JP2799911B2 - フィードフォワード増幅器 - Google Patents

フィードフォワード増幅器

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は主として高周波帯で使
用される線形増幅器であって、主増幅器の非線形歪成分
を検出する歪検出回路と、その検出した歪成分を補助増
幅器を用いて増幅した後、主増幅器の出力に再び注入す
ることによって歪成分の相殺を行う歪除去回路とを有す
るフィードフォワード増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】フィードフォワード増幅器の基本構成を
図9に示す。フィードフォワード増幅器は基本的に二つ
の信号相殺形回路により構成される。一つは歪検出回路
1であり、他の一つは歪除去回路2である。歪検出回路
1は主増幅器信号経路3と線形信号経路4とから構成さ
れ、また、歪除去回路2は主増幅器出力信号経路5と歪
注入経路6とから構成される。さらに、主増幅器信号経
路3は主増幅器7と可変減衰器8と可変遅延線路9との
縦続接続から構成され、線形信号経路4は伝送線路から
構成される。主増幅器出力信号経路5は伝送線路からな
り、歪注入経路6は可変減衰器10と可変遅延線路11
と補助増幅器12との縦続接続から構成される。ここ
で、特性的に大きな違いが生じることがないので、可変
減衰器8と可変遅延線路9とは、両方とも、またはいず
れか一方だけが線形信号経路4に具備される場合もあ
る。同様に、可変減衰器10と可変遅延線路11とは、
その両方、またはいずれか一方だけが主増幅器出力信号
経路5に具備されることもある。また、電力分配器13
と電力合成器14および15とはトランス回路、ハイブ
リッド回路等で構成される単純な無損失電力分配器・電
力合成器である。まず、この動作について説明する。
【0003】入力端子16に印加された入力信号は、ま
ず電力分配器13により経路3と経路4とに分配された
後、電力合成器14により電力合成される。ここで、可
変減衰器8および可変遅延線路9は、電力合成器14か
ら歪注入経路6の側に出力される二つの経路3と4との
両信号成分に関して互いに振幅、遅延量が等しく、か
つ、位相が逆相となるように調整される。ただし、逆相
の条件は電力分配器13もしくは電力合成器14におけ
る入出力端子間の移相量を適当に設定することにより実
現するか、もしくは、主増幅器7での位相反転を利用す
るか、もしくは、図10に示すようにサーキュレータ1
8の一つの端子に短絡終端19を具備した位相反転回路
を経路3か4かのいずれかに挿入することにより実現す
る。このように歪検出回路1は構成されているから、電
力合成器14から経路6の側への出力として、結局二つ
の経路3と4との二つの信号の差成分が検出されること
になる。この差成分は、まさに主増幅器7が発生する歪
成分そのものであり、このことからこの回路1は歪検出
回路と呼ばれる。
【0004】つぎに可変減衰器10と可変遅延線路11
とは、経路3についての電力合成器14の入力端子14
aから電力合成器15の出力端子17までの二つの経路
5と6との伝達関数が、互いに振幅、遅延量に関して等
しく、かつ、位相に関して逆相となるように調整され
る。ここで、経路6の入力信号は、歪検出回路1で検出
された主増幅器7の歪成分であるから、経路6は電力合
成器15の出力端子17において、主増幅器7の出力信
号に歪成分を逆相等振幅で注入することになり、結局、
回路全体の出力における歪成分の相殺が実現される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上が理想的なフィー
ドフォワード増幅器の動作であるが、実際には歪検出回
路1と歪除去回路2との二つの回路の平衡性を完全にす
ることは容易ではなく、また、仮に初期設定が完全であ
っても、周囲温度、電源等の変動により増幅器の特性が
変化するために、時間的に安定して良好な平衡性を維持
することは通常きわめて困難である。図11は、回路を
構成する二つの経路の振幅と位相が等振幅逆相条件から
ずれた偏差量と信号の抑圧量との関係を計算した結果で
ある。この図から、例えば、30dB以上の抑圧量を達成
するためには、位相および振幅の偏差がそれぞれ±1.
8°以内および±0.3dB以内であることが必要であ
り、二つの経路の伝送特性の平衡度および調整の完全性
について厳しい条件が要求されることがよくわかる。歪
検出回路1の平衡性が劣化すると補助増幅器12の入力
に歪成分よりも大きいレベルで主信号が相加されるため
に不要な歪が発生し、また、歪除去回路2の平衡性が劣
化すると抑圧量の劣化した分フィードフォワード増幅器
としての歪改善量が劣化する。このように従来のフィー
ドフォワード増幅器では、回路の安定性が十分でなかっ
たために良好な線形増幅器を実現できない基本的問題点
があった。
【0006】この発明の目的は、このような特性の不安
定性を解決したフィードフォワード増幅器を提供するこ
とにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明によれば、主増
幅器の非線形歪成分を検出する歪検出回路と、その検出
した歪成分を補助増幅器を用いて増幅した後主増幅器の
出力に再び注入することによって歪成分の相殺を行う歪
除去回路とを有するフィードフォワード増幅器におい
て、フィードフォワード増幅器の主増幅器の内部にパイ
ロット信号を注入する手段が設けられ、歪検出回路に第
1電気的可変減衰手段ならびに第1電気的可変移相手段
が挿入され、歪除去回路に第2電気的可変減衰手段なら
びに第2電気的可変移相手段が挿入され、補助増幅器の
経路の信号レベルを検出する第1レベル検出手段が設け
られ、フィードフォワード増幅器の出力経路のパイロッ
ト信号レベルを検出する第2レベル検出手段が設けら
れ、第1レベル検出手段の検出レベルが最小となるよう
に上記第1電気的可変減衰手段および上記第1電気的可
変位相手段を制御し、かつ、上記第2レベル検出手段の
検出レベルが最小となるように上記第2電気的可変減衰
手段および上記第2電気的可変移相手段を制御する制御
手段が設けられる。
【0008】
【作 用】フィードフォワード増幅器の二つの回路の信
号相殺条件の不完全性に起因して生じる残留信号分およ
び残留パイロット信号が第1,第2レベル検出手段によ
りそれぞれ検出され、これらの検出レベルを監視しつ
つ、それらが最小値をとるように回路の伝送特性が自動
調整される。
【0009】
【実施例】以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳
細に説明する。図1は、この発明の実施例を示し、図9
と対応する部分には同一符号をつけてある。主増幅器7
は、この例では増幅器ユニット20および21の2段縦
続接続で構成される。増幅器ユニット20および21
は、それぞれ単一のトランジスタ素子で構成される場合
もあるし、複数のトランジスタ素子を直列もしくは並列
に接続して構成する場合もある。パイロット信号を発生
するための周波数シンセサイザ等の発振器22が方向性
結合器23を介して増幅器ユニット20の出力側と増幅
器ユニット21の入力側との間に結合される。また、歪
検出回路1の主増幅器信号経路3に電気的に調整可能な
可変減衰器24と電気的に調整可能な可変移相器25と
が挿入される。歪除去回路2の歪注入経路6に、電気的
に調整可能な可変減衰器26と電気的に調整可能な可変
移送器27とが挿入される。これらの可変減衰器および
可変移相器は、PINダイオードとバラクタダイオード
とを用いて容易に構成でき、市販の製品も利用可能であ
る。歪注入経路6において可変減衰器26よりも入力側
に方向性結合器28を介してレベル検出器29が結合さ
れる。フィードフォワード増幅器の出力経路に方向性結
合器30を介してレベル検出器31が結合される。レベ
ル検出器29および31の各出力が制御回路32に入力
され、制御回路32は可変減衰器24および26,可変
移相器25および27を制御する。レベル検出器29
は、入力信号の全電力レベルを検出するように構成する
場合と、入力信号中の特定の周波数成分のみのレベルを
検出するような、周波数変換器と狭帯域フィルタおよび
検波器とを具備した選択レベル計のように構成する場合
とがある。また、レベル検出器31は選択レベル計で構
成され、選択周波数は発振器22から入力されるパイロ
ット信号の周波数に設定される。制御回路32は、基本
回路としてのA/D変換器、マイクロプロセッサ、D/
A変換器から構成され、レベル検出器29,31からの
入力信号を監視しつつ、可変減衰器24,26および可
変移相器25,27の設定点を調整する機能を有する。
以下、この制御回路32の制御動作について説明する。
【0010】まず最初に、フィードフォワード増幅器に
信号を入力する。入力信号としては、例えば、周波数が
特定した複数の連続信号の組み合わせを用いる。また、
発振器22よりのパイロット信号は主増幅器7が発生す
る歪成分のうち、本来の信号の占有周波数のすき間、も
しくは、帯域外の周波数に設定しておく。このとき、レ
ベル検出器29は歪検出回路1で抑圧しきれなかった入
力信号を含む主増幅器7の歪成分を検出する。こゝで、
選択レベル計でレベル検出器29を構成した場合には、
選択周波数を前記連続信号に設定しておくことにより歪
検出回路1で抑圧しきれなかった入力信号のレベルのみ
を検出できる。制御回路32は、レベル検出器29の出
力が最小値をとるように可変減衰器24と可変移相器2
5との設定点を調整する。この制御方法としては、例え
ば、設定点をわずかずつ段階的に変化させ、レベル検出
器29の出力が最小となる点を検出した後、そのときの
可変減衰器24と可変移相器25との各制御電圧を保持
する方法が適用できる。これにより補助増幅器12の出
力が最小となる条件、すなわち、歪検出回路1の信号抑
圧量が最大となる状態を実現できる。
【0011】つぎに、制御回路32はレベル検出器31
の出力レベルが最小値をとるように電気的可変減衰器2
6と電気的可変移相器27の設定点を調整する。これ
は、主増幅器7が発振器22によるパイロット信号と同
一成分の歪を発生したこととみなせるからこの制御方法
が有効であり、出力信号に含まれる歪出力が最小となる
条件、すなわち、歪除去回路2の信号抑圧量が最大とな
る状態を実現できる。
【0012】以上の二つの制御を常時、または、間欠的
に実行することにより線形性が良好なフィードフォワー
ド増幅器の最適動作条件を実現できる。増幅器ユニット
20および21が単一または複数のトランジスタ素子で
構成されるいずれの場合においても、パイロット信号を
増幅器ユニット20および21を構成する任意の一つの
トランジスタ素子のエミッタ、コレクタ、もしくはベー
スのいずれかの端子に方向性結合器を介して注入しても
よい。増幅器ユニット20および21がともにエミッタ
接地の単一のトランジスタ素子で構成され、増幅器ユニ
ット21のコレクタ端子に方向性結合器23を介して発
振器22によるパイロット信号を注入する実施例を図2
に示す。ただし、Vccは電源電圧を表す。
【0013】この発明において、主増幅器7を図3に示
すように増幅器ユニット33,34および35で表され
るように3段以上の縦続接続で構成してもよい。この場
合、パイロット信号を注入する位置は主増幅器7の入力
端と出力端以外のいずれか1個所となる。あるいは、増
幅器ユニット33,34および35を構成する任意の一
つのトランジスタ素子のエミッタ、コレクタ、もしくは
ベースのいずれかの端子に方向性結合器を介してパイロ
ット信号を注入してもよく、これもこの発明に含まれ
る。増幅器ユニット33がエミッタ接地の単一のトラン
ジスタ素子で構成され、増幅器ユニット33のコレクタ
端子に方向性結合器23を介して発振器22によるパイ
ロット信号を注入する実施例を図4に示す。ただし、V
ccは電源電圧を表す。
【0014】また、主増幅器7を図5に示すように、電
力分配器36および電力合成器37を用いて、増幅器ユ
ニット38および39で表されるように2個以上の並列
接続で構成してもよい。この場合、パイロット信号を注
入する位置は電力分配器36および電力合成器37の間
にあるいずれか一つの増幅器ユニットの入力端または出
力端となる。あるいは、増幅器ユニット38および39
を構成する任意の一つのトランジスタ素子のエミッタ、
コレクタ、もしくはベースのいずれかの端子に方向性結
合器を介してパイロット信号を注入してもよく、これも
この発明に含まれる。増幅器ユニット39がエミッタ接
地の単一のトランジスタ素子で構成され、増幅器ユニッ
ト39のベース端子に方向性結合器23を介して発振器
22によるパイロット信号を注入する実施例を図6に示
す。ただし、Vccは電源電圧を表す。
【0015】さらに、図7にその一例を示すように、主
増幅器7を図3の実施例と図5の実施例との複合形で構
成してもよい。あるいは、増幅器ユニット40,41,
42,43,44および45を構成する任意の一つのト
ランジスタ素子のエミッタ、コレクタ、もしくはベース
のいずれかの端子に方向性結合器を介してパイロット信
号を注入してもよく、これもこの発明に含まれる。増幅
器ユニット42がエミッタ接地の単一のトランジスタ素
子で構成され、増幅器ユニット42のベース端子に方向
性結合器23を介して発振器22によるパイロット信号
を注入する実施例を図8に示す。ただし、Vccは電源電
圧を表す。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、この発明により、
温度変化、電源変動等によって生じるフィードフォワー
ド増幅器の平衡度の低下による特性劣化を救済すること
ができるから、通信、放送等における送信用高出力増幅
器はもとより、有線通信中継器、オーディオ機器等の実
用的な線形増幅器としてフィードフォワード増幅器を広
範に適用することができる。さらに、この発明では主増
幅器7の内部にパイロット信号注入手段が設けられてい
ることから、例えば注入されたパイロット信号の主増幅
器7の入力側への漏洩量は極めて少なくできる。これ
は、主増幅器7自身のアイソレーションを利用できるた
めである。注入されたパイロット信号が主増幅器7の入
力側に漏洩すると、歪除去回路の平衡度を高精度・高安
定に調整できなくなるが、この発明では主増幅器7の内
部にパイロット信号注入手段を設けることにより、注入
されたパイロット信号は効率よく歪除去回路に供給さ
れ、歪除去回路の平衡度を高精度・高安定に調整でき
る。また、パイロット信号注入手段を含めて主増幅器7
をモジュール化することができ、主増幅器7の外部にパ
イロット信号注入手段を設ける場合よりも、設計、製造
が容易となること等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示すブロック図。
【図2】主増幅器7の具体例とパイロット信号注入個所
を変更した例を示す図。
【図3】主増幅器7を直接接続で構成した他の例を示す
図。
【図4】図3の主増幅器7の一部を具体化した図。
【図5】主増幅器7を並列接続で構成した例を示す図。
【図6】図5の主増幅器7の一部を具体化した図。
【図7】主増幅器7を直並列接続で構成した例を示す
図。
【図8】図7の主増幅器7の一部を具体化した図。
【図9】従来のフィードフォワード増幅器を示すブロッ
ク図。
【図10】サーキューレータを用いた位相反転回路を示
す図。
【図11】回路の振幅、位相不平衡度と信号相殺量の計
算例を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 誠 東京都千代田区内幸町一丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−198809(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H03F 1/30 - 1/32

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主増幅器の非線形歪成分を検出する歪検
    出回路と、その検出した歪成分を補助増幅器を用いて増
    幅した後上記主増幅器の出力に再び注入することによっ
    て歪成分の相殺を行う歪除去回路とを有するフィードフ
    ォワード増幅器において、上記フィードフォワード増幅
    器の上記主増幅器の内部に設けられたパイロット信号を
    注入する手段と、上記歪検出回路に挿入された第1電気
    的可変減衰手段ならびに第1電気的可変移相手段と、上
    記歪除去回路に挿入された第2電気的可変減衰手段なら
    びに第2電気的可変移相手段と、上記補助増幅器の経路
    の信号レベルを検出する第1レベル検出手段と、上記フ
    ィードフォワード増幅器の出力経路の上記パイロット信
    号のレベルを検出する第2レベル検出手段と、上記第1
    レベル検出手段の検出レベルが最小となるように上記第
    1電気的可変減衰手段および上記第1電気的可変移相手
    段を制御し、かつ、上記第2レベル検出手段の検出レベ
    ルが最小となるように上記第2電気的可変減衰手段およ
    び上記第2電気的可変移相手段を制御する制御手段と、
    を具備することを特徴とするフィードフォワード増幅
    器。
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