JP2818969B2 - 並列式魚道装置 - Google Patents

並列式魚道装置

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JP2818969B2
JP2818969B2 JP19568490A JP19568490A JP2818969B2 JP 2818969 B2 JP2818969 B2 JP 2818969B2 JP 19568490 A JP19568490 A JP 19568490A JP 19568490 A JP19568490 A JP 19568490A JP 2818969 B2 JP2818969 B2 JP 2818969B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ダム、堰等の上流側河川とその下流側河川
との間に敷設し魚の遡上、下降を可能にするための並列
式魚道装置に関するものである。
(従来の技術) 近年、自然の生態系の保存と云う観点から、ダム、堰
等の築造が社会問題にされて来ているが、開発か自然保
護かいずれか一方を択一的に選択する事は困難である。
従来、両者の立場を併立させ得る魚道がダム、堰等と併
設されている。例えば第5図に示すように複数の転倒式
堰のゲート1を下流に向け順次堰頂を低くして設けられ
た魚道がある。このゲート1は堰2に設置したウインチ
3によって任意の角度に転倒することができる。そし
て、魚の遡上と下降とが確実に行なわれるために魚道内
の流速ひいては流量を適正に保持するようにダム上流の
貯水池の水位の変化に合わせて絶えず堰頂を調節するも
のである。しかし、この形式のものは、ゲートとゲート
の間に魚が迷入するおそれがある。一方、例えば第6図
に示すように、所定間隔で隔壁4を水中に立設しそれぞ
れに昇降機5で上下動させるゲート6を取付けたもの
で、ゲート6の高さを調節して階段状水位になるように
し魚の遡上を可能としたものである。しかし、各ゲート
6毎に昇降機5が必要になり工費が嵩むばかりか設置高
さが非常に高くなると云う問題があった。
そこで最近は、いわゆるウインドウ・チョイス方式と
称する魚道装置が用いられている。すなわち第7、8図
に示すようにダム7の下流の河川から分岐して行き止り
とした階段状の固定式魚道8が設けられ、その側方にダ
ム7の貯水池に通ずる水路9を沿わせ、固定式魚道8の
各隔壁10で階段状に区分される水面に応じた窓11aを水
路9の側壁11に穿設し、これにゲート12を設けたもので
ある。この操作は水路9の水位が変動したときにその水
位に合う窓11aを開放し他の窓11aを遮蔽するもので、こ
れによって放水の流量を調節しゲート12で区分された水
位差は上流水位の影響を受けることもなく一定であり魚
の遡上・下降を容易にすることができる。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、このウインドウ・チョイス方式にあっ
ても、貯水池の水位の変化に応じて絶えずその水位に合
う窓11aを開放するために複数のゲート12を各独立に作
動させなければならないので操作が面倒になり、対応の
遅れにより不時の出水に対して極めて危険であると云う
問題があった。
本発明は、労力を要せず安全性のある並列式魚道装置
を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段) 上記目的を達成するために本発明は、ダム、堰等の上
流側河川に下流端を閉じた貯水路を付設し、その下流側
河川から分岐され隔壁を順次階段状に配設した固定式魚
道を、前記貯水路の側壁に沿って並列に設置し、前記側
壁に隔壁で区切られた区画毎に窓孔を穿設するとともに
該窓孔にゲートを設けた並列式魚道において、 前記ゲートを貯水路側に装着して各窓孔の下部内壁上
に上部を開口した注水槽を設置し、前記貯水路に前記各
ゲートと連動するフロートを備えたフロート室を配置
し、該フロート室の壁の上端を当該フロートが開き始め
るべき時の水位の等しくし、前記フロート内を可撓性の
導水管を介して貯水路内と連通し、前記フロート室内を
注水管を介して当該ゲートが面する固定式魚道の一区画
の直下流の区画に対応する前記注水槽に連通し、しか
も、各フロート室内を小径の流出口を介して外界と連通
させることを特徴とする。なお、フロート室内と注水槽
との間に弁を介在させても良い。
(作用) 本発明は、上記のように構成することによって、ま
ず、貯水路に配設された各フロート室は、貯水路の水位
がその上端より高い場合には貯水路から水が供給され
る。貯水路内の水位が低下してフロート室内への流入量
が減少すると、フロート室内の水は流出口から徐々に放
出されフロート室内の水位が徐々に低下するとともにフ
ロート室内に浮いているフロートが下降し当然ゲートも
下降して窓孔が開く。しかるに、フロート内には貯水路
内の水が導入されており、その水面は急激に変化する事
がないので、フロートの降下によるフロートの作動力は
減少せず、ゲート上に越流があってもゲートを降下させ
ずに支持することができる貯水路から固定式魚道へ流下
する水流が発生する。これによって徐々に固定式魚道内
の水位が各区画とも上昇し、その水位が当該ゲートの直
下流よりも僅かに上昇すれば注水槽に水が流れ込み、フ
ロート室内への流入が開始され、また、流出口は小径と
されているのでフロート室内の水位が静止し当該ゲート
は下降運動を停止し静止する。したがって、ダムの上流
側と下流側とを連絡する魚道が当該ゲートを介して完成
することとなる。
該フロートの昇降範囲においては貯水路内の水位の変
動に応じてフロートが昇降し、固定式魚道内の流下量は
常にほゞ一定になる。
このようにして最上流のゲートは貯水路内の水位に応
じるが、二番目のゲートの次の注水槽からの流入量につ
いても同様である。したがって、貯水路内の水位が二番
目のゲートのフロート室の上端とほゞ等しくなれば二番
目のゲートが下降して越流が始まるが、この際、最上流
のゲートの注水槽が二番目のゲートの落下水脈中にある
ので一番目のフロート室には水が流入し直ちに一番目の
ゲートは上昇して全閉する。さらに、貯水路内の水位が
下がれば三番目のゲートが開き二番目のゲートが閉じる
ことになる。また、この頃になれば一番目のゲートのフ
ロート室内が空になるが、フロート内も空になってお
り、また水位も下がっているので、したがって一番目の
ゲートからの放水は起こらないので問題はない。
(実施例) 以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明す
る。第4図に示すように河川13に築造したダム14によっ
てその上流側に貯水池15が形成され、ダム14の下流側に
は壁内に穿設した連絡路16を介して貯水路17が連通され
ている。貯水路17は底が深く下流端は行き止まりとさ
れ、連絡路16の途中には遮断扉18が取り付けられてい
る。一方、ダム14の下流の河川13から分岐した、後述す
る隔壁19によって階段状に水位を形成して流れるように
された固定式魚道20が貯水路17の側壁21に沿って並設さ
れている。この貯水路17と固定式魚道20とで並列式魚道
を構成しており、第1図に示す側壁21に穿設された窓孔
21aを介して連通され河川13の上流側と下流側が連絡さ
れている。
第1、2図に示すように固定式魚道20には適当な間隔
でもって複数の隔壁19が水路を横断するようにして設け
られ、順次、隔壁19の上端は下流方向に向かって一定の
高さで低くされている。各隔壁19の上端の一方の側は切
除されて欠口19aが形成され、それぞれの欠口19aは前後
方向の隔壁19に対し左右交互に配置されている。また、
隔壁19には欠口19aに対し反対側の下端近くに適当な大
きさの潜孔19bが穿たれている。実施例においては、固
定式魚道20の巾は2.0mで各区画毎の高低差は0.30mと
し、隔壁19の上端の三分の一の巾の欠口19aの部分は他
の部分よりも0.20m上端が低くされ、欠口19aの部分の越
流水深は、0.30mになるようにされている。
窓孔21aは隔壁19で区切られた各区画の上流端に配さ
れ、窓孔21aを挾んだ貯水路17側側壁面には一対のガイ
ドレール22が上下方向に固着されている。この一対のガ
イドレール22に沿って下部に所定の容積を有する中空体
23を連結したゲート24が昇降自在に設けられており、ゲ
ート24の縦桁24aにその軸を固着した上下左右4個の車
輪25がガイドレール22に緩く嵌合されている。また、窓
孔21aの外周に合わせ環状の水密ゴム26がゲート24に固
着され、ガイドレール22の上・下部にストッパ27が取付
けられている。
実施例においてはゲート24上の越流水深が約0.25mと
なるように別途の水深計算により窓孔21aの巾を約1.25m
とした。また、貯水路18と固定式魚道20の水位差はなる
べく小さくする事が望ましいが、余りに小さくすると窓
孔21aの下端が著しく低くなり、その結果、ゲート24の
高さが著しく高くなって不経済となる。したがって、窓
孔21aの下端の高さは最も上流のゲート24について固定
式魚道の水位をE.L. 10.00mとしたとき、ゲート24から
流れる貯水路17の必要最低水位をE.L. 10.05mとして水
理計算によって求めるとE.L. 9.65mとなる。(E.L.:エ
レベーションレベル)また、各々のゲート24を固定式魚
道20の各区画毎の高低差0.30m分だけの水位変化に対応
させるようにするので最上流のゲート24が開くべき時の
貯水路17の水位はE.L. 10.35mとなり、窓孔21aの上端の
高さは水面上0.60mの余裕を見込んでE.L. 10.95mとな
る。なお、ゲート24閉鎖時のゲート24上端の高さは窓孔
21aの上端より0.10m高くE.L. 11.05mにされ、ゲート24
の巾は窓孔21aのそれよりも0.10m大きく1.35mにされて
いる。
次にゲート24を作動させる構成について説明する。ゲ
ート24の両側にはフロート28を浮かべたフロート室29が
設けられ、その上端の高さは当該ゲート24が開くべき時
の貯水路17内の水位と等しくされ、実施例では最上流の
ゲート24に付設されたものについてはE.L 10.35mとされ
ている。ゲート24とその両側のフロート28とは第3図に
示すように連結装置30、すなわち、ゲート24の上部に固
着したゲート用支柱31とフロート28の上部に固着したフ
ロート用支柱32との上方に固着された水平な通し桁33に
よって連結されている、 次にフロート28についての説明を続ける。それぞれの
フロート28の下端には導水管34の一端か接続されその他
端はフロート室29を貫通し貯水路17内の水中に突出し
て、フロート28内が貯水路17と連通されている。フロー
ト室29内にある導水管34の途中の部分は可撓性を有しそ
の長さはフロート28の連動に追随し得るように十分に長
くされている。したがって、フロート28の上端には小径
の孔28aが開けられている。そして、両側のフロート室2
9内はその下部を通水管35によって連通され、さらに通
水管35は鉛直に配置した鉛直管36の中間部に接続されて
いる。鉛直管36には通水管35との接続箇所より上部に上
部切替弁37が配設され注水管38を介して次の下流側の窓
孔21a内の下部に設置した上部開口の注水槽39と連通さ
れている。一方、鉛直管36の接続箇所より下部には下部
切替弁40が配設され小径の流出口41を介して外界への排
水が可能な最寄りの位置に開口した排水管42に接続され
ている。この注水槽39の周長は流出口41の断面積に比し
て十分に大きくされその上端の高さは固定式魚道20内の
各区画の水面よりも僅かに低くされている。
前述したように、最上流の固定式魚道20の水面がE.L.
10.00mの場合の最上流のゲート24を例にして各部に数
値を代入して説明すると、最上流のゲート24の中空体23
の容積はフロート28内の水位が貯水路17の水の導入によ
ってこのゲート24が作動し始める水位、すなわちE.L. 1
0.35mでフロート室29内の水位が三番目の区画の水位、
すなわちE.L. 9.40mの時に均衡するように定められてい
る。また、フロート28の水平断面積はフロート28内の水
位が上記の状態、すなわち水位がE.L. 10.35mでフロー
ト室29内の水位が二番目の区画の水位、すなわちE.L 9.
70mであればゲート24が上昇し四番目の区画の水位、す
なわちE.L. 9.10mであればゲート24が下降するように十
分大きくされ、また、フロート28の下端の高さもゲート
24が全閉した状態において四番目の区画の水位E.L. 9.1
0mになるようにされている。さらに、上記のゲート24の
中空体23の上端の高さは、ゲート24が全閉した状態にお
いて三番目のゲート24が働き始めるときの貯水路17の水
位、すなわちE.L. 9.75mが基準となり、注意深く設計す
れこれよりも若干高くする事が出来るが、本実施例にお
いては説明の便宜上、正しくE.L. 9.75mとされている。
上記の意味については作用の項で詳しく説明をする。
次に、上部切替弁37および下部切替弁40を作動させる
弁切替装置43の構成について説明する。鉛直管36の近
傍、すなわちその上端に支持部材44を取り付け、支持部
材44の上部に主軸45を介して略T字状の三又アーム46が
回動自在に取り付けられている。三又アーム46の各アー
ムは左・右方と上方に延び、右方アーム46aは端部に水
平カウンターウエイト47が装着され上方アーム46bには
鉛直カウンターウエイト48が装着されている。左方アー
ム46cの左端には鉛直バー49がピン結合され鉛直バー49
の中間部に弁切替フロート50が装着されている。鉛直バ
ー49の下方にはそれぞれ上部切替弁37と下部切替弁40の
ハンドル51がピン結合されている。弁切替フロート50の
下端の高さはこれが上昇していて上部切替弁37等が全閉
している状態において、当該ゲート24が働き始めるべき
時の貯水路の水位、すなわちE.L. 10.35m以上とされて
いる。また、弁切替フロート50の上端の高さはこれが下
降し上部切替弁37等が全開した状態において、その直上
流のゲート24が働き始める時の水位を等しくされてい
る。したがって、最上流の弁切替フロート50については
制限はないが二番目以下のものと高さを等しくすればこ
れが下降した状態において上端の高さはE.L. 10.65mと
なる。また、水平カウンターウエイト47の重さと位置は
鉛直カウンターウエイト48が主軸45の直上にあり弁切替
フロート50の下半分が水没した状態において全体が均衡
するようにされている。切替弁フロート50の水平断面積
については後に詳述する。
次に鉛直カウンターウエイト48の構成について説明す
る。鉛直カウンターウエイト48の重さと位置は、次の
(1)式によって決定されている。
W・Rw=Rf 2・A・ρ ………(1) 但し、 W :鉛直カウンターウエイト48の重量 Rw:主軸45から鉛直カウンターウエイト48の重心ま
での距離 Rf:主軸45から鉛直バー49のピン締結点までの距離 A :弁切替フロート50の平面積 ρ:水の単位体積重量 次に、弁切替フロート50の平面積について式を利用し
て詳述する。弁が閉じ始める時の力の釣合いの条件か
ら、次の(2)式が成り立つ。
但し、 TB:切替弁2個の抵抗トルク αO:三又アーム44の最大傾斜角 h:弁切替フロート48の高さ 上記の弁切替フロート50の上端と下端の構成によって (2)式と(3)式から弁切替フロート50の平面積を
求めると次式のとおりであるが、十分な余裕が与えられ
る事は勿論である。
次に作用を説明する。
上記の構成の説明中で弁切替装置43の構成の説明にお
いては、上記切替弁37が開く場合を例にして説明した
が、開閉の作用は上下対象であるので貯水路17内の水位
が上昇し直上流のフロート室29内の上端と高さを等しく
された弁切替フロート50の上端が水没する以前に必ず上
部切替弁37は閉じる。したがって、上部切替弁37と下部
切替弁40とが開いた状態で貯水路17内の水がフロート室
29上端を越流してそれぞれ注水槽39と流出口41から固定
式魚道20と排水管42に流出するのは作動中のゲート24と
その直下流のゲート24との二つだけであり、その下流の
ゲート24については付設されている上部切替弁37と下部
切替弁40とはいずれも全閉されている。
したがって、最上流のゲート24についても貯水路17内
の水位が高い場合には切替弁37,40が閉じているが、上
記の構成において説明したように弁切替フロート50が装
着されているので、貯水路17内の水位が低下しフロート
室29の上端に近づけば、弁切替フロート50が一気に下降
するかどうかは別にして下降し始める事は勿論である。
次に、鉛直カウンターウエイト48の作用について説明
する。説明の便宜上、鉛直カウンターウエイト48が主軸
45の直上にある状態を基準にして考える事とする。この
状態においては鉛直カウンターウエイト48の作用は全く
なく、弁切替フロート50の露出部分の重量による作動ト
ルクと上部切替弁37等の抵抗トルクは釣合っているが、
三又アーム46がαだけ回転すれば弁切替フロート50の水
没部分が増加しその作動トルクが減少する。
その値は、 ΔTf=Rf sinα・A・ρ・Rf cosα =Rf 2・A・ρ・sinα・cosα ……(5) である。
また、鉛直カウンターウエイト48は運動の前半におい
ては抵抗トルクとして作用し、一方、後半においては作
動トルクとして作用する。その増加値は(1)式が成立
しているので ΔTw=W・Rw sinα=Rf 2・A・ρ sinα …(6) (5)式と(6)式を比較すれば ΔTw−ΔTf=Rf 2・A・ρ sinα(1−cosα)>0 ……(7) であって、作動トルクの増加値の方が減少値よりも大き
い。したがって、少なくとも運動の後半は一気に終了す
る。
次に弁切替装置43の動作前半の作用について説明す
る。上部・下部切替弁37,40が全閉している状態から、
鉛直カウンターウエイト48が主軸45上方に来るまでの間
の切替弁フロート50の作動トルクの減少値も(6)式で
表わされ、鉛直カウンターウエイト48による抵抗トルク
の減少値も(6)式で表わされる。ただし切替弁の回動
角は普通90゜であるので両式ともにα=45゜である。し
たがって、運動の前半においても抵抗トルクの減少値の
方が作動トルクの減少値よりも大きいので運動は一気に
進行する。また、上記の鉛直カウンターウエイト48の作
用以外にも、弁切替装置43が一旦動き始めると静止摩擦
抵抗から動摩擦抵抗に変り摩擦抵抗力が激減する事も弁
切替装置43の開閉運動が一気に進行する要素となってい
る。したがって、切替弁37等が半開状態の時にゴミが滞
留して切替弁37等に噛み込まれる危険性は極めて少な
い。
以上のような作用によって貯水路17内の水位が低下し
最上流のゲート24が開くべき水位E.L. 10.35mに近づく
と、弁切替フロート50が下降して上部切替弁37と下部切
替弁40が開いてフロート室29内の水が注水槽39と排水管
42から排出され始めるが、貯水路17の水位がフロート室
29の上端よりも高い間はフロート室29内の水位は下ら
ず、したがって、最上流のゲート24も未だ全閉したまゝ
である。
次に、貯水路17内の水位がフロート室29の上端とほゞ
等しくなると、フロート室29内の水は排水管42から排出
されるだけで水の補給がなくフロート室29内の水位は低
下する。一方、フロート28内の水位は殆ど変化しないの
でフロート28とゲート24が一体となって下降し、この最
上流のゲート24の上端から固定式魚道17へ放水が開始さ
れる。このとき、一時的にゲート24は下り過ぎるが固定
式魚道17の第二の区画の水位が所定の高さに達すると第
二の区画の注水槽39に越流水が流れ込み、これにより当
該フロート室29内の水位が上昇し当該ゲート24が若干上
昇して静止し均衡状態が保たれる。
この状態からさらに貯水路17内の水位が低下すればフ
ロート28内の水位も低下するのでフロート28の上昇方向
の作動力は増加する。この作動力に抗してゲート24が水
位の低下に追随して下降するためにはフロート室29内の
水位はより低くなければならないが、ゲート24が下降せ
ずその放水量が不足すればフロート室29内の水位が低下
してゲート24が下降し放水量は回復する。また、窓孔21
aは余裕をもって巾が大きく下端が低くされているので
放水量が所定よりも少なくなる事はない。
このようにして貯水路17内の水位がさらに低下すれば
二番目のゲート24が開かれ、その注水槽39と流出口41か
ら排水が始まる。さらに貯水路17内の水位が低下し、実
施例で云えばE.L. 10.05mになると、上流から二番目の
ゲート24のフロート室29内への水の供給が停止されその
水位が低下する。フロート室29内の水位が注水槽39の上
端よりも低くなれば若干は注水槽39からの越流水が補給
されるが、最上流のフロート28内の水位が低いのでその
注水槽39上の越流水深は小さく、したがって、二番目の
注水槽39上の越流水深も同じように低いので二番目のゲ
ート24のフロート室29内の水位も非常に低くなる。した
がって、二番目のゲート24が下降してその上端から放水
が開始されるが、一番目のゲート24の注水槽39が二番目
のゲート24の落下水脈中に設けられているので、一番目
のゲート24のフロート室29内の水位は固定式魚道20の二
番目の区画の水位E.L. 9.70mとほゞ等しく一番目のゲー
ト24が閉じるべき水位になり、しかもフロート28内の水
位は最上流のゲート24が開くべき水位E.L. 10.35mより
も低いE.L. 10.05mとなっているので最上流のゲート24
には開き始めた時の二倍の閉方向の作動力が働く。した
がって、二番目のゲート24からの放水が開始されると同
時に最上流のゲート24は閉動作を開始し、一番目と二番
目のゲート24が同時に開いているのは極めて短時間であ
るので魚が迷う事が少ない。
次に三番目のゲート24が開き始めた後における一番目
のゲート24の挙動について説明する。まず、一番目の窓
口21aの下端の高さはE.L. 9.65mであり、三番目のゲー
ト24が開き始める時の貯水路17内の水位E.L. 9.75mより
も低い。三番目のゲート24が放水を始めると二番目のゲ
ート24が全閉する事は上記の説明からして勿論である。
したがって、三番目のゲート24が開き始めると一番目の
ゲート24については注水槽39からの流入が停止されフロ
ート室29は空になるが、この状態は力学的にはフロート
室29内の水位がフロート28の下端と等しい高さE.L. 9.1
0mであるのと変りはない。一方、フロート28内の水位は
三番目のゲート24が開き始めたのであるからE.L. 9.75m
である。したがって、フロート28の内外の水位差は0.65
mであるが上記の構成の項において説明したように内外
水位差0.65mと云う数字は、(10.35−9.70m)=0.65mで
あって、ゲート24が閉じるべき時の水位差である。勿
論、上記の説明は一番目のゲート24が全閉状態である事
を前提として成立するものであり、この前提は、ゲート
24の中空体23の上端がE.L. 9.75mにされ、その直前まで
未だ中空体23の上端は一部分たりとも空中に露出してお
らず、またフロート室29内は充満されているので充足さ
れている。その後さらに水位が低下して中空体23の上部
が露出すれば最上流のゲート24は徐々に下降するが、放
水が再開される程に下降する事はあり得ない。
以上で水位が低下する場合における作用の説明を終わ
り、次な水位が上昇する場合について説明する。
貯水路17内の水位が上昇すれば、勿論、ゲート24上か
らの放水量が増加して固定式魚道20内の水位が上昇し、
目下作動中のゲート24の注水槽39上の越流水深が増加す
る。越流水は注水管38を介して連通する上流側のフロー
ト室29内に流入しその水位を上昇させるので、このフロ
ート28と連結したゲート24が上昇して放水量が少なくな
り固定式魚道20内の水位はほゞ一定に抑えられる。
さらに、水位が上昇し作動中のゲート24のフロート室
29の上端よりも高くなれば、フロート室29内が水で充満
されるので今まで開いていたゲート24は上昇を始め、そ
れにともなって固定式魚道20内の水位が低下する。そし
て、このゲート24の前位置に設置された注水槽39内への
落下水脈もなくなるのでその上流のゲート24と連結され
たフロート28を収納したフロート室29への補給が止ま
り、放水が停止された上昇中のゲート24の直上流のゲー
ト24がフロート28に連動して下降し放水が開始される。
上記の構成の説明において述べたように、一つのゲー
ト24の弁切替フロート50の上端は切替弁37等が開いた状
態において、そのゲート24の上流のもう一つの上流のゲ
ート24が開き始める時の水位、すなわち水位上昇中に直
せば閉じ始める時の水位以下とされているので、フロー
ト室29内の水が流出口41から排出され、また、注水槽39
からフロート室29に流入するのは目下作動中のゲート24
とその直下流のゲート24だけである。したがって、ダム
の水が無駄に放水される事が少なくてすむ。
このようにして貯水路17内の水位が上昇すれば次々と
下流のゲート24が閉じて上流のゲート24が開いて行くこ
とができる。なお、水位が上昇の途中において下降過程
に移っても何等支障がない事は上記の構成と作用からし
て云うまでもない。
また、上位の装置において予想される唯一の故障は、
流出口41がゴミによって閉塞される事であるが、その場
合には遮断扉18により流水を遮断して貯水路17内の水を
排出しゴミを除去する事ができ、また、そのような故障
が発生してもゲート24が全閉して魚道の機能が一時的に
失われるだけであって、溢水等の重大な事故につながる
ことはない。
(発明の効果) 本発明は以上のように構成したものであるので、フロ
ートによってゲートを自動的に次々に作動し開閉するこ
とができるので、労力を要せず何時でも作動状態にあ
り、またその構造も簡単であり、工費を節減し得る事は
勿論、洪水等にあっては全ゲートが自動的に閉鎖するの
で何よりも安全である。また、上流の水位に合わせて貯
水路に設けたゲートがフロートによって下降し、貯水路
と固定式魚道とを自動的に設定した越流水深で連通させ
魚道の流況を常に最適の状態に保持する事ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による実施例の並列式魚道のゲートの中
心において切断した貯水路と固定式魚道の断面図、第2
図は実施例の並列式魚道の要部平面図、第3図は実施例
における連続したゲートの近接部分を通路側から見た側
面図、第4図は実施例におけるダムに設置した並列魚道
の平面図、第5図は従来の転倒堰を利用した魚道の側断
面図、第6図は従来の昇降式ゲートを利用した魚道の側
断面図、第7図は従来の並列魚道の側断面図、第8図は
第7図に示す並列魚道の横断断面図である。 13……河川 14……ダム 17……貯水路 19……隔壁 20……固定式魚道 21……側壁 21a……窓孔 24……ゲート 28……フロート 29……フロート室 34……導水管 38……注水管 39……注水槽 41……流出口

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ダム、堰等の上流側河川に下流端を閉じた
    貯水路を付設し、その下流側河川から分岐させ隔壁を順
    次段階状に配設した固定式魚道を、前記貯水路の側壁に
    沿って並列に設置し、前記側壁に隔壁で区切られた区画
    毎に窓孔を穿設するとともに該窓孔にゲートを設けた並
    列式魚道において、 前記ゲートを貯水路側に装着して各窓孔の下部内壁上に
    上部を開口した注水槽を設置し、前記貯水路に前記各ゲ
    ートと連動するフロートを備えたフロート室を配置し、
    該フロート室の壁の上端を当該ゲートが開き始めるべき
    時の水位と等しくし、前記フロート内を可撓性の導水管
    を介して貯水路内と連通し、前記フロート室内を注水管
    を介して当該ゲートが面する固定式魚道の一区画の直下
    流の区画に対応する前記注水槽に連通し、しかも、各フ
    ロート室内を小径の流出口を介して外界と連通させたこ
    とを特徴とする並列式魚道装置。
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