JP2808216B2 - 超音波洗浄槽内の音場評価方法 - Google Patents

超音波洗浄槽内の音場評価方法

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JP2808216B2
JP2808216B2 JP4242735A JP24273592A JP2808216B2 JP 2808216 B2 JP2808216 B2 JP 2808216B2 JP 4242735 A JP4242735 A JP 4242735A JP 24273592 A JP24273592 A JP 24273592A JP 2808216 B2 JP2808216 B2 JP 2808216B2
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秀次郎 林
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Kaijo Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属表面へのめっきや
塗装工程での脱脂等の前処理、半導体製造における洗浄
処理、あるいは医薬品や食器等の洗浄などに利用される
超音波洗浄機において、洗浄槽内の音場の分布を評価す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の超音波洗浄機は、基本的には図
4に示すように、洗浄槽1と、この洗浄槽1の底壁1a
下面に定着され図示しない発振部により駆動される超音
波振動子2と、洗浄槽1を支持する基台3と、洗浄槽1
の底部に開設されたドレイン4とを備えている。洗浄槽
1内に注入した洗浄液5中に洗浄対象物を浸し、超音波
振動子2を励振させて洗浄液5に超音波の音場を形成す
ることにより、洗浄対象物Wの表面に付着した油脂等の
汚染物が剥離除去される。
【0003】洗浄液5内に放射される超音波の音場によ
る洗浄力は、次のような作用によるものと考えられる。
すなわち、洗浄槽1内における洗浄液5は、超音波振動
子2から放射される超音波の半波長もしくはその整数倍
に相当する液位Hまで注入した場合、この洗浄液5に放
射されて液面5aと底壁1aとの間で反射を繰り返す超
音波の位相が互いに一致すると定在波となり、洗浄液5
には、定在波の腹に相当する部分で変位が最大、節に相
当する部分で音圧の変化が最大となるような音場が分布
する。
【0004】したがって、音波の節となる部分では媒質
(洗浄液)の変位は零であるが、波の傾きが正となった
部分では媒質が膨張され、音圧が負となるので、媒質が
引き裂かれて空洞もしくは瞬間的な沸騰現象による気泡
が生じ(キャビテーションという)、次の半周期で波の
傾きが負になることによって、音圧が負から正へ変化す
る瞬間に空洞あるいは気泡が消滅し、このときに、洗浄
対象物Wの表面の汚染物質に対する強烈な破壊作用や剥
離作用を生じる。また、音波の腹となる部分では、媒質
の音圧は殆ど変化しないが、振動変位が大きいことか
ら、これによる摩擦や攪拌現象も洗浄力として有効に作
用すると考えられる。そしてこのような音場の強さや分
布は、液位H及び周波数によって異なることから、洗浄
を効率的に行うには、音場の分布を予め評価することが
必要になる。
【0005】従来、洗浄槽1内での音場の分布パターン
を評価する方法としては、アルミ箔穿孔法によるものが
一般的に行われている。この方法は、図5に示すよう
に、ワイヤなどの方形枠6に厚さが10乃至20μm程
度の薄いアルミ箔7を張り付けたものを、洗浄槽1内に
充填した液体Lに浸漬し、この液体Lに超音波を放射す
ると、振動エネルギーの大きな部分ではアルミニウム箔
7が破断して穿孔7aが形成されるので、この穿孔7a
の分布パターンから音場のエネルギー分布を把握するこ
とができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
アルミ箔穿孔法によると、以下に列挙するような問題が
ある。 (1) アルミ箔7には、音場エネルギーにより穿孔7aと
共に多数の皺7bも同時に形成され、また、薄い箔の取
扱いが困難なため評価作業中に音場によらない多数の皺
が発生する。このアルミ箔を直接顧客に見せる場合の不
便を避けるため、これを複写機等で複写したものを資料
とする場合が多いが、この場合皺7bも穿孔7aと同様
に複写されてしまうことになり、この複写後の資料から
的確な評価を行うことが困難である。
【0007】(2) 穿孔7aの分布パターンは二次元的で
あるため、三次元的な洗浄対象物を実際に浸した場合の
洗浄パターンを的確に把握することが困難である。 (3) アルミ箔7の穿孔7aの形態が必ずしも媒質の振動
変位の大きさに対応したものとならず、また、穿孔7a
による再現性が大まかであることから、音場の強弱を正
確に補足しにくい。 (4) 複数のアルミ箔7をその厚さ方向に並べて浸すこと
により音場の分布を三次元的に評価しても、洗浄対象の
物体によって実際の音場が変化してしまうため、アルミ
ニウム箔7による評価の有効性が損なわれる。 (5) 振動エネルギーによって破断されたアルミ箔破片
は、その大きさが数十μm乃至数百μmと大きいため
に、音場内に浮遊することにより音場を乱し、評価結果
に悪影響を与える。
【0008】本発明は、上記のような問題に鑑みてなさ
れたもので、その課題とするところは、従来のアルミ箔
による音場の平面的な評価方法から脱却し、音場の分布
を容易かつ的確に把握することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記技術的課題を解決す
る本発明に係る超音波洗浄槽内の音場評価方法によれ
ば、表面に顔料などを含む着色料の付着層を形成した試
料が評価対象の洗浄槽内の液体中に浸漬され、この着色
料の侵食によって得られる色彩パターンに基づき音場の
評価が行われる。
【0010】本発明の一実施例によれば、着色料の付着
層が異なる色彩の着色料が多層に付着されたものから成
り、また、試料としては、薄板あるいは三次元の立体が
用いられる。
【0011】
【作用】洗浄槽内の液体中に超音波が放射されることに
よって、この液体には、超音波の半周期における正圧
(圧縮)と、次の半周期における負圧(膨張)が繰り返
し生じ、このような音圧の変化は、定在波の腹に相当す
る部分で零であり、節に相当する部分において最も顕著
である。このため、表面に顔料などを含む着色料を付着
した試料を洗浄槽内の液体中に浸漬すると、音圧変化の
大きい部分におけるキャビテーション作用によって、試
料表面に付着した着色料が微小破壊あるいは剥離を受け
て顕著に侵食され、その内側の色彩が侵食部に露呈する
ので、音場の分布に対応した色彩パターンが形成され
る。
【0012】この場合、超音波の音圧変化が大きい部分
ほど侵食作用が顕著となるため、一例として試料の表面
に異なる色彩の着色料を多層に付着しておくことによ
り、着色料が内層部まで著しく侵食された部分とそうで
ない部分とでは、侵食部に現れる色彩が異なる。したが
って、この侵食部の分布及びその色彩の分布から、音場
の強弱パターンを的確に視覚化することができる。
【0013】また、試料表面の着色料を液体に放射され
た超音波によって侵食する機構は、実際の洗浄対象物の
表面に付着した油脂等の汚染物を洗浄液内で超音波の放
射によって除去する場合と全く同一である。したがっ
て、薄板の表面に着色料を形成した試料を用いれば、音
場分布の二次元的なパターンを得ることができ、立体、
好ましくは洗浄対象物と同一物体の表面に着色料を付着
した試料を用いれば、実際に洗浄を行った場合と合致し
た洗浄パターンが得られる。
【0014】
【実施例】図1は、本発明に係る超音波洗浄槽の音場評
価方法の一実施例を示す概略的な斜視図であり、超音波
洗浄機10の上部の洗浄槽11内に適当な溶剤を混合し
た水溶液12を充填し、この水溶液12に薄板状の試料
13を垂直に立てた状態で浸漬してある。試料13は、
図2にその断面を示すように、OHPフィルムからなる
本体13aの表面に、この本体13aとは明瞭に対比可
能な色彩を有する顔料を適当なペーストに混合した着色
料からなる付着層13bを形成したものである。そし
て、好ましくはこの付着層13bは、互いに異なる色彩
の着色料13b1 〜13bn を蒸着、噴霧、浸漬あるい
は塗布等の手段によって、均一な膜厚で複数層に付着さ
れる。
【0015】この状態で、洗浄槽11の底壁下面に固定
された図示しない超音波振動子を駆動させ、洗浄槽11
内の水溶液12に超音波を放射すると、この水溶液12
に浸漬された試料13の表面の着色料付着層13bに
は、音場の強弱分布に対応した色彩パターンが経時的に
顕在化する。これは、超音波の伝播によって水溶液12
に音場が生じ、先に述べたような音波の節となる部分で
のキャビテーションの発生及び消滅によって、前記付着
層13bがその表層側から微小破壊あるいは剥離作用を
受けて徐々に侵食Aされるからである。したがって、音
圧変化が小さい部分では侵食が零又はきわめて少ないた
め、試料13の表面が付着層13bの最も表層の着色料
13b1 の色彩を示し、音圧変化が大きい部分ほど侵食
Aの進行が顕著になるため、付着層13bが内層まで侵
食されて、内層の着色料の色彩が露呈される。
【0016】なお、着色料13としては、本発明者が種
々の塗料等を用いて実験を重ねたところ、とくに毛髪着
色料が適していることが判明した。
【0017】図3は、本発明による他の実施例を示すも
ので、試料14として、超音波洗浄機による実際の洗浄
対象物と同一の立体物、例えばカップ等の容器14aの
表面全体に、上述と同様に、異なる色彩の毛髪着色料を
多層塗布したものを用いている。この方法によると、色
彩パターンが三次元的に形成されるので、音場の強弱分
布を三次元的に把握できるばかりでなく、実際にこの容
器14aの洗浄を行った場合と合致した洗浄パターンが
得られるので、その評価をきわめて適正に行うことがで
きる。
【0018】なお、このような底の深い容器14aの場
合、通常の手段では洗浄しにくい底部内側面が、超音波
洗浄器によって良好に洗浄されるか否かを評価可能であ
ることが期待されるが、実験の結果、容器14aの底部
内側面にも顕著な洗浄パターンが形成されることが確認
された。
【0019】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によると、音圧の正負の変化が大きい音波の節の部分
で、試料表面に付着した着色料が微小破壊あるいは剥離
を受けて侵食され、その内側の色彩が侵食部に露呈する
ので、音場の分布に対応した色彩パターンが形成され、
試料の表面には異なる色彩の着色料を複数層に付着して
おくことによって、侵食部の色彩から、音場の強弱を的
確に評価することができる。また、試料表面に色彩パタ
ーンが形成される機構は、実際の洗浄対象物の表面に付
着した汚染物を洗浄液内で超音波の放射によって除去す
る場合と全く同一であるため、この色彩パターンの形成
によって音場が乱されることもなく、実際に洗浄を行っ
た場合の洗浄パターンを正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波洗浄槽内の音場評価方法の
一実施例を示す概略的な斜視図である。
【図2】上記実施例で用いられる試料の断面図である。
【図3】本発明に係る超音波洗浄槽内の音場評価方法の
他の実施例を示す概略的な斜視図である。
【図4】超音波洗浄機の概略構造を示す断面図である。
【図5】従来の超音波洗浄槽内の音場評価方法の一例を
示す概略的な斜視図である。
【符号の説明】
10 超音波洗浄機 11 洗浄槽 12 水溶液 13,14 試料 13a 試料本体 13b 着色料付着層 13b1 〜13bn 着色料
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−135130(JP,A) 特開 昭55−159121(JP,A) 特開 昭61−128127(JP,A) 特開 平3−282332(JP,A) 特公 昭44−30842(JP,B1) 特公 昭33−7050(JP,B1) 特公 昭39−21978(JP,B1) 特公 昭60−45809(JP,B2) 実公 昭63−35382(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B08B 3/00 - 3/14 G01H 3/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に異なる色彩の着色料の付着層を複数
    層にわたって形成した試料を、評価対象の超音波の音場
    が形成されている洗浄槽内の液体中に浸漬することによ
    り前記着色料の侵食による色彩パターンを得、この色彩
    パターンに基づき前記超音波洗浄槽内の音場を評価する
    ことを特徴とする超音波洗浄槽内の音場評価方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記着色料は、前記試料の表面への噴霧、浸漬又は塗布
    によって形成される ことを特徴とする超音波洗浄槽内の
    音場評価方法。
  3. 【請求項3】請求項1において、 前記試料は、薄板であることを特徴とする超音波洗浄槽
    内の音場評価方法。
  4. 【請求項4】請求項1において、 前記試料は、三次元の立体であることを特徴とする超音
    波洗浄槽の音場評価方法。
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