JP2800554B2 - ガラス母材の製造方法 - Google Patents

ガラス母材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はガラス微粒子堆積体をV
AD法、OVD法などの気相合成法により製造する方法
で、特に高品質な光ファイバ用のガラス母材の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】気体のガラス原料を燃焼バーナーから噴
出させ、火炎中での加水分解反応によりガラス微粒子を
形成し、回転する出発材の周囲または先端にガラス微粒
子を堆積させることによりガラス母材を製造する方法に
おいて、中心ポート径d〔mm〕、バーナー突き出し長
さL0 〔mm〕、原料流量Q〔cc/min〕に対し
て、 0.4 ≦ (L0 2 /Q) ≦ 0.6 なる限定で行う技術を、本発明者等はすでに特開平1−
201040号公報に提案している。ここで、〔L0
2 /Q〕は原料が中心ポートを出てから母材堆積面に到
達するまでの時間に比例する量であり、この値が小さい
と原料ガスが十分反応する前に堆積面に到達することに
なり、また大きいと生成されたガラス微粒子が拡散して
堆積面への付着効率が悪くなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ガラス微粒子の成長は
ガラス原料が第1火炎形成用ポート先端を飛び出してか
ら堆積面に到達するまでの間に起こるものであるが、従
来の方法では第1火炎形成用ポート先端から燃焼バーナ
ー先端までの距離のみが注目され、バーナー先端から堆
積面までの距離は考慮されていなかった。従って、バー
ナー先端から堆積面までの距離が長い場合には、バーナ
ー先端をガラス原料が通過する時点では未反応でも、そ
の後バーナー先端から堆積面に到達するまでに反応を完
了しガラス微粒子が十分に形成される場合もあり、ま
た、バーナー先端を通過する時点で十分反応している場
合には、堆積面に到達するまでにガラス微粒子が拡散し
て収率が下がることもある。つまり、従来の方法ではバ
ーナー先端から堆積面までの距離を変えた場合に、最適
値が前記の 0.4 ≦ (L0 2 /Q) ≦ 0.6 で指定された範囲からずれることになる、という問題に
気づいた。本発明はこのずれを解消できる燃焼バーナー
の条件を見だすことを課題としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため
の本発明は、気体のガラス原料を燃焼バーナーから噴出
させて火炎中で加水分解することにより形成されるガラ
ス微粒子を回転する出発材の周囲または先端に堆積させ
てガラス母材を製造する方法において、燃焼バーナーと
して、燃料ガスポート、支燃性ガスポートおよび不活性
ガスポートよりなる火炎形成用ポートを3組以上保有
し、各火炎形成用ポートは同心円状に配置され、中心の
火炎形成用ポートを第1火炎形成用ポートとし、中心か
ら外側に向けて第n番目の火炎形成用ポートを第n火炎
形成用ポートとし、第(n+1)火炎形成用ポート先端
と第n火炎形成用ポート先端との段差n 〔mm〕
するとき、第1火炎形成用ポート先端を基準として第
(n+1)火炎形成用ポート先端は、上記ガラス原料の
噴出方向に、第n火炎形成用ポート先端と同じもしくは
遠ざかるように異なる距離にあり、かつΣL n >0であ
るバーナーを使用し、直径d〔mm〕の中心ポートから
ガラス原料を噴出させ、このとき中心ポート流量Q〔c
c/min〕(ただしQは原料ガス流量QS 〔cc/m
in〕と水素ガス流量QH 〔cc/min〕との和であ
る)を、
【数3】 に対して、
【数4】 となるように供給することを特徴とする。本発明におい
ては、第1火炎形成用ポート先端と第2火炎形成用ポー
ト先端との段差L1 〔mm〕が 100 ≦ L1 ≦ 200 を満足する範囲にあることが特に好ましい。
【0005】
【作用】ガラス原料が第1火炎形成用ポート先端を飛び
出してから、その初速を維持したままて堆積面に到達す
る場合にかかる時間を「飛行時間τ」と定義する。中心
ート径d〔mm〕、第1火炎形成用ポート先端から堆積
面までの距離L〔mm〕、中心ポートに流す気体の流量
をQ〔cc/min〕とすると、下記(1)式
【数5】 という関係が成り立つ。
【0006】本発明者等は中心ポートから原料を流した
場合の、飛行時間τと収率(原料投入量に対して実際に
ガラス母材として堆積した割合)の関係について実験を
繰り返した。その結果、飛行時間が0.035〔se
c〕未満の場合にはガラス原料が十分反応する前に堆積
面に到達するため、収率が低下し、堆積面も変形するこ
とから、安定なガラス母材の作製ができないことが判っ
た。また、飛行時間が0.035〔sec〕を越える領
域では、0.035〜0.05〔sec〕においては収
率はほぼ一定、0.05〜0.06〔sec〕において
飛行時間の増加と共に収率が緩やかに低下し、0.06
〔sec〕を越える領域では飛行時間の増加と共に急激
に収率が下がることが判明した。従って効率よくガラス
母材を製造するには、下記(2)式 0.035 ≦ τ ≦ 0.06 (2) の条件を満たす必要がある。(1)式を(2)式に代入
して、Q,L,dの関係に直すと下記(3)式
【数6】 となる。また、特に好ましくはτが0.04以上であ
り、この場合には 0.8 ≦ (Ld2 /Q) ≦ 1.3 となる。N個の火炎形成用ポートを保有するバーナーに
おいて、第(n+1)火炎用ポート先端と第n火炎用ポ
ート先端との段差をLn 、バーナー先端から堆積面まで
の距離をAとすると、第1火炎形成用ポート先端から堆
積面までの距離L〔mm〕は下記(4)式
【数7】 と表すことができる。1段目突き出し長L1 を200m
mより大にした場合、バーナーの1段目突き出し内壁に
スートが付着し安定なガラス母材の製造ができないこと
が実験により確認された。またL1 を100mmより小
にして(3)式の関係を満たす場合、L2 以降の突き出
しを長くする必要があるが、この場合外側火炎形成用ポ
ート(第2,3・・・火炎用ポート)が堆積面から遠く
なり、火炎が堆積面に十分届かなくなるため収率が低下
する。従って、L1 に関しては 100 ≦ L1 ≦ 200 の範囲にあることが特に好ましい。また、第2火炎形成
用ポート先端と第3火炎形成用ポート先端との段差L2
〔mm〕が、 70 ≦ L2 ≦ 200 更に、4組以上の火炎形成用ポートを有するバーナーに
は、第3火炎形成用ポート先端と第4火炎形成用ポート
先端との段差L3 〔mm〕が、 0 ≦ L3 ≦ 150 であることが好ましい。
【0007】なお、本発明においてdは約5〜12m
m、Lは約100〜500mm、Qは約3〜30リット
ル/分が一般的な条件であるが、これに限定されるもの
ではない。中心ポート流量Qは、中心ポートの原料ガス
流量と水素ガス流量との和(Q=QS +QH )を意味す
る。また、本発明において原料ガス、支燃性ガス、燃焼
ガス、不活性ガスとしては、この種の技術分野で公知の
各種ガスを使用できるが、例えば原料ガスとしてはSi
Cl4 ,SiHCl3 ,SiH2 Cl2 その他公知の添
加材等を、支燃性ガスとしてはO2 等を、燃焼ガスとし
てはH2 ,CH4 ,C2 6 ,C3 8 ,C 2 4 ,C
2 2 等を、不活性ガスとしてはHe ,Ar ,N2 等を
挙げることができる。
【0008】
【実施例】以下に本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。 実施例1 図1の同心円状12重管バーナーにおいて、中心ポート
径6mm、1段目突き出し長100mm、2段目突き出
し長150mmのバーナーを使用し、中心ポートから堆
積面までの距離が350mmになるようにした。中心ポ
ートから原料としてSiCl4 を12リットル/分、
2,6,10ポートからH2 を230リットル/分、
4,8,12ポートからO2 を180リットル/分、
3,5,7,9,11ポートからArを33リットル/
分流して、ガラス母材の作製を行った。本実施例では Q =12000 Ld2 =12600 Ld2 /Q=1.05 であるので、 0.75 ≦(Ld2 /Q)≦ 1.3 (3) 上記(3)式の関係を満足している。本実施例の堆積速
度は18g/分、収率56%と良好であった。
【0009】比較例1 中心ポート径のみを7mmに変更し、その他は実施例1
と同じ構造のバーナーを用い、同条件でガラス母材の作
製を行った。本比較例においては、 Q =12000 Ld2 =17150 Ld2 /Q=1.43 であるので、上記(3)の関係を満足しない。本比較例
の堆積速度は14g/分、収率44%と実施例に比べ低
かった。
【0010】比較例2 中心ポート径6mm、1段目突き出し長100mm、2
段目突き出し長50mmの同心円状12重管バーナーを
使用し、中心ポートから堆積面までの距離が230mm
になるようにした。流量条件は実施例1と同じにしてガ
ラス母材を作製した。本比較例においては、 Q =12000 Ld2 = 8280 Ld2 /Q=0.69 であるので、上記(3)の関係を満足しない。本比較例
により作製されたガラス母材の外径は変動し、堆積速度
16g/分、収率50%であった。
【0011】実施例2 2段目の突き出し長を100mmに変更し、その他は実
施例1と同じ構造のバーナーを用い、中心ポートから堆
積面までの距離が300mmになるようにした。流量条
件は実施例1と同条件で外周母材の作製を行った。本実
施例においては、 Q =12000 Ld2 =10800 Ld2 /Q=0.9 であるので、上記(3)の関係を満足している。このと
き堆積速度は18g/分、収率56%と良好であった。
【0012】実施例3 図2に示す同心円状16重管バーナーにおいて、中心ポ
ート径8mm、1段目突き出し長150mm、2段目突
き出し長100mm、3段目突き出し長0mmのバーナ
ーを使用し、中心ポートから堆積面までの距離が410
mmになるようにした。中心ポートから原料としてSi
Cl4 を19リットル/分、及びH2 を10リットル/
分、2,6,10,14ポートからH2を450リット
ル/分、4,8,12,16ポートからO2 を370リ
ットル/分、3,5,7,9,11,13,15ポート
からArを70リットル/分流して、ガラス母材を作製
した。本実施例では Q =29000(ここでQ=QS +QH ) Ld2 =26240 Ld2 /Q=0.90 であるので、上記(3)式の関係を満足している。本実
施例の堆積速度は30g/分、収率60%と良好であっ
た。
【0013】比較例3 中心ポート径のみを10mmに変更し、その他は実施例
3と同じ構造のバーナーを用い、同条件でガラス母材の
作製を行った。本比較例においては、 Q =29000(ここでQ=QS +QH ) Ld2 =41000 Ld2 /Q=1.41 であるので、上記(3)式を満足していない。本比較例
の堆積速度は23g/分、収率44.5%と実施例3に
比較して低かった。
【0014】実施例4 図3に示す同心円状16重管バーナーにおいて、中心ポ
ート径8mm、1段目突き出し長150mm、2段目突
き出し長100mm、3段目突き出し長50mmのバー
ナーを使用し、中心ポートから堆積面までの距離を41
0mmになるようにした。流量条件は実施例3と同じよ
うにしてガラス母材を作製した。本実施例においても Q =29000 Ld2 =26240 Ld2 /Q=0.90 であり、上記(3)式を満足していることは言うまでも
ない。本実施例の堆積速度は32g/分、収率62%と
良好であった。
【0015】実施例5 中心ポート径を7.5mmに変更し、その他は実施例3
と同じ構造のバーナを使用し、中心ポートから堆積面ま
での距離を400mmに設定した。流量条件は実施例3
と同一条件で供給した。本実施例において Q =29000 Ld2 =22500 Ld2 /Q=0.78 であり、上記(3)式を満足している。本実施例の堆積
速度は28g/分、収率55%であった。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
VAD法やOVD法などの気相反応法により、安定で高
収率にガラス母材を合成できる。本発明により合成した
ガラス母材を電気炉にてガラス化温度以上に加熱処理す
ることにより、高品質の透明ガラス体を得ることがで
き、これは光ファイバー用プリフォームの中間製品とし
て好適に用いられるので、本発明は特に光ファイバー用
母材の製造に非常に適した製法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】火炎形成用ポートを3組保有するバーナーを使
用して本発明によりガラス母材を作製する例を模式的に
示した図である。
【図2】火炎形成用ポートを4組保有するバーナーを使
用して本発明によりガラス母材を作製する例を模式的に
示した図である。
【図3】火炎形成用ポートを4組保有するバーナーを使
用して本発明によりガラス母材を作製する別の例を模式
的に示した図である。
【符号の説明】
11 原料噴出用ポート並びに第1火炎形成用ポート 12 第2火炎形成用ポート 13 第3火炎形成用ポート 14 ガラス微粒子堆積体 15 ガラス微粒子流 16 外側火炎 17 第4火炎形成用ポート
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C03B 37/018 C03B 8/04 C03B 20/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気体のガラス原料を燃焼バーナーから噴
    出させて火炎中で加水分解することにより形成されるガ
    ラス微粒子を回転する出発材の周囲または先端に堆積さ
    せてガラス母材を製造する方法において、燃焼バーナー
    として、燃料ガスポート、支燃性ガスポートおよび不活
    性ガスポートよりなる火炎形成用ポートを3組以上保有
    し、各火炎形成用ポートは同心円状に配置され、中心の
    火炎形成用ポートを第1火炎形成用ポートとし、中心か
    ら外側に向けて第n番目の火炎形成用ポートを第n火炎
    形成用ポートとし、第(n+1)火炎形成用ポート先端
    と第n火炎形成用ポート先端との段差n 〔mm〕
    するとき第1火炎形成用ポート先端を基準として第
    (n+1)火炎形成用ポート先端は上記ガラス原料の
    噴出方向に、第n火炎形成用ポート先端と同じもしくは
    遠ざかるように異なる距離にあり、かつΣL n >0であ
    るバーナーを使用し、直径d〔mm〕の中心ポートから
    ガラス原料を噴出させ、このとき中心ポート流量Q〔c
    c/min〕(ただしQは原料ガス流量QS 〔cc/m
    in〕と水素ガス流量QH 〔cc/min〕との和であ
    る)を、 【数1】 に対して、 【数2】 となるように供給することを特徴とするガラス母材の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 第1火炎形成用ポート先端と第2火炎形
    成用ポート先端との段差L1 〔mm〕が 100 ≦ L1 ≦ 200 であることを特徴とする請求項1記載のガラス母材の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 第1火炎形成用ポート先端と第2火炎形
    成用ポート先端との段差L1 〔mm〕が 100 ≦ L1 ≦ 200 であり、かつ第2火炎形成用ポート先端と第3火炎形成
    用ポート先端との段差L 2 〔mm〕が 70 ≦ L2 ≦ 200 であり、4組以上の火炎形成用ポートを有する場合に
    は、第3火炎形成用ポート先端と第4火炎形成用ポート
    先端との段差L3 〔mm〕が 0 ≦ L3 ≦ 150 であることを特徴とする請求項1記載のガラス母材の製
    造方法。
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