JP2806265B2

JP2806265B2 - ドラム

Info

Publication number: JP2806265B2
Application number: JP6139986A
Authority: JP
Inventors: 順治藤井
Original assignee: Yamaha Corp
Current assignee: Yamaha Corp
Priority date: 1994-06-22
Filing date: 1994-06-22
Publication date: 1998-09-30
Anticipated expiration: 2013-09-30
Also published as: JPH086547A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、バスドラム、スネア
ドラム、マーチングドラム等に適用して好適なドラムに
関する。

【０００２】

【従来の技術】バスドラム、スネアドラム、マーチング
ドラム等のドラムは、図３に示すように木材、ＦＲＰ、
金属等で円筒状に形成された胴本体１の両端開口部に天
然皮革、樹脂製フィルム（例：ポリエステル樹脂、ポリ
カーボネート樹脂等）等からなるドラムヘッド２をヘッ
ド支持緊張手段３によってそれぞれ一様な張力で支持緊
張し、これらヘッド間に密閉された空気柱を振動伝達媒
体として作用させることによりドラム音を発生させるも
ので、一方のドラムヘッドを打撃すると空気柱がその振
動を他方のドラムヘッドに伝達し、これによって他方の
ドラムヘッドが振動を起こすと、この振動を空気柱が一
方のドラムヘッドに伝えるという具合に両方のドラムヘ
ッドに繰り返し振動を起こさせるよう構成されている。
このため、胴本体１としては形状を安定に維持し気候条
件、ドラムヘッド２の張力等によって変形せず、調音の
狂いが少ないこと、自己振動または自己吸収を起こさな
いこと等が要求される。ヘッド支持緊張手段３として
は、一般にドラムヘッド２の周縁部を保持し、胴本体１
の外周面に摺動自在に嵌合されるヘッド枠４（図１参
照）と、同じく胴本体１の外周面に嵌合されヘッド枠４
を押圧する締め枠５と、胴本体１の外周面に固定された
ラグ６と締め枠５を連結するボルト７等で構成されてお
り、このボルト７の回転操作によって締め枠５を軸線方
向に移動させると、締め枠５のヘッド枠４に対する押圧
力が変化し、これによってドラムヘッド２の張力、言い
換えればドラムの音色が調節される（例：実公昭５７−
３４５５１号公報等）。さらに、前記胴本体１の周面に
は内外を連通させるベントホール（空気抜き孔）８が形
成されており、これによって音色の向上およびドラムヘ
ッドの破損防止を図っている。すなわち、もし胴本体１
に孔が無ければ、打撃時の胴内の空気圧の増加が急激す
ぎて、ドラムヘッド２の変位によって生じる弾性波とド
ラムヘッド下面で反射した弾性波が強く干渉して音量を
減じてしまう。そのため、このベントホール８によって
胴内の空気圧が急激に増加することを防ぎ、弾性波の干
渉を弱め音量を確保した上で派生共鳴音を取るようにし
ている。また、特にドラムヘッドを弱く叩く弱奏のとき
には音色のくもりをはらし、強く叩く強奏時にはドラム
ヘッドの破損を防止する役目をも果たしている。なお、
図３はスネアドラムの例を示した。

【０００３】ベントホール８を有するドラムのドラムヘ
ッド２を打撃すると、非打撃時のドラムヘッド位置より
も胴内側位置を中心としてドラムヘッド２が振動する。
これは、打撃によりドラムヘッド２が胴内側に変位しベ
ントホール８から空気が外部に排出されて、見かけ上の
胴容積が減少した状態、すなわち、胴内の空気圧が大気
圧以下の状態を基準として振動するからである。しか
し、この振動状態は安定な状態ではなく、振動エネルギ
の損失が大きいので速く振動が減衰する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記したようにこの種
のドラムにおいては、胴本体１内の内外を連通させるベ
ントホールによって胴本体内の空気を外部に逃がすこと
により、音の切れの良さを得ている。しかしながら、従
来のベントホール８はいずれも常時開放型のものばかり
で、双方向、すなわち内から外および外から内方向の空
気の流れを容認しているため、不安定な振動状態からエ
ネルギ損失の小さい安定な振動状態、（ドラムヘッド２
が非打撃時のドラムヘッド位置を中心として振動する状
態）に比較的短い時間で移行するので、振動の減衰が十
分に速くはなかった。

【０００５】したがって、この発明は上記したような従
来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすると
ころは、空気の流れを内から外方向のみとし、外から内
方向への流れを阻止することにより、より一層切れの良
いドラム音を得ることができるようにしたドラムを提供
することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項１に記載の発明は、周面にベントホールを有
する胴本体の各開口端面にドラムヘッドが張設されたド
ラムにおいて、前記ベントホールに、空気の流れをドラ
ム内側から外側方向のみに制限する弁装置を設けたこと
を特徴とする。請求項２に記載の発明は、請求項１に記
載の発明において、弁装置は、通常ベントホールを閉鎖
する開閉自在な弁体と、この弁体を閉方向に付勢する付
勢手段とを備えていることを特徴とする。

【０００７】

【作用】この発明において、弁装置は通常弁本体によっ
てベントホールを閉鎖しており、内側から外側方向への
空気の流れのみを容認し、外側から内側方向への流れを
阻止する。このため、ドラムヘッドの振動に伴い内から
外へ空気が抜けても外から内方向への空気の流れは生じ
ず、ドラムヘッドの振動をより速く減衰させる。

【０００８】

【実施例】以下、この発明を図面に示す実施例に基づい
て詳細に説明する。図１はこの発明に係るドラムの一実
施例を示す要部断面図、図２は弁装置の正面図である。
なお、図中図３と同一構成部品のものに対しては同一符
号をもって示し、その説明を省略する。これらの図にお
いて、本実施例は胴本体１の外周面にベントホール８を
開閉制御する弁装置２０を配設したものである。弁装置
２０は、胴本体１の周面適宜箇所に形成された取付孔２
１に外側から嵌合固定され複数個の止めねじ２２および
ナット２３によって固定される筒状のホール形成部材２
４と、ベントホール８を通常閉鎖する弁本体２５を備
え、ホール形成部材２４の中心孔が胴本体１の内外を連
通させる前記ベントホール８を形成している。また、ホ
ール形成部材２４の外周面中央部にはフランジ部２４Ａ
が一体に突設されており、このフランジ部２４Ａが胴本
体１の外周面に密接され、前記止めねじ２２およびナッ
ト２３によって固定されている。フランジ部２４Ａの表
面には左右一対の軸受部２６Ａ，２６Ｂが対設されてお
り、これら軸受部２６Ａ，２６Ｂ間に前記弁本体２５を
開閉自在に軸支する回動軸２７が横架されている。ま
た、回動軸２７には前記弁本体２５を閉方向に付勢する
付勢手段としての捩りコイルばね２８が装着されてお
り、その一端２８ａが弁本体２５の表面に圧接係止さ
れ、他端２８ｂがフランジ部２４Ａの外周縁に圧接係止
されている。このため、弁本体２５は通常ホール形成部
材２４の前面側開口面に密接されて前記ベントホール８
を閉鎖している。なお、ばね２８としては弁本体２５の
空気の抜けを容易にするため比較的ばね力の弱いものが
使用される。

【０００９】このような構成からなるドラムにおいて、
表側のドラムヘッド２を打撃すると、その振動は胴本体
１内の空気柱を振動させ、その振動が裏面側のドラムヘ
ッド（図示せず）に伝達されてこれを振動させ、またこ
の裏面側ドラムヘッドの振動は同様に胴本体１内の空気
柱を介して表面側ドラムヘッド２に伝達され、これを繰
り返すことで所定の音高のドラム音を得ることができ
る。この時、胴本体１内の空気はドラムヘッドの変位に
伴い、弁本体２５をばね２８に抗して押し開き、一部が
胴本体１の外部に抜け、ドラムヘッドの振動を減衰させ
る。内部の空気が逃げると、弁本体２５はばね２８によ
って再び閉じるため、外部の空気が胴本体１内に流入す
るのを防止する。このように、弁装置２０によって空気
の流れを内から外方向の一方向のみとすると、ドラムヘ
ッド２がエネルギ損失の大きな振動状態を持続できるの
で、ドラムヘッド２の振動の減衰が十分に速くなる。

【００１０】図４に、本発明のドラム、従来のベントホ
ールを有するドラムおよびベントホールのないドラムの
ドラムヘッドの振動状態（ドラムヘッド２の中央部の変
位）を示す。本発明のドラム（ａ）と従来のベントホー
ルを有するドラム（ｂ）は、ドラムヘッドが非打撃時の
ドラムヘッド位置よりも胴内側位置を中心として振動し
ていることが分かる。また、本発明ドラム（ａ）は、従
来のベントホールを有するドラム（ｂ）、ベントホール
のないドラム（ｃ）よりも振動が速く減衰することが分
かる。振動が速く減衰する結果としてドラム音の切れが
よくなる。また、内部の空気を外に逃がすことができる
ため、弱奏時に音色がくもったり、強奏時にドラムヘッ
ドが破損したりすることもない。

【００１１】なお、本実施例は弁本体２５をホール形成
部材２４の外側に配設した場合について説明したが、こ
の発明はこれに何等特定されるものではなく、内側に組
み込むことも可能である。また、弁本体２５を閉方向に
付勢する手段２８として捩りコイルばねを用いたが、引
張りまたは圧縮コイルばねの使用も可能である。さらに
また、ホール形成部材２４は必ずしも必要ではなく、胴
本体１に直接ベントホールを設けてもよい。

【００１２】

【発明の効果】以上説明したようにこの発明に係るドラ
ムは、胴本体のベントホールを通常閉鎖する弁装置を配
設し、胴内から外側方向のみに空気が流れるようにし、
外側から内側方向に対しては空気の流れが生じないよう
にしたので、このような弁装置を備えない従来ドラムに
比べてより一層切れの良いドラム音を得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係るドラムの一実施例を示す要部
断面図である。

【図２】弁装置の正面図である。

【図３】スネアドラムの従来例を示す外観斜視図であ
る。

【図４】（ａ），（ｂ），（ｃ）はドラムヘッドの振
動状態を示す図である。

【符号の説明】

１…胴本体、２…ドラムヘッド、３…ヘッド支持緊張機
構、４…ヘッド枠、５…締め枠、６…ラグ、８…ベント
ホール、２０…弁装置、２４…ホール形成部材、２５…
弁本体、２７…回動軸、２８…捩りコイルばね。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】周面にベントホールを有する胴本体の各
開口端面にドラムヘッドが張設されたドラムにおいて、
前記ベントホールに、空気の流れをドラム内側から外側
方向のみに制限する弁装置を設けたことを特徴とするド
ラム。
【請求項２】請求項１記載のドラムにおいて、弁装置
は、通常ベントホールを閉鎖する開閉自在な弁体と、こ
の弁体を閉方向に付勢する付勢手段とを備えていること
を特徴とするドラム。