JP2790717B2 - 異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法 - Google Patents

異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、異種金属が互いに接触した状態で接合さ
れた異種金属接合体に対して、塗装処理に先立ってその
異種金属の双方の面に同時にかつ均一な燐酸塩皮膜を形
成するための異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法に関
する。
〔従来の技術〕
自動車のボディーやその他の部品、スチール家具、種
々の家電製品等において使用される鋼板や亜鉛メッキ鋼
板等の各種の鋼材は、その電着塗装等の塗装の前処理、
すなわち塗装下地処理として燐酸塩下地処理が汎用され
ている(例えば、特開昭63−227,786号、特開平1−20
8,473号の各公報)。例えば、自動車ボディーの塗装工
程では、ボデイーにフェンダーやフード等の部品を組み
付けたのち、燐酸塩下地処理→電着塗装処理→吹付塗装
処理という一連の塗装作業を行っている。
近年、この様な自動車業界をはじめとするスチール家
具業界や家電業界等の多くの業界において、装置や部品
の軽量化、装飾、防蝕等を目的に、例えば鉄系材料の鋼
材に加えてアルミニウム材を併用する等の異種金属が互
いに接触した状態で接合された異種金属接合体が多用さ
れるようになり、従来の既設ラインにおいて、この様な
異種金属接合体に対しその塗装下地処理として燐酸塩下
地処理を行う必要が生じてきた。
ところで、この燐酸塩下地処理は、元来鉄系材料の下
地処理として開発され実施されてきたものであり、例え
ばアルミニウム材についてこの燐酸塩下地処理を実施す
ると、その処理浴が通常の燐酸亜鉛浴である場合、アル
ミニウム材から処理浴中にアルミニウムイオンが溶出
し、このアルミニウムイオンが処理浴中の燐酸イオンと
反応して燐酸アルミニウムを生成するが、この燐酸アル
ミニウムは燐酸亜鉛よりもその沈澱平衡pHが低いため、
被処理物であるアルミニウム材の表面に燐酸亜鉛皮膜が
生成しないことがある。
そこで、この様な事態の発生を防止するために、被処
理物がアルミニウム材単材である場合、処理浴の燐酸亜
鉛溶液中に弗化物を添加し、これによって処理浴中のア
ルミニウムイオンを沈澱させてその増加を抑制し、アル
ミニウム材の表面に燐酸亜鉛皮膜を生成せしめることが
行われている。
しかしながら、被処理物が、例えば鉄系の鋼材である
鋼板製ボディーにアルミニウム材であるアルミニウム合
金製のフェンダーやフードを組み付けた自動車ボディー
のように、鋼材とアルミニウム材とが接合されている場
合には、燐酸亜鉛処理浴として上述の様なアルミニウム
材に適した処理浴を使用しても、鋼材側には燐酸亜鉛皮
膜が生成しても、アルミニウム材側にはこの燐酸亜鉛皮
膜が生成し難い。
そして、このことは、以下の様に推察できる。
燐酸塩皮膜は、金属表面全体に均一に生成するのでは
なく、電気化学的現象によって局部的な陰極部でのみ生
じている。すなわち、金属表面は、一般に均一な表面電
位を持つわけではなく、その表面状態によって無数の局
部的な陽極部と陰極部とからなる、いわゆる局部電池を
形成する。そして、この金属表面の局部陽極部では、 M→Mn++n・e-(Mは金属) の反応が生じ、また、局部陰極部では、 2H+2e-→H2 の反応が生じており、この反応によって、局部陰極部付
近ではpHが上昇し、この局部陰極部には例えばZn3(P
O4等の重金属第三燐酸塩が析出する。また、電気的
に陰極側に分極すると(カソード処理)、水素ガスが発
生し、皮膜生成が促進されるが、電気的に陽極側に分極
すると(アノード処理)、金属の溶出が促進されるだけ
で燐酸塩結晶の析出には少しも影響を及ぼさない。これ
らのことは、燐酸塩下地処理において被処理物の表面で
局部陽極部となる部位には燐酸塩皮膜が生成しないこと
を意味している。
そして、鋼材とアルミニウム材とを接合した被処理物
では、燐酸塩下地処理浴中において、各々の金属が有す
る局部的な陽極部、陰極部とは別に、アルミニウム材側
を陽極とし、鋼材側を陰極とするマクロセルが形成さ
れ、鋼材側の表面には燐酸塩皮膜が生成するが、アルミ
ニウム材側の表面にはアルミニウムの溶出が起こって燐
酸塩皮膜の生成が阻害されて形成されない。
そこで従来においては、この様な鋼材とアルミニウム
材とを接合した被処理物に対して燐酸塩下地処理を行う
方法として、アルミニウム材を鋼材に組み付ける前にこ
のアルミニウム材に対して予備燐酸亜鉛処理を行い、次
いでアルミニウム材を鋼材に組み付けた後に再度燐酸亜
鉛処理を行う方法が提案されている(特開昭63−149,38
5公報)。
しかしながら、この方法においては、1つの被処理物
に対して燐酸塩下地処理を2度も行う必要があり、アル
ミニウム材に対して行う予備燐酸亜鉛処理が余分な工程
になり、これを従来の塗装工程に組み込む際に工程管理
上の問題が生じる等の不具合があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
そこで、本発明者らは、鋼材とアルミニウム材等のよ
うに異種金属が互いに接触した状態で接合された異種金
属接合部を有する被処理物を燐酸塩下地処理し、これら
異種金属の表面全体に燐酸塩皮膜を形成させる方法につ
いて鋭意研究を重ねた結果、被処理物の対処理浴電位を
被処理物の局部陽極電位に対して卑とすることにより、
この様な異種金属接合体からなる被処理物の全表面に容
易かつ確実に燐酸塩皮膜を形成させることができること
を見出し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、異種金属接合体における電
気化学作用による皮膜生成の不均一性を解消し、この様
な異種金属接合体からなる被処理物の表面全面に容易か
つ確実に良好な燐酸塩皮膜を形成させることができる異
種金属接合体の燐酸塩下地処理方法を提供することにあ
る。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明は、異種金属が互いに接触した状態
で結合された異種金属接合部を有する被処理物を燐酸塩
下地処理浴中に浸漬し、この被処理物の表面に燐酸塩皮
膜を形成させる異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法に
おいて、上記処理浴中に対極と照合電極とを配設し、被
処理物を作用極として、これら被処理物、対極及び照合
電極の間に定電位電気化学回路又は定電流電気化学回路
を構成し、この定電位電気化学回路又は定電流電気化学
回路における被処理物の対処理浴電位が被処理物の局部
陽極電位より卑となるように制御しつつ浸漬処理を行う
異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法である。
本発明方法が適用される被処理物は、アルミニウム材
と鋼材や亜鉛材等の異種金属が互いに接触した状態で接
合された異種金属接合部を有する異種金属接合体であ
り、例えばアルミニウム合金と鋼板、アルミニウム合金
と亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム合金とL型鋼やH型鋼
等の鋼材、アルミニウム合金と鋼板と亜鉛メッキ鋼板、
あるいは効果は多少低いが異なる組成の鋼材同士やアル
ミニウム材同士等の組合せからなる異種金属接合部を、
例えばボルト締結、リベット止め、溶接、ろう付け、か
しめ締結等の手段で接合させて金属接触させた接合構造
を有するものが挙げられる。
また、本発明で使用する燐酸塩下地処理浴については
特に限定されるものではなく、例えば、亜鉛イオン1.5
〜3.0g/及び燐酸イオン5.0〜30.0g/を主成分とし、
所望によりマンガンイオン0.5〜5.0g/、ニッケルイオ
ン0.5〜5.0g/、弗化物イオン又は錯弗化物イオン(弗
素として)0.1〜2.0g/、硝酸イオン0.5〜2.0g/、亜
硝酸イオン0.01〜0.4g/を1種又は2種以上添加し、
更にこれらの成分間において、例えば硝酸イオンと燐酸
イオンの重量比(NO3 -/PO4 2-)0.05〜0.4、及び〔(燐
酸イオンのモル濃度+硝酸イオンのモル濃度)−(金属
イオンのモル濃度×2)〕>0の条件を満たすようにし
たものを挙げることができる。なお、この場合、主成分
の亜鉛イオンは酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛等として
添加され、また、燐酸イオンは燐酸、燐酸亜鉛、燐酸ニ
ッケル等として添加される。
そして、本発明方法においては、この様な燐酸塩処理
浴中に対極と照合電極とを配設し、被処理物を作用極と
してこれら対極及び照合電極の間に定電位電気化学回路
又は定電流電気化学回路を構成し、これによって被処理
物の対処理浴電位が被処理物の局部陽極電位より卑とな
るように制御する。ここで、対極は、処理槽対をそのま
ま適用することとしてもよいし、槽体とは別体のものと
して配設することもでき、また、定電位電気化学回路と
は、いわゆる定電位電解法と称する電解分析法で採用さ
れる陰極電位を一定に保つための電気回路であり、ま
た、定電流電気化学回路とは、いわゆる定電流電解法と
称する電解法で採用される電解電流を一定に保つための
電気回路である。そして、この様な定電位電気化学回路
又は定電流電気化学回路を構成する対極としては、例え
ば白金あるいはその他の白金族金属、チタンあるいはそ
の酸化物で被覆されたチタン、タンタルやニオブ等のそ
の他の金属、カーボンブラックやグラファイト、鉛合
金、ステンレス鋼等の材質で形成されたものを挙げるこ
とができ、また、照合電極は、被処理物の浴中電位をモ
ニターし、最適な処理電位に設定するために使用される
もので、例えば飽和甘こう電極、塩化銀電極、硫酸銅電
極等が使用できる。
この様な定電位電気化学回路又は定電流電気化学回路
により設定される電位あるいは電流(密度)は、被処理
物の材質、表面積、表面状態、燐酸塩処理浴の組成や温
度等の条件で変化するが、実際に用いられる燐酸塩処理
浴中で被処理物の電流−電位曲線を測定し、対極と被処
理物との間を流れる電流の向きが変わるときの電位、す
なわち被処理物→(電解質)→対極と流れる電流の流れ
の方向が逆転して対極→(電解質)→被処理物の方向に
流れ始めるときの電位(すなわち、局部陽極電位)を求
め、定電位電気化学回路又は定電流電気化学回路により
被処理物の対処理浴電位を被処理物の局部陽極電位より
卑となるように印加電圧又は印加電流を制御する。な
お、同一製品の被処理物を連続的に多数処理する場合で
あれば、一旦その電位を決定すれば、敢えてそれ以降の
処理において上述の局部陽極電位を求める必要はなく、
先に決定された局部陽極電位に基づいて制御できること
は勿論である。
ここで、被処理物の局部陽極電位をEbとすると、被処
理物と燐酸塩処理浴中に配設される対極及び照合電極と
で構成される制御回路が定電位電気化学回路である場合
は、この定電位電気化学回路の設定電圧は(Eb〜Eb−10
0mV)の範囲であり、また、制御回路が定電流電気化学
回路である場合には、この定電流電気化学回路の設定電
流はそのときの電圧が(Eb〜Eb−100mV)となる範囲で
ある。この設定電位が局部陽極電位Ebより貴になると、
被処理物の異種金属接触において陽極となる金属には十
分な燐酸塩皮膜が形成されず、また、この設定電位が
(局部陽極電位Eb−100mV)より卑のとき、燐酸塩皮膜
の付着量は増大するが、この燐酸塩皮膜の付着量が過大
になると塗膜密着性に悪影響を及ぼし、また、カソード
反応の増大に伴って発生する水素により被処理物の表面
近傍がアルカリ性になり、この被処理物の性質に悪影響
を及ぼすので、好ましくない。なお、被処理物の燐酸塩
下地処理浴への浸漬手段としては、被処理物の形状等に
応じて、昇降機構を有するコンベア方式やクレーン方式
等の慣用手段を適宜適用することができる。
本発明方法において、燐酸塩下地処理の処理条件は、
特に限定されるものではないが、通常その浴温が18〜50
℃、好ましくは20〜45℃の範囲であり、pHが2〜4、好
ましくは2.8〜3.8の範囲であり、また、処理時間が1〜
10分程度である。そして、このときの燐酸塩皮膜は、鉄
鋼表面ではその厚さが2.5〜5g/m2、アルミニウム表面で
は2〜4g/m2程度となるようにすることが好ましい。
この様にして、本発明方法により燐酸塩下地処理を施
されてその表面に燐酸塩皮膜が形成された被処理物は、
次いで従来と同様のプロセスにより塗装工程で塗装され
る。すなわち、例えば電着塗装、スプレー塗装、刷毛塗
り等の塗装方法により、例えばポリエステル樹脂系塗料
やエポキシ系アルキド樹脂系塗料等を使用する中塗り工
程、例えばメラミンアルキド樹脂系塗料やアクリルメラ
ミン樹脂系塗料やウレタン樹脂系塗料等を使用する上塗
り工程、更にはクリアー仕上げの複数回の塗装処理が施
され、塗膜が形成される。
〔作 用〕 本発明方法における燐酸塩下地処理の原理を添付図面
に基づいて説明すると、第1図に示すように、処理槽1
中に燐酸塩下地処理浴2を建浴し、この燐酸塩下地処理
浴2中には被処理物3を浸漬すると共に対極4と照合電
極5とを配設し、これら被処理物3、対極4及び照合電
極5の間を定電位電解装置又は定電流電解装置6、電流
計7及び電圧計8を介して接続し、定電位電気化学回路
又は定電流電気化学回路を構成する。
この様に構成された定電位電気化学回路又は定電流電
気化学回路により、被処理物の対処理浴電位が被処理分
の局部陽極電位より卑となるように制御して燐酸塩下地
処理を行うと、被処理物全体がこの電気化学回路の陰極
となり、異種金属の接触による卑金属側の溶解を最小限
に抑えることができ、被処理物において互いに接触した
状態で接合されている異種金属の双方に優れた燐酸塩皮
膜を形成することができる。
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明方法を具
体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは
ない。
実施例及び比較例1 (1) 試験片の調製 アルミニウム材として厚さ1.0mm×横幅100mm×縦幅50
mmの大きさのJIS規格A−1100アルミニウム板を使用
し、鋼材として厚さ1.0mm×横幅100mm×縦幅50mmの大き
さの冷延鋼板又は亜鉛メッキ鋼板を使用し、これらアル
ミニウム材と鋼材とを重ね代が15mm×100mmとなるよう
に重ねてボルト・ナットで締結し、JIS規格A−1100ア
ルミニウム板−冷延鋼板(試験片No.1)とJIS規格A−1
100アルミニウム板−亜鉛メッキ鋼板(試験片No.2)と
を調製した。なお、各試験片と電源リード線との間はク
ランプ止めにより接続した。
(2) 燐酸塩下地処理浴の調製 処理槽として5のSUS304材製ステンレスビーカーを
使用し、このビーカー自体を対極として使用し、また、
照合電極として飽和甘こう電極を使用し、それぞれリー
ド線とは溶接により固定した。更に、定電位・定電流電
解装置として北斗電工(株)製のポテンシオガルバノス
タットHA−211を使用した。この処理槽中に、市販の燐
酸亜鉛化成処理剤(日本パーカライジング(株)製商品
名:パルボンドL−3080)を所定の手順に従って建浴
し、浴温を43℃に保った。
(3) 処理方法 脱脂剤(日本パーカライジング(株)製商品名:FC−4
480)を使用し、上記(1)で調製した各試験片No.1及
びNo.2を43℃、2分の条件で脱脂し、次いで流水で水洗
し、純水で洗浄したのち、コロイダルチタンを主成分と
する表面活性化剤(日本パーカライジング(株)製商品
名:プレパレン)で30秒間表面調整を行い、次いで定電
位・定電流電解装置の設定電圧又は設定電流を第1表に
示すように設定し、上記(2)の燐酸塩下地処理浴で43
℃×5分の浸漬による燐酸塩下地処理を行った。
この燐酸塩下地処理浴中で電気化学的に求めた試験片
の局部陽極電位は純アルミニウム(JIS規格A−1100
材)で−1,050mV(飽和甘こう電極基準)であった。
この様にして燐酸塩化下地処理により得られた各試験
片No.1及びNo.2におけるアルミニウム材側の燐酸塩皮膜
付着量と鋼材側の燐酸塩皮膜付着量とを以下の方法で測
定した。すなわち、アルミニウム材については無水クロ
ム酸20g/及び燐酸50g/を含む沸騰水溶液中に10分間
浸漬し、また、冷延鋼板については75℃の50g/無水ク
ロム酸水溶液に15分間浸漬し、更に、亜鉛メッキ鋼板に
ついてはクロム酸アンモニウム20g/及びアンモニア12
2.5g/(25wt%−アンモニア水を使用)の水溶液中に1
5分間浸漬してそれぞれ燐酸塩皮膜を除去し、この燐酸
塩皮膜除去の前後の重量差を測定して求めた。結果を第
1表に示す。
比較例2 上記実施例で使用したと同じ試験片No.1及びNo.2及び
燐酸塩下地処理浴を使用し、定電位・定電流電解装置を
使用せずに浸漬のみにより燐酸塩下地処理を行った。
得られた各試験片No.1及びNo.2におけるアルミニウム
材側の燐酸塩皮膜付着量と鋼材側の燐酸塩皮膜付着量と
を実施例と同様に測定した。結果を第1表に示す。
比較例3 試験片を調製するのに使用したアルミニウム材のJIS
規格A−1100アルミニウム板(試験片No.3)と鋼材の冷
延鋼板(試験片No.4)又は亜鉛メッキ鋼板(試験片No.
5)とをそれぞれ接合構造とすることなく単独で使用
し、単一金属の試験片No.3〜No.5とし、比較例2と同様
に浸漬のみにより燐酸塩下地処理を行った。
得られた各試験片No.3〜No.5におけるアルミニウム材
側の燐酸塩皮膜付着量と鋼材側の燐酸塩皮膜付着量とを
実施例と同様に測定した。結果を第1表に示す。
上記第1表の結果から明らかなように、試験片No.1及
びNo.2、対極及び照合電極の間に定電位電気化学回路又
は定電流電気化学回路を構成し、これによって被処理物
の対処理浴電位が被処理物の局部陽極電位より卑となる
ように印加電圧あるいは印加電流を制御して燐酸塩下地
処理を行った実施例の場合は、この様な制御を行わなか
った各比較例の場合に比べて、同等(比較例3に対し
て)あるいはそれ以上(比較例1及び2に対して)の優
れた燐酸亜鉛皮膜を与えた。これに対して、不十分な電
位設定により行われた比較例1では、従来法の比較例2
の場合と同様に、鋼材側には燐酸亜鉛皮膜が生成する
が、アルミニウム材側には十分に燐酸亜鉛皮膜が生成し
なかった。
〔発明の効果〕
本発明方法によれば、被処理物の特性(材質、面積
比、形状等)や燐酸塩下地処理浴条件(浴組成、浴温
等)に応じて変化する局部陽極電位を照合の電極の使用
によって実体的に調整できるので、異種金属接合体にお
ける電気化学作用による燐酸塩皮膜生成の不均一性を解
消し、この様な異種金属接合体からなる被処理物の表面
全面に容易かつ確実に良好な燐酸塩皮膜を形成させるこ
とができる。
従って、この様な異種金属接合体が多用される、例え
ば自動車ボディー等の塗装工程において、異種金属の各
部品を組み立てた後に一括して燐酸塩下地処理から塗装
処理までを行うことができ、塗装工程の省力化を達成す
ることができ、特に鉄鋼−アルミニウムの接合体の下地
処理に好適な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の燐酸塩下地処理の原理を説明するため
の説明図である。 符号の説明 (1)……処理槽、(2)……燐酸塩下地処理浴、 (3)……被処理物、(4)……対極、(5)……照合
電極、 (6)……定電位電解装置又は定電流電解装置、 (7)……電流計、(8)……電圧計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C25D 11/36

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】異種金属が互いに接触した状態で接合され
    た異種金属接合部を有する被処理物を燐酸塩下地処理浴
    中に浸漬し、この被処理物の表面に燐酸塩皮膜を形成さ
    せる異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法において、上
    記処理浴中に対極と照合電極とを配設し、被処理物を作
    用極として、これら被処理物、対極及び照合電極の間に
    定電位電気化学回路又は定電流電気化学回路を構成し、
    この定電位電気化学回路又は定電流電気化学回路におけ
    る被処理物の対処理浴電位が被処理物の局部陽極電位よ
    り卑となるように制御しつつ浸漬処理を行うことを特徴
    とする異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法。
JP21373090A 1990-08-14 1990-08-14 異種金属接合体の燐酸塩下地処理方法 Expired - Lifetime JP2790717B2 (ja)

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