JP2799926B2 - アルミニウム平版印刷版 - Google Patents

アルミニウム平版印刷版

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JP2799926B2 JP26922992A JP26922992A JP2799926B2 JP 2799926 B2 JP2799926 B2 JP 2799926B2 JP 26922992 A JP26922992 A JP 26922992A JP 26922992 A JP26922992 A JP 26922992A JP 2799926 B2 JP2799926 B2 JP 2799926B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はアルミニウム合金を支
持体として用いた平版印刷版に関するものであり、特に
アルカリ系化学エッチングによる粗面化処理を施したア
ルミニウム平版印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に平版印刷版(オフセット印刷版を
含む)としては、アルミニウム合金からなる支持体の表
面に粗面化処理を施した後、必要に応じて陽極酸化処理
などの表面処理を施し、さらに感光性塗料を塗布、乾燥
させて所謂PS版としたものが知られており、これを実
際に印刷に使用するにあたっては、PS版上に画像露
光、現像、ガム引き等の製版処理を施すのが通常であ
る。このような製版処理の過程において、現像処理によ
り未溶解で残留した感光層は画像部を形成し、一方感光
層が除去されてその下のアルミニウム表面が露出した部
分は親水性のため水受容部となって非画像部を形成す
る。
【0003】ところでこのような平版印刷用の支持体と
しては、一般に軽量でかつ表面処理性、加工性に優れた
アルミニウム合金板が使用される。このような目的のア
ルミニウム合金板としては、従来は、JIS A105
0,JIS A1100,JIS A3003等からな
る板厚0.1〜0.5mm程度のアルミニウム合金圧延板
が使用されており、このようなアルミニウム合金圧延板
は、表面を粗面化し、その後必要に応じて陽極酸化処理
を施して印刷版に使用されている。具体的には、特開昭
48−49501号に記載されている機械的粗面化処
理、化学的エッチング処理、陽極酸化皮膜処理を順に施
したアルミニウム平版印刷版、あるいは特開昭51−1
46234号に記載されている電気化学的処理、後処
理、陽極酸化処理を順に施したアルミニウム平版印刷
版、特公昭48−28123号に記載されている化学エ
ッチング処理、陽極酸化処理を順に施したアルミニウム
平版印刷版、あるいは機械的粗面化処理後に特公昭48
−28123号に記載されている処理を施したアルミニ
ウム平版印刷版等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のようなアルミニ
ウム合金支持体を実際に印刷に使用するにあたっては、
先ず既に述べたように素板表面を機械的方法、化学的方
法、電気化学的方法のうちいずれか1種、または2種以
上の組合わされた工程によって粗面化した後、必要に応
じて印刷性向上のために厚さ0.5〜3μmの陽極酸化
皮膜を生成し、その後感光性塗料を塗布して乾燥させた
後、露光や現像等の製版処理を行ない、印刷機の円筒形
版胴に巻付け、湿し水の存在下においてインクを画像部
に付着させ、ゴムブランケットに転写後、紙面に印刷す
る。
【0005】以上のようにして使用される平版印刷版用
アルミニウム合金支持体には、次のような特性が要求さ
れる。
【0006】 すなわち先ず第1には、粗面化処理によ
って均一に微細かつ緻密な凹凸を形成することができ、
これによって感光層を形成する感光性の塗料との優れた
密着性が得られることが必要である。すなわち、露光、
現像後に最終的に残った感光性塗料は画像部となるが、
この状態で感光性塗料とアルミニウム合金支持体表面と
の密着性が悪ければ、印刷を繰返すうちに感光層の一部
が剥離して、印刷インクが画像部全体に均一に乗らなく
なり、その結果印刷画像にぼけやにじみが生じてしま
う。これに対し支持体表面に均一かつ微細で緻密な粗面
を形成して、感光性塗料の優れた密着性が得られれば、
多くの部数を印刷しても感光層が剥離せず、インクの乗
りの再現性が良好となり、印刷画像部分ににじみやぼけ
のない良好な印刷が可能となる。このように多数の印刷
を繰返しても印刷性能が変化しない特性を耐刷性と称し
て、印刷版の最も基本的な特性とされている。そしてこ
の耐刷性を良好にするためには、前述のようにアルミニ
ウム合金支持体表面に良好な粗面を形成して、感光性塗
料と支持体との密着性を良好にすることが必要である。
【0007】また第2には、印刷中に非画像部にインク
が付着しないことが要求される。このような非画像部に
インクが付着することに関する性能を、一般にインク汚
れ性と称している。
【0008】これらの要求特性のうち、特に第1の耐刷
性に関しては、前述のようにアルミニウム合金支持体表
面の粗面化が大きな影響を与える。そして近年は、耐刷
性を一層向上させることが望まれており、そのため、よ
り微細かつ均一で緻密な凹凸を粗面化処理によってアル
ミニウム合金支持体上に形成することが望まれている。
このような粗面化処理としては、前述のように機械的粗
面化処理や電気化学的粗面化処理あるいは化学的粗面化
処理を適用することが考えられるが、現実には前述のよ
うな要求を満たすことは、機械的粗面化処理単独、ある
いは化学的粗面化処理単独では困難とされており、電気
化学的粗面化処理を適用するか、あるいは電気化学的粗
面化処理と機械的粗面化処理または化学的粗面化処理と
を組合せて適用するのが一般的であった。
【0009】電気化学的粗面化処理によれば、電解浴液
と電解条件を選択することによって、種々の粗面を得る
ことができ、均一かつ微細な粗面を得ることも可能であ
るから、前述のように従来は主として電気化学的粗面化
処理が用いられていた。しかしながら電気化学的粗面化
処理は電気エネルギを必要とするためランニングコスト
が高コストとなり、また電極等の設備コストも嵩む問題
がある。
【0010】そこで、低コスト化が可能でしかも量産性
に優れる化学的粗面化処理を用いて、電気化学的粗面化
処理と同等に良好な粗面を得る技術の開発が望まれてい
る。しかしながら、従来の一般的なアルミニウム合金支
持体の場合は、化学的粗面化処理では、塩化第2鉄溶液
あるいは炭酸フッ化アンモン溶液の如き特殊なエッチン
グ液でエッチングすればある程度微細な粗面は得られる
ものの、この場合は高コストを招き、また粗面のピット
形状が不適当で、平版印刷版の耐刷性向上には有効では
なかった。
【0011】ここで化学的粗面化処理について若干説明
すれば、化学的粗面化処理法は、表面を化学的にエッチ
ングしてピットを形成する方法であって、HCl系エッ
チング液、酸性弗化アンモニウム系エッチング液、燐酸
系エッチング液などの酸性エッチング液を用いてエッチ
ングする方法と、NaF系エッチング液、NaOH系エ
ッチング液などのアルカリ性エッチング液を用いてエッ
チングする方法とに大別される。このような化学的粗面
化処理法は、安価な化学エッチング液を用いることによ
り低コスト化が可能であって、また量産性も優れる長所
を有する。そしてこの化学的粗面化処理法のうち、酸性
エッチング液による方法では、深く微細なピットを形成
することができるものの、ピットの均一性に欠け、一方
エッチング面が鋭利となって凸部が脱落してしまうおそ
れがある。また化学的粗面化処理法のうち、アルカリ性
エッチング液による方法では、NaOH系エッチング液
(苛性ソーダ)で代表される安価な化学エッチング液を
用いて、均一で滑らかな凹凸を形成することができる
が、従来のアルミニウム合金支持体では、ピットが浅く
て大きく、微細な粗面が得難い問題があった。
【0012】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、苛性ソーダで代表される安価なアルカリ系エ
ッチング液を用いた化学的粗面化処理により微細かつ均
一な粗面を形成し得るようにしたアルミニウム合金支持
体を用い、これにより粗面化処理に高コストを要するこ
となく、感光層の密着性が良好で耐刷性に優れたアルミ
ニウム平版印刷版を提供することを目的とするものであ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するため、請求項1の発明のアルミニウム平版印刷版
は、Mn1〜3wt%を含有し、かつSiが0.3wt%以
下、Feが0.3wt%以下、Cuが0.3%以下にそれ
ぞれ規制され、さらにSi(wt%)/Mn(wt%)の比
が0.1以下であり、しかもFe(wt%)/Mn(wt
%)の比が0.2以下であり、残部がAlおよび不可避
的不純物よりなるアルミニウム合金を支持体とし、かつ
その支持体表面がアルカリ系化学エッチングにより粗面
化されており、その粗面化面上に感光層が形成されてい
ることを特徴としている。
【0014】また請求項2の発明のアルミニウム平版印
刷版は、請求項1のアルミニウム平版印刷版において、
前記支持体として、前記各成分のほか、さらにMg0.
05〜3wt%を含有するアルミニウム合金が用いられて
いるものである。
【0015】さらに請求項3の発明のアルミニウム平版
印刷版は、請求項1もしくは請求項2発明のアルミニウ
ム平版印刷版において、前記支持体のアルミニウム合金
におけるMn系金属間化合物析出物として、AlとMn
の金属間化合物Al6 Mn、Al6 (MnFe)、(A
lSi)6 Mn、(AlSi)6 (MnFe)の1種ま
たは2種以上からなる析出物が、0.01〜3μmのサ
イズでかつ1×105個/mm2 以上の分布密度で分散し
ており、かつ総金属間化合物析出物中の全Fe量、全M
n量、全Si量がFe(wt%)/Mn(wt%)≦0.2
5,Si(wt%)/Mn(wt%)≦0.10を満たすこ
ととしている。
【0016】
【作用】先ずこの発明の平版印刷版に用いられるアルミ
ニウム合金支持体について説明する。
【0017】アルミニウム合金におけるアルカリエッチ
ングによる化学的粗面化処理後の粗面性状に対しては、
Mn系金属間化合物析出物の種類が大きな影響を及ぼ
す。したがって適切なMn系金属間化合物析出物が得ら
れるように、各合金成分元素の含有量と各合金元素の含
有量の比を適切に設定することによって、アルカリエッ
チングによる粗面化性を著しく向上させることができ
る。
【0018】アルミニウム合金におけるMn系金属間化
合物析出物としては、一般に次のa〜fに示すようなも
のがある。 a:Al6 Mn b:Al6 Mnの一部がFeに置き換った形式のAl6
(MnFe) c:Al6 MnのAlの一部がSiに置き換った形式の
(AlSi)6 Mn d:Al6 MnのAlの一部がSiに置き換るととも
に、Mnの一部がFeに置き換った形式の(AlSi)
6 (MnFe) e:a〜dのいずれかにCr,Ti等が微量固溶したも
の f:αAlMn(Fe)Si これらのうちa〜eはAl6 Mn系析出物と総称するこ
とができる。
【0019】これらのMn系析出物のうち、Al6 Mn
系析出物はアルカリエッチングによる粗面化に関係し、
特にAl6 Mn、(AlSi)6 Mnは良好な粗面を得
るに寄与するが、Al6 (MnFe)、(AlSi)6
(MnFe)は、後述するようにその金属間化合物中の
Fe量によってはアルカリエッチングによる粗面化後の
粗面性状が悪くなることがある。一方αAlMn(F
e)Siは、アルカリエッチングによる粗面化に寄与し
ない。したがってMn系析出物のうちでも特にAl6
n系析出物を積極的に析出させ、かつその場合Al
6 (MnFe)もしくは(AlSi)6 (MnFe)の
Fe量を規制し、一方αAlMn(Fe)Siは析出さ
せないようにする必要がある。
【0020】このようなMn系析出物の種類とアルカリ
エッチングによる粗面化性との関係についてさらに詳細
に説明する。
【0021】本発明者等の詳細な実験・検討によれば、
Mn系の金属間化合物析出物のうち、特にAl6 Mn系
析出物は苛性ソーダ等のアルカリエッチング液によって
金属間化合物そのものが溶解し、ピットを生成すること
が判明した。したがってAl6 Mn系析出物を微細でか
つ均一に分散するように析出させ、そのAl6 Mn系析
出物を苛性ソーダで代表されるアルカリ系エッチング液
によって溶解させることによって、微細で鋭いピットを
均一にかつ密に生ぜしめることができるのである。特に
Al6 Mn系析出物のうちでも、Al6 Mn、(AlS
i)6 Mnはアルカリ系エッチングによって良好な粗面
を形成するに寄与する。
【0022】但し、Al6 Mn系析出物のうちでも、A
6 (MnFe)、(AlSi)6(MnFe)はその
金属間化合物を構成する各元素のうち特にFeの割合が
多くなれば、アルカリエッチング液に対してカソーディ
ックとなり、アルカリエッチング液により溶解し難くな
って粗面化処理性が悪くなる。具体的には、Al6 (M
nFe)化合物、(AlSi)6 (MnFe)化合物中
のFe(wt%)/Mn(wt%)の比が0.25を越えれ
ばAl6 (MnFe)析出物、(AlSi)6(MnF
e)析出物がアルカリエッチング液により溶解され難く
なるから、上記の比の値を0.25以下に規制すること
が好ましい。
【0023】ここで、本来は上述のようにAl6 (Mn
Fe)もしくは(AlSi)6 (MnFe)についての
み、Fe(wt%)/Mn(wt%)の比を0.25以下に
規制すれば良いが、実際の分析時においては、Al
6 (MnFe)および(AlSi)6 (MnFe)と、
その他の金属間化合物析出物とを区別するのは困難であ
るから、この発明では総金属間化合物析出物中のFe
(wt%)/Mn(wt%)の比の値を0.25以下に規制
することとした。このように総金属間化合物中のFe
(wt%)/Mn(wt%)の比の値を0.25以下とし、
同時に合金全体として、Fe(wt%)/Mn(wt%)の
比が0.2以下となるように規制することによって、A
6 (MnFe)および(AlSi)6 (MnFe)中
のFe(wt%)/Mn(wt%)の比を0.25以下とす
ることが実際上可能である。
【0024】一方、αAlMn(Fe)Siは苛性ソー
ダ等のアルカリエッチング液によって溶解せず、したが
ってピットを形成しないから、粗面化に対し効果がない
ばかりか、むしろαAlMn(Fe)Siが存在すれ
ば、均一かつ微細な粗面を形成するに悪影響を及ぼす。
すなわちαAlMn(Fe)SiはAlマトリックスよ
りカソーディックとなって、それ自体溶解しないばかり
か、むしろその周辺のアルミニウムマトリックスが腐食
されてしまい、そのため目的とする鋭いピットが得られ
なくなる。このαAlMn(Fe)Siの析出は、合金
中のSi量、およびMn量とSi量との比に関係するか
ら、この発明では後に説明するように合金中のSi量を
0.3wt%以下に規制するとともに、Si(wt%)/M
n(wt%)の比を0.1以下に規制している。
【0025】なお、Al6 Mn系析出物としては、前述
のようにAl6 MnやAl6 (MnFe)のAlの一部
がSiに置き換った形式でSiが固溶した(AlSi)
6 Mn、(AlSi)6 (MnFe)があり、これらの
金属間化合物中のSiはアルカリ系エッチング液による
エッチング特性に特に悪影響を与えない。したがって
(AlSi)6 Mn、(AlSi)6 (MnFe)は、
それぞれAl6 Mn、Al6 (MnFe)と同様なエッ
チング特性を示すから、これらの金属間化合物析出物に
ついては、その析出物中のSi量は特に規制する必要は
ない。しかしながら既に述べたようにαAlMn(F
e)Siはアルカリ系エッチング液による化学エッチン
グ特性に悪影響を与え、しかもAl6 Mn系析出物とα
AlMn(Fe)Siとが混在している場合、両者を区
別することは実際には困難であるから、両者を含んだ総
金属間化合物析出物中のSi量、特にMn(wt%)とS
i(wt%)との比Mn(wt%)/Si(wt%)の値を規
制することも重要である。すなわち、Mn(wt%)/S
i(wt%)の比の値が0.1を越えれば、実質的に総金
属間化合物中のαAlMn(Fe)Siの割合が多くな
り、アルカリ系エッチング液によるエッチング特性が悪
くなって良好な粗面が得られなくなる。そこで総金属間
化合物析出物中のMn(wt%)/Si(wt%)の値を
0.1以下に規制することとした。 さらにアルカリエ
ッチングによる粗面化処理後の粗面性状には、Al6
n系析出物のサイズおよび分布密度も影響する。これら
のAl6 Mn系析出物のサイズが0.01μm未満で
は、析出物が小さ過ぎてピットとならず、3μmを越え
ればピットが大き過ぎて、均一かつ微細な粗面が得られ
ない。またこれらのAl6 Mn系析出物の分布密度が1
×105 個/mm2 未満では、ピットがまばらで粗面化が
不充分となる。したがって請求項3の発明において、粗
面化に関係するAl6 Mn系析出物、すなわちAl6
n析出物、Al6 (MnFe)析出物、(AlSi)6
Mn析出物、(AlSi)6 (MnFe)析出物のサイ
ズを0.01〜3μmの範囲内、分布密度を1×105
個/mm2 以上と規定した。
【0026】さらにこの発明におけるアルミニウム合金
支持体の成分組成の限定理由について説明する。
【0027】Mn:Mnは、アルカリエッチングによっ
て微細かつ均一な粗面を形成するに寄与するAl6 Mn
系析出物を析出させるに不可欠な元素である。Mn量が
1wt%未満ではAl6 Mn系析出物の析出量が不充分と
なり、粗面化も不充分となる。一方Mnが3wt%を越え
れば、粗面化性は良好であるが、DC鋳造時において粗
大な金属間化合物が生成しやすくなるとともに鋳造性が
悪化し、特にMgを共存する場合にその傾向が著しくな
る。したがってMn量は1〜3wt%の範囲内とした。な
お金属間化合物析出物を安定に析出させるためには、M
n1.5wt%以上が好ましく、またMn2wt%以下の方
が粗大金属間化合物の安定性が良好となるから、Mnは
前述の範囲内でも1.5〜2wt%の範囲内とすることが
好ましい。
【0028】Si:SiはMnと共存してαAlMn
(Fe)Si析出物を生成する。このαAlMn(F
e)Si相は、既に述べたように苛性ソーダ等のアルカ
リエッチング液に対して溶解しないため、Alマトリッ
クスよりカソーディックとなり、そのため析出物周辺の
Alマトリックスが侵食され、目的とする鋭いピットが
得られない。したがってαAlMn(Fe)Si析出物
の析出を抑制するため、Si量は可及的に少ないことが
好ましい。具体的には、Mn量が1〜1.5wt%の場
合、Si量が0.15wt%を越えればアルカリエッチン
グによる粗面化性が悪くなり、Mn量が1.5〜3wt%
の場合はSi量が0.3wt%を越えればアルカリエッチ
ングによる粗面化性が悪くなるから、Si量は0.3wt
%以下に規制する必要があり、好ましくは0.15wt%
以下とする。またαAlMn(Fe)Si析出物の析出
を抑制するためには、合金全体のSi(wt%)/Mn
(wt%)の比も重要であり、その比が0.1以下となる
ように規制することによってαAlMn(Fe)Si析
出物の析出を抑制し、アルカリエッチングにより良好な
粗面を得ることができる。
【0029】Fe:Feは、Al6 Mn、(AlSi)
6 Mn中においてMnと一部置換される状態でAl
6 (MnFe)、(AlSi)6 (MnFe)として存
在する。これらの相は、アルカリエッチング液により溶
解されるが、Fe含有量が増加するにしたがって苛性ソ
ーダ等のアルカリエッチング液に対してカソーディック
となる。その傾向は既に述べたようにAl6 (MnF
e)、(AlSi)6 (MnFe)中のFe(wt%)/
Mn(wt%)の比が0.25を越えれば顕著となって、
苛性ソーダ系のアルカリエッチング液によるエッチング
性が弱くなり、目的とする鋭く微細でしかも均一なピッ
トが生成され難くなる。したがってAl6 (MnF
e)、(AlSi)6 (MnFe)中のFe(wt%)/
Mn(wt%)の比が0.25以下となるように制御する
ことが好ましいが、そのためにはFeの絶対量を0.3
wt%以下、好ましくは0.1wt%以下に規制するととも
に、合金全体におけるFe(wt%)/Mn(wt%)の比
を0.2以下、好ましくは0.1以下となるように規制
する。
【0030】Cu:Cuは平版印刷版として湿し水存在
下でのインク汚れ性に悪影響を与える。したがって良好
なインク汚れ性を得るためにCuは0.3wt%以下に規
制することとした。
【0031】Mg:Mgは強度を向上させるために有効
であるばかりでなく、Al6 Mn系析出物の析出を促進
してアルカリエッチングによる粗面化性を良好にするの
に寄与する。そこでこの発明のアルミニウム合金展伸材
においては、Mgを必要に応じて積極添加する。Mgを
積極的に添加する場合、0.05wt%未満では上述の効
果が充分に得られず、一方3wt%を越えれば鋳造性が悪
化するとともに、平版印刷版として強度が高過ぎて取扱
性が悪くなるから、Mg積極添加の場合の添加量は0.
05〜3wt%の範囲内とする。なお0.05wt%未満の
Mgは、積極添加しない場合でも不可避的不純物として
含有されるのが通常である。
【0032】 以上の各元素のほかは、基本的にはAl
および不可避的不純物とすれば良いが、Cr,Zr,V
はそれぞれ0.3wt%までは添加してもこの発明の効
果に本質的な影響は与えないから、それぞれ0.3wt
%までは許容される。これらの元素が0.3wt%を越
えれば粗大金属間化合物が生成されて好ましくなくな
る。また一般のAl合金においては、鋳塊結晶組織を微
細化して圧延板のキメ、ストリークスを防止するため、
少量のTiを単独で、または微量のBと組合せて添加す
ることがあるが、この発明の平版印刷版に用いるアルミ
ニウム合金支持体においても0.15wt%以下のTi
を単独でまたは100ppm以下のBと組合せて添加す
ることは許容される。Tiが0.15wt%を越えれば
TiAl粗大金属間化合物が生成されて不適当とな
り、またBが100ppmを越えればBの添加効果が飽
和するとともに、粗大TiB粒子による線状欠陥が発
生して不適当となる。さらに、Mgを添加した場合、鋳
造時に溶湯が酸化しやすくなるが、その場合の溶湯酸化
防止のためにBeを添加することが一般に行なわれてお
り、この発明の平版印刷版に用いるアルミニウム合金支
持体においても微量のBeの添加は他の性能に悪影響を
及ぼすことはなく、したがってMgの添加の場合に微量
のBeを添加しても良い。この場合のBe添加量は50
0ppm以下が一般的である。そのほか、Znは2.0
wt%以下であればこの発明の効果に特に悪影響を及ぼ
すことはなく、したがってZn2.0wt%以下の含有
は許容される。
【0033】次にこの発明の平版印刷版に用いられるア
ルミニウム合金支持体の製造方法について説明する。
【0034】先ず前述のような成分組成の合金を常法に
従って鋳造する。鋳造法としては、DC鋳造(半連続鋳
造法)でも、薄板連続鋳造法(連続鋳造圧延法)でも良
い。DC鋳造法では、Mn含有量が多い場合に、特にM
gが共存していれば粗大金属間化合物が生成されやす
く、そのため粗面化性に悪影響を与えるとともに、鋳造
性が悪化することも予想され、特にDC鋳造法ではMn
量が2〜3wt%の場合に粗大金属間化合物が生成される
おそれがあり、したがってDC鋳造法の場合はMn量を
2wt%以下としておくことが好ましい。
【0035】DC鋳造により得られた鋳塊に対しては、
必要に応じて均質化処理を行なってから熱間圧延し、さ
らに必要に応じて冷間圧延を施して所定の板厚の圧延板
とするのが通常である。一方薄板連続鋳造法により得ら
れた鋳造板に対しては、必要に応じて均質化処理を行な
ってから冷間圧延を施して所定の板厚の圧延板とするの
が通常である。この発明の方法の場合は、鋳造後のこれ
らのいずれかの段階で、鋳造時に固溶されたMnを既に
述べたようなサイズ、分布密度に分散析出させるため
に、加熱処理(析出処理)を行なう必要がある。すなわ
ち鋳造後の段階で、あるいは鋳造後に熱間圧延を行なう
場合にはその熱間圧延後の段階で、さらには冷間圧延を
行なう場合には冷間圧延の中途もしくは後に析出処理を
行なえば良い。
【0036】この析出処理は、300〜640℃の範囲
内の温度に0.5〜24時間加熱すれば良い。析出処理
の温度が300℃未満ではMn系析出物の析出が不充分
となり、一方640℃を越えれば一旦析出したMn系の
析出物の再固溶が生じて析出量が不足し、アルカリエッ
チングによる粗面化性が悪くなる。また析出処理の加熱
時間が0.5時間未満ではMn系析出物の析出が不充分
となり、一方24時間を越えても析出は飽和し、経済的
に無駄となるだけである。
【0037】なおこのような析出処理は、析出の目的だ
けで独立して行なっても良いが、通常は他の熱処理と兼
ねて行なうことが便利である。すなわち鋳造後に均質化
処理を行なう場合にはその均質化処理と兼ねて行なうこ
とができ、また鋳造後に熱間圧延を行なう場合にはその
熱間圧延のための加熱と兼ねて行なうことができ、さら
に熱間圧延と冷間圧延との間や冷間圧延の中途において
中間焼鈍を行なう場合、あるいは冷間圧延後に最終焼鈍
を行なう場合には、その中間焼鈍もしくは最終焼鈍と兼
ねて行なっても良い。いずれの場合も前述のような条件
の範囲内でこれらの処理を行なうことによって、析出処
理の目的は達成される。
【0038】以上のようにして得られた圧延板(支持
体)を用いて平版印刷版とするにあたっては、先ず苛性
ソーダ等のアルカリ系エッチング液により化学的粗面化
処理を施す。この化学的粗面処理の前には、アルミニウ
ム圧延板を金属ワイヤでひっかくワイヤグレイニング
法、研磨球、研磨剤でアルミニウム表面を粗面化するボ
ールグレイニング法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を
粗面化するブラシグレイニング法のような機械的粗面化
処理を行なっても良い。化学的粗面化処理に好適に用い
られるアルカリ系エッチング液としては、苛性ソーダ、
炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタ珪酸ソーダ、燐酸
ソーダ水酸化カリウム、水酸化リチウム等があり、また
化学的粗面化処理における温度と濃度の好ましい範囲
は、それぞれ20〜100℃、1〜50%である。
【0039】既に述べたように、この発明で用いるアル
ミニウム合金支持体は、アルカリ系化学エッチングによ
る粗面化に寄与するAl6 Mn系析出物が適切なサイ
ズ、分布密度で分散しているため、アルカリ系エッチン
グによる化学的粗面化処理によって、微細かつ均一、緻
密な、鋭いピットからなる粗面を形成することができ
る。
【0040】化学エッチングの後には、表面に残留する
汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット
処理)を行なうのが通常である。このデスマットに用い
られる酸としては、硝酸、硫酸、燐酸、クロム酸、ふっ
酸、ほうふっ化水素酸等がある。
【0041】以上のようにして処理されたアルミニウム
合金支持体には、必要に応じてさらに陽極酸化処理、化
成処理などの処理を施すことが好ましい。
【0042】陽極酸化処理はこの分野で従来より行なわ
れている方法で行なうことができる。具体的には硫酸、
燐酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼン
スルホン酸などあるいはこれらの2種類以上を組み合わ
せた水溶液又は非水溶液中でアルミニウム板に直流また
は交流の電流を流すことによりアルミニウム支持体表面
に陽極酸化皮膜を形成することができる。
【0043】陽極酸化処理の条件は使用される電解液に
よって種々変化するので一概にはいえないが、一般的に
は電解液の濃度が1〜80%、液温5〜70℃、電流密
度0.5〜60アンペア/dm2 、電圧1〜100V、電
解時間10〜100秒の範囲が適当である。
【0044】これらの陽極酸化皮膜処理の内でも、特に
英国特許第1,412,768号に記載されている硫酸
中で高電流密度で陽極酸化する方法、及び米国特許第
3,511,661号に記載されている燐酸を電解浴と
して陽極酸化する方法が好ましい。
【0045】陽極酸化されたアルミニウム合金支持体は
更に米国特許第2,714,066号及び同第3,18
1,461号に記載されているようにアルミニウム金属
シリケート、例えば珪酸ナトリウムの水溶液に浸漬する
などの方法により処理したり、米国特許第3,860,
426号に記載されているように水溶性金属塩(例えば
酢酸亜鉛など)を含む親水性セルロース(例えばカルボ
シメチルセルロースなど)の下塗り層を設けることもで
きる。
【0046】以上のように処理した後には、アルミニウ
ム合金支持体の上にPS版の感光層として従来より知ら
れている感光層を設ける。この感光層の組成物としては
次のようなものが含まれる。
【0047】(1) ジアゾ樹脂とバインダーとからなる感
光層 米国特許第2,063,631号及び同第1,667,
415号に開示されているジアゾニウム塩とアルドール
やアセタールのような反応性カルボニル基を含有する有
機縮合剤との反応生成物であるジフエニルアミン−p−
ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒドとの縮合生成物
(所謂感光性ジアゾ樹脂)が好適に用いられる。この他
の有用な縮合ジアゾ化合物は特開昭49−48001
号、同49−45322号、同49−45323号等に
開示されている。これらの型の感光性ジアゾ化合物は通
常水溶性無機塩の状態で得られ、したがって水溶液で塗
布することができる。またはこれらの水溶性ジアゾ化合
物を特公昭47−1167号に開示された方法により1
個またはそれ以上のフェノール性水酸基、スルホン酸
基、またはその両者を有する芳香族または脂肪族化合物
と反応させ、その反応生成物である実質的に水不溶性の
感光性ジアゾ樹脂を使用することもできる。また、特開
昭56−121031号に記載されているようにヘキサ
フルオロ燐酸塩またはテトラフルオロ硼酸塩との反応生
成物として使用することもできる。そのほか英国特許第
1,312,925号に記載されているジアゾ樹脂も好
ましい。
【0048】(2) O=キノンジアジド化合物からなる感
光層 特に好ましいO−キノンジアジド化合物はO−ナフトキ
ノンジアジド化合物であり、例えば米国特許第2,76
6,118号、同第2,767,092号、同第2,7
72,972号、同第2,859,112号、同第2,
907,665号、同第3,046,110号、同第
3,046,111号、同第3,046,115号、同
第3,046,118号、同第3,046,119号、
同第3,046,120号、同第3,046,121
号、同第3,046,122号、同第3,046,12
3号、同第3,061,430号、同第3,102,8
09号、同第3,106,465号、同第3,635,
709号、同第3,647,443号をはじめ多数の刊
行物に記載されており、これらはいずれも好適に使用す
ることができる。
【0049】(3) アジド化合物とバインダー(高分子化
合物)からなる感光層 例えば英国特許第1,235,281号、同第1,49
5,861号、特開昭51−32331号、同51−3
6128号に記載されているアジド化合物と水溶性また
はアルカリ可溶性高分子化合物からなる組成物のほか、
特開昭50−5102号、同50−84302号、同5
0−84303号、同53−12984号に記載されて
いるアジド基を含むポリマーとバインダーとしての高分
子化合物からなる組成物が含まれる。
【0050】(4) その他の感光性樹脂層 例えば特開昭52−96696号に開示されているポリ
エステル化合物、英国特許第112,277号、同第
1,313,309号、同第1,341,004号、同
第1,377,747号等に記載のポリビニルシンナメ
ート系樹脂、米国特許第4,072,528号、同第
4,072,527号等に記載されている光重合型フォ
トポリマー組成物が含まれる。
【0051】なお支持体上に形成される感光層の量は、
約0.1〜約7g/m2 、好ましくは0.5〜4g/m
2 の範囲である。
【0052】以上のようにしてアルミニウム合金支持体
表面に感光層を形成することによって、この発明の平版
印刷版(PS版)が完成する。ここで、前述のようにア
ルミニウム合金支持体表面は、微細かつ均一、緻密な、
鋭いピットからなる粗面が形成されているため、感光層
の密着性は極めて良好となる。
【0053】 上述のようにして得られた平版印刷版を
用いて実際に印刷を行なうにあたっては、常法にしたが
って製版処理を行なえば良い。すなわち画像露光した
後、常法により現像を含む処理によって樹脂画像が形成
される。例えばジアゾ樹脂とバインダーとからなる前記
感光層(1)を有するPS版の場合は画像露光後、未露
光部分の感光層が現像により除去される。また前記感光
層(2)を有するPS版の場合には現像露光後、アルカ
リ水溶液で現像することにより未露光部分が除去され
る。
【0054】
【実施例】表1の合金A〜合金Eを常法にしたがって溶
製し、合金A,C,D,Eについては半連続鋳造法によ
って450mm×1200mm×3500mmの鋳塊を鋳造し
た。また合金Bについては、薄板連続鋳造法(連続鋳造
圧延法)によって板厚7mm、幅1000mmの連続鋳造コ
イルを鋳造した。
【0055】次いで合金C,Dの鋳塊については、片面
10mmずつ面削した後、500℃×5時間加熱して熱間
圧延を開始し、板厚4.0mmの熱延板とし、引続いて板
厚0.8mmまで冷間圧延した段階で、中間焼鈍として、
昇温速度平均35℃/hrで昇温して350℃×3時間加
熱するバッチ焼鈍を施し、その後板厚0.3mmまで冷間
圧延した(製造符号イ)。
【0056】また合金Eの鋳塊については、600℃×
10時間の均熱処理を施した後、片面10mmずつ面削し
てから、450℃で熱間圧延を開始し、板厚4.0mmの
熱延板とし、引続き板厚1.5mmまで冷間圧延した段階
で、中間焼鈍として420℃×3時間のバッチ焼鈍を施
し、さらに板厚0.3mmまで冷間圧延した(製造条件符
号ロ)。
【0057】一方合金Bの板厚7mmの連続鋳造コイル
は、450℃×5時間の焼鈍を施した後、板厚2.5mm
まで冷間圧延し、350℃×2時間の中間焼鈍を施して
から、0.3mmまで冷間圧延し最終焼鈍として300℃
×2時間の加熱を行なった(製造条件符号ハ)。また比
較のため、冷間圧延中途での中間焼鈍を行なわずに0.
3mmまで冷間圧延し、最終焼鈍として250℃×5時間
の加熱を行なった(製造符号ニ)。
【0058】以上のようにして得られた合金A〜Eから
なる各圧延板についてブラッシングにより機械的に粗面
化した後、10%NaOH水溶液中にて50℃で2分間
化学エッチング(化学的粗面化処理)を施した。引続い
て30%硫酸水溶液中にて55℃で1分間デスマット処
理し、その後20%硫酸水溶液を主成分とする電解浴中
で陽極酸化処理を施して膜厚1μmの陽極酸化皮膜を形
成し、続いて感光剤として、下記の感光性組成物を乾燥
後の塗布重量が2.5g/m2 となるように塗布して乾
燥させ、感光性平版印刷版(PS版)を得た。 感光性組成物 ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロライドと ピロガロール、アセトン樹脂とのエステル化合物 (米国特許第3,635,739号明細書実施例1記載のもの) 0.75g クレゾールノボラック樹脂 2.00g オイルブルー#603(オリエント化学製) 0.04g エチレンジクロライド 16g 2−メトキシエチルアセテート 12g
【0059】また合金Eからなる圧延板については、比
較のために、従来の一般的な電気化学的粗面化処理を適
用した比較例の平版印刷版も製造した。すなわち、合金
Eの圧延板の表面をブラッシングにより機械的に粗面化
した後、10%NaOH水溶液中にて50℃×1分間予
備エッチングし、続いて3%硝酸水溶液中にて電流密度
90A/dm2 で電解エッチング(電気化学的粗面化処
理)を施した。引続いて30%硫酸水溶液中にて55℃
×1分間デスマット処理した後、20%硫酸水溶液を主
成分とする電解浴中で陽極酸化処理を施して膜厚1μm
の陽極酸化皮膜を生成し、続いて感光剤として前記同様
な感光性組成物を乾燥後の塗布重量が2.5g/m2
なるように塗布して、感光性平版印刷版(PS版)を得
た。
【0060】以上のようにして得られた各PS版につい
て、真空焼枠中で、透明ポジティブフィルムを通して1
mの距離から3kwのメタルハライドランプにより、50
秒間露光を行なったのち、SiO2 /Na2 Oのモル比
が1.74の珪酸ナトリウムの5.26%水溶液(pH
=12.7)で現像して印刷原版とし、その印刷原版を
用いて湿し水の存在下で10万部の印刷を行なった。
【0061】耐刷性評価として、10万部印刷後の画像
部分でのぼやけの程度を調べるとともに、湿し水の存在
下での非画像部の汚れ(インキ汚れ)を調べた。これら
の結果を表2に示す。表2において耐刷性評価の○印は
画像部分にぼやけの発生が認められなかった場合を示
し、×印はぼやけの発生が認められた場合を示す。また
インク汚れ性評価は、○印は非画像部にインク汚れが認
められなかった場合を、また×印は非画像部にインク汚
れが認められた場合を示す。さらに、前述の製造過程中
における感光層形成前、すなわち粗面化処理後の段階で
表面の粗面の状況を走査型電子顕微鏡にて調べたので、
その結果も表2中に示す。粗面状況評価の○印は深いピ
ットが均一かつ微細に形成されていた場合を示し、×印
はそれ以外の場合を示す。
【0062】 さらに、前述のような製造方法によって
得られた合金A,B,C,Dの各圧延板について、析出
物の状況を調べた。具体的には析出物の種類を調べると
ともに、電子顕微鏡によって撮影した写真を画像解析に
付して析出物のサイズ、析出物の分布密度を調べ、さら
に図1に示すようなフェノール残渣分析法によって総金
属間化合物中のMn量、Si量、Fe量を調べて金属間
化合物中のMn量、Si量、Fe量を調べ、総金属間化
合物析出物中のFe(wt%)/Mn(wt%)比、S
i(wt%)/Mn(wt%)比を求めた。これらの結
果を表3に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】合金A,Bはいずれもこの発明で規定する
アルミニウム合金支持体の成分組成範囲内のものであ
り、合金Aを用いた試料1の圧延板、および合金Bを用
いた試料2の圧延板は、表3に示すようにいずれも金属
間化合物析出物のほとんどがAl6 Mn相であり、かつ
金属間化合物中のFe量、Si量はわずかで、金属間化
合物中のFe/Mn比が0.25以下、Si/Mn比が
0.10以下の条件を満たしており、さらに金属間化合
物析出物のサイズ、分布密度も請求項3で規定する条件
を満たしていた。そしてこれらの試料1(合金A−製造
条件イ)、試料2(合金B−製造条件ハ)の各圧延板を
用いて化学的粗面化処理を施すことによって良好な粗面
が得られ、かつそれを用いた印刷版では、表2に示すよ
うに耐刷性、インク汚れ性が試料7の従来の印刷版(従
来合金である1050合金を用い、電気化学的粗面化処
理を施した印刷版)と同等に優れていた。
【0067】一方試料3の圧延板は、支持体のアルミニ
ウム合金としては本発明成分組成範囲内の合金Bを用い
ているが、金属間化合物の析出が不充分で、表3に示す
ように析出物サイズが著しく小さく、そのため化学的粗
面化処理後の粗面のピットも浅く、表2に示すように耐
刷性が劣ることが判明した。
【0068】また試料4はアルミニウム合金支持体とし
て、Fe量、Si量が多く、Mn/Si比、Mn/Fe
比がこの発明の範囲を満たしていない比較合金Cを用い
たものであるが、この場合には表3に示すように総金属
間化合物析出物中のFe/Mn比、Si/Mn比が大き
く、αAlMnSi相が多量に析出したことが分る。そ
してこの場合は、表2に示すように、化学的粗面化処理
による粗面のピットは浅く、そのため印刷版としても耐
刷性が劣っていた。
【0069】さらに試料5は、アルミニウム合金支持体
としてFe量、Cu量が多い比較合金Dを用いたもので
あるが、この場合は総金属間化合物析出物中のFe/M
n比が大きく、そのため化学的粗面化処理による粗面も
良好ではなく、印刷版として耐刷性が劣り、かつCuの
影響によってインク汚れ性も劣っていた。
【0070】また試料6は従来から平版印刷版に多用さ
れている1050合金(合金E)を用いて化学的粗面化
処理を施したものであるが、この場合はMnを積極的に
含有していないため、特に表3に示していないがAl6
Mn系析出物もほとんど析出せず、そのため化学的粗面
化処理では良好な粗面が形成されず、印刷版として耐刷
性も劣っていた。
【0071】なお試料7は同じく従来合金の1050合
金(合金E)を用いて従来法にしたがって電気化学的粗
面化処理を施すことにより得られたものであり、この実
施例では耐刷性、インク汚れ性についての評価基準とし
ている。
【0072】
【発明の効果】この発明のアルミニウム平版印刷版で
は、苛性ソーダで代表される安価なアルカリ系エッチン
グ液を用いて、低コストでアルミニウム合金支持体表面
に微細かつ均一、緻密な粗面、すなわち感光層との密着
性が良好な粗面が形成され、そのため耐刷性が従来の電
気化学的粗面化処理を適用した平版印刷版と同程度に良
好であり、またインク汚れ性も優れている。したがって
この発明によれば、低コストで印刷特性、特に耐刷性、
インク汚れ性に優れた平版印刷版を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の平版印刷版に用いられるアルミニウ
ム合金支持体の金属間化合物析出物中のMn量、Fe
量、Si量を分析するための方法の一例を示すフローチ
ャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−63340(JP,A) 特開 昭60−63341(JP,A) 特開 昭60−63342(JP,A) 特開 昭61−26746(JP,A) 特開 昭62−86143(JP,A) 特開 平1−306288(JP,A) 特開 平2−293189(JP,A) 特開 平5−96875(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B41N 1/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mn1〜3wt%を含有し、かつSiが
    0.3wt%以下、Feが0.3wt%以下、Cuが0.3
    %以下にそれぞれ規制され、さらにSi(wt%)/Mn
    (wt%)の比が0.1以下であり、しかもFe(wt%)
    /Mn(wt%)の比が0.2以下であり、残部がAlお
    よび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金を支持体
    とし、かつその支持体表面がアルカリ系化学エッチング
    により粗面化されており、その粗面化面上に感光層が形
    成されていることを特徴とするアルミニウム平版印刷
    版。
  2. 【請求項2】 前記支持体として、前記各成分のほか、
    さらにMg0.05〜3wt%を含有するアルミニウム合
    金が用いられている、請求項1に記載のアルミニウム平
    版印刷版。
  3. 【請求項3】 前記支持体のアルミニウム合金における
    Mn系金属間化合物析出物として、AlとMnの金属間
    化合物Al6 Mn,Al6 (MnFe),(AlSi)
    6 Mn,(AlSi)6 (MnFe)の1種または2種
    以上からなる析出物が、0.01〜3μmのサイズでか
    つ1×105 個/mm2 以上の分布密度で分散しており、
    かつ総金属間化合物析出物中の全Fe量、全Mn量、全
    Si量がFe(wt%)/Mn(wt%)≦0.25,Si
    (wt%)/Mn(wt%)≦0.10を満たしている、請
    求項1もしくは請求項2に記載のアルミニウム平版印刷
    版。
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