方法
で2週間保存した薔薇は、保存開始時と同じ状態を保っ
ていた。即ち、鮮度はほぼ完全に維持されていた。これ
に対し、単に低温状態を保持する通常の保存方法を用い
て保存した薔薇では、明らかに“しおれ”や花色の変化
が見られ、又落花も発生し、その鮮度は著しく低下して
いた。
【0025】以上では薔薇の例を示したが、本発明の方
法は他のどのような花に対しても適用可能であり、それ
らに対して鮮度保持効果が得られる。この場合、キセノ
ンガス等の使用可能な無極性ガスは、それぞれ水に対す
る溶解度を異にし、その圧力を高くすると溶解度が高く
なり水の構造化が促進し、鮮度保持効果が大きくなると
いう性質を有する。従って、無極性ガスの圧力は、使用
するガスの種類、対象とする切り花の種類、目的とする
鮮度保持の期間や程度等を総合的に判断して決定され
る。クリプトンガスを用いて薔薇を2週間程度保存する
場合には、このガスはキセノンガスよりも水に対する溶
解度が低いから、キセノンガスの場合の2倍程度の圧力
を必要とする。但しクリプトンガスは安価であるため、
必ずしも回収する必要がなく、大気中に放散させるよう
にすれば鮮度保持のための取扱いも容易になる。
【0026】図3は無極性ガス回収装置としてのキセノ
ンガス回収装置の構成例を示す。本装置は、耐圧容器1
の出口管12と接続される接続部61と、接続部を介し
て耐圧容器内のキセノンガスを吸引して昇圧する昇圧手
段としてのブースタポンプ62と、吸引したキセノンガ
スを吐出する吐出部63とを備えている。キセノンガス
は耐圧容器1内に空気と混合しつつ圧入されるので、本
実施例では、回収するキセノンガスの純度を向上するよ
うに、更に、キセノンガス液化用のサンプルシリンダ6
4、デュワービン65、液化配管系66、その真空引き
用の真空ポンプ67等が設けられている。符号68は、
減圧弁V8を介してブースタポンプ62に作動用空気を
送る圧縮機である。その他、配管系には弁類や圧力計等
が適宜設けられている。
【0027】本装置によるキセノンガスの回収は次のよ
うに行う。切り花及びキセノンガスが入った耐圧容器1
及びキセノンガスボンベ5を本装置と連結した後、弁1
6、V1、V4及びV6を閉じ、弁V2、V3、V5及
びV7を開き、真空ポンプ67を作動させてラインの真
空引きをする。次に、弁V2、V4、V6及びV7を閉
じ、弁16、V1、V3及びV5を開き、ブースタポン
プ62を運転して耐圧容器1内のキセノンガスをサンプ
ルシリンダ64内に圧入すると共に、デュワービン65
内に液化炭酸ガスを噴射してサンプルシリンダ64を冷
却し、内部のキセノンガスを液化させ、キセノンガスを
一次的に回収する。このときには、安全弁V9の設定圧
力以下の圧力まで昇圧する。
【0028】耐圧容器1内のキセノンガスを全てサンプ
ルシリンダ64内に回収すると、弁V1、V2、V3、
V4、V5及びV7を閉じ、弁V6を開き、回収ライン
の大気圧を確認した後弁V6を閉じ、弁V5及びV7を
開き、真空ポンプ67を再度運転して回収ラインの空気
を抜く。そして、弁V1、V2、V3、V6及びV7を
閉じ、弁V4及びV5を開き、サンプルシリンダ内のキ
セノンガスを圧力差により逆止弁V10を介してキセノ
ンガスボンベ5内に移送する。この移送は、ラインの圧
力が5 kg/cm2Gになるまで行う。次に弁V5を閉じて弁
V2及びV3を開き、このラインのキセノンガスもブー
スタポンプ62を介して5 kg/cm2Gになるまで移送す
る。以上の操作は、図示の各部の圧力計P1〜P4を見
ながら行う。
【0029】なお、キセノンガス回収装置をパッケージ
化したり自動化するようにしてもよい。この場合には、
例えば、開閉させる弁を全て電動弁とし、必要箇所に圧
力センサを設け、操作盤を設けてその操作スイッチをオ
ンにすることにより、上記のような機器やバルブの動作
が圧力検出やタイマー等によりシーケンシャルに行われ
るようにする。又、耐圧容器1及びキセノンガスボンベ
5は、回収装置とワンタッチで着脱できるようにする。
このようにすれば、キセノンガスの回収操作が極めて容
易になる。
【0030】
【発明の効果】以上の如く本発明によれば、請求項1の
発明においては、切り花の鮮度を長期間維持することが
できる。又、生産地のみならず、流通過程の全体におけ
る切り花の鮮度保持が可能になる。更に、この方法を使
用しても環境に対して全く悪影響を及ぼすことがない。
請求項2の発明においては、上記に加えて、使用する無
極性ガスが高価な場合でも、鮮度保持のためのコストを
低減することができる。請求項3の発明においては、耐
圧容器と無極性ガス回収装置とにより、無極性ガスの繰
り返し利用を可能にし切り花の長期保存を実用的及び経
済的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の耐圧容器の構造を示す説明図である。
【図2】実施例の切り花の保存方法の工程図である。
【図3】キセノンガス回収装置の構成の一例を示す系統
図である。
【符号の説明】
1 耐圧容器 2 切り花 6 キセノンガス回収装置(無極性ガス回収手
段) 11 入口管(ノズル部) 12 出口管(ノズル部) 13 本体(収納部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 是枝 一春 静岡県駿東郡小山町上野1101−8 株式 会社第一園芸プランテック富士小山農場 内 (56)参考文献 特開 平7−157(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01N 3/02 A23L 3/3445 A01G 5/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 切り花を密閉可能な容器内に収納し、該
    容器内に活性が低く水に溶け易い無極性ガスを分圧が所
    定の圧力であって前記無極性ガスが前記切り花の細胞内
    の水に溶解して該水を構造化する圧力になるように圧入
    し、前記容器を密閉し、該容器を常温より低い温度に保
    持する、ことを特徴とする切り花の保存方法。
  2. 【請求項2】 前記切り花を前記容器から取り出す前に
    前記無極性ガスを回収することを特徴とする請求項1に
    記載の切り花の保存方法。
  3. 【請求項3】 活性が低く水に溶け易い無極性ガスを出
    し入れするための少なくとも1つのノズル部及び切り花
    を入れる収納部を備え所定の圧力であって前記無極性ガ
    スが前記切り花の細胞内の水に溶解して該水を構造化す
    る圧力まで耐えられる耐圧容器と、前記ノズル部に接続
    される接続部、該接続部を介して前記容器内の前記無極
    性ガスを吸引して昇圧する昇圧手段、及び吸引した前記
    無極性ガスを吐出する吐出部を備えた無極性ガス回収装
    置と、を有することを特徴とする切り花の保存装置。
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