JP2791605B2 - 球状黒鉛鋳鉄材とステンレス鋼材との接合方法 - Google Patents

球状黒鉛鋳鉄材とステンレス鋼材との接合方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、フェライト地を有する球状黒鉛鋳鉄材とフ
ェライト系ステンレス鋼材との接合方法に関するもので
ある。
(従来の技術) 球状黒鉛鋳鉄材同士又はフェライト系ステンレス鋼材
同士の溶接では、溶接後、熱処理が施される。すなわ
ち、球状黒鉛鋳鉄材同士の溶接では焼なましが行なわ
れ、溶接直後に200〜400℃に昇温された炉中に溶接物を
移した後、900℃にまで加熱する。そして、その温度に
2時間保持した後、700℃にまで徐冷して、その温度で
5時間保持した後、250℃にまで炉中で冷却した後、炉
から取出して、静止空気中で室温にまで冷却するもので
ある(例えば、「改訂3版 溶接便覧」(昭63.1.25)
社団法人溶接学会、P.868)。他方、フェライト系ステ
ンレス鋼材同士の溶接では溶接後、熱処理が700〜850℃
で適宜選定して行なわれる(例えば、「改訂3版 溶接
便覧」(昭63.1.25)社団法人溶接学会、P.991)。
(発明が解決しようとする課題) 上述した溶接後の該両熱処理は、高温で長時間施され
るため多大な熱エネルギを必要とし、しかも、フェライ
ト系ステンレス鋼材は長時間加熱に際して、475℃ぜい
性又はσ相ぜい性を起こす。すなわち、475℃ぜい性は4
00〜550℃の温度に長時間加熱するか、又この温度範囲
を除冷することによって起こり、他方、σ相ぜい性は60
0〜800℃の温度に長時間加熱することによって起こり、
延性およびじん性を著しく低下させる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、球状
黒鉛鋳鉄材とフェライト系ステンレス鋼材とを溶接する
接合方法において、該両材の溶接後の熱処理温度の低下
および熱処理時間の短縮が可能な接合方法を提供するも
のである。
(課題を解決するための手段) 本発明の接合方法は、フェライト地を有する球状黒鉛
鋳鉄材とフェライト系ステンレス鋼材とを、 重量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:3.5%
以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:50〜80%、Cr:
11〜32%、残部がFeからなり、オーステナイト地を有す
る溶接ワイヤでガスシールドアーク溶接する接合方法で
あって、 該両材の溶接後、該両材を550〜650℃の温度T℃に
(−0.5×T+335)分以上加熱保持し、次いで、空冷す
ることを特徴とするものである。
(1)母材 母材は、フェライト地を有する球状黒鉛鋳鉄およびフ
ェライト系ステンレス鋼であり、該球状黒鉛鋳鉄母材
は、重量%で、C:3.5〜4.2%、Si:3.5〜4.3%、Mn:0.8
%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Ng:0.03〜0.1
%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト
地を有する球状黒鉛鋳鉄、又はJIS G 5502 FCD40乃至45
のフェライト地の球状黒鉛鋳鉄あるいはフェライト地に
一部パーライトが析出した球状黒鉛鋳鉄から形成され、
他方フェライト系ステンレス鋼母材は、JIS G 4304 SUS
430(熱間圧延フェライト系ステンレス鋼板)乃至該SUS
430系のステンレス鋼板、又はJIS G 4305 SUS430(冷間
圧延フェライト系ステンレス鋼板)乃至該SUS430系のス
テンレス鋼板から形成される。
(2)溶接ワイヤ 溶接ワイヤは、重量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%
以下、Mn:3.5以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:5
0〜80%、Cr:11〜32%、残部がFeからなり、オーステナ
イト地を有するものである。
次に、該ワイヤの成分組成について説明する。
C:0.15%以下 Cは強度を高めるが、0.15%を超えるとワイヤ製造工
程において加工性が劣化するので、0.15%以下とする。
Si:1.00%以下 Siは耐酸化性を向上させると共に溶接金属の湯流れを
良好にする。1%を超えるとワイヤ製造工程において、
加工性が劣化するので、1%以下とする。
Mn:3.5%以下 Mnは脱酸・脱硫剤として添加するが、多すぎると耐食
性、耐酸化性が劣化すると共にワイヤ製造工程における
加工性が劣化するので、2.5%以下とする。
P:0.03%以下 Pは不純物として含有しており溶接高温割れを助長す
るために低い方が望ましいが、製鋼上脱リンが難しいの
で、0.03%までを許容上限とする。
S:0.03%以下 Sは溶接高温割れに特に有害であるため0.03%以下ま
でを許容上限とする。
Ni:50〜80% Niはオーステナイト生成元素でオーステナイトを安定
させ、耐熱性、高温強さ、クリープ破断強さ、耐酸化性
および耐食性が向上し、Niを50〜80%添加すると止端割
れが抑制される。
Cr:11〜32% Crは不動態被膜を形成し、耐酸化性、耐食性を向上さ
せるが、11%未満ではその特性が十分に保持できず、Cr
が32%を超えるとシグマ相の析出が起りやすく、ワイヤ
製造工程において加工性が劣化するので、11〜32%とす
る。
残部 残部はFeおよび不可避不純物である。
(3)ガスシールドアーク溶接 ガスシールドアーク溶接は、Ar、Heなどの不活性ガ
ス、又はこれらに少量の活性ガスを加えた雰囲気中で行
なうアーク溶接であり、MIG溶接、TIG溶接、プラズマ溶
接を指す。
(4)熱処理 両母材の溶接後、550〜650℃の温度T℃に(−0.5×
T+335)分以上加熱保持すると、溶接部の破断強度が
増大する。保持時間は、フェライト系ステンレス鋼材が
475℃ぜい性又はσ相ぜい性を起こさない程度とし、短
時間の方が望ましい。
(作用) 本発明は上述のような構成であるので、フェライト地
を有する球状黒鉛鋳鉄材とフェライト系ステンレス鋼材
との溶接後の熱処理温度が低下すると共に、熱処理時間
が大幅に短縮され、しかも溶接部の破断強度が増大す
る。
(実施例) フェライト系ステンレス鋼管(外径:34mmφ、肉厚:1.
5mm)をフェライト系球状黒鉛鋳鉄管に嵌挿した後、第
1表に示す溶接ワイヤを用いてMIG溶接により該両管
(以下、両母材という)を重ねすみ肉溶接して溶接継手
を作製した。第2表に両母材の成分組成を示す。
次いで、該継手を電気炉に投入し第3表に示す加熱条
件で熱処理を施した後、炉外で空冷(冷却速度:1.9℃/
秒)した。その後、該継手に引張試験を行って破断強度
および破断位置を調べた。
本発明の接合方法によって得られた継手は、破断強度
が増大し、該ステンレス鋼管が破断するが、比較例の接
合方法によって得られた継手は、破断強度が小さく、接
合部の熱影響部が破断することがわかる。
本実施例では、溶接された該両母材全体を炉内に投入
して熱処理を施したが、該両母材の溶接部に上記実施例
と同様の熱処理を施しても同様の作用効果を奏する。
(発明の効果) 本発明によれば、熱処理時間が著しく短縮されると共
に、溶接部の破断強度が増大し、しかも球状黒鉛鋳鉄材
とフェライト系ステンレス鋼材との溶接物を簡単に得る
ことができるので、生産性の大幅向上およびコストの低
減を図ることができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フェライト地を有する球状黒鉛鋳鉄材とフ
    ェライト系ステンレス鋼材とを、 重量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:3.5%以
    下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:50〜80%、Cr:11
    〜32%、残部がFeからなり、オーステナイト地を有する
    溶接ワイヤでガスシールドアーク溶接する接合方法であ
    って、 該両材の溶接後、該両材を550〜650℃の温度T℃に(−
    0.5×T+335)分以上加熱保持し、次いで、空冷するこ
    とを特徴とする球状黒鉛鋳鉄材とステンレス鋼材との接
    合方法。
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